2023/09/10 のログ
ツネオキ >  
塵取り一杯になった塵をごみ袋へ放り捨てること数度ほど、
共同寮のほうからご飯のお呼びが掛かったもので掃除中断。

「先食べとってぇ? 俺お風呂先行くわ。湧いとる? おおきに~」

掃除道具も後片付けしたあとにお風呂とご飯が待ってる住処に向かっていく。

ご案内:「王都マグメール平民地区-葦原会」からツネオキさんが去りました。
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」にエレイさんが現れました。
エレイ > ──温泉旅籠内の、主に宿泊客向けに用意されたサービスの一つが、このマッサージ室である。

その施術室はいくつかの個室に分かれており、客は専用のカウンターで受付を済ませた後、各個室で待機しているスタッフと
一対一でマッサージを受けることになる。

なお、客にどのような施術を行うかは、スタッフの判断にすべて委ねる、というあたりはこの旅籠らしいといった所。
ついでに、各個室内には客に安心感を与え、施術への抵抗感を知らず知らずのうちに薄れさせてゆく効果を持った、
ほのかな香りのアロマが炊かれていたりもする。効果がどれほど出るかはその客次第なのだが。

「──さーて、今日もブブイーンと張り切ってやりますか、ねぇッ……と」

その中の一室に腕をグリングリンと回しながらやってきたのは作務衣姿の金髪の男。
知り合いからの依頼という形で臨時のマッサージ師としてやってきている冒険者、という立場は今も変わらないのだが、
もうすっかりここの一員として馴染んでしまっていた。
そんな自分に時折疑問を持たないでもないが、男自身としてもなんやかんやこの仕事は
気に入っているのでまあいいか、とあまり深く考えないことにしたのだった。

「今日はどんなお客が来るかねぇ……」

ともかく、男は施術台の傍のスツールに腰掛け、腕組みしながら客待ちを始める。
出入り口のカーテンが開かれ客が現れるか、あるいは魔導機械の通信機を通して客室への
出張依頼が来るか。
いずれかの訪れが、今日の男の仕事の開始の合図となるのだろう。
もしかしたら、受付を経ずに紛れ込んで来てしまうような珍客が現れる、なんてこともあるかもしれないが。

エレイ > やがてカーテンが開き、客が現れれば男は笑顔で迎え入れ──
ご案内:「九頭竜の水浴び場 マッサージ室」からエレイさんが去りました。
ご案内:「平民地区 神殿図書館」にヴァンさんが現れました。
ご案内:「平民地区 神殿図書館」にマーシュさんが現れました。
ヴァン > 学生達がたむろしていた時期も終わり、やや落ち着きを取り戻した図書館。
書籍用の台車を押しながら銀髪の男は受付へと戻っていた。

限られた予算でどの本を買うかの会議や、提携している図書館との本のやりとり。
男が図書館にいる時は比較的時間に余裕があるといえる。
忙しい時は配達だの何だのに回される。皆が知っている通り、本はそう軽くはない。意外と体力仕事なのだ。

台車を受付の端に収めながら、書架の方面に視線をやった後入口へと向き直る。
受付担当の後輩も比較的暇そうだ。執務室に入って書類の束にとりかかる前に、少しぼんやりすることにした。

マーシュ > 季節の移ろいは、図書館にあった賑わいを過去のものにしていた。
ある意味その静穏さは、本来図書館が備えるべきものなのかもしれない。とはいえ、人の波がひいた後のちょっとした寂寥はほのかに漂っているのかも。

女もまた夏の装いから秋の装いへと時節にあわせ。
目的の場所を訪れる前の寄り道をすませてから、図書館の扉をくぐる。

以前訪った時から数えて──少し間は空いたんだろうかと考えつつ。
見知りの受付嬢に頭を下げる。

「ええ、と」

用があるのは場所というよりも、ここを拠り所にしている誰か。
それを口にする前に──目当ての存在を見つけると少し眦を緩めた。

「こんにちは──、お仕事中でした?」

ヴァン > ぼーっとしながら書架の方面を見る。
本を持ってきて貸出を希望する姿はいなさそうだ。
これだと受付も退屈になるか、と後輩に視線を向けると――何故かとてもにこやかだった。
その視線の先を眺めて、意味を理解した。半年以上前にこうやって来客があった時、とても重い台車を押し付けたのはこの後輩だ。
後輩が何かを口にする前に受付から出て、来館者を出迎える。

「あぁ、ただ昼休憩をまだとってないから時間はあるよ」

残暑厳しい季節ではあるが、今日は雲もあって少し陽射しは弱い。秋の落ち着いた装いに変わっているのも頷ける。
この服装ということは今日は務めはお休みなのだろう。来訪の予定はなかったが、何かあったのだろうか。

「今日はここへは……?」

相手の持ち物を確認する。覚えている限りでは今、本を借りてはいなかった筈だ。
新刊が何冊か入ったからそれでも案内しようか、などと思いながら意図を尋ねる。

マーシュ > ───いつも図書館にいる受付の女性はにこにこしている。
受付としてそれは気持ちのいいものなのだけれど、……受付としての仕事以上に良くしてくれている気はする。
───何故なのだろうと疑問を口にする前、というよりは受付の方が何か告げる前に返事が返された。

「お昼は、ちゃんと食べていただきたいところですが……。そう、ですね──お時間を頂けるならありがたく」

訝しげな表情を浮かべながらもこちらに対応してくれるのに静かに頷いて、謝意を告げ。
それから───何か期待してそうな目を向けてくれる受付の女性にもちょっとだけ困ったように笑って頭を下げた。
今日はなにも、差し入れはないのだ。

「ええと、……ちょっとしたものをお届け、に」

用向きを尋ねられると、わずかに視線を逸らす。
ただ手に持てる程度の包みを手にしてはいる程度。──物持ちの少ない女は、さほど手荷物も多くはない。

ただ少し人目のない場所へ移動できるならその方が、と告げる。
そも、図書館の入り口付近だということも気にしつつ。

ヴァン > 時間をもらいたい、という言葉には気軽に頷いてみせる。
今日は昼休み中の受付当番を終え、ついでに書架への本の返却を行っていた。
遅い昼休みをとるのに何の問題もない。

差し入れがなさそうだと察した後輩は少し両眉の端が落ちて八の字を作るが、それでも楽しそうな視線を向けている。
男もそれに気付いたか、鷹揚に仕事に戻れと右の掌を下にしてしっしっ、と追い払う仕草。

「届け物……?」

不思議そうに首を傾げる。人目のない方が、という言葉も普段の彼女らしくない。
人目がない所だと外に出て中庭のベンチか、あるいは地下の宿直室か。哲学書のコーナーは以前のことを思い出すからやめておこう。
しばし迷ったが、外の曇り空は雨雲に変わるかもしれない、と思い至る。

「なら、宿直室に行こうか。――そういうことで、これから休憩に入る」

後輩に不在とする旨を告げる。行き先が宿直室と聞いた後輩の顔は再び活き活きとしはじめるが、そろそろ気にしない方がいいだろう。
階段を下りて、職員専用のツールを用いて警報を解除、過去一度だけ入った宿直室へと招き入れる。

マーシュ > 差し入れがないのにちょっと残念そうにされると、またお持ちしますね、と告げておく。
子犬になつかれてるようなそんな気分ではあるのだけれど、女としては理由がさっぱり思い至らない。
──お菓子が気に入ったのかな、と思う程度で。

先輩格である相手に邪険にされつつもへこたれないのは素直にすごい、と思うのだが。
………何故、行き先を聞いて彼女が活き活きとするのだろう、と胡乱な眼差し。
とりあえず当り障りのないあいさつ言葉を向けることにしつつ。
其処なら落ち着いて話ができることもあって特に否はない。

──何があったという場所でもないのも事実だ。

「……はい、──それでは」

館内では相手に従うような距離間で歩をすすめる。
しばらく見ないうちにまた蔵書の配置が少し変わったような、と林立する書架の並びを眺めながらだからなのだが。

宿直室自体は以前も足を踏み入れたことのある場所。
地下の警戒は厳重ではあるが、収蔵されている書物を想うなら普通だろう。

……少し懐かしさを感じて、小さく吐息。
クッキーとかお茶とか、そんな穏やかなやりとりのことをおもいだす。
もちろん人払いをして交わした不穏な会話も少々あるのだが。

ヴァン > 後輩の様子を見ながら、男は少し苦い顔をする。
この後輩は直接見てはいないものの、哲学書コーナーで2人が何をしたか、多分知っている。
そんな2人が宿直室に向かうのだ、勘繰りもするだろう。

『あ、はい。「ご休憩」ですね』

女でなければ殴っていたところだ。


本来図書館に宿直室など不要なものだ。過去、特別な立場の者達に夜間の貸出をしていたこともあるらしい。
今では狂信者の蛮行を防ぐために時折利用される程度。時々職員がサボったり休憩時間に仮眠をとったりすることが主用途となっている。
食事用のテーブルと椅子、そして簡易なベッド、それだけしかない部屋。
1つしかない椅子とテーブルをベッドへと寄せる。その後、男はベッドへと腰掛けた。

「それで、届け物というのは――?」

机の上に置かれるであろうものを興味深そうに待つ。

マーシュ > 「───…………」

含みがある。ものすごく含みのある言葉にさすがに表情が笑顔で固まった。
──それが彼女のにこやかさとつながる理由はさっぱり理解しがたかったが、含みやにこやかさの理由に至ったら自分はまずここから逃亡せねばならない気がしたので、それ以上考えることをやめた。

似たような思いに駆られてるのか、若干男の表情が苦い気がする。
己はともかく、この後大丈夫なのかなと思いはしたが、まあ。酒場の店主とのやり取りを思い出せば大丈夫な気はした。
あちらはあちらで妙な関係ではあるのだけれど。

宿直室の主な用途は以前聞いた気がするが、己の知る用途としては基本的に職員の休憩としての用途だとかんじていた。
保冷術の掛けられた容器にお茶なんかが用意もされているし。
仮眠をとるにはちょうど良い環境なのだろう。

つらつらと、記憶から引きずられるものを思い出していて、改めて言葉を向けられることで己の目的を思い出すと少し居住まいを正す。

己が移動を願ったのだから、と。
向けられる興味深そうな視線に、テーブルに置いた包みにこちらもまた視線を向ける。
大きさは手のひらより少し大きい程度。
防水用の油紙で包まれている形はきっと見慣れているはずだ。

此処には膨大な数のそれが存在しているのだから。

かさ、と、包装を解くとやはりそこには革装丁の書が現れる。
個人注文した装丁は金は入れられてないながらも箔押しで題字が刻印され、表紙には彫刻めいた陰影で花や植物の造形が刻まれた。
無造作にそれを手にして見下ろして。
確認を求めるようにそれを差し出しながら。

「…………こう、いつもしていただくばかりで。私があなたにお返しできるものが何かないかなと考えていたのですけれど」

欲しいものは大体彼は自身の手段で手に入れているし。
好きなものというのもさほど思い至らなかった。大体のものは彼の元にそろっているのだ。

困ったように眉じりを下げる。
だから己がたった一つ持っていたものを。

「写本ですが。それから──」

表紙をめくったら、そこにはやはり革素材で作られた栞が挟まれているだろう。
相手の家紋をモチーフにしたというのは彼が見ればわかるはず。剣を銜えたオオカミが彫り込まれた意匠。
彼が心を傾けている故郷と、家族との繋がり──というものへのささやかな。

何故、と問われるなら、それが先日もらった言葉への確たる答え。
こちらの心の置き所としての……容。

ヴァン > 掌よりやや大きい直方体、そして防水用の紙で包まれている。
おそらく中身は本だと思うが――人に本を送るというのはなかなか難しい。
蔵書によっては既に持っている、なんてことがあるからだ。内容が好みにあうかの判断も難しい。

革で装丁された書物は見慣れないものだった。活版印刷されたものではなさそうだ。
差し出されたものを受け取る。

「月並みな返答しかできないが、俺が好きでやっていることだ。俺の方こそ、色んなことにつきあってもらっているし」

ぱらぱら、と中身に目を通す。詩集のようだ。
栞を手に取ると彫り込まれた紋章が目に入る。己にとっては馴染のあるものだが、何故――と考え、思い至った。
軍服には己の所属を示す階級章やら勲章やらが縫い込まれている。特に肩口にある紋章に彼女が気付いたとしても何の不思議もない。

「写本……」

再度、中身に目を通す。過去読んだことはあるかもしれないが、どうにも自信はない。
ふっと視線をあげて、丁寧に本を閉じる。

「ありがとう。時間をとってしっかり読むことにする。
マーシュはこの中で、特に好きな一節はある?」

この本を選んだ理由はわからない。話しながらその理由を知ろうと、相手が話しやすそうなところから話題にあげる。

マーシュ > 「そうですね?でも、していただいたこと以上に、言葉とかそういったものはうれしいなと思いますから」

渡したそれを訝しそうにするのも想定済みだ。
内容は何の変哲もない詩歌集。
強いて言うなら専門書というよりは広く知れ渡っているもの。

「はい。私が写したものです」

務めとして、また祈りの形として、写本自体は廃れてはいない。
もっとも製本までするようなしっかりとした形のものは徐々に少なくなっているのは確かだが───。

中身の確認をして、それから視線が上げられる。
意図をつかみかねているような眼差しと言葉。
己もそれほど言葉はうまくはないから、それを引き出そうとする言葉はありがたい。

「そんな真面目に目を通さなくてもよろしいですよ?多分よくご存じの主教の詩編ですから」

少し雰囲気を軽くするように言葉を紡いで。それから自分の中にある言葉をまとめるように少し沈黙する。

「お会いしたころ、名乗った時に不思議そうにしてらっしゃったのを覚えてます」

己は修道院育ちで本来なら家名に該当する部分はないのだけれど。
姓とするには不穏な意味合いを持つ言葉であることも承知していたし。

「私が修道院に拾われたときに一冊だけ持っていた…いえ、籠に入れられていたのが、今お渡しした写本の原本で──……
その端に、知らない誰かの筆跡でつづられていたのが、私の姓になりました」

知らない誰か。おそらくは家族か──それに類する存在が、残した唯一のもの。
決して祝福とは言い難いそれは、それでも己を成す数少ない一つで。
そこで言葉をいったん切ると、じり、と距離を取る。

「……その、……栞の方が贈り物ではあるのですが。写本の方も持ってもらっていると嬉しいな、と思っただけです」

ヴァン > 「そうか。よい言葉だけではないと思うが」

会った時から、誠実であろうとしている。彼女の意思を重んじる言葉は、場合によっては寄り添ってないように聞こえたかもしれない。
一方でからかうような言葉、羞恥を煽るような言葉もたくさん投げかけてきた。悪戯っぽく笑う。

「……マーシュが?」

彼女自身が写本をした、ということには少なからず驚いたようだ。
活版印刷に頼らない写本は未だに顕在だ。活版印刷するには部数が見込めないもの、逆に魔導書のように大量作成してはまずいもの。
そして装丁など、一種の美術品として高値で扱われるもの。それら写本の主な担い手は修道院だから、彼女が携わることは理解できる。
真面目な彼女のことだ、余暇をもって少しづつ作業してきたのだろう。途端に手の中の書物が貴重なものに思えてくる。

主教の詩編、よくご存知と言われて男は石のように固まってしまった。気まずそうに一瞬視線を逸らす。
普段なら適当に誤魔化せるのだが、それをしないのもこの男らしい。

「あぁ、家名にスミスとかベイカーとか職業名が入っていたり、アンダーソンのように聖人の名が由来とかは一般的だと思う。
あとはブラウンとかリードみたいに髪の色が由来とかね。ただ、リグレットというのは――」

平民にはそもそも姓がない者もいる。人の往来が大きくなってきたからこそ都市では姓をつける者が増えてきたが、村落ではまだまだだ。
先祖や本人の職業やわかりやすい特徴をつけるのはよくあるが、後悔という言葉は耳にしたことがなかった。

「籠に……」

幼い頃に既に親はなく、修道院にそのまま入ったということは過去に聞いた。男が想像していたよりも幼い時期のことだったようだ。
彼女が持つ本と記された言葉は家族との縁を繋ぐものといえる。
果たして親は本当にいないのだろうか? ふと頭をよぎった考えは後で考えることにした。

「あぁ。両方大事にするよ」

少し座っている位置をずらすと、感謝の表現として腕を伸ばし、軽くハグをする。

マーシュ > 「まあ、それは。……でもそういったことも、貴重なことです」

殊に最近は人の感情を揺さぶろうとしているように思わなくもないが。……それはそれで。
己の修養を試されているようでもあるし、ただ素直に胸中へ届くこともある。

それは相手の笑みからも伝わることで、こちらもそう応じた。

「……以前写本用のインクを作るお手伝いを頂きましたし、そう意外なことでもないでしょう?」

然程驚くようなことでもない。
以前のはきちんとした務めの範疇内だった。
専業で向かっている聖職者もいなくはないが──己の場合は、祈りを形にするための日々の修養の一つとして。
今渡したそれは、ずいぶんと傷んだ己の手持ちを修繕する目的もあった。
その形に至るためにかけた時間について言及するつもりはないのかしれ、とした態度のまま。

己の姓に対する言葉には、黙したまま首肯する。
そこに対して恨みもつらみもないのは表情や態度から見ても分かるだろう。
生まれてほどなく修道院にいた。そこに綴られた文字にどんな感情を込められていたかなど己は知る由もなく。
それ(後悔)は己に与えられた識別名ともいえたのだ。

逃げた分の距離が詰まって、腕が巡るのにわずかに緊張をみせつつ、そろ、と体から力を抜いて。

「そうしてくださるとうれしいですね」

穏やかに笑みを浮かべて。
狭まった距離に少し考えてから、その頬に唇を軽く触れさせてから離す。
ささやかな悪戯。

ヴァン > 「いや、本というとどうしても買うイメージが強くて……」

正直な感想を口にする。一般的な書物ならばなおさらだ。
それでも彼女が写本という方法を選んだことから、その思いを汲み取れる。
本を開き、詩を読む。彼女が書く文字をこれまで見たことがほとんどないことに気付かされた。

己の頬に軽く相手の唇が触れると、同じことを返す。
そのままベッドに共に横たわってしまうのもいいが――行き先を知っている人間が何を理由に階下に下りてくるかわからない。
ちょっとしたスキンシップで抑えておかないと後が怖そうだ。
抱き寄せた相手の体温を感じながら、名残おしそうに離れる。

「その格好からすると、今日はお休みかな?
あと2刻くらいしたら仕事が終わるから、夕食を一緒にどうだろう?」

他に用事があれば無理には引き留めない、いつもの誘い方。
待つだけの時間を費やせるものはここには沢山ある。

それはそれとして、男の休憩時間は始まったばかり。とりとめのない談笑をする時間はまだたっぷりある。

マーシュ > 「……一般的なものはそういうものも増えてきたようです」

己は育った環境が環境だからかいまだに羊皮紙の革張りの装丁の書籍や、手刷りの書簡などが多くある中にいたせいもあってまだ慣れていない。
職人の手わざで作り上げられた精巧なそれらは、貴重な資料であると同時に、替えのきかない財産でもあるものだから。
己の筆致については──あまり言及することもないが。
書体に限って言うなら、カロリング体でつづられ、挿絵などはあまりない。
───誤字や脱字がないようにゆっくりと綴ったものではあるからそれなりに読みやすいとは思う。

「───、ち、ちっともおどろきません、ね…?」

あっさりと同じ仕草が返されるのに、若干不満そう。
気恥ずかしさに襲われでもしているのか伏し目がちに訴えつつ。

ゆる、と身を離す相手を引き留めはしないのは、──以前の醜態というか。……なんというか。
行き先を知っている人間がいる以上声がかからないとも限らない、というのは抑止弁として作用した模様。

「はい、それじゃあご一緒してもいいですか?」

こちらに負担にならない誘い方。
他にそうした約束をするような誰かもいないのにと小さく笑う。

待っている間に、新しく入った蔵書を確認するのもいいだろうし。
まだ読んでないものは無数に存在している。

それらについて言葉を尽くすのも悪くはない。
休憩時間が目減りしていってしまうのは確かなのだろうが。

ご案内:「平民地区 神殿図書館」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「平民地区 神殿図書館」からマーシュさんが去りました。
ご案内:「城塞都市アスピダ 周辺 天幕」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。