2023/09/09 のログ
■メイラ・ダンタリオ >
エイコーンの強固な皮
中身のない騎士 それは彼の首無し騎士のように決定打となるものがなく
破壊に赴かなければいけないと思わせる。
核 呪言 操人 木偶人形らしく明確な弱点がいればともかく、メイラはエイコーンがいるというだけで
自身の武具に状況や遊びを混ぜることもなくなり、巨人の槍一本にすることが増える。
大きな亀裂に対し、腰から引き抜いた身幅のある短剣もそうだろう。
額に赤い瞳のように薄く煌めく黒兜
歯並びの良さとは裏腹な裏返るような反りのある全杭歯の向こう
殺すという意思を秘めた赤い慟哭が見える色
二つのそれが細まり、両腕で突き刺し、唱える。
「《―――閂砕け。》」
その瞬間、全身に強い罅を打ち込み、内側から強烈な圧を掛けられたエイコーンは動かなくなる。
引き抜いた剣は円柱型を取る筒のようなそれ。
煙立ち込める筒口からの一撃は、腰に納める前に剣の形へと戻ろうか。
エイコーンを手早く始末してみせるものの、引っ掛けあってこそだろう。
まともにやれば目の前の相手が影法師となって襲い掛かってくるのをメイラは避けている。
数体しか毎回送り込まれていないエイコーン
それも今は一体のみ メイラはエイコーンが無くなったことで薄まった勝機と士気
目の前の肉の体を持つ者らに対し、勢いづいた自軍らで襲い掛かるように脚を早くした。
どちらが悪なのかもわからないような
騎士の華麗な切り口
一対一
正々堂々
そういったものがない殺せればそれでいいというような足の速いものらが先頭に
メイラもまた、巨剣擬きで数体をまとめて横薙ぎに振うと、金属鎧ごと
刃が食い込み、運動力と強度によって負け、上半身が千切れ飛んでいく頭上光景
バタリバタリと降り抱える大きな赤い粒
兜を濡らす赤が左右に落ち、赤い瞳状に埋め込まれた兜が悦ぶように嬉いていた。
「《―――(ごふぅぅぅぅ)》」
メイラもまた、この季節に関わらず全身甲冑となった出で立ち
兜から声篭る吐息吐き出す狂気の女型は、満足げにするだろうか。
ご案内:「城塞都市アスピダ 周辺」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「魔族の国・欲望の街「ナグアル」」にサヨさんが現れました。
■サヨ >
――この国に迷い込んで一週間程。
日課として闘技場へとやってきた異装の少女は数分の後に出てきてそのまま噴水前のベンチへと腰掛ける。
「……。」
ぽやんとした表情で空を見上げる少女はこの国にはあまりにも不釣り合いで、周囲から奇異の視線を向けられる。
もっとも、何も考えていないように見える少女であるが非常に困っていた。
そう、まさかたった一週間で対戦相手がいなくなってしまうなんて……。
一日何試合もこなしてしまったのがいけなかったのだろうか、それとも圧倒しすぎてしまったのがいけなかったのだろうか。
一応出禁にはなっていないし、希望者がいれば試合を組んで貰えると言う話ではあるが、気軽に稼ぐことは難しくなってしまった。
せっかくいっぱい稼いで借金返済の足しに出来ると思っていたのに……まあ、人間の国のほうの闘技場は出禁になってしまっていることを思えばまだ望みはあるように思える。
とりあえず、しばらく暮らすのには十分過ぎるほどの稼ぎは得ているが……一度人間の国のほうに戻るかどうするか……。
ただ、一人で戻ることはおそらく不可能……寄り合い馬車なんか出ているだろうか……。
そもそも正規の入国をしていない自分がそういうサービスを利用出来るのか……。
入国タブとか言うものは今からでも発行して貰えるのだろうか。
むしろ、追い出されてしまう可能性のほうが高いのかも……。
心底困り果てていた。
ぎゅんぎゅんと頭の中で困り果ててはいても、問題はそんな内心はぽやんとした顔からは何ひとつ感じ取れないことだった。
ご案内:「魔族の国・欲望の街「ナグアル」」にセリアスさんが現れました。
■セリアス > 欲望の街、ナグアル。
人間の国に潜り込み商人をしているセリアスが最近行商にと訪れる街。
男にとっては里帰り、まではいかないが、多少普段よりは窮屈でない思いのできる場所。
かつ、人間に対し排他的な扱いをするわけでもないから、王国産のものが高値で売れたりもする。
だからこその行商でもあるし、折角遠路はるばる着たからには商談以外も楽しんではいて。
そんな魔族の国にしては珍しい街とはいえ、序列により区画割りされた地区ごとに特色があり。
先述の、人間に対して排他的でない点についても、その程度も大きく変わる。
ここ、第七位が統治するエリアは闘争のためのエリアで。
イイルクーンと呼ばれる闘技場のあるエリアには当然脳筋――……力自慢の魔族ばかりが集まっている。
人間の力自慢も混ざることはあるが、活躍を見せるのはほんの一握り。
セリアスがここに寄ったのは、そんな一握り、が、最近闘技場に姿を見せると噂を聞いて。
王国からきている実力者であるなら、こちらで縁を繋ぐのに良い機会でもあるし、単に興味もあった。
噂の人間の闘士の試合はと聞けば『試合は無いぞ』と。
話を聞けば、相当な実力者であったらしく、にわかなマッチングができなくなったそう。
期待外れに肩透かし。ため息交じりに歩いていて見つけるのは、異国情緒に溢れる恰好で佇む少女。
人型の魔族も多くはあるが、纏う気配や魔力は魔族のものとも違うように感じて。
となれば、彼女も人間か、と。人間を見に来て、見つけた人間。まさか当人とも思うことはなく。
「どぅも、良い日和ですねぇ。お目当ての試合はまだですか?」
そんなふうに声をかける。へらりと人好きのする笑顔を浮かべて。
人間見たさに来て、それは叶わず、人間と観戦。そんなのも面白いかというような、そんな魂胆。
あとは勿論彼女の見目にも釣られたところはあるけれど。
■サヨ >
噴水前のベンチで黄昏れている――他人から見ればぽーっとしているだけにしか見えないがーーと不意に声を掛けられ、ゆっくりと首ごと向ける。
そこにいたのは見知らぬ男性。
じっとしばらく無言のまま見つめ続ける。
何を考えているかわからないぽやっとした顔ではある。
が、内心では知り合いだっただろうか、そうだったら忘れてしまっているのは失礼だろうか、そもそも本当に自分に話しかけているのだろうか、天気はいいのだろうか、と考えこんでしまっている故の時間差。
「……はい、今日はない、そうで。」
ようやく口を開くも出たのは短い言葉。
アンタはもっとちゃんと言葉にしなさいと怒ってくれる仲間の顔が思い浮かぶもコミュニケーションが苦手なのはまだまだ克服できそうにない。
■セリアス > 季節的な日差しによる暑さも噴水そばでは幾らか和らぐよう。
それが有難く、一息ついていれば、ぼう、っと中空を眺めていた眠たげな視線がこちらを向いて。
僅かの間、その黒い瞳がこちらの顔を見遣るのに、なんとか笑みは維持したまま。
何を言われるのかと、こちらから先に何か続けようかと思っていれば、ゆっくりと返される言葉。
「そぅですか。こちらへはどちらから?
人間にも門戸は開いているとはいえ、物騒な街でしょう?」
しれっと彼女の隣に腰掛けながら、来歴を問う。
彼女の実力を知るわけではないから、だれか護衛でも付けて、
魔族の国にある人間が訪れても一応は受け入れてくれる国。
金品や希少な物品などを収めることができるなら、物好きな貴族かあたりか。
そんなふうに当たりを付けて。
■サヨ >
どちらからと問われると非常に困ってしまう。
王都を出てから魔物の巣を踏んで回っているうちに迷い込んでしまった場合、どこからと言うべきだろうか……。
「……外から、でしょうか?」
頭の中で考えているうちにちゃんと説明したつもりになってしまうのは悪癖だ。
そのせいで口から出たのは質問に対する質問になってしまった。
一拍二拍遅れてのおだやかな口調からは和服の女が困っていることなど伺い知れないだろう。
ただ……異種族の者の入国を許可するタグを提示していないことはわかるか。
■セリアス > 彼女がこちらの質問に言葉を返すまで、暫くの時間がかかる。
その間に、ちらりと覗き見るその出で立ちは、和服と呼ばれる異国の衣装。
コートを薄くして身体に巻き付けるような構造で腰元を締め付けるような着方だったと記憶しているが。
この街自体、いろいろなところから魔族も人間族もそれ以外も集まっていて、
それぞれ特色があるけれど、彼女の恰好はこれまた一等珍しくも見える。
けれど、そのどこにも、入場許可のタグが見当たらない。
たまたま見えるところに出し忘れているのだろうと当たりを付けるも、
この街でそんな隙を晒せばとんでもない目に合わされても不思議ではなく。
「外……ええ、ええ、そうなのでしょうけれど。王国とか、シェンヤンだとか。
あの、それと……入場タグは見えるように、胸元なりに吊るすかしたほうが安全ですよ。
仕舞っていて、提示を求められて出す、でもいいんですが。そうお上品でない者も多いところですから」
そう告げながら、自分も胸ポケットに着けたリング状の留め具に吊るしたタグを揺らして見せて。
■サヨ >
なるほど、どの国から来たかを答えればいいのかと合点。
根気よく話に付き合ってくれているこの人はもしかしたらいい人なのでは?
この街にはいい人が多いような気がする……。
「……王国から、です。気付いたらここに。」
ちゃんと答えられたと内心自分を褒める。
何ならドヤ顔を見せているくらいの気分だ。
もっとも当然のようにそんな内心は表情に出ないわけだが。
「……タグは、ないですけど大丈夫、です。」
とりあえず今の所はなくて困ったことはないので大丈夫と答えた。
しかし、答えてすぐに思い出した。
そうだ、交通サービスが使えるかどうかわからなくて困っていたのだった、と。
「――大丈夫?」
乗り合い馬車は使えますか?大丈夫でしょうか?
そんな質問のつもりではあったが、果たして伝わるかどうか。
とりあえず、膝の上に置いていた片手を胸へと当て首を傾げて見せる。
■セリアス > 最初の反応からすればずいぶんとスムーズに帰ってきた返答。
王国からか、そうか。
となればその格好からして、やはり異国なりに脚を伸ばすのが好きな有閑貴族の令嬢というところだろうと。
そう想像していたのだけれど、はた、と、彼女の言葉の続きに、ん? と、僅かに首を傾げ。
「気付いたら……? えっと、それは……タグがな……っん」
タグは無いけど大丈夫、ではないのだ。
彼女の何を考えているかつかみきれない表情を見ながら、繰り返しそうになった言葉を呑み込んで。
「た、タダではないですものねぇ! ええ、ええ!」
何が、とは言わないまま、勢いで誤魔化すようにしながら。
物珍し気に彼女を見ていた者たちも、セリアスが話しかけた後はその顛末までは興味がないのか視線を他にやっている。
上がった声にちらりと視線を戻すも、闘技場のほうから歓声が上がればそちらに意識が向いたらしい。
それが幸いと思いながら、警備なりに聞かれたら事だったと、一人焦り。
大丈夫、と、一人繰り返す彼女に、その首を傾げる仕草のかわいらしさは置いておいて溜息を吐いて。
「大丈夫、ではないです。タグを拝領しないままの街への入場は不法で、認められていません」
彼女の告げ来る言葉とは返す意図が変わってはいたけれど。
周囲に聞かれないようにと声を潜め、やや彼女の耳元に顔を寄せて告げる。
■サヨ >
やはりタグがないとダメなのだ。
法を犯してしまっているのは問題だ。
ただ、誰も問題にはしていないようにも思う。
この街に着いてからお役人に誰何されたことも拘束されたこともないし、闘技場にも普通に出入り出来ているし……。
あったことと言えばいつものように襲いかかってきた暴漢を投げ捨てたことくらい。
「……タダでは、ないのですね、タグ。」
これくらいで足りるでしょうか?と袖の中からずしりと重い財布代わりの革袋を取り出し男へと見せる。
明らかに無用心な所作であり、周囲の血の気の多いゴロツキ達の視線が当然のように集まる。
「……闘技場、見に来たのですか?」
男の意識が闘技場へと向いたのを感じ、数瞬の後、男が耳打ちしてくれているタイミングで言葉を被せてしまう。
そして、視線を闘技場へと向け、男へと横顔を見せたまま、ぽやんと眺め続け……。
財布を出したままそんな間抜けな姿を見せる女がいれば我慢出来ないゴロツキがいるのも当然。
大柄な魔族の男が財布を奪い取るべく駆け寄り、異国装束の女の財布へと手を伸ばし、次の瞬間明後日の方向へとすっ飛んでいく。
何が起こったのかわかっていないのか女はぽやっとした表情のまま闘技場を眺め続け、襲ってきた魔族は十数メートル先の屋台の屋根に頭を突っ込んで伸びてしまっている。
屋台の周りでは小さくない騒ぎが起きているが和装の女は相変わらず、まるで玩具を欲しがる子供のように闘技場を眺め続ける、ぽやっと。