2015/11/08 のログ
エレイ > 「……どう見ても何でもないようには見えないんですがねぇ。どちかというと超怪しいというか…」

息を荒げる様子に眉顰め、ますます疑惑を深める。
むぅん、と顎に手を当て唸ってから、引かれた距離を一歩踏み込んで削ぐと、

「すまにい、ちょいと失礼。……むむ」

断りを入れてからぐ、と肩を掴んだ。
肩を掴む手から、身体に緩やかに、今も漂っている光から感じるのと同じような暖かさが流れこむのを彼女も感じるかもしれない。
そうしながら、改めて彼女の全身を眺め回せば。

「……おいィ? それは一体なんなんですかねぇ?」

そして男が眉寄せて指差したのは彼女の下腹部、淫紋のあるあたり。
男にはソレが視えているようだった。

マユズミ > 流石に様子がおかしい、と思ったのか肩を掴まれる。

「んっ……ちょ、っと……断り入れたらいいってワケ、じゃぁ」

軽く身もだえる。
どうにかまだ抑えているものの男性に触れられると言う行為自体が彼女には未だ印を疼かせる原因で。
身体を何かが通って行く感覚と。

「……放っておいて」

恐らく、透視か何かなのだろう。
見られたことに紅潮しながら、そう答えた。

エレイ > 「…どうやらそのみょんな紋様がなんか悪さをしているのは確定的に明らかだろうな」

彼女の身体に少しだけ流し込んだ自分の『オーラ』。それが彼女の淫紋の形を男の視界にのみ光という形で浮かび上がらせている。
ついでに彼女の服の下のスタイルも輪郭程度だけ見えていたりするが、そこはそれである。

「……放っておけないとさっき言ったでしょう? 位置的に…触られるとそこが疼いてきちゃうといったところかな」

紅潮した横顔と、彼女の下腹部を交互に眺めながら淫紋の効果について独り言のように推理し。

「マユちゃんの趣味、というわけではまずないのだろうな……お前こんなのいつまでも付けておいていいわけ?」

肩は未だに掴んだまま。改めて彼女の顔を覗き込むと、まっすぐ目を見つめながら問いかけて。

マユズミ > 肩を掴まれてまたずくん、と疼き。

「……そんなの……」

いいのか、わるいのか―――。
わかっているがわかっていない。

「……今、会っただけの貴方に言われる、筋合いは……ない、です」

触られたままの肩から熱が全身へと廻って行く。
それは一種の毒のようなもので。

「……触られなければ、大丈夫、だ、し、少し気を張っていればおさまる、から」

とん、とどうにかエレイの胸を押す。
とにかく離れてくれ、という意思表示で。

エレイ > 「……お前頭悪ぃな。普通そんなもん付けられたら迷惑顔にしかならないはずなのだがそうやって曖昧にして誤魔化している時点でなんか迷い的なものがあるのが明白に明瞭だった」

軽く胸を押され、掴まれた手を離しながらも彼女の態度からその心中にある何かしらの迷いを見い出しむぅ、と眉を寄せ。

「……じゃあマユちゃん。もし俺様がそいつを取り除ける、と言ったらどうするかね?」

また少し思案した後、そんな事を言い出した。
淫紋からの解放。それを提示された彼女は、どんな反応をするのか。
じっと見つめながら、彼女の答えを待ってみる。

マユズミ > 「解呪できる……」

その言葉に少しだけ反応を示す。
無くなる事はいい事のはずだ。
はず、なのだ。

「……」

何故迷うのか。
そういう己と。
何故取り除くのか。
という己。
その意志はどちらもはっきりと自分で。
息を整える。
真っ直ぐにエレイを見る。

「……すみ、ません」

謝る。
これは彼女にとっての。

「……落ち着いて、きた、ので大丈夫だよ」

努めて平常を装って。
バレバレだとしても。
それを解呪しない理由が無いのに執着する理由なんて一つしかないのだから。

エレイ > 「……」

彼女の口から漏れたのは謝罪の言葉。
淫紋が齎す快楽を、彼女はおそらくは捨てきれないのかもしれない。
あるいは、それとは関係なしに本質的に快楽を求める彼女自身に対する理由付けが欲しいのか──
ともかく、彼女はそれを捨てる気は今のところ無いらしい。
真剣な表情で、そんな彼女の様子を見つめていたものの、やがてフンス、と鼻を鳴らし肩からも力を抜いた。

「……おもえがそう言うなら俺はこれ以上それについて余計なことはしないだろうなマユちゃん自身の意志は尊重されるべきだし」

そう言ってやれやれ、とまた肩をすくめ。それからニヒ、と変な笑みを浮かべると。

「……だがマユちゃんがそーゆーエロい娘だってんなら俺様としては手を出さざるを得ないんだが?」

そう言って、おもむろにぐいっと肩に手を回して抱き寄せる。
落ち着いてきたはずの熱を、またぶり返させるように緩々と二の腕を撫で回し。
ついでに淫紋のある当たりも、もう片方の手で軽く撫でてみたりして。

マユズミ > 表情を崩すエレイを見て。
わかって貰えたようだと少しだけふう、と声を出す。

が。
理解されたと言う事は。
―――そう言う事であり。

「ぁ……」

ぐい、と不意に抱き寄せられずくん、とまた鼓動が弾ける。
二の腕を撫でまわされれば、またじわり、じわりと身体が浸食されて行き。

「そこっ……だ、め」

直接に近く淫紋に触られれば。
びくん、と露骨なほどの反応を出した。
思わず、エレイの腕にしがみ付く程に。

エレイ > 「個人的にはエロい事は何かに強制されずに素直に楽しんでもらいたいのだが…ま、個人個人の性格とか色々要因あるしね。難しい話だべ」

眉下げて軽くため息混じりにそんな事を呟きながらも、彼女の身体を緩く愛撫する手の動きは止めず。
淫紋を撫でれば過敏な反応を示す様子に目を細め、ダメ、という言葉に逆らい手指を押し付けさすさすと撫でまわす。
異性の手の感触をしっかりと意識させようとするかのように。
二の腕を撫でていた手は、するりと這い上がって肩から首筋、そして彼女の顎を捉えてくい、と顔を上げさせると、こちらからも顔を寄せてちゅ、と軽く唇を吸い。

「……倉庫番してるんだったら、ふつうは詰所的なところがあったりするものだが……あるなら何処か教えてくれるかね? マユちゃん」

それから、耳元で吐息を吹きかけつつそんな問いかけを。
そこに彼女を連れ込もう、という意図なのは特に説明する必要もなく彼女にも伝わるだろう。

マユズミ > 「やめ、……んんっ」

緩い愛撫ですら、既に敏感にいちいちと反応を返す。
直接触られればしがみ付く腕に更に力が入るだろう。
撫でられていく感覚はぞくぞくと彼女を更に震わせる。

「んっ……ふ……」

唇を軽く吸われ、潤んだ瞳でエレイを見上げる。
詰所の場所を聞かれる。
そこではっと我に少しだけ返る。

「あっぅ……でも、倉庫番、が……」

そこまで言って既に身体は疼きが止まらない。
そして此処でこの行為が終わったとして、それはもう仕事にならない。
彼女は既に八方ふさがりであり。

「……あ、っち、です」

言いかけた言葉を飲み込み、つい、と少し先をゆるゆると指差す。

少し歩けば小さな小屋が見えるだろう。
今は当然誰も居ないので灯りは付いていないが。

エレイ > 「一人だけの倉庫番に未来はにい。これからなんか起こる様子もなさそーだし、雇い主も意外とうっかり忘れてたりとかしそうだしきっと大丈夫でしょう」

彼女の言いかけた言葉には、非常に雑で楽観的な答えを返しつつ。
詰所の方向を教えてもらうと満足気に笑い、頬にも軽くキスを落とす。

「ン、サンキューだぜ。じゃ、行こーか」

そう言って、彼女の隣に立って寄り添うように腰を抱きながら、詰所へとゆっくり歩き出す。
その間も、淫紋を服越しに刺激し続け彼女の快楽をじわじわと煽り。
スカートの後ろ側をするすると捲り上げ、お尻を撫で回したりもして。

その後の事は、詰所の壁の向こうで展開されてゆく──

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からエレイさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からマユズミさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にダンテさんが現れました。
ダンテ > 昼の船着き場。
多くの船、そして人や物が行き交い賑わうその場所の片隅、とある倉庫の前の木製コンテナに腰掛けて、少年が一人で頭を抱えていた。

「あ゛ぁー……、やっちまったァ……俺の、アホォ。」

何ともなっさけない声を挙げて、頭を掻く。
膝の上には、地図。
この少年、今日の朝には王都に向かう予定であったのだ。
海路で。
しかし今は、無一文なのである。
無一文では、定期船になど乗れない。そんな当たり前の事を、すっかり失念していたのだった。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」にベルさんが現れました。
ベル > 「はあ、満足満足」

朝からあちらこちらを食べ歩きをし満足そうな笑みが浮かびます。
ちょっと腹ごなしに、海の見えるところまでやってきました。
船着場もまた美味しいものが集まります。
長旅の疲れを癒やす食事、旅立つものの腹ごしらえ、それぞれを満たさなければいけませんから。

「ほえ?」

ふとコンテナの方を見れば、どこかに見覚えのある顔。
あの顔は見間違うはずがありません!

「おーい、ダンテちゃーん! おーい」

手を降ってブンブンとアピールしてみます。

ダンテ > 「あー……、どーすっかなぁ。どっかで無理にでも、換金するか……?質に入れて船賃になるようなもんはないしなぁ。」

じゃら、と腰に下げていた巾着を持ち上げる。
中身は、道中倒した魔物の牙や爪。いわゆる、素材だ。
王都の冒険者の店やギルドで換金しようと思っていたのだが。何せ、この街では少年にはアテがない。
もう一度ため息をつこうとしたところで、誰かが己の名前を呼んだ。

「―――え?」

己の名前を、ちゃん付けで呼ぶ者など、限られている。
義母か、或いは……、

「べ、ベル姉さん……。」

顔を上げて、少しだけ表情が引き攣る。
そこには、物心などつくはるか前から世話になった義母の友人の姿があった。
彼女は良い人なのだが、いかんせん家出中である。とは言え、逃げ出す事もできず、結局己も、そのまま軽く片腕を振り返す事になってしまった。

ベル > 「あーやっぱりダンテちゃんだぁ」

思わずニコッとしてしまいます。
アスモデウスの義理の息子、私も大好きなダンテちゃんです。

「久しぶり、一人? お義母さんのお使い?」

周りに人もいません、おもいっきり地面を蹴ってジャンプ!
ダンテちゃんの近くまでやってきちゃいます。

「少し見ないうちに、またかっこ良くなったね、元気にしてた? ちゃんとご飯食べてる?」

可愛くて、最近はかっこよくなってきました。
あと数年すればますますかっこよくなりそうなのです。

アエーシュマの趣味というか、先見の眼はすごいのですよ。

ダンテ > 家出そうそう、義母の友人、それ自分にとってはもう一人の義母のような人に見つけられてしまった。
そういう星の下なのかなぁ、と苦笑いしながら頬を掻いていると、彼女が何ともダイナミックに目の前へやってきた。
彼女は気にしてないと思うが、豊かなおっぱいがすっごい揺れた。

「……うん、久しぶり姉さん。今日は一人なんだ。」

とりあえず、家出の事は伏せる。
ダイナミックこんにちは、はもう慣れたものなのか、さほど気にせず。
遠くの方でその様を見ていたらしい幼女が『ねぇねぇあのお姉ちゃん今ぴょーん!ってしたよ!』と母に言って『はいはいそうねー』と適当にあしらわれていた。

「あはは、ありがとう。まぁ、元気だよ。義母さんもね。ご飯は……うん、昨日食べた。」

少し照れくさそうに頬を掻く。どうにも、褒められ慣れない。
否、義母にしても姉にしても、よく甘やかして褒めてくれるのだが、褒め殺しというか何というか、妙にむずがゆい気持ちになってしまうのだ。
食事については、何せ家庭環境が家庭環境なもので、合間合間にしか食べない事も多い。先夜にふるまわれたスープよりも前の献立の記憶は朧であった。

「姉さんは、―――食べ歩きだよね。」

問うまでもなかった。

ベル > 「そっかぁ、一人かぁ」
思わずニコニコ、そのままぎゅってハグしちゃいます。
懐かしいな、頭もナデナデしちゃいましょう。

「そっか、アスモd……アエーシュマにも会ってないねえ」

そういいながらギュッとしちゃいます。
体温もあったかくてキモチイイ、こうしていると小さい頃も思い出すね。

「今朝は何も食べてないの? 大丈夫おなかすかない?」

そう言って心配になっちゃってほっぺにもさわっちゃいます。
小さい頃はふにふにだったのに、今じゃひきしまって。

「うん、ここは美味しいもの多いからね、朝からシュークリームでしょ、あとホットドックに……」

それからそれから、食べたものをあげていきます。
どれも美味しかった、あ、ダンテちゃんも一緒に食べるかな?

ダンテ > 「んぎゅ……。まぁ、義母さんは相変わらずふらふらしてるから。」

それは目の前の姉も同じかもだけれども。
ハグされると、半ば無意識に相手の腰を抱くように腕を伸ばしてしまう。
『教育』の賜物である。
頭を撫でられるのは心地良く、何だかくすぐったい気がした。
彼女のふっくらとした温かい身体は、幼いころからの擦り込みもあってかとても気分を落ち着かせる。

「あはは、いや、今無一文でさ。だから、な。ん、まぁ飯はほら、うちじゃ抜く事が多かったし。」

心配してくれるのは凄く嬉しい。ちょっと照れくさいが。
空いた手で頭を掻きつつ応じるも、彼女が触った頬っぺた、その左側には彼女の知らない傷がある。

「港町だもんなぁ。……うん、相変わらずなんだな。いや、まぁ驚かないけど。」

彼女が平らげたものを列挙し始めると、少し苦笑しながら頷く。
とは言え、驚くには値しない。義母にとっての「色欲」が彼女にとっての「暴食」なのだから。その凄まじさは身をもって知っている。

ベル > 「この前はルッティに会ったから、近々会えるかもね。会わない時は会わないけど、会う時は続けて合うし」

こうやって抱っこするのは久しぶり、可愛い。
でもこの傷はなんだろう、大丈夫かな、心配だなぁ

「うーん、じゃあお姉さんダンテちゃんにお小遣いあげようかな。そんなにたくさんじゃないけど」

ご飯を食べていない、アスモデウスにはちゃんと言ってるんだけど抜いてるのは相変わらずなんだ。
とりあえず『私のお昼1食分』のお金の入った袋を出してダンテちゃんに渡しちゃいます。

「ごはん、一食食べたらなくなっちゃう分だけど足りるかな?」

ダンテ > 「るってぃ?……まぁ、うん。義母さんも前、そういえば最近会ってないなぁ、とか言ってた気がするから、近いうちに会えるんじゃないかな。」

彼女たちは気分屋だ。気分屋故、自分の気が向いた事は完遂するようなところがある。
彼女の食べ歩きしかり、義母の「食べ」歩きしかり。
何となく彼女が喜んでいる気がするので、ぎゅむ、ともう少し強く抱き寄せる。
彼女が傷を気にしている様子であるのに気付くも、そこには自分からは触れず。

「へ?い、いや姉さん、俺そんなつもりで言ったんじゃ……って、いやいやいやいやいや!多い!多いから!ベル姉さんの一食分、って事だよねそれ!?多いよ!?」

お小遣い、という言葉には慌ててしまう。
義母からもらった霊装など持って来ておいて何を今更感はあるものの、さすがに家出直後に姉さんから小遣いは格好悪すぎる。
差し出された袋の中身を確かめると、更にそれは加速。基本的に義母も含めて、魔王なんてのは金銭感覚狂っている。まぁそりゃ、「王」なのだから当然かも知れないが。

「な、何にしても、無償でこんなの貰えないから……。」

勢いで一度は手にした袋だが、すぐに相手へと突き返して。

ベル > 「ああ、またみんなで会合でもしたいな、ハンティングしたり、バーベキューしたり」
魔王は結構孤独だったりするんです、だから同等の力を持つもの同士というのは私は安心しちゃうんです。
自分は一人じゃないんだって。

アスモデウスが子供を拾ったというのを聞いた時はびっくりしました、ちゃんと育てられるか心配でよく手助けはしたけど、こんなに大きくなっちゃったんだね。
胸にぎゅっと抱きしめちゃいます。

「えーでも、朝からは食べてないんでしょ? もちろん、あっという間になくなっちゃうくらいだから少ないよ」

遠慮無くもらってくれればいいのにと思うんだけど、なんでいつもお小遣いに驚くんだろう。

「ダメ?」

ちょっと拒否されたようでしょぼんとしちゃいます。

「じゃあ、デートしましょう! かっこいい男の子とデートして、お小遣いをあげちゃうんです、人間の上流階級の人は、そういう事をするって聞いたことあります!」

そう、お仕事をすれば良いのです。

ダンテ > 「世界一物騒な会合の一つだよなぁ。」

高々十数年の人生であるけれども、魔王の「凄まじさ」は誰より知っているつもりである。そんなもんが一堂に会するとかゾッとしない。

ばっちり、義母好みに育て上げられた訳だが。だが、義母そのものにならなかったのは、今自分を抱き締めている彼女をはじめとした外的要素が大きいのだろう。
おっぱいの感触がすごく幸せで、やはり安心する。
だけど、ちょっと苦しいので、ぽんぽんぽんぽん、と彼女の腰を軽く叩く。ぎぶ。ぎぶぎぶぎぶ。しまってるしまってる。

「ね、姉さん。確かに俺もよく食べるけど、姉さん程じゃないから。」

暴食に食事の世話などされたのだから、当然それはそうだ。だがそれも、暴食本人には遠く及ばない。

「だ、ダメって言うか……、って、は?で、でーとぉ?い、いや、でも……う、うーん……。」

彼女がしょげてしまうと、それはそれで慌ててしまう。
決して彼女の事が嫌いな訳ではないのだ。というか、むしろ好きなのだ。ずっと世話になった姉なのだから、それは当然である。
続いて出てきた提案は、正直無償で貰うのと大差ない気がしてしまって。ただ、金がないのは事実であるし、昨夜は男娼の真似事、などというのもさらっと脳内選択肢に上がったのだから、強く忌避する程の事でもない気がする。
ううん、と少し考え込むように首を捻った。

「……わかった。それじゃあ、姉さんとデートするよ。けど、報酬はその10分の1。この条件ならいいよ。」

顎に片手を当てながら、そう提案した。

ベル > 「そう? アットホームで楽しいよ」
前の会合を思い出す、まあ、ハンティングの対象やバーベキューの規模を考えると、人間さんからすれば惨事かな。

ああ、ごめんごめん、ちょっと強く抱っこしすぎたかな。

「そっかぁ、でもダンテちゃんくらいの歳になると食べる量も増えるって聞いたから」

さすがにコレほど食べないんでしょうかねえ。

「うん、デート! ダンテちゃんかっこ良くなったから、お姉さんデートしたいなぁ」

かっこいい男の子と一緒に過ごすデート、そういえばそんな事したことなかったかなぁ

「うん、よろしくぅ~、じゃあデートにいこっか? 必要経費はお姉さんが持つからね」

さて、デートするにしても何をすればいいんでしょう。

「ねえダンテちゃん、お姉さん初デートなの、デートのプランダンテちゃんに丸投げしていい?」

ゆっくりと腕を開放し、ダンテちゃんを解放するのです。
そのかわり、手をぎゅっと握っちゃいます。

ダンテ > 「多分、俺の知ってるアットホームとは違う気がする。」

まぁ、アットホームな家庭環境などそもそも未経験だが。
基本、色欲と暴力にまみれた家庭であった。
ともあれ、彼女のおっぱいから解放されると、ぷは、と軽く息をついた。

「まぁ、最近は前よりよく食うけど……。」

自分の腹を摩る。実際、食べ盛りではある。
当然、彼女ほどは食べないが。

「で、デート、デートかぁ。」

ともあれ、その方向で話が纏まった。
地図は畳んでポケットに仕舞って、立ち上がる。
傍らに立てかけておいたショートソードを肩に担ぐと、完全にいつもの出で立ちだ。

「え、えーっと……わ、わかった。」

プラン丸投げ。
ひとまず頷いたのはいいんだけれども。
いいんだけれども、この少年とてデートなど初めてである。ある意味では、山奥で仙人に修行だけさせられて育てられたような世間知らずでもあるのだ。
まぁ、修行内容がかなりピンクだけれども。
当然、デートの作法もテンプレートも知らない。かろうじて、語彙としてのデートは分かる程度だ。
まぁ待て。
とりあえず基本は、相手が悦ぶ事をする、というのがデートの筈だ。
己の腕を開放し、かわりに手を握って来る彼女。
やはり無意識にその手を握り返して、思案。
彼女の好きな事と言えば、やはり食事、食べ歩き。
しかし、それってきっと彼女一人で事足りる筈なのだ。

「と、とにかく歩こうか?」

この場で立ち止まって考えていてもしようがない、と、いったん歩き出す事にした。
歩きながら考える作戦。それまでは、旅客向けの屋台なんかの方へ行って時間稼ぎ。

ベル > 「そう? 昔皆でやった狩りみたいなものだけどね」

そう言ってダンテちゃん達を連れて昔行った山狩りを思い出しちゃいます。
うちの領地は平地はほのぼの地帯だけど、山岳部は弱肉強食の世界、いや、美味の食物連鎖の入り交じる世界。
あの時の熊とか飛竜、おいしかったねえ

「うん、身長もこれから伸びる時期だしね、あんなちっちゃかったダンテちゃんが今じゃ私より大きいもんね」

心なしか繋いでるても、逞しくなったかな?
ちっちゃかったあの手も、すっかり男の人の手だぁ

あ、ちょっとドキドキする。

「うん、おねがいしますね」

ダンテちゃんプロデュースのデート
たぶん私より、こういうのは得意だろうなあ。

「うん」

あ、やっぱりダンテちゃん、かっこ良くなったねえ、
横顔もたくましいのとかわいいのが混ざってる。

なんかほっぺが熱い。

ダンテ > 「―――……ああ。」

思い出される。
基本的に、姉さんはいい人だ。色々とロクでもない義母とは違う。
いや、義母も基本はいい人なのだろうが、姉さんとは司る属性が違い過ぎる。
ただ、姉さんに連れられて赴いた狩りは、壮絶だった。狩る対象が尋常でない。熊くらいならまだしも、飛竜と来たものだ。
彼女も魔王なのだと、痛感したのである。
そうした体験もまた、少年の肥やしになってはいるのだけれど。
どこか遠い目で当時を思い出す。

「ああ、ここ1年くらいで凄い伸びたよ。義母さんは何か、喜んだり惜しがったりしてたけど。」

目線だけで上を見ながら、自分の身長について答える。
実際、ここ1年の伸び方は凄かった。完全に成長期というやつに入ったのだろう。
ともあれ、彼女からのよくわからない信頼を一身に受けながら始まったデート。

「えーっと……、あ、姉さん。あれ、まだ食べてないだろ?」

ひっそり額や背中に汗をかきながら、必死に考える。
時間稼ぎその2として、彼女に屋台の一つを示した。
先ほど彼女が挙げた、今朝から食べたものに入っていなかったものである。
ちょうど今から店を始めるようなので、間違いはないだろう。
ものとしては、今戻って来たばかりの漁船から上がった海産物の網焼きのようである。エビだの貝だの魚さの、酒類は豊富そうだ。

ベル > 「それを魔王規模でやるだけだから、平和平和」

ああ、ダンテちゃんの手、なんかいいな。
きゅっきゅって握っちゃいます。

「まあ、可愛いダンテちゃんが変わっちゃうからね」

でも

「でも、私はカッコいいダンテちゃんも好きだな」
そう言って少しだけ見上げる、どちらかというと私はこっちが好みかな。

「え? ああ、アレはまだだねえ、新鮮な魚の網焼き美味しそう」

さて、ダンテちゃんと一緒に屋台に向かいます。

「すみませーん、とりあえずいま用意できるの一通りいただけませんか?」

そう言って、金貨の入った袋を出します。
そうするとなぜか、いつも貸し切りになっちゃうんですよね。

ダンテ > 「平和って言葉の意味が、俺の知らない間に変わったのかな、って思う。」

少し苦笑いを浮かべながら答えた。色欲に育てられたのに、こういうところを突き抜けられなかったのはある意味で不幸である。
彼女が何だか嬉しそうに手を握ってくる彼女の手を、自分も握り返す。
無意識に指先が、彼女の気持ち良い場所を押してしまうのは、もう手癖のようなものである。

「あの人、結局変身術とかで変身させたりするから、あんまり変わらない気がするんだけどな。」

本人も、不定形に近いようなものだ。
少年も、当然のように変身術を習得している。彼女のように、真の姿を忘れてしまうような事はないが。

「ん……。ありがとう姉さん。俺も、可愛くて綺麗なベル姉さんの事が好きだよ?」

少し照れくさい。剣を肩に担いだ手の人差し指で鼻の頭を掻きながら、目線をやや外しつつそんな言葉を返す。
すれ違った船乗りが、けっ、と砂でも吐きそうな貌をして吐き捨てて行った。
まぁ、当人らにそんなつもりなくても、そりゃそうだわな、という会話である。

「だろ?ひとまずあれを食べて、……って、うわーい!?やっぱりそうなるー!?」

彼女と共に屋台に到着。
これで時間が稼げる、と安堵もつかの間。
テンパっていたせいで、それがどういう事態を招くかを失念してしまった。
金貨袋を前に、眼を白黒させる屋台の店主。
少年も、もう笑っていいのやら泣いていいのやらさっぱりわからない貌をして。
超、目立つ。
まぁ、彼女はちょいちょい食べ歩きしているようなので、慣れた店もあるのかも知れないけれど。

「間違いなく全部食べるんで、すいません。お願いします。」

苦笑しながら、少年は屋台の主にフォローを入れた。
そこで無意識に、ぽん、と姉さんの頭に片手を置く。
或いは手をつないだ時よりも、その大きさはよくわかるかも知れない。

ベル > 「そうかな? ニュアンスの違い?」

平和に関しては違うかもしれないけど、意味って人によって変わるもんね。

「うーん、でも今は変身じゃなくて素でしょ?」

なんか、その、好きと言われるとほっぺが熱くなっちゃいます。
何か変な感じなんですよね。

「はえ?」

ダンテちゃんのツッコミのような声、何か変なことでもしたでしょうか?

「はい、ダンテちゃんも一緒に食べましょう」

頭の上に置かれた手、なんだかさっきよりも大きく感じる。
本当に大きくなっちゃったんだ。

そう思うと心の中がきゅううっとなっちゃいます。

嬉しいというか、色んな感情があふれるような。

お腹じゃなく、胸に感じる満腹感に近いです。


きゅるるるる


美味しそうな匂いがしてきてお腹の音がなっちゃいます。
なんか、何度もダンテちゃんには聞かれているはずなのに、
なんだか今日はすごく恥ずかしい。

そうこうしているうちに料理が並んでいきます、サザエに牡蠣、鮑に、鮭、鱸等美味しそうな匂いの料理が次々に運ばれてきます。

ダンテ > 「視点の違いじゃないかな。」

苦笑したまま肩を竦めて見せた。

「ん、まぁな。俺は、エロい事する時以外は変身しないんだよ。」

理由は色々あるが、とにかくそういう事にしている。

「―――いいよ。姉さんは気にしなくて。うん、ありがとう。」

よくわかっていない様子の姉さんには、なでなでとその頭を撫でながら首を左右に振って見せて。
一緒に、との言葉には頷いて礼を述べた。
二人の呼び方から、姉弟かと周囲の者は考えたようだが、それでも正直あまりに似ていない姉弟である為、首を傾げる者も少なからずいた。
当然のように目立って、注目の的であるから、やむを得ないけれど。
と、そこで姉さんのお腹の音が聞こえた。

「あはは、姉さん、腹ペコだな。さ、止めやしないからさ、食べよう。」

運ばれてくる料理に一瞥をやってから、剣を傍らに立てかけて両掌をあわせる。

「いただきます!」

食前の挨拶。彼女そろってそれが済めば、運ばれてきた料理を食べ始める事になる。

ベル > 「まあ、世の中一方の視点だけだと判らない事もおおいもんね」

そういう事も考えるようになったんだ、ダンテちゃんやっぱり大人になってきたんだね。

「え……えろ」

あ、ダメ、色々思い出しちゃいます、顔真っ赤になっちゃって

「はい、ではいただきます」

と、とりあえず今はごはんです、命をいただくことには感謝しなさい。
そう言っていたこともあって、ダンテちゃんはちゃんといただきますが言える、えらいえらい。

「うん、美味しい」

今回はひとりごはんじゃないので、ゆっくりと一緒に食べることを楽しむのです。
一人で一気に味わうのもいいけれど、こうやって。

「ダンテちゃん、コレ美味しいよ」

わけあって食べるのも美味しいのです。
「暴食」を司る私です、せっかくなんだから、ちゃんと満足感も味あわないと損なのですよ。

そんな時、姉弟ですかと聞かれる声
「あ、従姉弟なんですよ」

そう答えるとなんだか納得されました。

あ、デートなんだから恋人ですと言えばよかったでしょうか。

ダンテ > 「そんなに、大層な話でもないけどね。」

あはは、と声を挙げて、表情は苦笑。というより、困ったような貌。
魔王に育てられた人間である自分の視点は、一体どこにあるのだろうか。

「ん?はは、姉さん、相変わらずだ。シてる時はあんなに大胆なのにな。」

真っ赤な彼女には、愉しそうにそんな言葉を。
こうした発言への照れや気後れが皆無なのは、やはり色欲の養子である。
ともあれ、そろっていただきますをして、食事を開始。
少年の方はと言えば、やはり何のかんのと食べ盛りなので、食べるペースは速い。それでも、きちんと噛んで食べるのは、癖付けしたおかげだろう。
何より、早いが汚くない。
王侯貴族のような行儀とは少し違うが、食べかすを飛ばしたり、食べ残しをしたりというような汚さがないのだ。手先が器用であるからか。

「ん、ありがとう、姉さん。……こっちのも美味いよ?」

分けられるものをありがたく頂き、そして自分もまた分ける。
それが、分け合うという事だ。
のどかな、分量を除けば、非常にのどかな食事風景である。

姉弟かと問うてきた者も含めて、やはり男性からの羨望の目線は少なくない。嫉妬も、だ。
まぁ姉さんはキレイだし、そりゃそうだよな、などと考えつつ、口の中身を嚥下した。
彼女が、恋人です、と答えなくてある意味良かった。気苦労的に。
厭味でない程度に紅を引いたかのような紅い唇は脂で濡れて、少してかっている。その隙間から、同じく紅い舌先がちろりと覗いて同じように汚れた親指を舐めた。
美味い。
思わず、ほぅ、と吐息が漏れた。やはり、空腹ではあったのだ。
ぱちりと大きな眼は、笑むと細まって、今度は切れ長な印象に転じる。長い睫毛が震えた。

ベル > 「でも、立派な男の子、いえ男の人になったんだなあと思うよ」

そう思うと、表情も柔らかくなっちゃいます。
あんな小さな子が。

「も、もう、そういうことは言っちゃダメです」

余計に顔が真っ赤になっちゃいます、あとあそこも疼いちゃいます。

それにしてもダンテちゃんは綺麗に食べます、偉いです。
小さい頃ちゃんと教えたのが身についているのもさらに嬉しい。

「ありがとう、はい、ダンテちゃんあーん」

そう言って一口サイズにきったアワビをダンテちゃんの口に運びます。

それにしても、ダンテちゃんは可愛いし、カッコいいし、色っぽい
何か、アスモデウスと一緒にいる時みたいに、見とれちゃいます。

食べる手が停まっちゃうほどに

ダンテ > 「いやぁ、まだまだなんじゃないかな。」

まだロクに独り立ちもできないのだから。
その言葉はいったん呑み込んで、首を左右に。

「どうして?姉さんだって好きだろ?」

真っ赤になってしまう彼女に向ける言葉には容赦はない。
天然でやっている側面もあれば、分かっていてやっている側面もある。
それらが矛盾なく同居する。

「ん、―――あー。」

ありがたく、運んでもらったアワビをいただく。
濡れた唇が必要最低限の大きさに開かれて、彼女の差し出すアワビを迎え入れた。
むぎゅ、むぎゅ、むぎゅ、と幸せそうに咀嚼して、嚥下。
ほぅ、とまた一息。
血糖値があがったからか、気分が盛り上がっているからか、頬は少し上気してきて、うっすら紅を刺したようで。
美味そうに食べる、というところだけ切り取れば、目の前の魔王にとてそう負けたものではない。多分。
自分も同じように、むき身のエビを摘み上げて。

「さんきゅー姉さん。んじゃあ、姉さんも、ほい。あーん。」

愉しそうに彼女の口元へ運んだ。
あの従姉弟、仲良過ぎねぇ?
という空気というか声が聞こえてくるが、この際もう気にしない。

「―――?姉さん?どうした?手が止まってるけど。」

珍しい。
彼女が食の手を止めているのを見て、思わず首を傾げてしまう。
そういった細やかな所作は、実際義母たる色欲とよく似ていた。

ベル > 「そ、そうかな……だって、その」

何か胸がドキドキしてくる、これはあの
アスモデウスの魅了……もしかしてダンテちゃん、体得?

「う、そ、そう……好きだけど」

なんだか、むずむずして、ダメ、スイッチはおっちゃいそうだよ。

でも、アスモデウスと一番違うのは

「うん、ありがとう……あーん」

ここまでご飯を美味しそうに食べるのは、彼女はしないかな。
なんだか、その、胸がいっぱいというか

「うん、大丈夫、その……大丈夫だから」

とりあえず今は、きちんと食べてしまおう、この気持は兎に角
食欲ではらしてしまおう。

次々と美味しく食べちゃいます、でも、なんだか不思議と美味しいけど、変な感覚なのです。

ダンテ > 「そうさ。―――?どうかした?」

頷き。
しかし、どうにも様子が妙な姉さんを見ると、首を傾げて問いを向けてしまう。

「じゃあ、いいじゃん。素直が一番って義母さんも言ってるぜ?」

にっ、と笑う貌は、腕白で快活な、少年の笑顔。
どこか中性的な顔立ちとはアンバランスで、絶妙だ。
そうして、食べさせたり食べさせてもらったりして、美味しく愉しく食事をする。
昔から、少年は彼女と食事をするのが好きだった。
義母との食事はこう、何というか、栄養補給、という感じがするのだ。

「ほんとに?まぁ、大丈夫ならいいけど。」

首を傾げて頷く。彼女に限って、というか、彼女たちに限って「体調不良」なんて空が落ちて来るような心配でしかないので、大丈夫というなら信じるけれど。

「……あれ?あはは、ほんとに珍しいな。ほら。」

そこで少年、何かに気が付いたように首を傾げると、ひょいと片手を彼女の口元へ伸ばす。
その脇、頬のあたりにくっついていたタレを親指で拭う。
そしてそのまま、その親指をぺろりと、また紅い舌先で舐めとった。
微笑む。
切れ長の眼。食への満足感に少し潤み輝く瞳。僅かに上気する頬。
あは、と少し体を揺らしながら笑うと、長い睫毛が揺れた。
ぺろ、と、親指に続いて、自身の濡れた唇を、舌先が一舐めする。

「美味いね。」

眼を伏せるように、残り少なくなってきた料理へ視線が向けられる。
食事が終わるまで、あと少し。
暴食の魔王と食べ盛りの少年の手にかかれば、もういくらもかからないだろう。
少年は微笑う。

ベル > 「その、何でもない……よ」

そう、そこまで大人になっちゃったのか
魔王を魅了するレベルまで……

「す、素直っていっても、ああいうのは……」

好きだけどなれない、そのスイッチが入ったらすごいけど
そのスイッチが入っていない時は恥ずかしい。

「うん、本当に大丈夫だから、うん」

本当に色々目についてはなれない。
ダンテちゃんってここまでかっこよかったっけ?

「あ……」

唇に触れた指、何か鼓動が早くなっていく。

ダメ、これ以上魅了されたら、がまんできなくなっちゃう

「うん、美味しいね」

私も笑顔を浮かべる、精一杯の笑顔

なんだか、ダメ、アスモデウス……なんて子を育てたんだろう。

食事はもうお魚のフライ、最後の一枚。

でも、なんでだろう、手が伸ばせないでいる。

ダンテ > 「そうか?……けど、何かあったら教えてくれよ?」

正直、何でもないようには見えないけれど。
首を傾げた儘、彼女の心中など知らずに少年は告げる。
魅了。
実は、少年の義母もこの少年も、いわゆる魅了魔法、チャームの類の魔法は殆ど使わない。
それは今も同じ。

「あはは、うん、まぁ、そうだよね。ベル姉さんは、そうでないと。」

彼女の反応にまた笑い、頷く。
微笑。少し顎を引くと、身長差はあるのに、まるで見上げるような上目遣いで彼女を見やる事となる。

「だからこそ、いじめ甲斐があるんだし、さ?」

嫣然とした微笑み。
零れる言葉は、先ほどまでの快活な少年の語気ではなく。
まるで耳元で熱い吐息と共に囁かれる睦言のような。

「ん。……姉さん。それ、フライ。揚げたてだけど、食べないの?」

本当に、本当に珍しい。
彼女が食事を前にして、手を止めてしまっているのだ。
首を傾げながら問いかけ、腕を伸ばす。
ひょい、とそのフライの尾を素手で摘み上げて。

「あちち、っ、ほら、半分こで食べよう?でさ……」

ぐいっと上体を乗り出す。
接近する身体。
唇が、小柄な彼女の耳元に寄せられる。
彼女の視界を覆うのは、少年の首筋。しなやかな、肉と筋のライン。
食事のせいで、僅かに発汗し、湿った肌。シャツの襟元からは、締まった胸板のラインが覗く。
そして、その鼻孔に届くのは、料理や海から香る磯の薫りと、そして少年から漂う不思議な香気。東洋の麝香にも似た、甘く、優しく、苦く、怪しい、不思議な薫りだ。
義母の元で染みついた、少年の体臭。汗と混ざれば、それが匂い立つ。
女性的な艶を持った、しかし確かな雄の薫り。

「久しぶりに、たくさん犯してあげる。」

熱い吐息を耳たぶに吹きかけながら、少年は彼女にそう囁いた。

ベル > 「うん、何でもないから」

その自然な動き、アスモデウスもそうだけど
自然と身につけているらしい、一挙一動
心が乱される

「い、いじめって……」

頭のなかで思い出される、あの行為。
私の中で何か食欲以外のものが、沸き起こってくる。

「あ、うん……その」

思わず一つ一つ見とれてしまう、アスモデウスが私に教え込んだ一つ一つが、心をかき乱していく。

フライ、美味しそう

でも、それよりも……

ダンテくんの言葉に思わず頷いてしまう。

アスモデウスのあまい囁きと同じ囁き

本当にあの小さかった子が、大人になっちゃったんだ。

ダンテ > フライを齧る。
齧ったフライを、彼女の口元へ運ぶ。
有無を言わさない、分け合い。
食べては食べさせ、食べさせては食べて。
彼女は頷いた。
そう、よく知っていたはずだ。
彼女が何を悦ぶのか。少し難しく考えてしまった自分を反省する。

程なく、まるでカウントダウンのように残っていたフライ一枚が完食された。

「ん、ごちそうさま。おっちゃん、ありがとう!美味しかったよ!」

ぱちんっ、と両掌を合わせて食事終了の挨拶。
本当に、二人で平らげてしまった。
色々な意味で困惑している屋台の主に礼を述べると、立てかけていた剣を肩に担いで、そして彼女の手を引く。

「うし、それじゃあ行こうか、姉さん。」

歩き出す。
人気のない方向へ。ずんずんと、やはり有無を言わさず。
彼女の手を握った少年の手が、逃がさないと告げている。
彼女も、色欲の魔王がどういう目的でこの少年を教育したのかは聞いているだろう。

ベル > そのままフライが小さくなっていく。
これを食べ終わったらどうなるのか、
じぶんがなにをされるのか、それは期待しているようにも感じて

「ご、ごちそうさま」

このままだと立てない、ふらふらっとした足取りになってしまう。

「う……うんそうだね」

そのまま手を繋いで、ダンテちゃん……ダンテに任せるように引っ張られていく。

このままどこに連れて行かれるかは、上がらえない自分がいて。

ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からベルさんが去りました。
ご案内:「港湾都市ダイラス 船着き場」からダンテさんが去りました。