2018/11/06 のログ
ヴィクトール > 身じろぎすると、狭苦しい中で密着する粘膜同士が擦れ、粘着質な水音が互いの身体を伝って届く。
雁首の段差が、ゴリッと擦れる感触と共に、子宮口の窪みに引っかかった鈴口が擦れていった。
快楽の残滓に眉を跳ねさせつつも、眼下に広がるのは恥じらいに瞳を震わす幼子。
あれだけはしたなく喘いだのにと思えば、その初さに僅かに縮んでいた肉棒が亀頭で腹側の粘膜を叩いて硬さを回復し始めた。

「そう、なりてぇってことだろうな?」

ほんの少しでもそう思うならば、言葉に混じった魔力は少女の心を後押しする。
しかし、微塵にも思わなければ響かない力。
洗脳や催眠とは異なり、己が意志を強める術は事実を炙り出す。
自身の前で緩慢に頷く少女の答えも、潜在的に欲した欲望を認めた証拠だった。
何をしても足りないと口走る中、見せつけた映像に腟内が蠢き、尿道の僅かな種を搾る。
あれだけ絞られても尚刺激されれば、再び分身は少女の粘膜を限界まで押し広げられていく。

「俺のもの……ってだけじゃねぇな。俺がしてぇ通りにマリナを可愛がって、全部奪った姿だな」

身も心も縛って、奪い尽くして、自分が望む少女へと歪め尽くした結果といえようか。
クツクツと笑いながら囁くと、こちらを向かせた顔は恋する少女と何ら変わりない。
唇を差し出して、口吻を強請る甘い仕草に嗚呼といいたげに唇が開けば、それに応えていく。
情欲を煽る深い交わりではなく、重ねるだけの甘ったるい口吻を交わすと、背中に両腕を回す。
華奢な体が壊れないように、加減しながらも密着すれば、その合間も数秒が長く感じる程心地よい。
全てが柔らかで心地よい少女との唇がゆっくりと離れていけば、するりと頭を包むように抱きしめ直す。

「俺の為に、白色の似合う可愛いお姫様でいてくれや。その真っ白いマリナをガッツリ抱いて、厭らしく躾けてぇんだ」

誰よりも儚い雰囲気を持った少女へ、そんなお強請りを囁くと、立てかけられた剣の方へ手をかざす。
そこに纏められていたポーチから、革のベルトが引き寄せられると、彼の手の中へと収まった。
腰に巻くには短く、幅もない変わったものだが、自身の魔力と合わせるようにして表面を撫でれば、焦げ茶色の革が白く染まっていく。
本来は腕などに巻いて締め付け、止血を施すためのベルトを少女の首筋へと回す。
指が二本ほど簡単に入る程度の締め方だが、紋と同じく爪痕と束縛を更に深めるための小細工だ。
もっとやろうかと囁き、唇を改めて重ねれば夜の交わりは改めて繰り返されるのだろう。
鞭も縄も無く、少女の心身を印と象徴程度の首輪だけで束縛し、垂れ目の碧眼を見つめながら身体を揺らす。
疲れ果てた少女をひっそりと浴室に運び込み、清めた後もベッドの中で素肌を重ねていった。
苦しくならぬように外された首輪はサイドボードの上に残っているが、下腹部に刻んだ紋を少女がのぞみ、有り続けるかは、日が昇る頃に知れることだろう。

マリナ > さわさわと胸をくすぐられるような感情に一喜一憂する一方、快楽を知った肉壷は
中で少しずつ張り詰めていく陰茎の動きを過敏に察知し、白濁溜まった子宮を収縮させる。
少女と女の狭間で揺れながら、今は少女の気持ちを優先させた口付けに蕩けきる。
覚えたてのキスに夢中になる子供のように、唇を重ねては短く息をこぼし、嬉しくてほのかな微笑みをのせる。
激しく情熱的に過ぎる一夜もいいけれど、じゃれ合うような触れ合いもたまらなく愛しくて。

「……はい。マリナはずっとこの気持ちを忘れません」

未だキスの感触が残る幸せを噛み締めながら、彼の腕の中で陶然と呟く。
真っ白い自分でいる――その方法がはっきりとわかるワケではなかったけれど
今が真っ白だと思ってくれるのなら、今抱いている感情を大事にしよう。
甘やかな雰囲気に酔い痴れる少女の首筋に白い首輪が施されれば、少女は彼を見上げてふんわり笑った。
緩く、自分の意思でいつでも外せるような首輪と、願いが途切れれば消えてしまう紋。
たまゆらの幸せの象徴のようなそれらだけれど、今、消えることなく少女の肌を彩っている事実だけで充分。
甘いものばかりで満たされる時間の中、彼の腰遣いが再開されるのを切っ掛けに、少女の貌に女がまた差す。
紋がさらに白く染め上げられ、そこに刻まれている彼の名が示すように彼の子種だけを注いでもらう体を曝し、思慕を深めていく一日。
時折外から聞こえる物音や声が背徳感を呼び覚まし、けれど次の瞬間には彼しか見えなくなる。

――――こんな幸せ、この世界に本当に存在するんだろうか。

恋の楽しさ、愛しい人と肌を重ねられる幸福の時間は、どれだけ続いたのだろう。
翌日からも彼が仕事に出る際に見せる寂しげな様子は変わらなかったかもしれないけれど
帰りを待つ間、残された白い首輪に触れれば、彼との時間を思い出せば浮かぶ紋が、寂しさを和らげてくれる筈。
首筋に新たに刻まれた鬱血痕も含めて、少女の全ては少しずつ彼だけに染まっていく。
制服を着て、魔法銃の訓練を始めて、集落に馴染みつつある日常と共に。

ご案内:「ドラゴンフィート」からマリナさんが去りました。
ご案内:「ドラゴンフィート」からヴィクトールさんが去りました。
ご案内:「富裕地区の宿」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「富裕地区の宿」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「富裕地区の宿」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > [待ち合わせ中です]
ご案内:「富裕地区の宿」にクレス・ローベルクさんが現れました。
ご案内:「富裕地区の宿」にエフルさんが現れました。
ご案内:「富裕地区の宿」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 上質の家具によって飾り付けられた部屋。
そのリビングで、男はうろうろとうろついていた。
彼の直ぐ近くには向かい合わせのソファもあるというのに、それを使おうともせず。

「(うおおお、何かテンションに任せて連れ込んでしまった……!)」

これが、行きずりの関係、もしくはこちらがイニシアチブを取った状態で一緒にホテルに入ったなら、余裕を持って少女の相手をしただろう。男は決してウブという訳ではない。寧ろ、単純な女性関係の数で言えば、同年代でも有数と言える。

だが、本気で好きになった女性と言えるのは、恐らくエフルが初めてだ。
それも、相手は自分よりもかなり年下だ。
両思いとはいえ、どの様な接し方が正しいのか、というのはやはり不安と疑問としてつきまとう。

「取り敢えず、あの娘を不安がらせない様にしないと。うん、まずはソファに座って、と」

出来るだけ深く腰を沈めて、リラックスした余裕を持った男を演出。
そして、固まった表情筋を出来るだけ柔らかくするために顔の運動をして、

「……よし、どっからでもかかってこい、だ!」

エフルが気合を入れるときのように、握りこぶしを握る。
後は少女が来るのを待つばかりである。

エフル > 勤め先の喫茶店に戻って、配達用のバスケットを返して。
それからマスターに私用で早退のお願いをして、制服を私服に着替える。
それだけのことなのに緊張して、何度も噛んだり、服のボタンを掛け違えたり。
変に皺になった制服や拭いきれなかった涙の跡のせいで先輩ウェイトレスたちには心配をされたけれど、
大丈夫だというと察したような笑顔で頑張ってきなさいよと背中や肩を叩かれた。
彼女たちの援護もあって無事に早退を勝ち取って、メモを見ながらクレスさんの居る宿へ。
ふとさっきまでの出来事が夢だったんじゃないかと不安になりながら、その不安を少しでも早く拭えるように早足で宿に駆け込む。

寡黙そうなフロントの従業員にメモを見せて、クレスさんの借りた部屋を聞いて。
――今、その部屋の前に立っている。

ごくりと息を呑んで、震える手でドアをこん、こんと二回ノック。

「あのっ、エフルです……クレスさん、いらっしゃいますか?」

クレス・ローベルク > まず、ドアの外からのノックで、心臓が飛び出しそうになった。
そして、それに反射的に、そして上ずった声で返事をする自分の声を必死にこらえる。
一、二、三で深呼吸して、ドアまで歩いて、

「やあ、いらっしゃい。迷わずに来れた様で良かった。うん、制服姿もいいけど、私服も可愛いね。さ、中にどうぞ」

何時も通りの口調と笑みで、彼女を迎えた。
扉を開けて、ソファと小さな机で作られた、応接スペースに案内する。
お互いが座った所で、少々気まずそうに

「いや、ごめんね。呼んどいて何だけど……その、何をするのか決めてなくてね。色々と話したいことも、やりたい事もあるんだけど……。何ていうのかな、こういうのは、初めてだから」

そもそも、人を本気で好きになったのも初めてであれば、明確に性的な目的以外――偶に仕事の関係で、一つの部屋に女性と泊まる事がないでもなかったが――で女性と宿に泊まるのも初めてのことで。
故に、半ば助けを求めるように、男はエフルに聞くしかないのだ。

「エフルは、どうだろう。今やりたい事とかそういうの……あるかな?」

エフル > 「かわっ……お、おまたせしましたっ!」

良かった、いつもの優しいクレスさんだ。
普段からさり気なく女の子を褒めるクレスさんにかわいいと言われたことは、今回が初めてじゃない。
初めてじゃないのに、今までになくドキドキしてしまうのはきっと、好きだと伝えてしまったからなんだろう。
落ち着きのない心臓を止めてしまいたいくらいにぎゅっと胸の前で手を重ねて、クレスさんに続いてお部屋の中へ。
見たこともないくらい上品な、貴族のお部屋みたいな室内だと、クレスさんは本当の貴族のようで、かっこいいなって見惚れる。

「…………わた、わたしだって初めてですっ。
 男の人にお部屋に誘われるのなんて……」

対面に座るクレスさんが、正直にノープランを明かしてくれるのがなんだか信頼を感じて少しうれしい。
嬉しいけれど、とはいえこちらこそ恋愛初心者。やりたいこと、と言われても頭に浮かぶのは――

「手とか繋いだり……です?
 あとはクレスさんの普段の……私生活のお話とか聞きたいです」

キスが先に来ちゃったから、手をつなぎたいとか。
その程度の発想しかなくって。逆にクレスさんの話したいこと、やりたいことってなんですか? と質問返し。

クレス・ローベルク > 「はは、それは光栄だ。エフルの初めての男、か」

そう言われると、何だか奇妙な独占感がある。
実際、彼女の出自を考えれば、初めての男が自分なのは当たり前なのだが。
そうは言っても、嬉しいものは嬉しい。この娘とこの先どうなるにせよ、少なくとも、こうして彼女と二人きりになった、最初の男は自分なのだ。

「手を繋ぐ……か。確かに、普通最初はそこからだよなあ」

とはいえ、ソファに向かい合った状態でやっても、恋人同士というよりは握手している様にしかなるまい。幸い、ソファはどちらも二人がけだったので、エフルの隣に座る。今度は、スペースを開けずに肩と肩が触れ合う距離で、

「恋人同士だったら、こうかな」

と、指を絡めて恋人つなぎ。力を入れすぎない程度に、きゅ、と彼女の手を握る。それだけで心臓が少し跳ねるけれど、それでもそれを心の中に隠して。

「俺の私生活、かあ。そうだなあ……。何せ仕事が仕事だから、女性――っていうか恋人には聞かせづらい話も多いけれど。取り敢えず話しやすい所から話すと、休日は何時も、ご飯処を巡ってるかな。君と最初に出会ったカフェも、それで見つけたんだ。後は賭博と――正直に言うと、昂ぶった試合の次の日なんかは、娼館なんかにも行く、かな……」

流石に最後は少し勢いを失ったが、しかし今までの事を聞きたいと言われたら、話さないわけにはいかない。出来るだけ正直に話そうと、そう思うが、気まずさは否めず。

「えーっと、エフルは休日の時何してるかな?読書をするのは聞いてるけど、考えてみれば他の趣味とか知らないし」

エフル > 「好きになったのもクレスさんが初めてですから……
 これから全部、あなたが初めての人ですよ?」

そう、これから。
初めて好きになって、初めて添い寝をして、初めて告白して、初めてキスをして、初めて部屋に招かれた。
でも、言い換えればそれだけだから。これから沢山の初めてを経験できたらいいな、とクレスさんに微笑む。

「ですっ。最初が添い寝でそれからキスって少し順番変ですけど、だから手を繋ぎたくって……
 あっ、これ恋人の繋ぎ方、ですよね。……嬉しい」

隣に寄り添うように座ってくれたクレスさんの肩に、おずおずと頭をあずけて。
逞しくて大きな手に、小さな自分の手を重ねて、指を絡め合う。
普通に手を繋ぐよりもずっとしっかりと、深く繋がったような感じ。
それが嬉しくて、恥ずかしくて、はにかみながら何度もきゅ、きゅと手に力を込める。

「ふむふむ、ご飯処。ダイラスに行ったら、クレスさん好みの味を要リサーチですねっ。
 それから……賭け事は身持ち崩さないようにですよっ。楽しいのは分かりますけど、ああいうのはのめり込んじゃだめなんですからね。
 …………ひゃ、ひゃい。娼館ってあれですよね、あの、女の人とえっちなことするお店……
 クレスさんもやっぱりそういうお店に行くんですねっ」

男性がそういうお店を使うことは知っているし、それはしょうがないことだと思ってはいても、
直接恋人の口から聞くとなんだかヤキモチを妬いてしまう。
行っていたときにはわたしとは恋人同士ではないにしても、
妬いちゃうのはしょうがないから少し拗ねたような口調になったのもしょうがない。

「わたしは……貸し本屋さん巡りしたり、本を読んだり……たまに手間のかかるようなお料理に朝からチャレンジしたりしますよ。
 朝からずーっと台所に立ってお鍋の番です。結局自分しか食べないからそんなに手間を掛ける必要、全然ないんですけどね」

えへへ、と笑いながら。
でも、それだっていつか好きな人に食べてほしいから始めたこと。
"あの日からずっとずっと"、そんな風に料理をするときには心のどこかにこの人の顔が浮かんでいた。
今までは自覚していなかったけれど、今ならはっきりとこの人のために頑張っていたんだと言い切れる。

クレス・ローベルク > 「……何というか、エフルって無自覚で小悪魔だよね……正直、今のはぐらっと来た……」

この小さな少女の初めては、これから全部、自分のもの。
手を繋いだ後の、可愛らしい力の入れ方も含めて、こちらの心の深い所をくすぐってくるような。
勿論無自覚なんだろうが、逆にこれを自覚的にやられたら、身も心も骨抜きになってしまいそうだ。

「あー、まあ、結構ハイレートなカジノ行ったりもしてるしなあ。そこは気をつけないと……。ってああ、解ってたけどその反応辛いっ!」

正直、娼館の話は時期尚早かなーと思ってはいたが、しかしそれでも拗ねたような反応をされるとこちらも気まずさを含んだ焦りを得てしまう。蔑まれない分マシだが、しかし寧ろ蔑まれたほうが楽だったかもとも思う。

「た、戦いの後で性欲が高まるのは生理現象なので、その、ね。仕方ない側面もあるというか……。その、今後は出来るだけ控えます……!」

流石に行かないとは言えないのが男の性として悲しい所だが。
せめて、これぐらいは誠意を見せなければ、少女に対しても失礼だし、何より気持ちを確かめあったさっきの今で、別れ話などになったらもう立ち直れない。必死に頭を下げる。

「うわあ、知的な上に家庭的だあ……。俺も料理はするけど、流石にそんなに時間をかける料理はしないや。でも、良かったら今度、お互い作った料理を食べさせ合いしない?俺の料理は、ちょっと大雑把だけど」

元々は、実家で習った野外料理の応用みたいな物なので、どうしても繊細な調理法とは無縁だが。それでも、エフルの料理を食べさせてもらうなら、自分もこれぐらいは、と。

エフル > 「……?」

肩に頭を預けたまま、視線だけでクレスさんを見上げて不思議そうな表情。
無自覚を指摘されたのだから、わからないのは当然だけれど。
小悪魔というのはなんだか納得がいかない。
ぎゅーっと握った手に力を込め、不服を示す。

「ひ、控えなくてもいいんですよ……?
 行きたいなら行っていいと思います。わたしは止めません。
 クレスさんがお店のお姉さんで発散したいならそれを尊重しますから……ただ、そのっ。しょ、将来的には選択肢にわたしも
 あ、やっ、今のは何でもないですッ!!」

男性の生理現象を止める権利は、いくら恋人になってもあるはずもなく。
そこでそういうことを生業とするプロのひとのお世話になるのは、そこらでナンパした女の子で発散されるよりはいいと思うし。
わたしがそれを制限するのもなにかちがうよなーって、複雑な表情で頭を下げるクレスさんを制止する。
そのまま勢いあまって余計なことまで言ってしまって、今度はこっちが忘れてくださいと必死で頭を下げる。
気持ちを確かめあった殺気の今で、えっちな女の子だと思われてはもう立ち直れない。


「でも本って言っても、流行りの恋物語とかそういうのばっかりですし……知的じゃないですよ、ぜんぜん!
 手間のかかるお料理も結構楽しいですよ。お店の味になると嬉しくて。
 いいんですか? クレスさんのお料理、食べてみたいです! わたしも腕によりをかけて美味しいお料理作りますよ!」

一緒に台所に立って、お互いの料理を食べさせ合う。そんな幸せな未来予想に頬が緩む。

「……いつかクレスさんのお仕事してる闘技場の近くに、お店とか出したいです。
 闘技場の側なら、クレスさんが寄り道しないですぐ帰ってきてくれるでしょうし……ねっ」

クレス・ローベルク > 「ぐお、いや、痛くないけどそういう処なんだって、小悪魔なのは。今、結構俺、理性使って話してるからね。俺の精神、今、結構な綱渡りだからね」

本当、どんだけ可愛い彼女さんなんだ、エフルは、と冗談抜きで戦慄する。しっとりとした少女の肌から感じる暖かさが、強く握られた事でますますはっきりと感じられる。甘える様に肩に乗っかった少女の頭髪からはいい匂いもするし、実は結構いっぱいいっぱいするの、だが。

「(その上でこういう事言うの本当反則だって!)」

いつものクレスなら、もう迷わず「将来的にはなんて言わずに」と口説くぐらいの破壊力のある誘いだ。いっそ、本当にそうしてしまえという自分の中の悪魔の声に耐えつつ、話を別の方向に変える。

「いやあ、読書習慣が出来てるってのはいいことだよ。視野が広がる。
お店の料理もやってるのか。これはもう、料理に於いては教えを請う立場だなあ」

勿論、俺ので良ければ食べさせてあげるけど、エフルの舌に合うかどうか、と苦笑する。

「はは、闘技場の近くに君の店があったら、確かに寄り道なんてできないな。一直線に帰ってしまいそうだ。いや、でも待てよ?俺の同僚に君を見られたくはないな……口説いてる所を見たらその場で抜剣してしまいそうだ。うーむ、悩ましいなこれは」

半分は冗談半分本気でそんな軽口を。
実際、彼女が誰かに口説かれたり、まして可能性は低いが誰かに犯されたりした時、それこそ理性を保っていられるかは怪しい所ではある。

エフル > 「うーん、わからないですけど、気をつけますねっ。
 クレスさんも気づいたら言ってください、善処するので!」

どの辺りがクレスさんに刺さっているのかいまいち分かっていないながら、負担になるなら控えようと決心。
繋いでいない方の手をぐっと胸の前で結んで、がんばるぞー、と気合を入れる。

「そうですか……? えへへへ、褒められちゃいました。
 そのうち難しい本とかも読まなきゃですね、賢くなってクレスさんのお手伝いとかできたらいいな……
 ええっ、教えるなんてとんでもないですよ! 私だってまだまだ修行中ですから……お料理に関しては一緒に頑張りましょう?」

マスターの好意で簡単な料理はたまに作らせてもらっては居るけれど、まだまだ一人前には程遠い。
だから、クレスさんのアウトドアご飯にもいっぱい学ぶことはあるんですよ、と笑う。
クレスさんの手料理、とっても楽しみです、とつぶやいて。

「口説かれても転んだりしませんから安心してくださいっ。
 わたしはこう見えて何年もクレスさんを想ってたんですから、そのあたりは折り紙付きですよ! ……重いですよね、あはは……」

苦笑しながら、でも絶対に他に行ったりしません、と握った手をしっかりと絡めながらクレスさんをじぃっと見上げ。

「…………それとも、そんな心配なくなるくらいクレスさんのものにしちゃう、とか」

クレス・ローベルク > 「う、うん。俺も出来るだけ頑張るから、エフルも頑張ってね。……くそぅ、可愛いなあ」

最早、一つ一つの仕草が、クレスの精神を甘く蝕む試練である。
勿論、それは悪い事ではないし、寧ろ眼福でしかないのだが、しっかり意識を保っていないと、ぽっきり折れてしまいそうだ。

「はは、期待してるよ。将来の為だし、君が勉強を始めたら、教師役になってあげよう。実家や独学で学んだものだから剣呑なのが多いけど、医療系や魔物知識系は結構教えられるから」

うん、お互いの楽しみが一つ増えたね、と笑い合う。
料理の教えっこはダイラスにエフルを連れて行ってからになるだろうか。
その時には、恋人である事にお互い慣れて、関係も深まっているだろう。

「いや、重くなんかないさ。それぐらい想っていてくれて嬉しい――ん?」

絶対に、とまで断言するエフルに、可愛らしさと頼もしさを覚えても居たが。しかし、次の言葉は、不意打ち気味に、クレスの理性を大きくぶん殴った。

「……」

自分の、ものに。見上げられながら、そんな事を急に言われたその言葉は、恐らく少女が想っている以上に、こちらを強く揺さぶった。
この少女を、自分のものに。
勿論、そういうつもりで言った訳ではないのだろう。しかし……

「……エフル。俺は君のそういう天真爛漫な所が好きだし、お互いの関係については、慎重に進めようと思うんだけど……でも」

と、そこで握っている手とは反対の手で、エフルの顎をくい、と支える。その艷やかな唇を出来るだけ見ないようにしつつ、エフルの眼を見て。

「俺は悪い人だから、あんまり可愛い所を見せすぎると、悪い事、したくなっちゃうんだからね?」