2024/11/13 のログ
ご案内:「九頭龍山脈地帯 湯屋」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
ご案内:「九頭龍山脈地帯 湯屋」にトリステラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >  山脈地帯 湯屋

 寝静まった深夜の時間帯
 活動時間帯からあえて外すことで、戦場の音は静まり返る
 盗賊の時間だろうと昔なら、メイラがメイラに自問する。
 しかし今は盗賊は最早残骸でしかない。

 鎧は丁寧に濯がれ、蠍尾のように結んでいた三つ編みを解いた体。
 新しい生傷 絶え間ない肉動がもたらす腹筋や腕の薄い瘤。
 パシャンッと湯舟の中に入り頃には、清潔に整ったと実感できる頭皮頭髪
 及び体の陰りの部位。
 その長い黒髪すら、上手に上でまとめ上げていた。

 温泉水の濁った色味と香り。
 ふぅ、と吐息を吐きながら檜組みの浴槽は木材らしく体を受け止める。
 石材とは違った感触 寄りかかる背中 片腕を預ける湯舟の縁。

トリステラ・ダンタリオ > どこもかしこも問題の尽きない一帯。
けれどもしっかりとくつろげる場所があるのは、どんなものにも安らぎは必要という証か。

騒乱が起こり、多少小康とした状況でも、静かにたたずむ湯屋と立ち上る湯気に変わりはなく。
北風が寒さを含み始めた今、よりその暖かさは人を惹きつけるものともなりそうであった。

そんな中、元々着こんでいない衣服を丁寧にたためば置き場に預け。
戦の香りが残る場所には似つかわしくない。
白さと柔さを保った肌を薄明かりに照らし出しながら、女は長い髪をまとめ上げればタオルでさらに包み込むようにしてしていく。

「ふぅ…」

国にも数ある湯の湧きどころ。
それでも所違えば香りも湯質も変わるというものである。
先へと湯へと身を浸した彼女へと並ぶように、女もまた足先から湯へと身を沈め。
染み渡る様に広がっていく熱に息を一つ。
しずかに零せばやがて力を抜いて体を湯に任せるままに、縁へと預け。
何をするでもなく。
湯気が立ち昇浴室へと視線を漂わせては、彼女へと戻していくことにしたようだ。

メイラ・ダンタリオ >  
 季節柄も含めて傷跡や痛みに染み渡る。
 “材料”が材料なだけに、癒える速度は人間の比ではないといえど、タオルを纏わず足を組んで伸ばす姿。
 隠す素振りもないのは、人の気の無さ故か、はたまた単純にそれすら不純物とみなしているか。

 肌上を汗が浮き上がることは少ない。
 露天形式故の、頭は冴えて体は温もっている状況。
 油断めいているわけではないが、ボゥ、と視線は虚空を眺めている。
 隣に相方が来ても無反応なのは、見知った気配故だろう。
 そうでなければ野性的な音の拾い方
 それこそ犬が足音を聞き分けて迎えにいくように、グリンッとその対象に首が向いていたはずで。


   「―――あら、覗く参ずる勇気も人の気もないのに、もったいないですわよ。」


 縁にだらりと伸ばしていた片腕の内側にいた隣人
 湯襦袢のように体に纏っていた布地に、指先をクイとかけると簡単に取り除いてしまう。
 抵抗するようなタイプではないと知れているのもある。
 メイラは目の前で、三桁台のだぷんとした質量を露わにさせて満足したのか。
 生地を雑に畳むと己の背もたれ代わりにしてしまう。
 脱がされた当人はと言えば、寛がせる気はあったらしい。
 露天ということもあり一定の湯殿を楽しませた後はメイラの両腿の上で跨るように、向かい合わせになっていた。
 
 

トリステラ・ダンタリオ > 野生の動物は、たとえ寛いでいても違和感。
多少の異質な気配を感じたりすれば、瞬時にその緩みは消え去るものである。
そんな下手な野生動物より鋭く、そこらの者であれば、気配で圧倒することすらできる。
そんな彼女に刺すような威圧するような気配を向けられることもない。
むしろそんなことすら想定してない。
といった様子でごく自然に、そうするのが当たり前のように隣に腰を下ろした女もまた、異質といえるのかもしれない。

「相変わらず大胆な旦那様だな…」

湯が身に馴染み、吸い付くような湯質を手に絡ませれば掬い上げ。
頬に軽く塗り付けていく。
僅かな水音すら響く静けさの中、不意にかかる力に抵抗をすることもない。
その布をとられるべき相手に取られるべくして取られた。
そう言外に示すように湯に浮かび、解放される胸肉へと向かう視線も気にすることもない。

今までの行動はごく自然な二人のやり取り。
そう示すように、笑み交じりに静かに零す女は、招かれるままに姿勢をやがて変え。
向かい合うままに自らも座る位置を調整をしていくのであった。

「無茶はし過ぎてないみたいで…何より」

彼女に無茶をするなというのは、どれほど無茶なことを言っているか。
少しでも知っているものならば、すべからく同意するものだろう。
けれども女は口にあえてする。

向き合うままに統べる手はその首元を、肩筋を撫で。
そのまま腕を撫で滑り降りれば、手首から逆側へと戻り。
脇下まで戻れば胴体の側面を少し撫でて胸元へと戻される。
傷の具合を、体の具合を見る様にすべる手は口だけの心配をではないことを物語るだろうか。

肩口を抱くように、両手を彼女の首へと絡ませ。
向かい合うままに少し体重をかける様に、彼女へと胸を押し付け合うように身を預けていけば零れる笑みは大きな問題が身体になかったことへの安心感の現われか、はたまた。

メイラ・ダンタリオ >  
 元々は、クシフォス・ガウルスの行った行為の為に今回だけともにいる二人。
 珍しい光景 跨っても、此処の本質は戦場の傍。
 すぐに絡みつくようなことはなく、メイラの体 頬や首筋
 肩から掌 他 など、焦らすようになでる掌と指先、
 くすぐったさから、少し肩をすくめてしまうことがあるくらいで、メイラは好きにさせている。

 やがて、稽王都での稽古のように青痣や打撲だらけの表情や体とは違う。
 裂け口や剣傷が少し増えたばかりの体にホッとさせ、首に両腕を交差させて密着するような抱擁。
 跨ったまま、頭を高くさせるようなこともなく、深々と座ったままに密着しあう前面。
 やわらかい肌と熱 その乳房の質量。
 メイラの胸元を重なり合ってつぶれ、隠してしまうかのような、広がっていく潰れ埋もれていく肉の塊。
 霞仕上げのような赤い瞳が交差 ジッと見つめながらギザ歯がきれいに噛み合わさった歯列がチラリと笑み。


   「無理はしておりませんわ。
    骨の一本へし折れていたら、それだけの大業をこなしたと思ってくれれば。」


 腰の、臀部が感じられるほど下げた腕で回した腰抱き。
 顔が自然と重なり、前髪が触れ合うのがわかる。
 湯舟の揺れる湯音とは違う、体に伝導して聞こえるような唇と舌の動き。
 メイラも瞼を落として、舌の柔身を楽しむように混ぜている。
 ギザ歯が開いて見える苺色の舌。
 絡み合う舌と連動するように、形を崩し変えてこね合うような互いの乳房。
 横からもし濁る湯すらクリアに透けていたら、その大きさが形を変えて歪み潰れ
 回す腕の上にすら零れて乗るほどで、雄の喉がきっと、ごくりと鳴るはず。
 肥えた体と見紛うことない 豊満なものゆえに。
 

トリステラ・ダンタリオ > 戦いが身近にある場所。
軍などの集団行動であれば、治療を専門にするものもいるだろう。
今はそれもなくただ二人であれば、女は何かあれば自らが癒やし手として動く。
そのくらいの覚悟も実力も当然収めているのではあった。

文字通り彼女にとってはかすり傷。
普通の人であれば多少なりとも不詳の範囲にしっかり入りそうだが、その丈夫さはヒトの枠を出ているのだ。
手傷というには優しい、それを理解しているからこそ女は一つ、彼女なら見て取れる程度の安心したような表情を浮かばせ。
身を寄せ、湯の熱と肌の熱を交わし合うような、肉感を感じる静かな時間を交わす視線のままに過ごしていく。

「私は平気でも、子供が聞いたら驚く怪我だと思うぞ…。
働きものな旦那様だ…」

心配はすれど無理に止めはしない。
止めるくらいなら隣で歩むか、後ろから支える。
女の立ち位置はわきまえつつも理解もしているのだろう。
鋭い歯をのぞかせる笑みと、一見普通の人の歯や口元を見せる女。
けれどもどちらも人ならざる血を強く身に宿していれば、見るものによっては人ならざるものが二人に見えるかもしれない。

「そんな働きものは…しっかり労わないといけないな…」

どんな労いが一番心身を満たし癒すか。
湯の音に紛れそうなほどに、そっと頬同士が擦れ合うほどに寄せた口もとから零れる言葉。
それは献身からか、自らの欲望が混じったものか。
何方かかもしれないし、どちらでもないかもしれない。

怠惰な生活をしていない。
さりとて、戦場で戦う彼女ほど鍛え上げられていない。
雌らしく実った胸の感触をしっかりと伝えるのは、彼女に堪能させているのだろうか。
張りを失うこともなく、湯の浮力がなくてもだらしないこともない、重力に逆らうくらいにしっかりと形を維持する胸の肉。
それを自由にできる権利を得ている唯一の彼女が堪能するのは当然。
そう語っているかのように。

メイラ・ダンタリオ >  
   「それは貴女もでしょうに。」


 そういって露天風呂の中、湯屋の中で行われていく情事。
 人の気の無い真夜中の出来事
 残り香すらないまま深まって終わるだろう行為。

 今日無事だったことを噛み締めるように、王都に戻っている時期よりも
 ステラ側のほうが熱を込めていたとか。 

ご案内:「九頭龍山脈地帯 湯屋」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
トリステラ・ダンタリオ > 「私は旦那様を…支える方が性に合ってるからな…」

表立って動くより、後ろに立って支える。
それは恐らく資料とにらめっこしている普段の仕事柄というのもあるのだろう。
そもそも、肢体をそう晒すこともない。
それを知っている彼女からすれば、どの言葉の意味の深さも感じられるかもしれないが。

のぼせるほどの熱の中。
それでものぼせることもなく、長く熱に包まれた時間は、帰路についてもその熱を孕んでいたのは間違いなく。

ご案内:「九頭龍山脈地帯 湯屋」からトリステラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「無名の迷宮」にヴァーゲストさんが現れました。
ご案内:「無名の迷宮」にドリィさんが現れました。
ドリィ > ひゅ───。

風笛が潜めた薄鳴りを響かせ、銀線が闇を裂く。
女の視線は軌跡を追わず、既に先へと逸れ、聴覚だけが行方を追尾する。
ぎゃりん、と硬質に雑じる損壊の音。
予め魔術付与を施したナイフの投擲は、弾かれる無益に終わらず
辛くも魔物の装甲に多少の亀裂を生じさせたようだった。
まあ、魔物よりもナイフの刃が、きっと使い物にならない程度にはイカれたけども。

ギガントゴーレム。

稀少な魔石の鉱脈がある──確かに女はその情報に惹かれ、“相棒”を伴い迷宮に潜った。
されど、まさかそれがゴーレムの核より鉱床を生じ、
巌石で拵えた体長15フィートはあろうかという巨像が、歩く鉱山状態で存在するだなんて誰が思おうか。

魔物の右腕が大きく振りかぶられ、拳が勢い任せに床を殴打する。
岩窟が振動に礫をばらばらと落とし、荒い煙があがった。

「ッ痛いったら、もぉ……ッ…!」

回避はしたが、風圧と瓦礫にしこたま殴られた心地。肺腑が興奮に薄ら寒く笑う。
双眸眇めることで礫の目潰しを裂けながらに、蹈鞴を踏み掛けた爪先が器用なバランス感覚で地を蹴り、跳躍する。
女の役目は躍動を以て陽動し、撹乱すること。
決定打なんて求められちゃいない。重要なのは男の決定打へと繋ぐことだ。
鮫刃の仕込まれた靴底で岩人形の肩を蹴殴って踏み砕きながらに、床へと着地し逃げ。
鮮やかな赤毛の髪を靡かせつつに、女は男の名を乱暴に呼んだ。

「ヴァーゲスト!」

ゴーレムが女の存在を追い、のっしりと巨躯を方向転換させる時。
重心が僅かに軸をぶれさせる──そこに叩き込んで魔物を這い蹲らせるのが一番有効。
それがこの長い戦闘で学んだことだったから。 

ヴァーゲスト > 「応ッ!!!」

――…幾度目か、この短期間で乱雑に呼ばれる己の名。
意味もなく口元はニヤけるように嗤ってしまう。

名を呼ぶただ一声に、意図を理解して声で迷宮内の空気を震わせるような声で吼え答え、
重々しく巨体を方向転換するギガントゴーレムの不安定になる一瞬の動きに合わせて行動で応えた。

二振りの鉈はここに辿り着く前に棒切れと化した。
手斧も伸縮自在の棒も似たような末路だ。
だから残る武器は一つ――…己の拳。

歩く鉱山みたいな相手にそれに普通の拳を叩き込んで、
どうにかなるとは思っちゃいない、だから『切り札』を当然切る。

振るうは利き腕。
籠めるは魔力。
単純に純粋に利き手の拳に魔力を載せて思い切りぶん殴る。
もちろんそれは『切り札』なんかではない、その切り札への大事な布石。

砂煙と天井より落ちた瓦礫の上を身近な距離を駆け抜け肉薄し、
ブーツの靴底で瓦礫や小石を踏み抜きながら、地面を蹴り体重と魔力が載った拳をギガントゴーレムの腰に叩き込んで、
そのまま拳を巌石で出来た奴の身体に食い込ませて――…『切り札』を切る。

「離れてろドリィ!
 散々勿体ぶった切り札見せてやっからよ!!」

吠える。
最高にして最大にして全力。
人様に滅多に見せないアレを使う。

切り札の名は『声』
喉を震わせ全身の魔力を震える喉へと集中させ、放つ。
放たれた魔力の宿る声は相手を振動させて粉砕爆砕する。
本当ならば時間をかけて調節するのだが、短期決戦の今はそれも惜しい。

だから相手の身体の中に直接それをぶち込む。

音ならぬ音
声ならぬ声
混じりあう魔力と声の振動は明瞭な音もなく、ギガントゴーレムを膝から大地へと屈服させるだろう。

そして屈服したギガントゴーレムの外角はスローモーションのように
ゆっくりと女が傷をつけ亀裂を刻んだ場所から割れていき、最後には動力が切れたようにそのゴーレムは大きな土煙をあげて大地に倒れ伏せた。

対人でやると酷い事になるこれが『切り札』
正式名称は特にない、考えてもいない。

爆砕して周囲に被害を及ぼさないでぶっこわした加減もほめてほしい。

ドリィ > 既に懐かしさすら感じる序階のこと──男が淹れた珈琲を飲んでの小休止より、半刻ほど経った頃だろうか。
最初の魔物と遭遇は、この男が“相棒”たり得るかどうかを、女が推し量る最初の機会となり。
男にとっても己が背中を預けるに値するかを値踏みする機会が同様に訪れ、
それは幾度となく、うんざりとするほどに繰り返されて女と男は武器を折り、血反吐を酒で濯ぎ、そして───今、がある。

男の反応速度は信頼するに足りた。その力量も、経験も。
寧ろ、女が声を掛けずとも先を予見し動くだろう。数多の場数を経ては、そうも思えた。
───まあ、ただ単に呼びたかったのだ。
いつしかその男の、丹田にずしりと響くよな重いひと吼えの返しが気に入っていたから。

「───… はっ。流石ぁ。」

だから、女が振り返った時。
男の拳は既に魔物の胴体を重く打ち据え、魔力の被膜を以て巌の皮膚を砕いていたし、
魔物が図体という牙城を僅か、不安定に反らす時。女は、合図を得たかに先の礫に裂けた頬ひと筋を拭いつつ、後方へと跳び下がる。

『切り札』の合図は男の魔力を込めた拳の渾身だと聞いていたから。
魔物の倒壊に堪えうる距離に着地した、直後。

「─────────…!??」

女は瞠目する。それはさながら閃光のように、
声ならざるもの、音ならざるものに鼓膜が、脳髄が劈かれた心地がしたから。
闇が震盪し、大地が揺動する。
男がその声量を調整したとて反射的に己が両耳を女がその掌で塞いだのは、
その異常を聴覚聡い本能が咄嗟に感じ取ったに過ぎない。

そして女の見守る前で、ゴーレムはその巨体を傾ぎ、崩れた。
まるで身裡に起きた爆破に、外殻の皹より亀裂が生じて脆く倒壊する、そのように。
ご、ぅぅぅぅぅぅん っ。
重すぎる瓦解の音。衝撃に天井が震え、剥離の岩盤が細かに降り落ちた。
ゴーレムの停止に、女は漸くおそるおそると両手を耳から剥がし、

「~~~~~ッ ナニ、今の…」

思わずに男を見遣るのだ。
何しろ、女は今この時まで『切り札』の仔細を知らぬ儘であったもので。

ヴァーゲスト > ……おー久しぶりにやるコレは流石に腕に響く。

ギガントゴーレムの巨体が大地に沈むと自然と抜けた利き腕を上下に振り、
肩をぐるぐるとまわして骨と筋に異常が無いかをまず確認。
流石にこれでギガントゴーレムが立ち上がったら笑えない。
取り合えず幸いな事に利き腕へのダメージはほぼゼロ、
少々痺れが残る程度で突っ込んだ拳も魔力のおかげで無傷。

タイミングも何も悪くない。
己一人だったらこうも上手く言ったかわからない。
即興……と言葉にするには短くない相棒との付き合いだが、
思った以上に悪くはない、寧ろ良い。

互いにそれぞれ利点も役割もまるっと違うのもいい。
まるでウサギのように跳ねて蹴る動きも見ていて眼福だし、
自分の手の届かぬ場所が見えて届いているのがいい。

――…それに名前を雑に呼ばれるのも悪くない。
っと、腑抜けるのは後にして、『ナニ、今の』に答えるべく、
完全に動かなくなったギガントゴーレムだったモノから、
相棒の方を振り向いて軽薄そうな笑みを向けた後に、表情を引き締め……られなくて、
少し自慢げなドヤ?みたいな表情を浮かべてしまう。

これだけ綺麗に『切り札』が決まれば気持ちいい。

「これが最初の罠を踏んだ時に使おうと思った切り札。
 あーネタ晴らしするとアレだ『音』だ。
 詳しい理論はわからんが、声に魔力をのせて吹き飛ばす。
 のを今回は利き腕から直接コイツの中に叩き込んだ。」

上手く調節すると人間相手なら振動で脳だけ揺らして脳震盪を引き起こしたり、
あとは水晶やガラスなど脆い物を破壊するって事も出来る。
――…迷宮の罠を一気に稼働させる、何て離れ業も出来るが、それは言わないでおくとする。

「あーっと終わった後に言うのも何だが、耳は大丈夫か?
 鼓膜を破るような大声量にはしてないつもりだが、
 何なら膝枕して耳の中チェックしてやろうか?」

切り札の楽しいネタ晴らしの後は相棒の耳の心配である。
聴覚が鋭い様子はあったが過敏であるとは考えてない。
だから事前に切り札の内容を明かさないで置いたのだが大丈夫だろうか、と素直に心配を。

あとはもうひとつ……こいつをどうやって持って帰るかの心配もだ。
相棒がいい具合に亀裂を作ってくれ御蔭で外殻が剥がれ、
中から希少な魔石が見え隠れし砕いて持って帰りやすくはあるが、量が量になりそうだ。

あと残念ながらこいつは食えそうもない。
まだ少々魔力の残留があるため息を吐く。
吐いてから相棒に向けて軽く首をかしげるのだった。

耳の件、こいつをどうするかの件。
さてどうするか、膝枕は大歓迎だ。
俺の膝も太もももだいぶ硬いがね。

ドリィ > 掌を外した。鼓膜は多分正常だ。音の聞こえも悪くない。
ただ、聴覚を通り越して臓腑にまで到るよな奇異なる音律に、
なんともぞわぞわと得体の知れぬ感覚が頚筋のあたりに蟠って、妙な心地悪さが余韻を残すけれど。

もうもう煙る土埃も幾らか落ち着いた頃、そこに身を崩すのはゴーレムの残骸であり。
その雪崩た岩塊を背景に、佇む男の勇姿であった。
そう。──男の『切り札』は最良の働きをしたと言うべきであり、讃えるべき局面であるのだ。

だが。だがしかしである。
振り向きざまのニヤけながらに口端を傾ぐドヤ顔には、女も物申したくもなる。
朗々と『切り札』の詳細を語る調子良い男の弁舌を聞きながら、
飛散した瓦礫を器用に長い御足で踏み跨ぎ、女は男の傍らに歩み来れば。
膝枕云々を聴き終えるや否や。艶やかな爪従えた女の片手が、男の耳朶をぎゅむと捻り

「そぉゆぅのはぁーー…! 出し惜しみするより先に、伝 え る の ッ!!」

おもむろに男の耳元に唇近づけて、大声で説教を宣ってやろう。
一語一句をハッキリ届けたなら摘まんでいた男の耳を ぱ、と手放して、

「有難いコトに貴方のお話も、一語一句シッカリと聞こえてるから御心配なく。」

ふかふかの枕だったら一考しなくもないけれど、硬く太ましく発達した筋肉枕は気分じゃないので却下だ。
それよりも──…だ。女は男の足元に瓦解したゴーレムの残骸へと屈み込む。
腰元のポーチより小柄なピッケルを取り出せば、魔石と岩石との境を慎重に多方面から角度を変えて叩き削り。
───…が、 きんッ。

剥落した拳サイズの魔石塊を眺めて─…今度こそ女はにぃーっこり、屈託なく微笑んだ。
有難いことに岩石も大分男の声で脆くなっている。掘削に難儀はしなくて済みそうだ。
そこは、素直に褒めてあげてもいいだろう、と。

「ま。ゴーレムを腰砕けにさせるイイ美声だったッてのはぁー…、認めてあげる♡」