2020/09/16 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にメアリ・オーガスタさんが現れました。
メアリ・オーガスタ > 昼でも手燭が欠かせない、城の地下に広がる細く入り組んだ通路を、
点在する弱い灯火だけを頼りに、ふらふらと進んで行く。

己の足許がふらついているのは、此処が王都の中心であり、
魔に属する者の力を削ぐ、何からの加護が働いているからか。
けれど決して、其れを認めたくはない。
先刻、少し急いで走り過ぎた所為だ、と、無理矢理己を納得させていた。

かつては社交の場に、美しく着飾って訪れたこともある。
城へ来るのも初めてではなかったがて、出来ればすすんで訪れたい場所ではない。
しかし、今日は―――先刻、ちらりと懐かしい顔を、地下へ向かう人々の中に認めた気がしたので。
とうに処刑の憂き目に遭ったと思っていた、嫋やかで優しい母の顔。
もし彼女が未だ生きているのなら、ひと目なりとも逢いたい、顔を見たい。
――――其の一念で潜り込んだ地下には、不快に澱んだ空気が満ちていた。

「……何なの、此処、……噂には、聞いていた、けれど、
 変だわ………此の、声、一体――――……」

何処からか、悲痛な声が聞こえてくるような。
一人二人ではない、幾人もの、女の、あるいは子供の声。
以前、誰かに聞いた時、地下には王国に仇為す者が囚われている、
そう教えられていたのだが―――。

此の声が、反逆などという大それた罪を犯す者の其れとは思えなかった。
高く、細く、震えながら、助けを求めて啜り泣く声。
――――足が、止まりそうになる。引き返してしまいたくなる。
此の先へ進めば、恐ろしいことを知ってしまいそうだ、と、
こんな己にも未だ残る、柔らかく繊細な部分が警鐘を鳴らしていた。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にマレクさんが現れました。
マレク > 「大丈夫ですか?御気分が優れないようですが」

歩みを鈍らせ、立ち止まってしまいそうな彼女の背中に、気づかわしげな男の声がかかる。ダブレットにホーズ、短靴という貴族然とした出で立ちの男が、いつの間にやら直ぐ傍まで近付いていたのだ。

「深呼吸をなさった方が良い。4つ数えながら息を吸って、同じように吐いてみてください。その後胸を張って、声も落ち着かせるべきでしょう。此処で不安げな振る舞いを見せると……あなたの為になりませんよ」

彼女の隣に立った男が、左手を肩へ回す。しかし触れない。同心円状の溝が刻まれた左目で相手を見つめながら、右手で行き先を示す。悲鳴や啜り泣きが聞こえる、ほの暗い地下の先へ誘おうと。

メアリ・オーガスタ > 「――――――っ、!」

一瞬、心臓が止まるかと思った。
――――人間の娘であったなら、きっとそう表現するのが正しい。
喉奥までせり上がってきた悲鳴を飲み込み、刹那に強張ってしまった身体の反応を宥めつつ、
出来得る限りゆっくりと、深く息を吐きながら振り返る。
見知らぬ男が、――――寧ろこんな場所に在って、異様なほどに落ち着いた佇まいの男が、
いつの間にか背後へ近づき、隣へ並び立とうとしていた。

「……いきなり現れて、ひとを脅すつもり?
 単なる気遣いだと言う気なら、余計なお世話を有難う」

辛うじて、声が震えるのは避けられた。
紅玉の双眸を眇め、油断無く相手の顔を窺い見てから、
其の手が指し示す方向を一瞥し。

「貴方、知ってるの?
 此の先に、何があるのか……此処で、教えてくれる気は無いの」

出来れば見ずに済ませたい、引き返せるものならそうしたい。
けれど同時に、もしもあの声の中に母の其れがあるのなら、と、
如何にも思い切れないのだった。

マレク > 「これは失礼。余り、このような所に慣れていらっしゃらないように思えたものですから。お詫びいたします」

硬い反応に笑みを浮かべ、軽く頭を垂れた。言葉や仕草とは裏腹に、全く悪びれていないというのは誰が見ても明らかだったろう。

「ふ……突然現れた男に、見てもいないものをあれこれ説明されたとして、信じられるのですか?もしそうならばお教えしましょう」

ぽっかり開いた闇の向こうから聞こえる甲高い悲鳴、助けを求める声、許しを乞う声に耳を傾けながら、笑う男は言葉を続ける。

「この先には……素晴らしい場所があるのです。いかなる隠し事も持たぬ人々が、心の底から求めていたものを惜しみなく与えられ、自身の幸運と幸福に感極まっています。……いかがです?納得されましたか」

面白げに肩をゆすり喉を鳴らした男が、改めて先へ進むよう身振り、手振りで促した。

メアリ・オーガスタ > 慇懃な口調、型通りに頭を下げる仕草。
そうしたものを駆使する男なら、以前は厭と言うほど見慣れていた。
彼らは皆、一様に、息をするような自然な態度で嘘を吐く、女を騙す。
――――今の己には、もう如何でも良いことだったが。

「私、謝罪されるような立場ではないわ。
 ――――――――――」

そもそも、怒った訳でもないので、表情にも変化は無い。
しかし、男が≪説明≫とやらを始めた途端、闇の奥からまたしても、
ひどく怯えた少女の泣き声が聞こえてきたので、意識せず眉間に皺が寄ってしまった。

「……貴方の言う通りね、其の説明、まるで信じられないわ。
 やはり、自分の目で確かめることにします」

自らの幸運に歓喜しているようにも、幸福を謳歌しているようにも聞こえない。
男の言葉を不審に思う気持ち、というよりは、奇妙な対抗心のようなものが、
己の進むべき道を決めさせた。
携えた杖を強く握り締め、上衣の裾を翻して闇の中へ進み出そうとしながら、

「貴方は来ないで、と言っても、聞く気は無いんでしょうね。
 言っておくけれど、……変な真似をしたら、青痣では済まないわよ」

暗に、触れるな、あまり近づくなと釘を刺したつもりだ。
男がついて来ようと来まいと、己の向かう先は先刻、男が指し示した、
深く暗い闇の中、だ。

マレク > 「残念ながら。私も、ここに用事がありますので」

相手からの、あからさまな「来るな」という意思表示だったが、男はやんわりと断り、頭を振った。

「勿論です。私は無理強いが何よりも嫌いですからね。あなたが望まないことは、決して致しません」

闇の奥へと足を進める彼女の背中に声をかけた後、人ひとり分の距離を保った男が後に続く。徐々に聞こえてくる声が大きくなり、別の音も混じる。鎖が張り、引きずられる音。乾いた破裂音。そして、肌と肌がぶつかり合う音。

「……如何です? 私の申し上げたことも、あながち間違っていなかったでしょう?」

細く長い通路の終わりに立った男が、おどけた口調で告げた。そこは地下牢。ただし、常の物ではない。広大な空間の周囲に置かれた沢山の檻は、まるで商品棚のよう。

室内はすみずみまで清められ、あちこちに置かれた円形の寝台では男女がその身を絡ませている。問題なのは、女性側が例外なく首輪を填められ、手足に枷がついていることだ。

「彼女達は、その存在で権力者を誘惑し、国を誤った方向へ導こうとした罪により、此処で贖罪の日々を送っているのです」

催淫効果を持つ薄紫色の香が立ち込める中、男が説明する。置かれているのはベッドだけではない。首と両手を固定する晒し台に拘束された1人の女性が、太った男に背後から犯されていた。一突きごとに乗馬鞭で打擲が加えられ、その度に女性は悲鳴混じりの感謝の言葉を口にする。

メアリ・オーガスタ > 聊か以上に不躾な態度で、来て欲しくないと伝えたつもりだったが。
機嫌を損ねた風も見せずに、あっさり首を振る男から、溜め息交じりに視線を外す。

「そう、……たった今、来ないで、と言ったのは無視する癖にね」

今、正に己の望まないことをしようとしている男の言葉など、聞くに値しない、と言いたげに。
一歩ごとに重く、何かが纏いつくように感じられる足を引き摺るように、
――――進むうち、声が、物音が、次第にはっきりと迫ってくる。
床を這う鎖の音、吊られた何かが軋むような音、そして何より生々しい―――――。

「――――――――――っ、」

悲鳴は、此度も辛うじて噛み殺した。
其処が牢獄だ、と言われれば、成る程、檻ではあった。
鎖に繋がれ、首輪を嵌められた虜囚の姿は在った。
しかし、幼い頃己が漠然と想像していた≪牢獄≫とは、まるで違う光景が、
其の空間には広がっていた。

手足を絡ませ、淫欲を満たす宴に興じる男女の姿。
睦み合う、などと表現することは出来ない、浅ましい獣同士の交わりは、
其の上、如何やら双方の合意の上とは思われなかった。

口々に許しを乞い、泣きながら≪罪≫を告白しては、
罰と称して鞭打たれ、醜い雄の欲望をぶつけられる女たち。
怪しげな香が焚かれる中、彼女たちが口にする≪罪≫が、果たして真実、
彼女たちが犯したものであるのか―――あるいは、冤罪か。
少なくとも、彼女たちにとっての幸運も、幸福も、其処には認められなかった。

「……吐き気が、する―――――、」

口許を空いた左手で覆い、低く呟き洩らした其の瞬間。
乱れた髪を引き掴まれ、項垂れた顔を上げさせられた≪女≫の顔を目にして、
紅い瞳を大きく見開いた。

「お、……か、―――――――――」

お母様、と呼ぶより早く、脚が動く。
他の女たちは知らないけれど、母だけは違う。
母だけは絶対に、罪など犯してはいない筈なのに、と、
身を隠し偽るべき我が身も忘れ、泣きながら犯されている母の許へ駆け寄ろうとした。

マレク > 「それはお気の毒に。ですが、直ぐにお気に召すと思いますよ」

「罪人」に覆いかぶさり、けだものじみた声を上げて腰を叩きつける男達。薬で無理矢理たかぶらされ、悲鳴と嬌声の入り混じった声を上げる女達。良識ある人々であれば吐き気を催し、嘆き、あるいは怒り、一刻も早くこの穢れ切った行為を終わらせるよう求めるだろう。

しかし悲しいかな。その良識ある人というのが、この場にたった1人しかいないのである。

「……ほう?」

髪を掴まれ、顔を上げさせられた1人の「罪人」。その姿を見て叫び、駆け寄っていくその背を見送った男は、控えていた「刑吏」を呼んで耳打ちする。

一方、顔を上げさせられた「罪人」は、髪を掴まれ頭を下げさせられ、その口元へ男根を押し付けられていた。豚のように太った裸の男が、薬で暴走した欲望に身を任せ、口淫を強いる。

メアリ・オーガスタ > 勿論、≪お気に召す≫訳が無かった。

恐らく、此の場に漂う薄紫の煙は、甘ったるい香りは、人の理性を蕩けさせる類のもの。
虜囚たる女たちが、より、あられもない痴態を晒すように。
貪る側の男たちが、より長く、より深く、此の宴を楽しめるように。

けれど、其れは人では無いものに変化しつつある、此の身にも効くものだろうか。
少なくとも今は――――理性も正気も、刈り取られる気配は無い。
代わりに我を忘れるほどの強い憤りが、此の身を支配していたが。

「貴様、……此の、恥知らずが!」

背後に立つ男が、刑吏を呼びつけたことにも気付かず。
かつては輝くばかりに美しかった髪を無造作に掴み寄せられ、
醜悪な欲望の塊へ口淫を強いられた女と、其れを強いる男との間へ、
がつ、と頑丈な仕込み杖を割り込ませ、其の儘の勢いで、太った男を弾き飛ばそうと。

後先を考えないにもほどがある、そんな狼藉は許されるだろうか。
あるいは此の場に、己の顔を記憶に残す者が居れば――――間違い無く、此れは悪手だ。

マレク > 焚きしめられた催淫の香は、弱った人々、あるいは元々欲望を発揮する為に来た人々には強く作用する。しかし迸るほどの怒りの前では無力のようだった。怒りが続く限り、そして息をきらして大量の煙を吸い込まない限り、彼女は自分を保てるだろう。

「ああ、ああ。それは良くない。良くありませんよ」

呆れ顔の男が声をかける。その後ろから、囚人鎮圧の為の二股に分かれた棍を持つ兵士達がやってきていた。

そして、彼女の干渉は叶った。男根を頬張らせようとした豚のような男は突き飛ばされ、床に尻餅をつく。だが彼は痛みを覚えるわけでも憤るわけでもなく、喜びの声を上げた。「雌が来た!若い雌だ!」と。

「あなた方のような「清く正しい人々」は、何故揃いも揃って自らを破滅へ追い込むのですか? 後少しだけ真意を隠していれば、私とてお手伝いのしようもあったのに……」

緑の装束に身を包んだ男の両脇に兵士達が並び、鋭い声で武器を捨てるよう呼びかける。新たな犠牲者の登場を聞きつけた男達が一斉に彼女を振り返り、口々に囃し立てるのだった。

メアリ・オーガスタ > 精神に、肉体に干渉する其の香りを、鬱陶しい、と思いはする。
違和感はごく僅かで、怒りに支配された頭を、身体を絡め取るほどではない。

しかし、思うさま打ち込んだ杖が弾き飛ばした男は、見事に尻餅をついて痛みに呻くでもなく、
己に対して声を荒げるでもなく。
悍ましくも其の股間を更に奮い立たせ、己を≪雌≫と呼ばわった。

「な、――――……貴、様、………」

怒りに強張る蒼白い頬を赤く染めたのは、屈辱だったか、羞恥だったか。
けれど直ぐに――――気付いた。

虜囚たる女たちを辱めていた男たちの目が、全て、此方に向いている。
ぎらぎらと底光りする双眸を血走らせ、舌舐めずりせんばかりに顔を歪めて、
愚かにも飛び込んできた、新たな≪獲物≫たる女―――つまり、己を見つめている。

背後を振り返れば、先刻、己を此処へ案内した男の横には、
通路へ続くルートを塞ぐ形で兵士が並んでおり。
武器を捨てろ、さもなくば、という決まり文句を投げつけられて、
―――――己は緩く、口角を吊り上げた。

「黙れ、……貴様ら如きの、指図は受けない。
 私を従わせたければ、命がけで来るが良い………っ、」

真珠色の歯が綺麗に並ぶ中、明らかに人のものではない鋭い歯牙が光る。
勝機が見出せるかどうか、だが少なくとも、諾として縛につく真似はすまいと決めた。

たん、と床を蹴り、大きく身を翻して跳躍を試みる。
多勢に無勢、殴られ蹴られ、結局は捕らえられてしまうとしても、
精一杯の抵抗は示そうと。

小娘一人と侮っていた兵士たちが、手加減を忘れて己を叩きのめすのが先か。
其れとも催淫香に身体を蝕まれ、自ら膝をつくのが先か。
あるいはまた別の結末があるものか―――――そんな、騒動の一幕。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からメアリ・オーガスタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からマレクさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」に美鈴さんが現れました。
美鈴 > 今宵は珍しく、夜会の誘いも無かったらしい。
普段よりも随分早く与えられた部屋へ戻り、侍女の手を借りて湯浴みをし、
湯上りの肌に薄手のローブの身を纏って、バスルームに備えられた姿見の前。
髪を整えてくれていた侍女が、不意に早口で何事か詫びながら、
扉一枚隔てた寝室の方へ立ち去って―――――既に、十数分。
直ぐ戻るかと思われた彼女が戻らないものだから、生乾きの髪を指先で玩びつつ、
公主たる女はそろそろ退屈し始めていた。

「……おかしいわね、てっきり香油か何か、切らしたものだと思っていたのに。
 此れでは私、風邪を引いてしまうわ」

戻って来ない彼女を咎める色は無く、ただただ退屈そうに呟き。
ふう、とひとつ息を吐いて、女はスツールから立ち上がった。

「ねぇ、……何を探しているの?
 其れとも他に、何か用事が―――――、……あら」

やや高めに声を投げ掛けながら、寝室へ続く扉を開き、
―――――其処で、ふ、と口を噤んで立ち止まる。

バスルームへ移動した時、ベッドサイドに灯っていた筈の灯りが無い。
消されているのか、そもそもランプが持ち去られているのか。
カーテン越しに窓から差し込む月明かりだけが、室内を蒼く彩っていた。
目が闇に慣れるまでは、部屋の様子を詳しく知ることも叶わない。

「まぁ、……如何したこと、此れは……もしかして」

何方か、招かれざる御客人が居られるのかしら―――――歌うように呟く声は、
恐怖に、では無く期待に、淡く掠れていた。

美鈴 > 「―――――嗚呼、其方ね」

暗がりに目が慣れてきて、部屋の中に在るもうひとつの異質に気づく。

カーテンが揺れている、風が入り込んできているのだ。
先刻、確かに侍女の手で、窓は閉ざされた筈なのだけれど。

くすり、小さく肩を揺らして笑うと、女は其方へ歩み寄る。
ゆるとはためくカーテンを掻き分けて、開いた窓の向こうへと。
小さなバルコニーが設えられている、其処で女が目にしたものは―――――。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」から美鈴さんが去りました。