2021/10/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル >  比較的治安のいいとされる平民地区と云えど、表通りを一本入ると。
 貧民地区に近い場所となると。
 それなりに危険な場所もあれば、掏摸やら引ったくりやらカツアゲやら……そんなケチな犯罪で賑わう場所もある。
 ここはそんな一本路地に入った裏通りの一角で、そういった場所に似合うのは――、

 ばきっ

「一昨日来いって云うのよ…!」

 肉の打ち合うような鈍い音。怒気を孕んだ声。乱れた呼吸。
 それは、故郷ではゴリラ女の名を欲しいままにした特攻型ヒーラーとチンピラとのタイマンな一幕。

 袋小路になった人気のない通りでストリートファイト繰り広げる、19歳ヒーラー女子とは思えないゴリラと対するのはチンピラ風情の男。黙って歩いてれば一見大人し気に見えるそんな女をカモとして金を巻き上げついでに力づくで――などとヨコシマ満載な。
 しかし、薄暗い通りを一人で歩いていた、ちょろい獲物としか見えなかったその女が予想外過ぎる反撃を見せるのに当初一歩出遅れていた。
『中身ゴリラじゃねえかァ!』
 それは男の実際の声か心の声か。若干後悔した心境ではあったらしいが――そこで易々とこんな小娘に気圧されては名折れとばかりに、安っぽい矜持を抱いていた為――戦いのゴングは鳴ってしまったのだった。

「わたしが云うのもなんだけど! あんた倍くらいはでかいガタイしといてちょっとは手加減しなさいよ!?」

 ゴリラの分際でハンデを求めるが、チンピラからしたら『ふざけんなゴリラ』としか云いようがない。

 ゴリラはゴリラで、相手がただのチンピラにしては腕が立つことに少々焦りを覚え。さらに無手であることに不利を感じていた。

 先ほど、回し蹴りを一発男の脇腹に放ったはいいが、ダメージが軽かったらしく足を振り抜いたところで出来た隙を衝いて拳が容赦なく耳の付け根辺りにヒットして、よろけてしまう。

「ッ……」

ご案内:「王都マグメール 平民地区」にタマモさんが現れました。
タマモ > 王都マグメール、平民地区。
そこに限らず、富裕地区だろうと、貧民地区だろうと、少女は散歩をする。
とりあえず、今日の散歩は平民地区だった。
まぁ、散歩道は、いつもの屋根の上だが。

「………うん?」

そんな散歩の途中、裏通りから聞こえる声。
ぴくん、と耳を揺らせば、ふらりふらりと、そちらへと向かう。
とん、とん、と屋根を移り、その声の場にまでやって来れば。

「はて…はてはて、あれは?」

見下ろす視線の先、姿が見えたのは、見覚えのある少女の姿。
一緒に居るのは…誰だっけ、見覚えのあるような、ないような。
もしかしたら、単に身包みを剥いだりして、遊んだ相手かもしれないが。
それなりにでも、楽しめた相手でないと、ほとんど覚えてないのだ。
ともあれ、片方は覚えがあるのは確か。

ふわり、身を翻せば。
音もなく、二人から、少し離れた場所へと着地する。
状況的には…喧嘩?止めるべきか、止めないべきか、はやし立てるべきか。
そんな考えを浮かべながら、まずは、状況把握だろう、と見詰めるのだ。

ティアフェル >  ふら、とまあまあキレイにヒットした拳にたたらを踏む。そのまま倒れる程ヤワではないが、素早く追撃に反応するにはダメージを食らってしまい。

「……ぅ、っく……」

 続いて鳩尾に放たれた膝蹴りに対応しきれず、直撃ではないがノーガードで受けてしまい、咄嗟に後ろに飛びずさるが痛みで膝に力が入らずがく、と頽れてしまい。

「………っや、ば……」

 遅れを取った、と奥歯を噛み締める女に向かって形勢有利と踏みゆうっくりとした歩調で石畳を踏みしめ男は迫っていた。

 そんな風に切迫と云えば切迫中の状況。ギャラリーが一人二人増えたとしてもそうは気づく余裕もなさそうで。
 迫りくる男に向かって、そのまま好きにさせて堪るかと云わんばかりの眼力で、ぎっと鋭く睨めつけ。

「……やってごらんなさいよ……食いちぎってやる……」

 不穏当な科白を吐き捨てるが鳩尾を抑えながらの威嚇では気迫が足りてないかも知れず。
 相手の方は怯むこともなく、むしろ下卑た笑いを刻んでは、もう少しかわいいところを見せれば痛い目水には済むのだ、と神経を逆なでするような常套句をほざきやがる。

タマモ > ふむ、と頷く。
状況と、会話の内容から…やはり、喧嘩か?
膝蹴りを受けた少女を見れば、これは圧倒的に、少女が不利となったと分かるだろう。
ゆっくりと、音を立てずに近付いて。
もう少し、はっきりとした確認をしようとするも…

「………む」

その姿が、はっきりと見える距離まで近付いて、それに気が付いた。
少女の側頭部、耳の付け根辺りに、少々痣っぽいものが見える。
ぴしっ、何かが反応した。

「いかん、いかんのぅ…可愛い女子、その首から上を狙うのに、跡を付けては。
そうせずに、上手い事するのが、男子の腕の見せ所じゃろう?
まったく、そんな程度では、女子を襲う資格なんぞ、ありゃせんぞ?」

いや、喧嘩をしてたと判断してたのに、なんで襲ってる事になっている。
少女の考えが読めていたならば、そんな突っ込みが入るところだろう。
まぁ、それが出来る者が居る訳でなし。
気にせず、そんな言葉を、男の背後から投げ掛けるのだ。

ティアフェル >  この男ももっとやりやすいヤツをタゲれば良かったし、こんだけ抵抗されたらちょっとものを考えられるタイプなら小面倒なのでタゲ変更、と切り替えて諦めるものだろうに、残念ながらおつむの足りてなさと腕力は反比例するらしく、この有様だ。
 ――だから、顔にも身体にも容易く傷をつけるし気にも留めない。
 そんなことに横槍を入れられるなんて、さらに誰もが予測していない事態である。

「………は、ぃ……?」

 当初わざわざ気取られないようにするかのごとくそっと屋根から降り立って様子を窺っていたことには気づかなかったストリートファイターたちであったが、声を程近くで発されればそれはさすがに聞きとめる。
 暗がりから聞き覚えのある声と、徐々に薄暗い街灯の範疇に浮かび上がる姿があれば先に眼を見開いたのは女の方で。
 男の背後ということで小柄な少女の顔かたちは判然としないが――なにせ九本という異常な数の尻尾が彼女が誰かを強く物語っていた。

「タ、タマ……?」

 絶句する女と対照的に男は背後からの声に面倒くさそうにちらりと一瞥だけくれて。関係ない奴はすっこんでろとかなんとか、そんなテンプレな科白を吐き出すばかりで。獲物を狩る邪魔をするな、と忌々し気な眼差し。

「――形勢逆転、よ? それはわたしのお友達! そして――チートスキルの妖狐さん!
 タマモさん! そいつやっちゃってください! 後で奢る!」

 その男につく理由が恐らく妖狐にはないだろうし、損得計算をすれば縁もゆかりもないゴロツキよりは友人としての関係性のある方に加勢するのが常道だと踏んで、とりあえず哀願(?)を試みた。
 お願いしまーす、お願いしまーす!と手を合わせて願い奉る信者をそうそう無碍には扱わないと信じたい。

タマモ > 普通に考えれば、喧嘩なんて、関わるだけ無駄。
むしろ、被害を被るだけで、悪い事しかない。
まぁ、正義の味方気取りの連中なら、しゃしゃり出て来るかもしれないが…

「おばんじゃな、こんな場所で、元気な事じゃのぅ?
………じゃが、そこで、ちゃんを付けたら放置するぞ?」

己の名を呼ぼうとした…いや、それで呼んだと取るべきか。
そんな少女へと、そう伝えながら、挨拶と共に、ひらりと手を振って。

「いやいやいや、お主、妾の言葉、聞いておったか?
女子を獲物とするならば、その扱い方もあるものじゃろうが。
頭を打つ、腹を蹴る、遊ぶのに傷物にしてどうする?ん?
………気が変わった、その獲物、妾が奪ってやろう」

その顔に、張り付いた笑みを浮かべれば。
己へと一瞥だけし、少女へと向き直る男の背後に付きながら、そう言葉を紡ぐ。
その言葉だけ聞くと、少女自身も、素直に喜べるようなもの、でもない気はするが。
それに反応し、鬱陶しそうに、男がこちらへと意識を向けた、その瞬間。
ぱんっ、と不意打ち気味に足首が払われ、その図体が、後頭部から地面に落ちる。
上手く受身を取れれば、事無きを得られるだろうが。
それが出来なければ、頭を打つなり、背中を打つなりする事だろう。

ティアフェル > 「……? え? いつも呼んでるじゃない……?」

 タマモちゃん、と呼んでいたはずだ。それを今まで咎められたことはなかったが、今日に限ってご不興気味で、きょとんと眼を瞬いた。

 そして、女の扱い云々には、意味の分からないという表情で、ごちゃごちゃ鬱陶しい、と妖狐の口上には微塵も取り合わないが、知り合いか、と獲物ときめた女と見知った仲のものが来たとなれば非常に面倒くさい。華奢な女二人くらいは見た目通りでさえあってくれれば造作もないのだが、何せその一人の方はゴリラである。
 ゴリラを襲っていたらキツネが出てきた。お伽話にもならないような謎展開に、いい加減苛立ったかのように、ダメージを負った女よりも元気な新手を片づけようかと気をやった瞬間、奇襲。

「奪……ッ、はともかくとして――よっしゃ死ね! この社会の迷惑!!」

 男のでかい図体と安定のありそうな重心を諸ともせず容易く背面から転倒させてやった鮮やかな手並みにして完全なる隙を逃す訳もなく、二人がかりという卑怯さに関しては考慮にすら入っておらず、石畳に派手に転がる男の腹中へ向けて、がすがすがすがすと何の容赦もなく右足を幾度もめり込ませ。
 全力で散々に踏みつけまくると、早々白目を剥きだしたので。とりあえず泡を吹くくらいまではもうちょっと踏んだり蹴ったりし。

「はいご臨終ー。いっちょあーがり」

 完全に意識が途絶えたことを確認していえーい、と声を弾ませた外道。

タマモ > 「あー…いや、良い、何でもないのじゃ」

微妙な拘りではあるのだが、『タマモちゃん』は良い、『タマちゃん』は悪い。
きっと、そんな微妙なニュアンスの違いに気付いてない、そんな少女の様子に。
良い良い、と手を振って誤魔化した。

「ふふんっ、愚か者めが。
人の言う事を、ちゃんと聞かぬ報いじゃ。
…まぁ、妾は人ではないがな!
さて…ついでじゃ、ちと反省して貰おうかのぅ」

足を払い、転がった隙を見逃さぬ少女。
その男の腹部を踏んで踏んで踏みまくる、そんな少女を止めもせず。
事が終わった後、そんな台詞を、偉そうに男へと吐き捨てた。
…気絶、してしまったようだが。

そんな男に、声を弾ませ、喜ぶ外道。
更に、男の傍らに屈み込み、もそもそと何やら漁り出すのは、男の所持品やら所持金やら。
それを、懐へと収めるド外道。

見る人が見れば、どう思うかは、お察しである。

ティアフェル >  何でもない、と応じる声にやはりどこか腑に落ちないながらも、そこで微に入り細に入り突っ込んだところで嫌われるだけというのは、大人としての考えで。

 横槍を無視したからこそのオチなのか。
 そもそもここで素直に「あー。そうですよねー!」なんて明るい声で納得して応じるゴロツキ風情がいるものなのか。
 それはともかく、一撃やそこらで解決するなんて甘い真似はせずにご丁寧にトドメを刺して男を深く深く黙らせた女は、ふぃー。ぱんぱん、と息を吐き出し手を打ち払うというベタな所作を終えて、それから、ヒール、と短く唱えて男にどつかれた箇所を癒した。
 赤くなっていた頭部も傷んでいた腹部もすっかり回復させると、その間にこそこそ身包み剥ぐような、というか結果強盗状態の様子をやや呆れた眼で見やって。

「いや……うちからカツアゲしようと思てたくらいだから……大して持ってないっしょ」

 そこらの女から巻き上げようとしていて失敗に終わった男の懐はかなりうら淋しく財布らしきものはぺったんこ。
 所持品も換金価値のないものが多く、鑑定眼を要しそうだ。
 しかし片方担いだ、という事実になってもアレなので一応棒読みでこう云っておく。飽くまでも形だけ。

「ヤメトキナヨー」

 やろうがやるまいが、どっちでもいいんですけど、わたし、止めたんです…という体裁はとれる。

タマモ > うん、相手が一応は大人としての考えで、助かった。
その方が、嫌ったりはしないが、面倒じゃないし。

実際問題、そこであっさり引き下がってくれたなら、こうはなるまい。
そんなのが居たら、逆に面白いかもしれないが。
ともあれ、やる事やって回復をしている少女の横で。
男の懐を漁ったが、出てきたのは財布らしき物、のみ。
ふむ、と軽く思案をすれば…

「身包みでも売れば、軽く食べる程度にはなるじゃろう。
…おや、止めるのか?困ったのぅ?」

とか、そんな事をのたまう始末。
そして、ごそりごそり、本当に身包みを剥がす。
小柄な少女による、大柄な男の身包み剥がし、そうそうお目に掛かれないものだろう。
しかも、形だけでも止める少女には、同じ棒読みで答えていたり。
そう答えつつも、やる事はやったり、酷いものである。

「よし、して、これが売れるような場所、どこかのぅ?
それを終えたら…奢らせるだけで、勘弁してやろう。
獲物として奪ったのに、それで済ませるのじゃ、ありがたいじゃろう?」

その言葉から、本当に、やる気満々なのだと思わせて。
…まぁ、気が向いたら、その前とか、そうしたツケを払わせるのも、面白そうだが。
そんな事を、頭の片隅で考えながらも、言葉にはせず、だが。

後は、どうするか、少女次第とも言えようか。

ティアフェル >  細かいことも小うるさいことも進言する気はあんまりないが、しかし一連の彼女の言動などで一番引っ掛かったのは、男の懐を漁っても大した収穫もなく、ついにはマジで身包み剥ぎ出して云った言葉。

「タマモちゃん……そんな、そんなに食べるのに困っているのならゆってくれればぁ……ッ」

 いつも飄々として別段身なりが悪いとか赤貧に喘いでいる様子とか、そんなものは見受けられなかったのでちょっとショックである。
 あと、こんな男の脱ぎ立て古着って臭そうだし買い取り拒否されるというオチにはならないだろうか心底心配である。

「いやっ、もう、いいよ、こんなもの売りに行かなくっても、質屋も古着屋も閉ってるし……ごはんくらいいつもお世話になってるタマモちゃんにだったらいくらでもごちそうするから…!」

 わたしとあなたの仲じゃないの!とそこまで懇意という訳でもないと思うが、友達扱いしている身なので感極まったように彼女の双肩に両手を置いて、ふるふると首を振りながら主張した。

「そんなボロッキレ、雑巾にでもして棄てちまうといいよ…!」

 取り分けばっちい場所を拭くくらいにしか使用できないと思うけど!と男に関係してのことは遠慮なく悪口雑言で。

タマモ > 何を勘違いしたのか、何やら説得をし始める少女。
かくん?と首を傾げれば、剥いだ男の衣服をぺいっ、と放り。

「いやいや、別に食べる分には困っておらんぞ?
こうした連中は、一度される立場になれば、少しは理解する、そう思ってな。
別に欲しくは無いが、一応、こうしておるんじゃ。

妾としては、本当は食事よりも、お主の方が、欲しいものなんじゃが。
ふふ…まぁ、それは、なかなかに難しいものじゃろう?
ゆえに、とりあえず、そのごちそうのある場所の案内を、お願いしたいのぅ」

よいせ、と立ち上がれば。
何か、色々と酷い事を言っている少女へと、更に一歩踏み込んで。
そう伝えながら、その身を寄せ、少女の顔を覗き込む。
まぁ、こうした色んな反応を見せてくれる少女、それを見るのも楽しい、ともあるが。

ティアフェル > 「いやあ……、痛い目見せて懲らしめても、こういうおバカは経験上反省しないと思うよ?
 そんな賢かったらそもそもこうなってないっていう。
 学習能力のない奴の末路よ……このまま野垂れ死んでくれても一向に構わない」

 けれど勝手に死ねとは思うが殺してやろうとまで構う気はない。
 取り敢えず、はがした男の服を放り投げた様子にどこかほっとし。

「? わたし? やーねえ、もうこの心はあなたのものよー。なーんて。
 タマモちゃんって雑食なのかしら。
 うん、任せて任せて。深夜だからちょっと割高だけど……なーに、タマモちゃんの為ならわたしの財布が火を噴くぜ」

 火の車的意味でだが。
 どん、と胸を叩いて覗き込まれるとにこ、と笑いかけては。

「だから、是非ピンチな時は毎回毎回遠巻きにせず、ストレートに助けてね! わたしもきっとそうするわ!」

 どんな場面に出くわしても、最終的には助けて(?)くれるけれども、大体どうにもならなくなるまでは見ているスタンスの彼女にそんなお願いをひとつしてみては、はぐ、と近しい距離をいいことに両手を回して軽く抱擁し。

「それとも、ぜえんぶ捧げないと助けてくれないのかしらねえ……」

 ちょっとぼやくように呟いた。

タマモ > 「まぁ、それはそうじゃがな。
本当は、こうしてやった反応も、見てみたかったが…
今回は、お主も居るし、見逃しておくか」

正しくは、普段は己一人なので、今回のように気絶するまで攻撃しない。
だからこそ、そんな姿が見られる訳だが…
とりあえず、それを考えると、今回の男は、その点は幸い、なのかもしれない。

「ふむ…本当に、そうなったら、それはそれで、面白そうじゃがのぅ。
雑食?いや、妾は一応、相手を選ぶが?
………ふっ、そんな事を言って、後で後悔するでないぞ?」

そんな少女へと、そうした言葉を紡ぐ訳だが。
真実は残酷で、きっと少女が考える程、財布の打撃は少ない。
何せ、己はどちらかと言えば、小食なのだ。

「………お主、一応、冒険者?とやらじゃろう?
よぅ分からんが、手を出して、余計な事とかありそうじゃからのぅ…
まぁ、そんなものもなく、素直に感謝してくれるならば、そうしないでもないが、な?」

身を寄せ覗き込めば、少女からの抱擁を受け。
せっかくなので、と己からも、ぎゅむ、と抱き付けば。
一応、こちらの考えは伝えておこうか。
前に、別の冒険者と話してた時、冒険者のプライドやら何やらを聞いていて。
安易に手を差し出すのは、との考えもあるのだ。
と言う訳で、この少女に関しては、この回答次第では考えておこう、と考えて。

「………うん?」

ぴくん、何か呟いたのは分かったが、正しく聞き取れず。
その呟きに、何?みたいに、反応を返しておいた。

ティアフェル > 「ええぇー? 趣味悪いよ……そんな反応見たいのー?
 いやぁ……分かんないなあ……」

 多趣味な人だ、と結論しておこうと思うが、それにしてもいい趣味とは云えない。
 見た目も残念なおっさん剥いてなにが面白いのか。後頭部をかしかしと掻いては。

「っふふ、ま、心ってゆーのは見えないもんだからねえ。どうなってるか分かんないよねえ。
 うん、一応って、ついたね、一応って……選ぶってのは分かったけど、一応がついたらねえ……。
 ――いーよいーよ! お金はこういう時に使うものよ! 遠慮しないでっ」

 大食漢は見慣れている。結構な額までの覚悟はした。
 だから実際に然程の量でもなければ拍子抜けして、もっと食べなくていいのか訊くだろう。

「あーねー……ま、手出し無用派っているよね。ってか、タマモちゃんはピンチな状況をみたところで危機感に気づいてないパターンも多いか……。
 わたしは、お願いしまーす! 助力ウェルカムで!」

 今後ともひとつ、とプッシュ。冒険者だからこそ、例え自力で乗り切れる局面でも的確な助力であれば有難く受け取る。危険を冒していることは解っているからより安全に乗り切れる道があるなら躊躇いなく選び取る。
 気絶した剥かれ男を尻目に道端でハグ、というなんとも絶妙な状況。

「ううん。さ、行こっか。お腹空いたんじゃない? わたしも軽く食べたいわ」

 聞き逃した様子に反復するのはどうにも野暮に思えて、にこ、と笑顔で首を振れば、抱き締める手は彼女の白い手に伸びてつなごうとする。
 そして、こっちこっちと終夜営業の店へと導きながら、半殺しにした男をほっぽって現場を立ち去らん。

タマモ > 「普段、弱者に対し優越感に浸る、そんな小悪党。
それが、逆の立場になる姿、と言うのは、面白いと思うがのぅ…むむむ…」

少女の意見に、逆に、えー?みたいな顔。
そもそも、そんな余力がありません、が普通の回答なのだろうが。
この少女ゆえの答え、と捉えるのが一番か。

「そうじゃのぅ、心を全開で開いてくれるならば、遠慮なく読ませて貰うが…そんな事、普通はせんじゃろ?
さすがの妾も、相手にするのは、と考える相手くらい、おるぞ?…多分。
よし、ならば遠慮無しでいってやろう!」

開け広げれば読めるとか、多分とか、色々と不安要素のある言葉が飛び交う中。
ふふんっ、と自慢気に胸を張ってはいるものの。
間違いなく、この先、そんな姿は見られるはずだ。

「………はて、何の事やら?
ふむ、ならば、お主を見たら色々とちょっかいでも掛けるのも、ありじゃな。
よし、分かった」

と言う訳で、晴れて少女に関しては、見掛けたら即登場となる訳だが。
その登場が、危険でない時でも…と、なってしまったらしい。
それが良い事なのか、悪い事なのか…それは、この先に分る事だろう。
気絶して剝かれた男?すでに、己の中では道路に転がる小石と同等です。

「おっと…よし、では向かうとしよう。
さて、どんな美味しいものがあるか、楽しみじゃのぅ」

どんなものであれ、奢りであれば美味しいもの。
それが、本当に美味であれば言う事なし。
そんな感じに、笑顔で伸びる手に、まぁ、己からも繋いだならば。
こんな時間にも営業している飲食店、とやらに、案内されて行くのであった。
残ったのは、完全放置された、ぼろぼろで半裸の男のみ。

ティアフェル > 「そんなもん? どエスなのは改めて分かった」

 そうだろうとは見当はついていたがやはり。
 変わった趣味だと肩を竦め。

「いきなり全開で心開いて迫って来るやつってどう考えてもヤバイ……。
 多分、と一応、がつく限りは然程高い選別基準でもないんだなーと。
 おう、どんとこいっ」

 遠慮なんかしなくていいさ、と晴れやかな笑みを向けてみるが……でも財布の中身という上限は存在する。
 最悪の場合を考えてツケの利く店にご案内しておく。

「頼んだっ。それにせっかく友達になったんだし、危険じゃないとしてもスルーされるよりは一声かけてくれた方が嬉しいよ。
 助けなくても良さそうだからほっといて行こうーってなるよか」

 おねしゃす、と改めて頭を下げておく。
 たとえ危険ではない局面でもちょっと出て来てくれれば、お願いしたいこともあるかもしれないし、何もなくても挨拶を交わしたりお喋りしたりと友人というからにはいろいろとできることもあるだろうと。

「んー。さすがにそんなゴーカなものばっかりは無理だけど……タマモちゃん、何が好きかなー?」

 できるだけ好物に沿うものを考えながら店までの道中あれこれと質問したり、他愛無い雑談を交わしたりと至って賑やかに。
 時折笑い声を響かせながら手をつないで、灯りの零れる酒場まで。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からティアフェルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からタマモさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にトーラスさんが現れました。
トーラス > 王都に幾つか存在する冒険者ギルドの支部の一つ。
とは言うものの、その実態は冒険者が客として集まる酒場兼宿屋であり、
申し訳ない程度に店内の掲示板に日銭を稼ぐための依頼文が貼られているに過ぎない。
それでも、1階の酒場では冒険者を始めとした荒くれ者や、彼らを相手に春を鬻ぐ娼婦、
その他にも飲食の為に訪れた一般客達にて相応の賑わいを見せていた。

その賑わいの中心、客達がそれぞれの卓にて同席の身内や仲間と思い思いの
時間や食事を愉しんでいる中で、独り、周囲の卓の客にちょっかいを掛ける中年男の影が一つ。
本来であれば、嫌われそうな行為であるが、誰も文句を言わず、また、店主も黙認する理由は至極単純で。

「いやぁ、運が良かった。ゴブリンの懐を漁ったら、宝石を見付けてよ。お陰で俺の懐が潤ったぜ。
 お、グラスが空じゃないか? マスター、俺の奢りで同じのもう一杯。ほら、乾~杯~♪」

等と、傍迷惑ながらも、明快にて、周囲の客達に見境なくも奢りを振る舞う故。
奢られた方は多少困惑するも、ただで酒が飲めるとあって強く文句を口にする事もできず、
店主も彼のお陰で儲かる上に支払い許容額も抑えている為に、この行為を見て見ぬ振りをする始末。

トーラス > 酒場の喧騒は暫しの間、止む事はなく――――
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からトーラスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にウェンディさんが現れました。
ウェンディ > 夜も更けて、人通りの絶えつつある広場の片隅。
さまざまな触れ文が重ね貼りされた掲示板の前、待ち合わせ相手は今夜も、
心配そうに肩を縮こまらせ、こちらをじっと見つめながら、
物言いたげに唇を、開いたり、閉じたりと。

しかし、こちらもいつもの通り。
にっこりと、子供のころから変わらない、と評される笑顔を向けて、
たった今、彼女から手渡された革袋を軽く掲げ。

「いつもありがとう、ヴァネッサ。
 助かるよ、………さ、もう帰った方が良い。
 あんまり遅くなると、娘さん夫婦が心配するよ」

老齢を迎え、お役御免になったかつての乳母は、溜め息を吐くように微笑み返す。

『ええ、若君様も』

―――――そう言いかけて、危うく口籠り。
これもまたいつもの通り、無言でゆっくり頭を下げて、振り返り、振り返り、
とぼとぼと歩み去って行く。
その後ろ姿を見送るうち、ふと、無意識に眉根が寄った。

「随分、小さくなった、……あんなに、小柄だったかな」

幼い頃、彼女のスカートの裾に纏わりついていた頃には、
もっと大きく、ふくよかに見えたものだったが。
何とはなし、もの悲しい気持ちになりながら、革袋を懐へ押し込んだ。

さて、これで懐は温かい。
今夜の宿を探しに行くか、それとも。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」に黒曜石さんが現れました。
黒曜石 > 老婆を見送っていれば、気付くだろう。
歩み去っていく彼女が、誰かに道を譲るように進路を変えたのが。
普通の通行人にそうする時と比して、大きく逸れる老婆の道筋。
そこを通って、とぼとぼと、あるいはふらふらと歩いてくる姿があった。

まるで荒野を数ヶ月彷徨ったような衣服を身に付けた男。
王都に暮らしていれば、路地裏に腰を下ろしていたり
あるいは冒険者ギルドで簡単な依頼を請けいている姿を見たことがあるかどうか。
口元は、笑みではなく緩み、膜がかかったような、けれども濃い瞳の黒が茫洋と会釈する老婆を映す。
向かう先は、彼、あるいは彼女が立つ掲示板。

「―――呪われた、男、か。」

そうして、もし、彼女が身を避けなければ、瞳がその美貌を映す。
乾いた唇が割れて、挨拶を交わすでもなく、無視するのでもなく。
消え入りそうな独り言のような声が、紡ぎ出した。
ひょっとすれば、聞き逃してしまいそうな微かな声音。
聞き流すのならば、彼女からすぐに視線は外れてしまうだろう。
ふわり――と薄片か、風に舞う塵のように灰が微かに散って。

ウェンディ > いつも、乳母との待ち合わせはこの時間帯だ。
真っ当な労働に従事する者ならば、とうに家に帰っている頃あい。
ときには酔漢と行き会って、絡まれることもあるけれど、
その程度の輩ならば、あしらうのはさして難しくない。

だから、最初は特に、気に留めようとも思わなかった。
乳母が向かう先から現れた人影、彼女と擦れ違うその姿。
視線を逸らさなかったのは、彼女に何か害が及ぶなら、
すぐに駆け付けようと考えていた、その程度の理由。

「――――――――?」

はて、何処かで見覚えのあるような。
近づくにつれ、記憶の片隅にこびりつく何かが刺激されるから、
なんとなく、視線の角度も、そちらを向いた躰もそのままに。
しかし、勿論、それだけならば、擦れ違って、それきりになる筈だったのだが。

「―――――― 待て」

男の唇が動いて、独白めいて零れる声音。
その一部、あるいは全てに、反射的に躰が動いていた。
考えるより先に唇が動く、右腕が、男の方へ伸びていく。
それだけで足りなければ、一歩、大きく踏み出しさえして。
黒曜の眼差しがひどく虚ろな、恐らくは関わるべきでない男の腕を、
この手で、捕らえてしまおうと。

黒曜石 > 酔漢でも、暴漢でもない。けれど無害ではない。
老婆に触れるでもなく、近付くでもなく過ぎる足。
そのまま流れるのならば、掲示板を一瞥して歩き去っていただろう男。
そこに、彼女の声がかかった。

「―――何か、用か?」

伸びる手を避ける筈もない。
女の右手は、男の腕を容易く捕えることが叶うだろう。
掴めば、衣服の下に秘められた人の身体の感触。僅かに高めの体温。
もし、魔力に敏感ならば人ならざるその気配さえ感じてしまうだろうか。
抵抗はしない。する必要がない。することを思いつかないように。
ただ――言葉を返して、彼女を見返す。
伽藍洞のような、ただ言葉を口に出しただけのような声音。

女の碧眼を見返すのは黒曜石の瞳。
薄っすら膜が張ったようなその光が薄らいで、彼女の瞳を捕える。
瞳孔が散大し切ったような深い深いそれ。

――彼女は気付くだろうか。
忠実な老婆も去った広場は彼と彼女だけ。
そこに、深々と音もなく火の粉が舞う。灰が踊る。
まだ微かに、けれども徐々に徐々に多く。

ウェンディ > 手を伸ばして、掴んで、引き寄せるように力を籠めた。
実際に近づいたのは、足を踏み出したこちらの方だったけれど。

真っ直ぐに、向き合う角度に、相対して初めて気づく。
この男には会ったことがある――――遠目に見かけた程度のことを、
会った、と称して良ければ、であるが。
その風体ではなく、容貌でもなく、その、眼差しのいろが。
あまりにも異質なものと見えて、近づこうとは思えなかった。
それでも、記憶から消し去ることも、また難しく。

多分、本能が警鐘を鳴らしたのだ。
けれど今は、それより何より、

「惚けたことを言うな、……今の。
 わたしに向かって言ったんだろう」

呪われた、男だ、と。

この姿になって、城を出て、ひと目でそれと看破した者は多くない。
皆無では無かったけれど、とても少ない。
だからこそ、問い質さずにはおれなかった。
真っ向から見つめ返されれば、黒々とした瞳はあまりにも空虚で、
呑まれ、吸い込まれ、食らわれてしまいそうだと思いながらも。
我知らず、男の腕を捕らえた五指にいっそう力が籠り。

「おまえ、いったい、何を知っている。
 ―――――いったい、何が、見え、て」

そのとき、気がついた。
ゆうらりと、ふうわりと、舞い踊る灰のような、火の粉のような。
はっと息を呑んで、周囲へ視線を巡らせる。
誰も居ない、男と、己自身だけしか、居ない。
これ以上、ここに居てはいけない、と―――――そこに考えが至るまで、
僅かに数秒、けれどそれは、致命的な隙ともなり得る『間』だ。

黒曜石 > 遠目に見た記憶。それがどこだったか。
きっと、彼にはその記憶もないだろう。
けれど、そんな過去を探るのは意味はないだろう。
今こうして、彼女は彼に触れて、彼を見て、捕らえたのだから。
もしくは、捕まってしまったのだから。

「ああ、そんなことか。
 他に誰かいるのか――?」

平坦な声が、切実な声音に答える。
美しい女、あるいは呪いをかけられた麗しの若君。
それに向けるには、不似合いな眼差し。
散大した瞳孔を覗き込めば、それが一度収縮して彼女を“視た”。
一瞬だけ、また散大していく――代わりに、伸びた腕が彼女の手首を掴む。
五指で手首を捕える。白く細い手首を、しっかりとした力で。

「――何を知っている?何が見えている?
 お前も知っていることだよ――だが――」

“――足りないか?”

と、空気を震わせずに言葉が“聞こえた”気がしたかも知れない。
深々と音もなく、火の粉が降る。影もなく灰が降る。
まるで時間が止まったかのような錯覚。
腕を振り払うのならばそのまま、逃れることも適うだろう。
けれど、そうしなければ、そうできなければ――火の粉と灰がすべてを覆ってしまうか。

ウェンディ > 触れた指先に、掌に伝わる温度を、そこから滲みる異状を。
そもそもすぐさま『そう』と認識出来たならば、このような呪詛を受けることも無かったろう。
恵まれた血筋、家柄、けれどその躰は何処までも、悲しいくらい、
普通の人間の域を出ない―――――だから。

「そういうことを、聞いてるんじゃない、
 ―――――― な、にを、……」

問い返す愚を、見つめ返す愚を、伸ばされた手を払い落とすに、僅かに躊躇うという愚を。
それだけ重ねてしまえば、もう、充分過ぎるほどであろう。
周囲の景色が、舞い散る灰に降り込められたよう、見る間に色を失くしていく。
灰白色と、漆黒と、その二色だけが強く、鮮やかに迫る、

「お、まえ、………なんの、術を、――――――――」

その声を、聞く者は居ただろうか。
逃れるべき時に、逃れるための一歩を踏み出さなかった、
愚かしくも傲慢な『王子』はそうして、黒曜の瞳に囚われてしまうことに。
舞い落ちる火の粉に捲かれ、灰色の闇に呑まれた、その先は――――――――。

黒曜石 > 「術ではないよ――」

問われた言葉の答え。
欲しかった答えではないだろうその言葉。
それを聞いたものがいるかいないか。

いずれにせよ、灰と黒がすべてを塗り潰していって――。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」から黒曜石さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からウェンディさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 目貫大通り」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 目貫大通り」にスエード・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ > 王都マグメール 平民地区 昼間 天気は曇りがかる晴れ
日の明かりだけでなく、大きくいくつもの瘤が連なる雲が時折流れていく青天
煩わしいと思うことはなく、日の光と雲影が目貫大通りを加減していく

辺りに広がる露天商 壁際で己の城を構えた店々 横行する荷馬車
様々な人種が行きかう中で、貴族という身分での移動手段にこだわらず
メイラは異国の剣である刀を一刀腰に下げ 隣には褐色の長身を連れて歩く

長い黒髪や赤い瞳 ギザ歯の姿に加え、全身を黒 唯一色で固めた姿
それは周りの冒険者の多彩な色合いや 革やマントなどの地味な迷彩にも使える衣服に比べると
喪服よりも目立つ色合いかもしれない
刀の柄を左手に包ませて歩く姿は、まるでカタギ者ではないかのように身をすがら避けて通る者もいる

メイラ自身、それはいつものこと
城の中も 貴族の群れも そして戦場も どこへだって 自身と並べ合う者以外慣れ合う種類ではない
だからこそ、意識しているのは隣を歩く褐色の女一人 スエードになる


「色々と金がかかりましたわね。」

ここ数日 戦場や約束事など 主に誰かと出歩くことが多かった日
プライベートな時間の空きがあると、メイラは自身と戦場やどこかに赴くことが多い一人と
こうして買い物がてら出かけていた

装備はともかくとして、サイズの寸法を替えた身なりを整える衣や下着
メイラ自身の、腰に下げる刀を下げる革ベルト 色々と入用なものが多い時間を
わざわざ自身の廷に招いて図らせるよりも 各々の店に出歩いて整える

肥え豚貴族やお高く留まる者らに比べ、行動力の違いだろうか
それが如実に表れながら会話を広げていく

平民地区に赴いた理由はといえば、富裕地区に比べ平民地区は
稼ぎを膨らませた冒険者が一度 入ってみたがる店や良質な店などが多いせいだ
それこそ、貴族らが庶民の味を求めたり、昔気質な媚びない職人のもとを訪れる
それだって、この世界の現実 王道の現実である

「腹が減りましたわね 近くに肉の旨い店がありましたわ。 行きましょうか。」

出歩き、選ぶ時間が過ぎれは身体は己の時間を取り戻す
思い出したように空腹を訴える身体に応えると、進むべき道は己が決めるとでもいうかのように
その勧めの店へとズンズン赴いていく。

スエード・ダンタリオ > 王都の平民地区の昼間
天気はなかなか良くて、時折視線を空へと向けつつ
露天商の活気のある呼び声に目を向けて商品を流し見たりと視線は忙しかった。

それでも、一番に視線が向かうのは勿論隣の相手
此方も左腰に刀を一つ下げて、相手の連れにふさわしい
行動をと心がけるように姿勢はしゃんとしているが、視線だけは相手になにかするのがいないかを確認するようにウロウロと動く。
不躾な視線を向けるものには睨みを効かせたりと。

それでも、相手が堂々と歩き、それを避けている人がいるというのも事実で
こうして気を張っているのも雰囲気に水を指すのではと思い途中でやめた。

「ひひ、メイラに金はかかるさ。いい女だからねぇ」

此方の知っている貴族と違って相手は自分で行動する
それに新たに敬意を評しつつ、買い物に出かける際は
誘われるたびに絶対に頷いてついていっていた。

此方が主に恩恵を受けていて、最近出っ張った胸や尻で鎧を買い換えることになったり。
腰のベルトなどや、その他必要なものを相手に選んでもらいつつショッピングを楽しんでいた。
相手に選んでもらったものはとても嬉しそうに感謝の言葉を告げて宝物のようにそれを身に着けた。

「あら、そうなのかい? メイラのおすすめの店だ。期待してる」

相手のおすすめの店はどんな店なのかと想像を膨らませつつ
己が道を行くように歩く相手へと送れずに、しっかりと隣を歩いてついていく。