2019/11/25 のログ
ミューラ > 「なに、いって、んぅっ♡、ぁ、んっ、は…っ♡」

性になれた女なら、その体は無垢そのものであることがわかる。
媚毒によって快感を増幅させられているそこは、どこを圧しても反応が良く。
更に、馴染み、染まっていくように…女の好きな場所を重点的に圧していけば、そこが新たな性感帯となっていく。

「――――、あたり、まえでしょ…っ♡」

相手の言葉に、緩い顔で睨みつけながら。
その声もまた、健気な反抗の声となり、観客を楽しませる。
純潔の証をぐにぐにと刺激されれば、腰が逃げるように動き。

「…あるわけ、ない…っ、さっさと、放しなさい…っ!
ひう…♡、な、なに、みせ、て…、なに、それ…っ、♡、やだ、けがらわ、しいっ!、ちかづけるなあ…っ!!」

自分の身体がいやらしい反応を示しているということに拒絶を示すも。
その体は媚毒が回り、その刺激に媚びるような声をあげてしまう。
そうしてまた映像で自分の痴態を見てしまい、羞恥を煽られる…そんならせんに囚われて。

「だ、から…やめ、♡…っ、う、う…やめ、なさ…っ!!♡♡、んぃ、んっ♡♡
は、は…♡、あう…、は…♡、ひ、ぃんっ…!!♡♡」

最早抵抗などできない。
脚に絡みつかれ、両手首を触手に囚われて。
嬲られるだけの、人形となっていく。

後孔にその触手が入り込めば、天使の腰が…本人は拒絶しているつもりでも、誘う様に揺れてしまい。
口に近づいてきた触手から発せられる匂いに、つい天使の可憐な唇が開き…匂いを取り込もうとしてしまう。
後孔もまた、排泄以外には使われていない無垢そのもの。
細い触手でも、キツい抵抗が返ってくるだろう。

レイン・レジネス > 「……いちいちかわいいなぁ、君」

気丈な言葉と甘ったるい声。快楽に応じる本能、逃げようとする理性。
いつまでも嬲り犯し続けていたくなる極上の獲物を前にして、思わず本心からそう告げてしまう。
告げる声さえ耳を擽る吐息となって少女を苛みながらも、本命はやはり無数に這いだした触手達。
快楽を逃がす為の身じろぎすら禁じた拘束の末に、揺れる腰、開かれた唇。
それを──心はどうあろうとも──需要と見なして、触手は這い進んだ。

ずるぅっ……と、まずは後孔に触れた触手が体内へ侵入する。
今はまだ奥までには至らず、少女の身体がどれほど慣れているかを探るように浅い位置で留まりながら、
肉輪をゆっくりと押し広げては入り込み、いきなり引き抜き。
少女の強ばりの程を読み取りながらも、媚毒の力を借りての拡張を続ける。
女は執拗で、飽きを知らない。無垢な身体なら開くまで待てば良いとばかり、速度の不均等なピストンは繰り返される。
腸壁と肛肉を擦り立てながら、より深くまで、より大きく受け入れさせようという試み。
不浄の快楽で天使を穢す戯れは女を昂ぶらせて、

「大丈夫。……痛い思いはさせないし、壊したりもしない。
 ずっと薬が抜けないままは辛いだろう……? 治療だ、って思えばいいんだよ。
 ほら、口開けて。そう、そのまま……喉の奥まで開いて、飲み込んでいってね……」

顔の前で揺れる触手もまた、開かれた唇の先へと身を捩じ込む。
太さを言うならば、指二つを束ねた程のまだ慎ましいもの。
異形の肉が少女の唇を犯す光景は、娼婦の口淫をも思わせる、ぐちゅぐちゅという水音を伴った。
触手の表面に染み出す粘液が、唇や舌に擦りつけられて奏でる音だ。
甘ったるい粘液もまた、媚毒の一種。身体を狂わせるというよりは、少し心をぼんやりと呆けさせる程度のもの。
快楽を受け入れてもいいのだと、判断を誤らせる程度の、弱く優しい麻痺毒であった。

ミューラ > 「は、は…、なに、を…っ、ふ、ぁ…っ…♡♡」

外側から観察する分には、強固かつ強靭な天使だが。
内側に入り込んでしまえば、その体は透明な水のように、垂らされた色に容易く染まる。

「んぃぃぃぃっ♡♡♡、ゃ、あ…っ、は、ぅ…♡うそ、うそ、よ…
こんな、に…ぞくぞく、し…っ♡♡、ん、きゅっ♡、うごかしゅ、なぁ……っ!!♡
あ、ぅ…、う…は、ふ…ぃ…♡、んっ、あ、ああ…っ♡♡」

非常に強張り、性器としてはとても使えなかった後孔は。
媚毒と、じっくりとしたピストンによって、そのつぼみを開かれていく。
最初は入口でも触手の侵入を強く拒むほどだったが。
徐々に、徐々に解れ、その先端が奥に進みやすくなっていく。

その度に、天使の反応も過敏になり、触手に操られているかのように身体が反ったり、丸まったり、健気に逃げようとしたり。
初めての快楽をどう受け止めたらいいのかもわからず、ただ翻弄されて。

「あ、あ、……♡、くしゅり、ぬく、の…、ぬいたら、ぶっとばひて、やる…ぅ…♡
んっ…ちゅ…、ぅ…、はぷ…♡ちゅ…♡」

まずは、媚毒の効果があってもおずおずと。
けれど、その粘液の匂いを感じれば、自分から。
舌先でちろちろと舐め、遂には水音を響かせながら吸い付き始める。

既に毒に侵された体は、次の毒もすぐに受け入れて。
ぼんやりと、思考が鈍っていく。
高慢な思考も、観客や女をぶっ飛ばす、と言う敵意も、蕩かされていき。
ただ、与えられる快楽が心地いい。そんな状態へと…表情が変わっていく。
きつい表情だった天使が緩んだ、夢見心地の表情に変わっていく様は、熱狂していた観客も生唾を呑むあどけなさだろう。

「んっ♡、んっ♡、ちゅ…♡、きもひ、ぃ、い…♡♡、きもひ、いい、の…ぉ…♡」

口元の触手を舐めしゃぶる合間に、ぽつりと漏らす言葉は。
毒が完全に回り切った証。
後孔は解れ切り…その奥底まで、大きく膨らませた触手でも受け入れられるようになり。
処女であるにもかかわらず、前孔はひくひくと痙攣し、刺激を求めるほどに。

レイン・レジネス > 口に含めば含むだけ、吸い付けば吸い付くだけ、甘ったるい粘液は染み出して舌を楽しませる。
あどけない顔と醜悪な触手の取り合わせ。積極的とさえ見える口奉仕の光景。
観客達も食い入るように見つめていたが、誰よりも目を奪われていたのは陵辱者たる女だった。
口元の触手はそれ以上動かさず、少女が望むように遊ばせながら、
耳を食むほどに口を近づけて言葉を繰り返す。

「かわいいよ、とっても。素直に感じてるその顔、かわいい……。
 声も身体も反応も、全部、凄くかわいい。だから──」

解れ柔らかくなった後孔へ宛がわれる感触が複数。
少女の目さえ、未だに映像を認識する余裕があるならば、後孔へ這い寄る幾本もの触手を見たことだろう。
一つ一つは指より細い触手は寄り集まり、並の雄より余程太い肉の柱となる。

「──もっとかわいい所、見せて。そしたら」

太く、長さに際限の無い──何処までも掘削できる肉柱が、ずにゅうっと少女の後孔へ挿入された。
腸壁をみちみちと押し広げた触手束は、直ぐにも、ごりごりと壁や肉輪を掘削しながらの抽挿を始めた。
尻を突き上げたままの少女へ、上から下へ突き降ろすように入り込んで肉壁越しに子宮を揺らし、
或いは肛肉が裏返る程の勢いで、ぞりゅりゅりゅりゅっ……と粘液を飛び散らす程激しく引き抜かれる。
そうして少し馴染めば、また細い触手が一つ、また一つと合流して。
やがて少女の後孔を穿つのは、少女自身の腕程もある巨大な肉柱と成り行くだろう。

「もっと気持ちいいこと、教えてあげられるから」

そして──処女孔へ宛がう指も、また数を増す。
人差し指と中指と、薬指まで束ねて三本。今度は躊躇無く付け根までを押し込んだ。
指先に感じるだろう抵抗も意に介さず、処女の身体には強すぎる程の圧で、三本の指は内壁を掻き乱す。
魔獣すら狂わす媚薬で鋭敏になった神経を、直接撫で回されるような人外の悦楽。
これまでの前戯で馴染ませた柔肉へいよいよ本物の快楽を教え込もうとするように、その指は容易に子宮口まで届いては少女の身体を突き上げ、
衆人環視の中で行われる同性陵辱という倒錯を以て心身を躾けていく。

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からミューラさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場」からレイン・レジネスさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場 興行試合」にクレス・ローベルクさんが現れました。
クレス・ローベルク > 『アケローン闘技場興行試合、参加者募集中!』

ダイラスのあちらこちらには、いつもそんなチラシが張られている。
何と言っても、闘技場はダイラスの一大娯楽施設である――試合をやればやるだけ儲かるのだから、闘技場側も必死で人を掻き集める。
そんな訳で、今日も今日とて、闘技場は大盛況であった。

「さあて、今日はどんなのが対戦相手かな――」

軽く剣を振ったりストレッチしたりしつつ、試合場の中央で準備運動する男。
毎度のことながら、男には誰が来るのか知らされていない――所謂、"公平性を保つため"である。

『――試合の準備が整いました!それでは、今日の選手に、入場して頂きます、今日の対戦相手は――』

「(おっと、始まるか)」

試合が、始まる。

ご案内:「港湾都市ダイラス アケローン闘技場 興行試合」にゼロさんが現れました。
ゼロ > 知り合いと会いたいと相談した。
 そしたら、任せてほしいと言われた。
 指定された場所、指定された時間に少年は来ることを言われて、その言われたとおりにやってきた。

「――――」

 仮面で顔を隠し、鈍銀の鎧を身に纏った少年は。闘技場に現れたのだ。
 此処が、闘技場なのか、物見遊山の少年はきょろり、きょろり。
 舞台に立つ知り合いに視線を向けるのだ。

「―――ああ、クレス。この間、伝えられたから、訪ねてみた。」

 少年は、気軽に対戦相手の男性に声をかける。
 対戦相手だと、知る由も、ない声音で。

クレス・ローベルク > 『今回の対戦相手は、王国軍所属、ゼロ――!』

わぁぁぁ、と思いもよらぬ、軍からの選手に沸き立つ観客。
そして、思いもよらぬ、という点では男も同じであった。
だが、それは興奮というより、困惑を伴うリアクションで。

「……うん?……うん?????」

まず、二度見。然る後、眼を擦る。
そこまでしても、嘗て二度ほどの邂逅した時と同じ、仮面と銀の鎧を身に纏った少年が居る。
それも、相手はまるで、友人の家にでもやってきたかの様な気軽さで声をかけてきた。

「あ、ああ。そりゃ何よりだ。約束通り色々教えたい、んだけど……。
……一応聞いてみるんだけど、今ここは何処で、俺の職業が何か、解ってる?」

と聞いてみる男。
アナウンサー席から『何やってるんだよ!巻け!巻け!』とサインを送られるが、せめて覚悟を決める時間稼ぎぐらいはさせてほしい。
何せ、恐らくはこれから――男は、この『魔族殺し』と試合しなければならないのだから。

ゼロ > 「―――確か、この闘技場で戦ってる、と言うのは聞いた。
 そして、クレスにわたりを着けられるという人が居たから、会えるかどうかを聞いたんだけれども。」

 周囲の興奮を気にする様子もなく、少年は困ったという様子を前面に出して居る彼に、返答を掛ける。
 そして、もう一度、周囲を見回すのだ。

「―――真逆。」

 そこで、乏しい少年の常識と。
 彼に会うために色々歩き回り、手に入れた情報がつながるのである。
 この場所は闘技場で、舞台であることも認識をした。

「敵として、登録された?」

 少年は、じりじりと理解をして。
 だからこそ、少年は腰に手を回す、メインの武器である短刀に向けて。
 彼の返答対して、そのあとの動きを決めるために。
 その動きに、観客たちの視線は、声は、大きく広がる。

クレス・ローベルク > 心の中は恐慌状態だが、しかしゼロの言葉を聞けば状況は飲み込める。
あの時は『闘技場に関わる仕事をしている』としか言っていない。
そこから得た情報から、『渡りをつけられるという人』に『クレスに会いたい』と言ったのだろう。
で、その人が、ゼロの『会いたい』を――悪気の有無はともかく――曲解して、クレスとゼロとの試合をセッティング、という流れ。

と、そこまで思い至った所で、ゼロが早速こちらに対して戦闘態勢を取り始めた。
そして、それは実際誤解ではない。
経緯はともかく、試合場に立ってしまった以上、戦闘は必然と言えた。
故に、男も剣を構える。正眼に構え、すり足で彼との距離を調整する。

「一応言っとくけど、殺すのは駄目なルールだから。
その辺気を付けて戦ってくれよ……!」

じりじりと、ゼロを中心として円を動くように移動する。
まずは、様子見という所だった。

ゼロ > 「【死合】ではなく、【仕合】だね、了解した。」

 彼の言葉に少年は、仮面の下で頷いて見せる。
 状況は結局、戦うしかない、その中の会話は出来るであろう。
 周囲の観客の歓声で、聞こえなくなるだろうからである。
 構えを取る彼に対して、少年は決めることにした。

 彼の獲物を見て、彼の武器を見て、少年は周囲を見回す。
 武器は短刀を元に戻す。

 大剣と戦うには。短剣は、少年のそれは規格外ではあるが心もとない。
 それをどう感じるのかは、観客と彼であろう。
 だが、少年は―――、仕合を捨てる気はない。
 少年は、無造作に足を進める、様子見などせず、鎧を身に纏ったその仮面は。
 彼に、近づき、間合いを寄せるのだ。

クレス・ローベルク > こちらが様子見に回ったのに対し、あちらは進撃を選択した。
これには、今まで囃し立てていた観客達にも衝撃が走る。
ゼロは短剣、こちらは長剣。
少し考えればわかる事だ――此処は足を使ってクレスを掻きまわし、短剣のリーチに入るのがセオリーの筈だと。

「……しょうがないな。此処はノってみるか!」

真っすぐ突っ込んでくる少年に対し、こちらも真っすぐに剣を突き込む。
狙うは左胸、心臓の位置。
勿論、直撃する直前で刃を止めるつもりだが――それが成れば、ほぼ確実に判定勝ちである。

ゼロ > 彼に向かう少年は、真っすぐに。
 少年の中の最適解である、理由は、直線こそが、一番の最短距離なのだ。
 其処に迎撃などはないと確信しているわけではない、現に彼は、長剣を以て突き込むのだから。
 しかし、敵である彼は、見落としていないだろうか、少年は【全身鎧】の格好をしているという事を。
 確かに、左胸に充てれは、彼の言うとおりに判定勝ちであろう。
 少年は、踏み込み、速度を上げる。

 そして、空いた左腕は彼の剣の内側から外側へ殴りこむ。
 長剣の腹が少年のガントレットを鉄の擦過音を響かせながら滑っていく。
 内側から外側へ、彼の剣をずらしつつ、右側へと身を滑らせる。
 彼の剣の内側へ入り込むのである。

 ―――少年は元々のスタイルは、泥臭い殺し合い。
 戦場で武器がなく敵と組み合う事などいつもの事なのである。
 だからこそ、踏み込みながら彼の顔面に向かって、剣を滑らせて逸らしていた左手のジャブを。

クレス・ローベルク > 勿論、金属鎧を着ているのだから、普通攻撃は通らない。
だが、何も『通す』必要はないのである。
心臓や頭部への攻撃は、それが成立した時点で、こちらにポイントが入る。
理不尽なルールだが、しかしこのルールがある事で、金属鎧をぶち抜く様な攻撃を、人に使う必要性がなくなるのも事実。

「(まぁ、だからこそ金属鎧を着てる人があんま居なくて、頭からすっぽ抜けてたんだけど……!)」

そんな、ある意味では解らん殺しの様な攻撃に対し、ゼロの対処は見事だった。
剣をいなしつつ、長剣の有効射程より、更に内側に入り込む。
突き込んでいる男の体勢では、それを止める事は出来ない。

「ぐっ……!」

明らかに、こちらに打撃を行う構えだ。
狙いはほぼ二択。腹か頭。
どちらもダメージとしては相当だが、食らったときに不味いのは、

「頭……!」

剣から左手を離し、顔面への防御に回す。
幸い、攻撃がジャブだったのが幸いした。
喰らえば相当のダメージだっただろうが、しかし速度を優先する打撃であるために、受ければ体勢を崩すことは無い――

「それでも十分痛いんだけどな畜生!」

先程突き込む為に使用した右手から、剣が落ちると同時。
その右腕が、ゼロの首に巻き付けられる。
締め落とするのが目的ではない。
腰を回すと同時に足を引っかけ、地面に転げ落とす首投げの態勢だ。

「だらっしゃあ!」

下手をすると顔面から落ちて、首の骨とか折りかねない荒業だが。
これぐらいなら、受け身を取れるだろうという、ゼロへの信頼のこもった投げである。

ゼロ > 「――軽い。」

 少年は、侮りはしない、相手の手段を知らぬ、そもそも、侮りと言うものを、幼少期から入力されたこともない。
 故に、仕合とは言っても、意図的に殺さないというだけで、死ぬ事はすでに織り込んでいる。
 そして、その攻撃一つ一つは―――必殺の意図を持って居るのだ。
 彼が回避する、彼がいなす、それらを、信じているからである。

 そして見事に彼は、自分への頭部への攻撃を避けたのである。

「―――っ!」

 さらに、彼の判断は適格と言って良い首投げで。
 的確なガードからの攻撃は少年の首を確りと捉える。
 頭から落ちていく感覚に対して少年は。

  ―――ずがん。

 と言う音、握っていた右こぶしを地面に叩き付けて片手で彼と自分の体重を支えるのだ。
 その場には、男の事を上に載せたまま、右腕一本で動きを止める少年が見えるであろう。

「――――しっ。」

 息を吐き出して、仕切り直しだ、とばかりに少年は、左手で彼の腕をつかんで、地面に叩き付けるように大降りに振り、地面に背中から落とす。

クレス・ローベルク > 「うげえ!?」

てっきり、受け身を取るのだと思っていた男は、その出鱈目っぷりに愕然とする。
地面への投げ技に対し、腕を突っ張る事で衝撃を殺すのは基本技ではある。
だが、此処までの膂力で行われるとは思っていなかった。
そして、

「えっ」

さっき投げた手を、今度はさかしまに掴まれた。
瞬間、身体が宙に浮く。
否、浮いたのではない、持ち上げられたのですらない。
振り上げられた、のだ。

「嘘だろぉ!?」

力づくで、男の全体重が持ち上げられ、振り下ろされる。
だが、驚愕とは別に、身体は即座の判断を行う。
首を丸める様に起こし、力を抜いて、力に身を任せる。
そして、衝撃前のほんの刹那に、中空を蹴って、反発力を起こし――

「――っ!」

肺の中の息が、全てたたき出される様な衝撃。
全身を抑え込むような痛み。
だが、それに関わってる場合ではない。
腕を掴まれたままでは、二撃目が来る事は明白である。

「意外と役立つ後転の技術っ……!」

掴んだ腕ごと巻き込む様にして、身体を後ろに送る様に回転させる。
ゼロがあくまで掴み続けるなら、こちらの回転に腕が巻き込まれバランスを崩すだろうし、そうしなければ距離を取れる。
どちらにせよ、今の危険からは逃れられるはずで。

ゼロ > 少年は、手をすぐ様に離していた。
 彼の行動の意図を理解していない、離れるのを離すのは危険ではあるが―――しかし、だ。
 其れに拘っていても仕方がないのもまた事実なのである。
 殺し合いではなく仕合なのであれば、別の攻撃方法を模索する必要がある。
 それに。


  彼の戦闘方法などを、把握するいい機会ではないか。


 少年は、驚き、後退を選んだ彼に対し、右腕のばねだけで飛び、その場で立ち直ることにする。
 最初と同じように少しばかり離れた場所に立ち上がる彼。
 そして、少年は足元にある剣を拾い上げる、彼の愛用の長剣―――なのだろうか。

 それを眺めた後、しばらくの思考。
 ふむ、と考えた後の少年の行動は、剣を放り投げることにする。
 放物線を描き軽く飛んだそれは、彼の足元へと転がろう。

   次の瞬間、会場は沸くだろう。

 なぜなら、少年は今、挑戦者の立場のはずである。
 全身鎧を身に纏う姿は、其れこそ熟練者に翻弄されて斃されるはずの新人のようである。
 それが。

  右手を上げて、掌を差し出し、指をそろえて自分の方へと曲げる。


  かかって来いよ、と言う挑発をするんだから。

クレス・ローベルク > 湧き上がる観衆、熱を帯びる実況。
何時もなら歓迎すべき事態だが、今日に限っては事情が違う。
何せ、これで男の退路は、概ね封じられたからだ。

「ったく、剣闘士も裸足で逃げ出す観客の掴みだぜ、こりゃ」

正直、勝利に至る手段は幾つか思いついている。
だが、一つは使えない。それは彼を殺す為のものだ。
もう一つは、試合を捨てるも同義である。
そして、一番最後は、

「クッソ地味なんだよなあ……」

投げられた剣を拾う。
だが、男はその柄を握らない。
握るのは、刃の方だ。
そして、少年の方に向けるのは、柄の方。

「かかってこいって言うなら、かかってきてやるよ――」

そして、それを以て駆け出す。
剣の柄はハンマーの代わり。
金属鎧に対しては、斬撃よりも打撃の方が、寧ろ有効であるが故に。
こんな事もあろうかと、柄も金属製にしておいてよかったという所だ。何故なら、こういう時に、

「――但し、俺らのやり方で」

囮として、最適な働きをしてくれるのだから。
男が行ったのは、単純な仕掛けだ。
振り上げてから、振り下ろすそのモーションの間に、剣を自ら手放した。
当然、剣は宙に浮く。それも、柄を上にして。
そして、男は、右足で、その刃先を救い上げる様にして、その剣を蹴り上げる。蹴り上げた剣の柄は、足に押されてゼロの喉を突き上げんとする。
まともに直撃すれば呼吸は乱れ、隙を晒す。
ただ唯一この技に欠点があるとすれば、

「決まるとすっごい痛いんだよなあ……俺が!」

柄が喉に突き刺さるという事は、反対側の刃先が男の足に食い込むという事でもあり。
下手すれば貫通するが、それは堪えるしかないのだった。