2019/07/07 のログ
カイン > 「なるほど、それならハズレかな?
 まあよそを当たるだけなんだが」

相手の物言いを聞けばふむ、と顎に手を当てた格好のまま首を傾ける。
少女の様子からしてみるとこの近辺は慣れたものでは有るのだろう、
そうであるならば特別問題はないだろうとこちらからなにかを申し出ることはせず。
別を探すかと考え始めた所で聞こえた声に不思議そうに首をひねり。

「おやま、それっぽいものでも感じたか?
 荒事なら俺の十八番じゃあるんだがな」

ふむ、と警戒している様子の相手の様子をじっと眺めながら肩を揺らす。
生憎とそこまで獣の気配に敏感というわけでもない、
向けられた殺気であれば見逃しはしないがそうでないなら相手のほうが上手だろうと様子を伺い。

ノウン > 「その様子では、力仕事の方はお任せしても大丈夫そうですね?」

何者かが敵意をもってこちらを狙ってる状況でも動じない男を見るに場数を踏んできた者だと判断できる。
直接対峙することに向いていないことを自覚している彼女は、男に何者かの相手を任ると、懐から液体の入った瓶を取り出して―――。

「…これは私の子、私の願いを聞き入れる子。目の前の男以外の来訪者を、此処に炙り出して…」

ブツブツと、まるで独り言のように唱えると足元へ瓶の中に入った液体を垂らしていく。
それはどうやら魅了の一種だったようで、周囲がざわざわと騒ぎだしたと思えば突如として周囲の虫が一か所へと群がっていく。
群がりだした木の上から何かが落ちたかと思えばそこには狼とも人とも呼べない、異様な獣が血走った目でこちらを睨みつけていた。

「…それでは、後はお願いできますか?」
役目は終わったとばかりに責任を押しつけ。男の後ろに一歩下がると大人しく佇むにとどまる。

カイン > 「任せてもらえるならだけどな。
 ま、腕っぷしが強くなければこんな所にいないさ」

肩を竦めて言い返して見せながらもつま先をトントンと地面煮付けて様子を確かめる。
足場良好、林の中とは言え武器を振り回すだけの隙間は有る。
後は現れた輩に自分が対応できるかどうか、だ。
獣相手に不利な状況だというのはもとより望むところである。

「ほう、魔術かい。その手のは俺は苦手でね」

よくそんな細かいことができるものだと感心した様子で言いながらも、
視線は異常の起きている箇所、つまりは虫の集まっている場所から外さない。
さて何が起きるかと見ていると現れたのは一匹の獣である。

「おお、ここまでお膳立てしてもらっておいて出来ないなんて行ったら男が廃るな。
 ま、危なくない程度に離れておいてくれ」

離れてくれていたほうが好都合、と下がる相手に笑って応じると男は前に出る。
状況はよくわかっていない様子の獣であるが、
一度男に向けられた敵愾心が引っ込む道理もない。
眼の前の敵を切り刻もうと飛びかかってくるタイミングに合わせて剣を抜き放ち、
姿勢を屈めて走り出す。直後に上から振り下ろされる爪の一撃を、
手の甲に仕込んだ小手で受けると上からの衝撃にわざと抗わず体を半回転させ。

「それじゃあ、探すのに手こずったがこれで御仕舞い…だ!」

翻した外套に隠すようにして鋭く真下から突き出した刃が、
獣の胸元を貫く。赤い飛沫を飛ばすそれを一瞥の暇もなく袈裟に切り上げると、
勢いそのままに血飛沫が体の上に飛びかかる前に逃げ。

「よ、と、と…!ふう。あっぶね、汚れるところだった」

これで終わりかと傍らにたたらを踏んで立ちながら、剣を鞘に収め。

「…大丈夫だったかい、嬢ちゃん?」

そのままくるりと踵を返して声をかけるのだった。

ノウン > 「ええ、私はお陰様で無事に御座います。お見事な腕前でした。」

まさに一瞬の出来事
対峙する獣も並みの者では危険な相手だったであろうに事もなく切り伏せた男に対しては素直な賞賛を送る。
一瞬の事に何が起こったかわからない様子の獣であったが、胸元から流れ出る血液を目にするとその場へゆっくりと崩れ落ちる。
その亡骸を屠ろうとしてか、まだ魅了の解けぬ虫がその場所へと一斉に群がって行った。

「お恥ずかしながらこれしか取り柄がないものでして…。貴方様がいらっしゃらなかったら私一人ではこうもいかなかったでしょう。」

「森へお帰り」と小声で呟き、何やら塩のようなものを振りまけば獣へと群がっていた夥しい数の虫が周囲へと離散していく。
蠢く虫の山から姿を現すのは横たわる獣の姿。
致命傷と思われる一撃から、既に亡き者と化したと思い込んだ彼女は男の傍へと近寄り、獣の死角になる位置まで歩み寄る。しかし獣の生命力は彼女の想像を凌駕していたようで―――

「さて、何かお礼をしたいのは山々ですが生憎只今持ち合わせがない物でして―――」

突発の出来事とは言え人の手を借りたことへの謝礼はどうしたものか、と思案する彼女はゆらりと起き上がる獣へと注意が向かなかった。
死期を悟った獣は最後のあがきと言わんばかりに力及ばぬ彼女へと牙を向ける。

カイン > 「お粗末さまでした、ってね。
 ……まあケダモノ相手ならだいたいこんなもんなんだが」

だからこそつまらないところと面白いところが両方ある。
今回はそこまででもなかったことに対しては不満そうなのだが、
とりあず他人を巻き込むという一番の面倒事がなくなったのは良いことだと肩をすくめる。
群がっていく虫の様子に若干辟易とした様子を見せはするものの、
何と口にすることもなく肩をすくめて返し。

「それを言えばこっちだって、これが仕事なんだから気にすることはないさ。
 おかげで仕事が早く片付いたんだから礼をいいこそすれ、特に文句なんて無いとも」

クツクツと喉を鳴らして言い返しながらも女の方へと向き直った所、
後ろで気配を感じて腕を咄嗟に横に出す。
飛びかかろうとしていた獣の機先を制し、獣の牙を男の腕に噛みつかせてしまえばそのまま、
そのまま逆手で再び抜刀した剣を今度こそ首筋に振るえばそのまま胴と首とを泣き別れにしてしまう。

「…つっ!たく、往生際の悪いことだ。怪我はないか?
 悪い、何とも初歩的なミス過ぎて嫌になるね」

そう言いながら獣の首を近くに蹴り飛ばしながら、息を吐いて手を横にふる。
こてに阻まれたお陰で大した怪我ではないとはいえ流石に痛いものは痛い。

ノウン > 「生真面目なお方。そう言われてしまえば何もできないではありませんか。…そういうお方、嫌いではありませんけれども。」

仕事を理由にされては返す言葉もないとばかりに男の遠慮を受け入れるも、返す言葉はどこか残念そうで。
初対面での警戒は薄れていったようで幕の下で穏やかな笑みを浮かべるも、咄嗟に伸びた男の腕とそのただ事でない気配に身を硬直させられ。
この最中に被っていた帽子も、顔を覆っていた幕も落ちてしまったことにはまだ気づいてはいなかった。

「…!傷を見せてください、すぐに!」


自らに向けられた殺意と男の腕へと食い込んだ牙、あまりに一瞬の出来事に反応が遅れるも、実感が追いついてくると奪うように男の腕へと意識を向ける。
その場に佇む獣だった胴体など意識の外、幸いにも籠手のお陰で傷は浅いようだったが念のためと自らの手をかざすと男の傷口から僅かな火が上がる。
見た目こそ腕を焼き尽くす炎であるが、不思議なことに熱さはまったくないようで。
男の手の腕から上がる火の手からススのような黒い粒子が上がると自然と腕から火が消えていった。

「…やはり少量の毒物が混じってたようです。ごめんなさい、私が無警戒だったばかりに…。」

飛び出ていった粒子は毒性のものだったようで、ごく少量であったことからさほど大したものではなかったようだが自らのせいで傷を負わせてしまった負い目から項垂れた素顔を覗かせる。

カイン > 「生真面目と言うよりは…面倒事を抱え込みたくないだけなんだがね」

根無し草だからこその生きるためのコツ、みたいなものである。
笑い飛ばしてみせるのだが、やはりそれなりに長く生きてるからこそ染み付いた習慣でもある。

「うん…?別に大した問題ではないさ、この程度の毒は俺には聞かない」

相手の反応には一瞬面食らうものの、毒と言われれば感じる虚脱感はたしかにそれ。
しかしながら、口にしたとおりそれほどの毒でないのである。
そして毒に対する耐性を持ってるのは己の身の上故…だけではないのだが。

「とはいえ、あんまり動くのも良くはないか。
 この辺り、どこか休めるところはないかね?
 少し落ち着けばそのまま回復するだろうしね」

堕ちたフードの様子に少し目を瞬かせながらも、
問いを投げて顎に手を当てる。
そんな慌てるようなものでもないと項垂れる相手に手を横に降って困ったように返し。

「ほらほら、そんな気に病まれてもこっちが困る。キレイな顔が台無しだぞ?」

火傷の様子を意に介した様子もなく言い放つとクックと喉を鳴らし。

ノウン > 「はて、貴方様も訳がありそうな生き方をしらっしゃるようですが…そこは聞くだけ野暮というもの、でしょうね。」

男の身の上にはどこか興味を引くものがあるが、そこに軽々しく触れてはいけない気がしてそれ以上聞くことはしなかった。
しかし大した毒ではないとはいえ、まるで効果がない男には流石にキョトンとした様子で。

「…貴方様は…。」

と小さく呟くも、先のやり取りを思い出しこの先を尋ねてはいけないと自らにブレーキをかける。
この時点では魔族であるとは思っていなかったが、先ほどの見事な剣捌きといい、只者ではないことを今一度実感するだろう。
しかし落ち着ける場所と尋ねられれば難しい問を掛けられたように思案する。
もう少し歩けば自らの住処があるが、そこには自らの師であり今対峙した獣とは比較にならない化け物が住まう場所。
恩人故にもてなしたい気持ちはあったが―――。

「…申し訳ございません。この森にはあまり腰を下ろす場所はないのです。
森を抜けたすぐ先に小さいですが街が御座いますので、此処で暫しの休息の後、ご案内させて頂きます。」

暫く考えた末、申し訳なくもここは嘘を通すことにした。
まだ会って間もない相手ではあるが、親しみを感じてしまったが故に化け猫に屠らせたくなかったが故にである。
懐から枯れた木の葉を数枚握りしめると、握った手の中で黒煙が漂い始める。まるで火が付いたかのようだが焦げ臭さは感じさせない。

「此処は私の領地、何物も入ってはいけない。去れ、去れ―――」

どうやら結界の一種のようで、独り言のようにボソボソと詠唱を唱えると周囲から虫の鳴き声をはじめ、生命の気配が次々と消えていった。
暫くはここに留まっても誰も立ち入らないと説明すると、男の言葉でようやく顔を覆っていた布がない事に気づき―――。

「…!こ、これは大変お見苦しい物を・・・。お恥ずかしい限りで…」

慌てて帽子だけ深々と被ると、恐縮とばかりに謝罪を口にする。
男は全く気にしていないようだったが彼女にとっては人に火傷跡を見せることは恥だと思っているのかもしれない。

カイン > 「なに、この国でわけが何もない人間の方が珍しい。
 気にすることじゃないさ、それこそ何も背負ってないやつなんて数えるほどしか見たことがない」

以外なことになと喉を鳴らして言い返しながらも、
相手の物言いに首を横に振ってみせる。
聞かれて困るようなことでもないが、かと言って聞かれない事を答えるほどおしゃべりなわけでもない。
困ったものだと言いながら肩をトントンと叩いて息を吐きながら大きく体を伸ばし。

「そうかい。ならそっちに案内してもらおうとしよう。
 ……別に隠すようなことでもないでもないだろうに」

何やら訳ありの様子を見て撮って喉を鳴らしながらも、
フードを被り直すさまを見れば首を横に振ってから返す。
面倒事を避けようとする姿勢は大事だと頷きながら応じてみせ。

「ま、驚くやつは驚くか。俺は正直見慣れたもんだから大したもんじゃないが」

ノウン > 「そう…、なのでしょうね。何も請け負わないということは、それはどんなに幸せな事なのでしょう。」

意外な程にすんなりと納得できてしまう男の言葉、その言葉を聞き入れれば自分では想像もつかないと言わんばかりに噛みしめる。
改めて落ち着いてから帽子を被り直した後に顔を幕で再び隠すと改めて男を送ることを約束する。
しかし次いで出てきた男の小声には気づくことはなかった。

「どうも皆様この顔を見ると気を悪くされるようでして、不敬をしてはいけない、と自然とこうするようになったのです。
もうすっかりこうしているのが当たり前になった次第でして…。」

それでも結局は不自然に素顔を隠すことに憤る者もいるのだが。
それでもいきなり汚いものを見せるよりはマシ、とまるで言い訳のような言葉を紡ぐしかなかった。

カイン > 「さて、なあ。それはそれで新しく背負い込むことになるんだから尚の事面倒かもしれないけどな?」

笑い飛ばして見せながら喉を鳴らして肩を揺らす。
今までなにもないからと言ってこれからなにもないとも限らない。
だからこそ尚の事面倒事になり得ると喉が鳴る。

「さて、だからといって自分で嫌いになる必要もないと思うけどな。
 他人のことなど笑い飛ばしてしまえ……と無責任に言うだけなら簡単だが」

こればかりは本人の性分次第、どうにもならないだろうとは言いながらも肩を揺らす。
何とも難儀そうなものだと相手のことを見ながらゆっくりと目を細め。

「それで、まだ名前を聞いていなかったな。俺の名はカイン、傭兵だ。
 嬢ちゃんは?」

そう言いながら顎に軽く手を当てて問いを投げ。

ノウン > 「それは何とも我儘な…。中々楽な生き方というものは得られないものですね。」

やれやれと言わんばかりに小さく肩をすくませるとこっそりと苦笑いを浮かべて。
あちらが上手く行けばこっちの角が立つと言う理屈にはなんと生き辛さを感じることか。
それならば少しでも前向きな生き方をしたいものだと一人呟き。

「これは私の証明であり、私の業。とても人様に見せられた物ではありません故に…。目を覆いたいという気持ちも、あまり見せたくない気持ちもあるもので。」

醜くゆがんだ顔は望んだものではなく、また後に学んだ術は時として人に仇なすものであるが故に否定することも肯定することも憚られると語る。
火に炙られた者が火を使うとはなんと皮肉なことだろうか。

「ノウン、そう今は名乗っております。カイン様ですね、しがない薬師ではありますが、これも何かのご縁。今後とも願わくば良い関係であることを切に祈っております。」

自らの師に名付けられた名ではあるが今となっては本名よりも長く過ごした名前。
改めて名乗ることで挨拶を交わすとあくまで普段は薬剤師である事を明かす。
呪術師であることは秘密と言わんばかりに幕の上からそっと指に人差し指を当てる仕草を取って、恐らく素顔は薄く笑みを浮かべているだろうか。

「さて、そろそろ頃合いでしょうか…。こちらが最も短い道のりに御座います。
暗いですので、足元にお気を付けくださいませ。」

気づけば少しずつではあるが虫や動物と言った生き物の気配が戻りつつあるのを感じてきた。
ランタンを手に取れば道中の厄払いの術をかけなおす。
そっと薄暗い獣道へと歩みよると、男を人里へと導こうとするだろう――

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からノウンさんが去りました。
カイン > 「楽な生き方なんてのは人それぞれだろうけどな。
 なんせ俺なんか今はすごく楽に生きてる」

笑い飛ばして見せながらも相手の言葉に喉を鳴らしてみせる。
元々色々と抱えていたものを放り出してきたのだから、
当時に比べれば随分と気楽なものだとゆっくりと目を細め。

「なるほど、それなら隠しておくほうが良いな。
 見せたくないものを見せない自由ってのもまたあるもんだ。
 ……。うん?ノウン、か。変わった響きだな」

あまり聞き覚えのない響きであると考えて首をひねりながらも、
薬師であると名乗られれば機会があれば贔屓にしてくれと笑い飛ばす。
そのまま、相手の導きに従うまま街への短い旅路を急ぐ。
その間他愛のない会話を交わしながら夜道を歩いていくことになったのだろう。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 自然地帯」からカインさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林地帯」にクルトさんが現れました。
クルト > 「めんどくさい……」

日が暮れ暗闇の森の中を眉を寄せて吐き捨てるように呟きながら駆けていく。
背後からは複数の獣の足音が自分を追いかけて来ている。
別に切り捨てようと思えば難しくない魔物ではあるが毒持ちなのが厄介な理由の一つ。
そしてうっかり毒腺を傷付け殺してしまうとそいつのにおいが身体に染み付き延々と仲間を呼び寄せ追いかけられてしまうのが逃げている最大の理由である。

魔術師でも居れば丸ごと焼き殺してしまえばカタがつくのだが、自分の精霊魔術はそのような使い方に向いてはいない。
せいぜい周囲に放射してその反射のおかげで暗闇の中でも気にぶつかる心配がなく走れること。
そして自分の逃げ込む先を教えてくれることくらいだろう。
精霊の声に耳を傾け、融通の利かない精霊が最短距離を示してくれたおかげで現れた崖に心底嫌そうな表情を浮かべ、しかし躊躇せずに飛び降りる。
絶壁とは呼べないかろうじて存在する傾斜の上に足を付き、雷気を纏わせ斜面と反発させ浮き上がる事で滑走していき……

「あった……」
とうっとダイブして地面に転がれば先ほどまでの重苦しい闇とは違う清涼な空間に行き着く。
近くにあるのは精霊力の濃い泉。
この近くには魔物の類は寄ってこず、セーフティエリアとも呼べる場所になっている。
例の魔物は夜行性であり夜が明けるのを待てば無事に脱出できるだろう。

「ここをキャンプ地とする」
ゆえに今必要なのは腹ごしらえである。

クルト > 近くに落ちている枝を集め、石を組んで作った簡単な炉を作って枝を組み合わせ、着火用の油を軽く振りかけてから雷火を起こして焚き火の出来上がり。
森の中で迷っている人間でも居れば目印にするだろうと少しばかり大きめに作ったのでなかなか明るい。
そうしてコートの中の異次元収納からザックを取り出し、折りたたみ式の鉄棒を伸ばして焚き火の周囲に突き立て三脚にし、交差した中央から伸びるフックに鍋をかければポータブル囲炉裏の完成である。

冒険者仲間からはお前ストレージの無駄じゃねえ?と良く言われるがこれが無ければ料理をするのに不便だ。
固焼きパンに干し肉?冗談じゃねぇ……

クルト > 鍋に脂身を放り込み、じゅわじゅわと溶けて染み出していけばそこに薄切り肉を投下。
ジャッと心地よい音と共に肉の焼ける音が周囲に漂う。
夜営といえば肉である。
軽くかき混ぜ色が付けばそこにぶつ切りにしたネギを投げ入れ肉から染み出した脂に絡める。
そうしてある程度焦げ目が付いたところで泉から水を汲み鍋に流し込む。
そこに今日仕事のついでに採取しておいた新鮮な牛蒡の泥を落とし皮を削いで鍋の上でナイフで削ぎ切りにして落としていく。
そして登場するのが芋……である。
丸く小さな栄養価の高い芋、蒸して皮を剥いて塩でも振れば皆が平和に食べられるだろう。
しかしこれを鍋にぶち込めばたちまちIMONIになる。
そう芋煮である。
これのレシピの違いをめぐり異国では内乱にまでなったとかならないとか。
こまめに灰汁を取りながら煮えてくれば酒と醤油と砂糖で味を調えれば完成である。
辺りには美味そうな匂いが漂う、森林地帯の真っ只中なのに。

クルト > まずは一杯、椀によそうと泉のそばに備える。
水を分けてもらった精霊への礼である。
なにやらえぇ…マジで?みたいな思念が伝わってくるが嫌がっては居ないようなので一安心。

自分の分をよそい箸でまずは肉をつまみ一口。
溶けた脂が汁に混じって良く絡み、甘辛い味付けが染みこみ、そして牛蒡とネギの風味がほんのりと香り

「美味い……」

のであった。
ひたすら運動した後、夜の闇を焚き火で追い払いながら口にする暖かい汁物は身体に染みこみ滋養へと変わっていく流れを感じ取れそうなほどに身体の心から熱を与えてくれる。

クルト > そうして美味い食事と十分な睡眠ですっきり全快し、翌日は無事に帰路に付けるのだった。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 森林地帯」からクルトさんが去りました。