2018/11/25 のログ
■アデラ > シフトの終了時間になると、少女は自分の使っていたグラスを手早く清める。
それから最後のサービスとばかり、客席からも空のグラスを回収して――
「それでは、お先に失礼」
複数の男性客にもみくちゃにされている女店主へ、聞こえていないだろうが呼びかけた。
返事をしたのは女店主ではなく、客のひとり。
適当に後ろ手を振って、正面の扉から堂々と去っていく。
「お小遣い稼ぎって大変ねぇ……でも、もうちょっとだわ」
日給を足して少し膨らんだ財布の中を見て、小さなガッツポーズ。
不慣れな労働の日々は、まだあと少し続きそうだ。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」からアデラさんが去りました。
ご案内:「富裕地区 オープンカフェ」にエウレリアさんが現れました。
■エウレリア >
冬の寒さも強まるある日の午後、男装の給仕一人を従えて、色鮮やかな緋色のドレスに身を包んだ令嬢がオープンカフェにて優雅なティータイムを楽しんでいた。
富裕地区の大通りに面する一等地に居を構えるだけあって、この店では冬場であっても小春日和の暖気が魔術的に保たれている。
3段のケーキスタンドには新鮮野菜のサンドイッチにスコーン、パイやマカロン、カップケーキ等が上品ではあってもとても一人では食べきれないであろうボリューム感にて盛り付けられている。
真白な繊指に摘まれた細身のフォークが、真冬にあってもぷるんとした色艶を保つ唇間へと小さく切り分けられたケーキを運ぶ。ねっとりと官能的に絡みつく生クリームの甘みを楽しんた後は、そっと持ち上げた紅茶の清涼にて流し込む。
スラリと伸びやかな長駆とその身に纏う品格は、容易に他者を近付けぬ雰囲気を醸す物の、大胆に開いた緋色の襟ぐりに深く谷間を刻む豊満な白乳や、金糸の如く艷やかな長髪を流す怜悧な美貌は道行く人々の遠巻きの視線を集めていた。
■エウレリア >
斜め後方、執事服に身を包んで帯剣した男装の麗人が彫像めいて控え、時折ポットを持ち上げては令嬢の茶器に湯気立つ紅茶を注いで下がる。
血や色に狂っている事の多い狂剣士ではあるが、こうして貴族令嬢らしい時間を穏やかに過ごすことも稀にはある。
そうした際には普段と異なり、他者に対しても比較的常識的な姿を見せる。
上客ではあっても不穏な噂の尽きぬ女貴族に追加の要望などないか聞きに来たボーイに対してさえ
「―――…そうね、今は別に必要ありませんわ。用が出来たらこちらから呼びますし、それまでは一人にしておいて。」
整った美貌を嫣然と微笑ませるというサービス付きの対応を見せる。
余程に悪い噂を聞いていたのだろう青年は、予想外に柔和な対応に面食らったのか一瞬驚きに身を固めた後、それでもなんとか体裁を保つ上品な笑みを浮かべて静かに辞去した。
―――とは言え、この女貴族が身を浸す日常の刺激が刺激である。何事も起こらぬ平穏に退屈を覚えるのも当然早い。カチャ…と静かにティーカップを置いた繊手で作る頬杖に顎を置き、切れ長の紅瞳に退廃の気配を滲ませながら往来を眺める。
■エウレリア >
「――――…帰りますわ。馬車を。」
純白のナプキンで口元を拭いつつ告げれば、背後でじっと佇んでいた麗人が短く応えて足早に宿の厩舎へと向かう。当然、払いも彼女が済ませるため、貴族娘は馬車が店の前に横付けされるのを只待つだけ。
程なく二頭引きの馬車が貴族娘の前に停車したのなら、ゆっくりと立ち上がり、額の汗を拭きつつ小走りに近づいてきた支配人の大仰な挨拶を片手を持ち上げ止めさせて
「良い時間でした。また来ますわ。」
切れ長の流し目を一瞬だけ彼に向けて告げると、馬車に乗り込み店から立ち去る。何事もなく狂剣士を見送る事の出来た支配人は、心底からの安堵を長い溜息に乗せて吐き出した後に通常業務に戻るのだった。
ご案内:「富裕地区 オープンカフェ」からエウレリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区2」にノーガルトさんが現れました。
■ノーガルト > (非武装地域の片隅で、ノーガルトは一人木陰から広場を見ていた。
贔屓にしてもらっている商人の護衛以来、まあいつもの仕事を請け負っているわけだが。
正直に言えば――――あくびが出るほどに暇だ。
このあたりはまず、入るためには騎士団の厳しい目にさらされる。
当然だ、このあたりは貴族街に非常に近いところに面している。
貴族を守るための騎士団が駐留している場所だからこそ、あくびが出るほど暇なのだ。)
「…………………。」
『事件でも起きないものかと考えていますね、ノーガルト。』
(頭の中に響くハバキリの声に、ノーガルトは無言のまま苦笑した。
遠巻きに、商談中の貴族や商人を見ながら…本当にそう思っているから、何も言えない。
何かしら事件でも起きてくれれば、自分がここにいる意味もあるのだが…と。)
■ノーガルト > 「…平和なことはいいことなんだが…な。」
『……我らにしてみたら、それは退屈ということにほかならんぞ。』
(ここで何も起きないほうがいいことは、ノーガルトもわかっている。
騎士団が護っていて、そしてさらにその奥には自分たち冒険者の雇われがいる。
正直、ここに長居はあまりしたくないのだが…。
周りの貴婦人たちの目が気になる。
当然だ、着飾っている彼女らからしてみたら、黒い外套をしているノーガルトは非常に異色に見える。
平民程度にしか着飾っていないノーガルトは、この場所には似つかわしくないとでも言わんばかりに。)
「……仕事なんだから仕方がないだろう……。まったく、さっさと終わらせてくれないものか…。」
(肩をすくめながら、その視線にノーガルトは悪態をつく。
舌打ちをしながら、できるだけ目立たない木陰にいるのだが…まあ、それでも目ざといものはいるわけで。)