あなたは彼女と既知の間柄である。
王国のあちこちでまことしやかに囁かれる噂話、「知らない旧知の女エフル」その人。 あなたが一人きりで居る時、 気がつくとそこにエフルと名乗る古くからの知り合いの女が居る。 あなたはエフルと共にしばし過ごし、別れ、そして気づくのだ。 あんな知り合いは居なかったはずだ、と。
目撃談は多いが、黒髪に緑の目の女だという以外に共通性はない。 あるものはしなやかな体型の女斥候エフルと遺跡探索をしたと言い、 あるものは豊満な人妻エフルと秘密の不貞を楽しんだという。 またあるものは幼い少女エフルと父娘として一緒に遊んだとも。 そして、そのいずれにおいてもエフルはその役柄に準じた能力、性質を持つ。
どちらにせよ不気味である以外に害のある存在ではなく、 むしろ一緒にいる間は有益ですらあるため敢えて呼び出したがる者も少なくない。
その正体は「認識される」ことで実体を得る精神生命体。いわゆる精霊の亜種。 誰かに「エフル」を観測されることで相手の望む役割で実体化し、 交流することで生じる「絆」を実体に蓄え、捕食する。 そのため観測者はエフルと旧知であったかのように偽の記憶を植え付けられ、 実体が捕食された後は植え付けられた偽の記憶を喪失する。 結果として、知り合いだったはずの知らない女という存在が成り立つのだ。
精神的に強い耐性を持つものであれば、彼女の精神干渉を受けることはない。 また、捕食に伴う記憶の喪失に抗うなど、 何らかの手段で絆を捕食させなければ、実体の存在を世界に固定することができる。 理想の女性として実体化したエフルは、 戦友として家族として玩具として、きっと役に立つことだろう。 また、このように存在を固定化されたエフルたちも、 観測者のもとにごく自然な形で出現するという特殊な能力を保持している。
とはいえ、エフルの実体は別の領域に潜む本体が垂らす疑似餌にすぎない。 誰かがエフル実体を本体から切り離し、手に入れたとしても、 世界の何処かでは今も沢山のエフルが絆を作っては喰らっている。
目撃談
10/31 王都富裕地区 カフェにて ウェイトレスとして目撃される。その後、絆の捕食に失敗。 平民地区のアパートに住み、カフェで働く天真爛漫な少女エフルとして存在が確定する。 11/5 王城 テラスにて 貴族宛てに軽食を配達に来た帰路を目撃される。 ヒトとしての幸せを掴んだ。 目撃者:クレス・ローベルクさん |
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