2023/09/19 のログ
ご案内:「鏡の中の世界」にペッツルートさんが現れました。
■ペッツルート > (鏡に映り込む姿を鏡の内側から覗き込んでいる悪魔がいた。
女の肉体はいつ見てもそそられる。鏡の中に封じ込めた魂の女をゆっくり弄る事もある。
ただ、今日は気分が異なった様子だった。多少のリスクはあれど他の鏡と自分のいる位置を接続して、いくつかの鏡を盗み見ている。
鏡に映る姿が僅かにゆがんだり、歪な魔力を鋭敏に検知出来る相手なら危険もある。
危険もまた一つの刺激のスパイスだ。――鏡に映るのは果たして、人間か、人間ではないか。魔族か、それとも自分より格上の相手だろうか。)
■ペッツルート > (やがて他の鏡との接続が切れていく。
再び自分の本体の鏡へと戻り、捕らえた魂と戯れと言う名の爛れた宴が開催される事だろう。)
ご案内:「鏡の中の世界」からペッツルートさんが去りました。
ご案内:「欲望の街『ナグアル』第十一区」にセーレさんが現れました。
■セーレ > 【待ち合わせ】
ご案内:「欲望の街『ナグアル』第十一区」にサテラさんが現れました。
■セーレ >
「…はぁ、相も変わらず碌な願いがないなぁここだと」
どこか疲れた様子で、呆れたようにそう言うのは、天使のような少女──いや、正確には魔族の少女/少年だ。
その身に纏う純白の翼と頭上に煌めく光輪が、それが人ならざる者であるという証明である。
それは金色の天秤を揺らし、そこに乗せられた禍々しい”何か”を眺めているようだった。
そしてその表情には、どこか哀れみのようなものが含まれているように感じる。
しかしそれも仕方のない事だろう。ここは欲望渦巻く魔族の国、ナグアル。
誰もが己の欲望に忠実であり、それ故にその願いは大よそにして醜悪なモノばかり。
そんな者達の世界において、願いを叶える力を持つ少女/少年…セーレからすれば溜息の一つも出るものだ。
しかして、願いを求めるものが居なくなることは無い。
聖堂のようなセーレの居城のその中央で、今日もそれは客人を待っていた。
■サテラ >
「セーレお姉様ー?
お姉様ー、いるー?」
聖堂のように厳かな廊下に、大きく響く声。
片手には大きなバスケットを持って、かつんかつんと蹄を慣らしながら、聖堂の主を探して歩く。
「うーん、やっぱりここかなー……あ、いた。
やっほーお姉様、久しぶりー!」
そう言って、どことなく元気のない天使に、春風の様に明るい笑顔で手を振りながら。
天使を慕う、人馬の訪問客はやってきた。
■セーレ >
「お姉さま…ねぇ」
耳に響く快活な声に苦笑しつつ、セーレはその来訪者を出迎える。
お姉さまと呼びながらもその背丈の差、容姿の差はまるで逆。
幼い子供ように見上げる形で、セーレは来訪者を迎える事となった。
「やっほ、しばらくぶりだねサテラ。
いい加減、その呼び方止めないかい?」
どうせ変える事は無いと分かっていながら、それでもそんな軽口を叩く。
このやり取りはもはや様式美と言ってもいいものなのだが、セーレとしても本気で嫌と言う訳ではない。
まあつまりは、いつものやり取り、というものだ。
■サテラ >
「ええ?
それじゃあ、えーと……セーレ小母様?」
こつんこつん、蹄の音を鳴らしながら少々呆れているらしい天使の元まで懐っこく寄っていく。
天使が性別に縛られない存在である事は知っているが、幼少期に出会った頃の印象は今でも鮮明なのである。
「あ、あのね、今日は果樹園で採れた桃を持ってきたの。
今年はとっても甘くできたんだぁ」
そう言いながら、バスケットからとても色付きが良く、甘い香りのする桃を取り出して。
どこか自慢するかのように、天使の前に差し出してみた。
■セーレ >
「もっと見た目にそぐわない呼び方はやめてくれないかなぁ」
お姉さまでいいよ、と。諦めたようにセーレは返す。
しかして浮かべる表情は穏やかなもので、そこに不快感はない。
少なからず自分を敬ってくれるという存在を邪険にするほど、セーレは狭量ではないのだ。
「ん、お土産ありがと、サテラ。
領地経営はその感じだと上手くいってるみたいだね」
受け取った桃を一口齧り、咀しゃくして飲み込んでから礼を言う。
■サテラ >
「えへへ、それじゃ、お姉様っ!」
諦めさせたら、心底嬉しそうにするあたり、心から慕っているのが伝わるだろうか。
サテラにとっては、彼の天使は間違いなく幼少期からの憧れなのである。
「うん、色々手伝ってくれる人も増えたから、上手くいってるよ。
人間の移住者も増えてきたから、ちょっと扱いに気を使うところもあるけど……」
攫われてきた人間や、捕虜となった人間が、そのまま居つくケースが最近とても多いのだ。
これも、最前線が騒がしい影響なのかもしれないが。
「でも、わたしの領地はともかく、他のみんなの無駄遣いが最近多くて困っちゃう。
と、く、に!
あの牛頭とか……っ!」
ぐっと拳を握って、こめかみに青筋を立てながら、ギリギリと歯ぎしり。
序列も上、実力も上の相手が好き放題するので、随分と歯がゆい思いをしているらしい。
■セーレ >
「人間は脆いからね、あまり無茶はしないであげてよ。
…って、ボクが言ったところで、周りの欲求は収まらないだろうけどさ」
苦笑気味に、セーレは呟く。
特にこの国において、人はそれだけで一つの資源、引く手数多なのだから。
「まぁそれが魔族ってもんだよ、強ければ強いほど、分かりやすく横暴で唯我独尊なのさ。
程々に聞き流しつつ、それなりに対処するしかないのさ、ボクみたいに下の序列だとね。
……それが嫌なら、ま、自分を磨くしかないかな」
■サテラ >
「うん、そうなんだけど……。
うちの住民ってば、みんな人間が好きすぎるみたいで、いつの間にか人工が増えてるというか……」
どうにも、皆さまお盛んなのであった。
それ自体は喜ばしい事なのだが、あんまり放っておくと、人間の方が倒れてしまうので、フォローが大変なのだ。
「むぅ。
お姉様ってそういうの、すごく上手だよね。
自分でもわかってるんだけど、わたし、つい正面から行っちゃうからあしらわれちゃうんだろうなぁ」
あしらわれるだけならまだしも、大変痛い目に遭ったりもする。
怪我的にも、性的にも。
「うーん……わたしも、お姉様みたいな上手な世渡り、出来るようにならないとダメだよね……」
すん、とちょっと落ち込んだように肩を落とす。
自分の真っ正直すぎる性格に問題があると思っているようだ。
■セーレ >
「いい事じゃないか、人口が増えるのはおめでただし」
アフターケアに関しては口にしない。
そうしたフォローは彼女が善意でやっているもの、本来は必ずしも必要ではないものだ。
「そりゃあ、年期やら持ってる手札が違うからね。
ボクに関しては、それがないならそも序列からとうの昔に外されてるだろうけど」
そう返すセーレの顔はどこか飄々としたものだが、それは事実でもあるからだ。
このナグアルにおいて、セーレの力量だけで言えば、序列に組み込まれているのが不思議な程。
その持てる性質、能力と役割があるからこそ、不必要にはならないからこそこうして立ち回れている。
それをまだ若い彼女に要求するのは、少しばかり酷というものであろう。
それに、彼女は彼女のやり方で上手く回っているのだ。
わざわざ指摘する必要もない。
だが、それで納得できるかどうかはまた別の話なのだろうが。
■サテラ >
「そうなんだけどね。
なんていうか、その、自分にも子供が出来て、はじめて大変さが分かったって言うか、……あ」
フォローに走り回ってる理由の一部を口走ってしまって、まだ話していなかった事を思い出す。
「えっと、その、ユーちゃんとの間に子供が出来まして、えへへ」
照れ臭そうに頭を掻いて話す馬娘。
若気の至り、勢いも多分にあったが、それでも嬉しそうに話すのだから、後悔したりはしていないのだろう。
「……そう言えば、お姉様っていつから序列にいるの?
わたしが産まれた時……というか、パパとママが序列入りしたころには居た、って聞いたけど……」
見た目が魔族にとってほとんどアテにならないのはわかっているのだが。
目の前の、少女/少年ともつかない天使がどれだけ長い時間を過ごしているのか、とても気になるところではあった。
■セーレ >
「あ~……そうか、キミもそうそんな時期かい、おめでとう?」
そう言われて、一瞬きょとんとして。
それからすぐに、その言葉の意味を理解したらしく、セーレは純粋に祝福の言葉を贈る。
なるほど、もう子供がいてもおかしくない年齢にはなっているわけだ。
それはそれとして、相手が覚えのある、己より一つ位の上の子である事には、今は触れない。
「まあ残念ながら、おめでただからってボクから送れるものは無いわけだけど。
……して、何とも今更ながらな質問だねぇ。
はてさて、何時頃からだったかな、今の立場になったのは……前任者がいないのは確かだけど。」
天使はそう言って、首を傾げながら考え込むふりを見せる。
その仕草は可愛らしいが、中身は可愛いでは済まされないほどの長命であることを、それは示していた。
■サテラ >
「えへへ……ありがと、お姉様」
『今度、連れて挨拶に来るね』と付け加えつつ、祝われれば照れ臭そうに感謝を告げる。
「そんな、お姉様からはもう、色んなもの貰ってるもん。
お姉様から教わった事、沢山あるんだよ?」
自分がどれだけ彼の天使を慕っているか、いまいち伝わっていないような気がしつつ。
お土産がたっぷり入ったバスケットを目の前に置いて。
中には採れたての桃が沢山と、農場で採れたミルクを使ったチーズケーキが詰まっている。
「ええ……前任者が居ないって。
それって、序列のルールが出来る前から居たって事?
だから、お姉様はそんなに落ち着いてるんだぁ」
と、尊敬の眼差しが一層輝きを増したりする。
■セーレ >
はてさて、何を己から学んだというのだろうか。
肩を竦めて、セーレは苦笑する。
「こんなに大層なものを貰えるほど、大したことを教えたつもりはないんだけどね」
そして自分自身、セーレは己を尊敬に値するような存在だとは微塵も思っていない。
天使のようなこの容姿ですら、実態とはかけ離れている皮肉なものなのだから。
天使というのは、もっと純粋で清らかなもののはずだ。
少なくとも、今のセーレに天使と呼ばれる資格はない。
「ふふ、そこはご想像にお任せするよ。
ボクはまあ、ずっとこうだし、これからもずっとこのままだろうからね」
バスケットの中のチーズケーキを片手に、一口。
目を閉じながら、味わうようにしてセーレは答える。
■サテラ >
「お姉様にそのつもりが無くても、わたしが勝手に学んでるんだもん
わたし、お姉様にずっと憧れてるんだよー?」
幼少期、両親に連れられて挨拶に来た時に受けた衝撃は、未だ薄れない。
もちろん、この天使が今、どういう性質の存在か、わかった上でもだ。
「ふふ、よかった。
お姉様がこれからもこうしていてくれるなら、わたしも安心できるし……」
そして、じっとチーズケーキを食べる様子を眺めて。
「……美味しい?」
と、おずおずと訊ねるだろう。
実は初めて手作りしたチーズケーキなのである。
形は崩れておらず、使用した材料もシンプルなものだが。
その分味もシンプルなものになってしまってるので、口に合うか、ちょっとだけ不安だったりするのだ。
■セーレ >
「憧れるなら、ボクより狡猾な人か、真っ当な相手にした方が良いんだけどねぇ」
やれやれと仕草で示しつつも、それ以上に忌諱もしない。
少なくとも、悪い気はしないのだろう。
「んぅ?…美味しいよ、手作り感満載で。
凝ったことしてないあたり、ちゃんと腕前の自己分析もできてそうで」
嘘をつく理由はないので、そのまま感想を伝える。
少しばかり、褒める場所がずれているのは御愛嬌。
そも、普通の食事は不必要な身体ゆえに、褒め方がどこか雑なのは致し方が無いのだが。
■サテラ >
「お姉様以上に真っ当な相手……?」
言われた言葉に、真顔で首を傾げるのだった。
「ほんと?
よかったぁ。
ほらその、子供も出来たし、ユーちゃんも甘い物好きだし。
自分でお菓子とか作ってあげられたら、喜んでもらえるかなって思って……」
えへへ、とまた照れ笑いしつつ。
「でも、一番最初に食べてほしかったのはお姉様なんだよ?
わたしがパパとママの後を継ぐのを決めたのは、お姉様が居たからなんだもん」
なんて、少しばかり盲目じみた尊敬の念を抱いているのは、天使としては困るところなのだろうか。
とはいえ、実際にサテラが序列争いに加わった理由に天使が居たのは間違いないのだ。
■セーレ >
「……いや、わかるけどね?
こんな国で真っ当な相手に遭遇する方が困難なことは」
なんとも酷い言い草であるが残当であった。
「わぁ、真正面からの惚気、ご馳走様」
そんな軽口を真顔で返す。
己にはこれまでもこの先も、縁のなさそうな話には、そう返すしかないのだが。
「して、そんな因果がボクにねぇ……
いくらなんでも、尊敬しすぎな気もするけど…ま、あっさりボクくらいは軽く超えてるから向いてないとも言えないな」
■サテラ >
「そうでしょ?
特に、あの牛とか牛とか牛とか」
主にあの牛である。
いや、その上のお嬢様もかなりトンデモなのだが、彼女は色々と懐柔できる手段がなくはないので、扱いに困っても何とかなってはいる。
とはいえ、やはり真っ当とは言い難いかもしれない……。
「お姉様にもきっとわかるよお。
うちの子たち、すっごい可愛いんだもーん」
このデレデレっぷりである。
さてさて、この先、子煩悩になるのか、教育ママ路線になるのか。
未来は未知数……現状、前者の可能性が高そうだが。
「うーん、最初はタルフさんがすんなり明け渡してくれたし、お姉様だって、わたしを止めなかったでしょ?
だから、お姉様が安心して『いつもどおり』を過ごせるように頑張りたかったの。
ほら、わたしの方が序列高かったら、お姉様に何かあっても助けられるかもしれないし」
最初は領民のためだったが、それなら序列最下位に甘んじていてもよかったのだ。
けれど、頑張ろうと思ったのは、いわゆる下位とされる序列メンバーが居たからなのである。
「でも、いっぱい怪我したから、ウロおじさまには叱られちゃったけどね」
序列の争奪に挑む以上、当時の幼く未熟なサテラには相応の努力が求められたのだ。
その過程で、命に係わる怪我をしたことも少なくはないのである。