2023/07/29 のログ
ご案内:「王都平民地区」にアデライードさんが現れました。
アデライード > 当初の予定より長引いた王都へのお使いも終わり、
今日の夕刻あたり、乗合馬車に空席が見つけられれば、
懐かしい神聖都市へと帰り着ける、そんな昼下がりのこと。
修道女姿の娘は院長らへの土産物を探すべく、
界隈をそぞろ歩いていた。

お小遣いとして渡された金額はさほど多くもない、
そもそも無駄遣いをしたと思われれば、土産物は受け取って貰えないだろう。
だから比較的安価で、それでいて王都でしか手に入らないようなものがあれば―――――
そう考えながら店々を冷かして歩くうち、細い通りに入り込んでいた。
恐らく、観光客が歩くような場所ではない。
売り物もぐっと庶民的な、日用雑貨の類が目立つようになっていた。

立ち止まって、少し思案顔をする。
もとの大通りに戻るべきか、それとも、もう少し奥へ進んでみるべきか。
このあたりの治安が良いのか悪いのか、それすら、娘には判然としない。
王侯貴族には馴染みのなさそうな界隈であるから、ふらふらしていても、
娘の顔を知っている者に行き会う心配は、多分、ないだろうと思っていたが。

「……もう少し行って何もなかったら、大通りに戻ろ」

あと1ブロック先の角まで行って、何もなかったら。
そう決めて再び、細い通りを歩き始めた。

アデライード > 「―――――――――― あ!」

遠く鳴り響く鐘の音に、随分長く時を過ごしてしまったと知る。
慌てて来た道を引き返すが、果たして馬車の出発には間に合うかどうか。
修道衣姿には似つかわしくない全力疾走で、広場を目指してゆくことに―――――。

ご案内:「王都平民地区」からアデライードさんが去りました。
ご案内:「富裕地区・商業エリア」に影時さんが現れました。
ご案内:「富裕地区・商業エリア」にジギィさんが現れました。
ジギィ > 「えーん、そっちのほーが色々お話盛り込めそうな気がするんですけれど。場所だけ教えてくださいませんこと?もしかしたら知り合いにも知っているものが居るかもしれませんし。
 
 風の流れを読むなら…」

(精霊が一番かと思いますけど)とは思ったけれども、言葉にすることはなく口を噤んだ。おそらく、魔法とも空飛ぶ何かにまたがるのとも違う、精霊に手伝って貰って飛んだことが無い相手には説明のしようもなさそうだったし、兎に角その場に行ってみないとその辺りの『彼ら』がどんな気分かは何とも言えない。実際現場を踏んだ相手の意見は尊重すべきだろう。

「それはそうですわよ。じゃないと悪戯半分に触ろうとする輩が出ますもの。
 やーん、カゲトキおじさまが私をひとりじめにしたいというお気持ちは解りますけれど、私を慕う他の方からの嫉妬を買っていただくのはしのびありませんわ。
 
 …うん、そうですわね?」

このエルフがどんぐりまなこをちょっと潤ませ、両手を拳にして口元に当てつつ、耳を下向きにしながら訴えかけると中々に威力がある。
と最近知った技を繰り出しつつ
森の様々に同化したり変化したりしたものについてのその後を尋ねられると、心底不思議そうな顔をしつつ、肯定の言葉を返す。
そもそも『個としてある』という認識自体を打ち壊して、周囲に溶け込みあるいは同化するのは、このエルフの種族にとっては『還る』ことを意味していたし、実際そう言う感覚である―――――という話だった。
『還る』術を得たものは『元の個体』と『溶けた姿』を自在に行き来したし、能動的に『戻らない』事こそあったものの、『戻れない』という言葉にはどうしても繋がらない。だものでそのあたりは曖昧に頷きを返すにとどめる。

店主が取次を、確約ではないとは言え請け負ってくれると聞くと、エルフはまた一段と眼を輝かす。
新しいヒトと知り合うこと自体好きだったし、それがコイバナにノッてくれそうな相手であれば猶更だ。
それから

『それはどんな歌でしたの?発声練習になるという事ですから、結構勇ましい詩でしたかしら。英雄譚にコイバナはつきものですけれどもどうでしたかしら?』

――――などなどなど
歌についての彼女の経験を更に聞き出そうと身を乗り出したところで、彼に視線の先を動かすように促される。
素直なもので、エルフはそのままくるりと方向を変えて、アクセサリーの棚を見遣る。言わずもがな、どんぐりまなこが真ん丸に見開かれて、わぁ、という感嘆符つきで棚に歩み寄った。

「綺麗ですわねえ… 私自身はこういうものを作る器用さがないので、いつも関心してしまいますわ。
 ドワーフの中でも器用な飾りを作る方がいらっしゃいますけど…ディアーヌ様の印が付いていた方がなんとなくあやかれそうな気がしますわね?」

『何に』あやかりたいのかは謎だが兎も角エルフはそう言葉を零して、ふと彼を振り返ると棚の中の何かと、彼とを見比べるようにした。

「…ディアーヌ様、これも売り物ですの?」

それからエルフが指さしたのは、小ぶりの棗ほどの大きさのガラス玉。
それは棚の中にいくつかあって、アクセサリー類を賑やかすためのオブジェか、それともそれ自体が商品かは判然としない。
エルフが店主の返事を聞く前に指先でつつくと――――よく見ていれば、一瞬、中で虹色に何か光ったような。

影時 > 「風の方だけなら、まァ、吝かじゃない。……その後どうなってるかは分からンがな。
 だが、もう片方は駄目だ。語ってやるだけで我慢しとけ。どうしても、ってなら、俺を連れて行くこった」

魔族の国における特異領域のうち、風がすさぶ場所は弟子たる竜の力を借りて訪れた領域だ。
五行を操る術等、様々な忍術に覚えがある自分だが、風属性、風の精霊を御する点に於いては己は比べるべくもない。
最終的にいずれも風を鎮める、並びに、地下に深く埋め直すといった始末となったが、その後どうなっているか。
想定される脅威、危険を考慮する中で訪れても大丈夫そうと太鼓判を押せる場所は、一つしかない。
風の力が大きく偏り、地盤が浮く位にまで暴走した場所だ。
その暴走が収まれば浮いた地盤は戻ってはいた筈だが、何分もともとそういう土地だったのだろう。幾つか浮かび上がっている可能性はある。
もう片方? どうしても行きたいなら、同行しない限りはその気になれない。
再度地下の魔力溜まり、地脈の流れを辿って――侵入経路を探る。その作業まで発生する手間も含めて。

「出るのか。うーん、世間知らずとかツッ込まれるとそれまでなンだがよう。眉唾じゃねえだろうなァおい。
 嫉妬なんてモンは真っ当に世渡りしてりゃおのずと買う、得ちまってる類だが……どの層から買う想定だ?言ってみ?ン?

 ……――何かいまいちはっきりしねぇなぁ。今度、膝詰め合わせて話さなきゃならねぇかそこも」
 
見える仕草の一連の流れに、思わず真顔になりつつ、おいおい、と掌の甲で軽くエルフを叩くような突っ込みを入れよう。
自分の可愛さを武器に出来ると知っている女の子がやると、刺さる層にはそれこそ致命的<クリティカル>に刺さる仕草だ。
何処でそれを知ったのか。はたまた、教え込んだ手合いが居るのだろうか。
前提は諸々抜きとして、人目を惹く、惹き付ける、世渡りできるのであれば、向こうが言うような類がない、とは言い難い。
例えばサロンに集う暇を持てました貴族や富豪の集まりからとしたら、大層に厄介かもしれない。
ツッコミつつも、どうにも曖昧という印象がぬぐえぬ応えには、改めて時間を設けて聞き出すべきか、と内心に決める。

今は、こっちだ。
店の中、小さなアクセサリー類が硝子張りの棚に並ぶ場所に身体を向ける。並ぶものは、いずれも売りものには違いない。
この手の金目になるものは、大事にしたいもの、売り物でない限りは、適切に閉まっておくに越したことはない。
指差されたガラス玉めいたものを見遣れば、ほう、と息を吐きながら身を乗り出し、覗き込もう。

NPC > 「色々ね。例えば一音一音を区切って、強く明瞭に発音したいなら戦歌、なっがーいのを止め処なくなら讃美歌とか。
 でも、歌うならノリが良い方が楽しかったのは覚えてるわね。
 コイバナなら、あ。暇潰しに見た歌劇のフレーズを良く真似てたわ」

歌手、歌い手の練習を本格的にやったというほどではないが、形から入るというやり方を師はよく遣っていた。
リュートを片手にリズムを刻み、それに合わせて詠唱を綴るというテクニックだ。
リズムを身体に覚えさせることで、戦いの最中でもリズムに紐づけた魔法を唱え、間違いなく発動できる、と。
情緒に訴えかけるような、恋や愛に係る最新の曲と言えば、それは親に連れられて見た歌劇の類が印象深い。

「彫金も勉強してるから、そのついでにね。……あやかれるってそんなまたまた。
 あ、それ。もちろん売りものよ。
 魔力が籠ってた水晶が手に入っていたから、ぴぴっと来るままにカットしてみたの。持っていく?」
 
カウンターの上、光物があると聞いて身を乗り出す様に背伸びする毛玉たちを店主は撫でつつ、確か、と首を傾げる。
サイン代わりの刻印がされた細工物、アクセサリーは色々だが、多少はお守りになりそうな、と思うものがある。
来客の片割れが興味を示しているものも、その一つだ。
魔導機械の燃料、動力源となる鉱石と同様に、魔力を秘めていた水晶を加工して装身具に認めたもの、だったか。
魔力の性質までは精査はしていなかったが、悪い気配、感じはなかった。

ジギィ > 「定かじゃない… と言う事でしたら、その内定かにさせておいたほうが良いとは思いませんことおじさま!
 ではきまりですわね。 時期は…そーですわね、冬の手前がよろしいかしら」

諾、という意味の言葉尻を捉えるように、エルフはわあっと矢継ぎ早に言葉を畳みかける。好奇心いっぱいの表情からは悪気は伺えない。多少技巧はあったかもしれないけれども。
仲間探しのためにコツコツ活動していたこともあり、自らの好奇心を刺激するための冒険とはとんとご無沙汰だった。同族探しを止める訳でも諦める訳でもない。当て所がないのならどこを探索するのもかわらない。

果たして目にするかもしれない景色に思いを馳せつつ、少々問い詰めモードの彼に拳を握った手の下でほんの少し舌を出す。うーん、ちょっと言い過ぎたかしらん。

「えーと … たまに餌をあげてるペガサスとか あとよく物々交換するトロールとか… あー最近魚人ともそう言うの始めたな。
 やーん、膝を詰めるなんて、おじさまのスケベ。」

エルフの仕草は、よく歌いに行くカジノで一緒に働く娼婦たち酌婦たち仕込みである。『男性に言い寄られたときの時間稼ぎと同時に彼女たちへのSOS信号』として、ある意味結構堂に入っていたりする。
サロンに集う富豪や貴族は彼女らの獲物。逆を言うと、このエルフにそんなものが出来ようものなら、そのカジノからは確実に出禁だろう。

さておき

「そうなんですのねー
 私は詩を覚えるのに、種類問わず物語が無いと覚えられなくて…たまに、英雄歌とか歯がうくんですけれども。
 歌劇、あんまり見たことないんですの。ディアーヌさまの――――」

ああ言えばこう言う
というのは主にクレームをつけるような時に使われる言葉かもしれないが、今のエルフには正にお似合いな言葉だったろう。
店主の解答の言葉を受けると5倍の問いを付けて返すような錯覚さえあったかもしれない。

ともあれ視線の先が変わればころりと興味も移ったようで、魔力が籠っているという水晶をつまみ上げると、ひとつ、ふたつ、呼吸をおいて

「―――――…」

耳に捉えるような何も音は聞こえなかったはずだが、エルフが自分の目の前に掲げた水晶にふうっと息を吹きかけると、同時に細かな金属が触れ合って波となったような音を『感じた』かもしれない。
それと同時に、水晶の中に黄緑色の竜巻があらわれたようにも。

でも二度目に見直した時、エルフが手にしているそれは何の変哲もなさそうな、透き通った水晶になっているだろう。

「―――ディアーヌさま、これに紐とかつける事ってできますかしら?
 おじさまの帯とかに下げておくと、ちょっとは洒落た感じがでてもうすこしコイバナにお近づきになって頂けると思うんですのよ」

何事も無かったように笑顔でエルフは店主を振り返って小首をかしげる。
店主が魔力に敏感であれば感じ取れたであろう。あの吐息に風の精霊が導かれて、水晶に宿ったのを。
それはごく穏やかな性質のようで、よくよく水晶をみつめていると、ほんの時折、黄緑や水色に煌めく光が過ぎるのがわかる。

影時 > 「……そー来たか。まァ、言った方も言った方だ。そうとなりゃァ是非もないか。
 行きたいなら連れて行ってやるが、準備と鍛錬は怠りなくな。
 あと、地の底に潜るつもりなら、何も備えない限りは居るだけで魔力が吸われると思え」
 
そのあとどうなっているか気にならないか、と尋ねられれば、気にならないというのは嘘ではない。
何処其処に行きたいと思えば行く、というのが己のスタンスであり、やり方だ。

畳みかけてくる有様と見た目上の表情自体は、悪気はない。嘆息と共に天井を仰ぎ、肩を竦める。
出立前には色々と根回しと準備は必要になる事項であるが、事後調査、確認という名目は立つだろう。
だが、危険地帯であるという注意と注意喚起は口煩くとも、重ねて行わなければならない。
魔力を吸われる感覚を知りたければ、男の腰の短刀の柄をそっと握るだけで――、その一端を実感することができるだろう。
向こうの手を取ることができれば、左腰に差した短刀の柄に触れさせてみよう。
そうすれば、直ぐにでも触れたところから熱が、体温が抜けてしまいそうな感覚を得るかもしれない。
短刀の材質は地の底にある奇景を為す、金属とも鉱物ともつかぬ精製物を鍛造したもの。つまり、行き先の一端そのもの。

「はははおいおい足の心配は要らないようで何よりじゃねえかその辺り今度紹介しろと言うか乗せてみろ。
 ……スケベで良いなら、膝開かせてどーこーすンぞ、全く」
 
いずれもちゃんと人語を喋れるかどうか対話できるかあやすいものばかりではないか、と。
一息にまくし立てたくなる衝動を抑えつつ、突っ込むべきところは突っ込んでみよう。移動の足があるなら、それが一番いい。
陸路を行くにはタナール砦を迂回する等、蛇の道は蛇の見本のようなことをする必要がある。
だが、空路を行けるならば高度とコース次第で、徒歩における移動時間を大幅に短縮できる見込みがある。
このように生真面目に受け答えするのも、仕方がない。カジノにまで行っているとまでは、現状は知りようがない。

「――……?」

さて、目を引くものがあったらしい。
店主のハーフエルフとコイバナ、歌バナシを交わすエルフが、ディスプレイされていた品の一つを摘まみ上げる。
契約と支払後のいわばオマケとして、一個持って行っていいという話である以上、それ自体は非難などされる要素でも何でもない。
微かに目を見張るのは、その後の光景である。男も見に回っている毛玉たちも、そしてもちろん店主も。
冒険者として生きるにあたり、当然のように鋭い感覚を持ち合わせている筈。そうでなければ、過酷な領域を生き残れない。
細かな金属が触れ合い、さざめきあうような音色と共に、一瞬光が生じたような。そんな感覚を得ながら。

「って、俺用かよ。……いいのか? 何だったら、俺からも贈るが」

何かを込めたと思しい水晶を己用に、とするような言葉に瞼を瞬かせ、困ったように頬を掻く。
翻って言えば、洒落っ気がない側を優先したとも云えるのか。
貰う側については異存はないが、この際だ。追加の出費も構うまい。流石に注文した品を受け取る際の付け払いになるだろうが。

NPC > 「交友範囲広いわね……。
 あはは、分かる分かる。やれ国の守り不落の盾――とか仰々しいのは背筋がぞわぞわずるけど、コブシが効くのよ。
 ふぅん。歌劇なら今なら、あそこの劇場で――」
 
こう言われればああ返す。
マニュアル的というのは大仰だが、若くして小さな城を持つような身はそれなりに経験も積んでいる。切り返し方も然り。
一先ずは云いたいことを全部云わせて、そのうえで答えを逐次返し、補足などを行うやり方に長けている。
首を傾けて指先で頬を軽く叩きつつ、思案気にしながら、今時の歌劇が聞けそうな劇場の名を幾つか上げてたりしながら。

(……――魔力が動いた気配、いや、精霊が籠った気配だわ、これ)

来客のエルフが、水晶に何をしたのか。それを察する。
魔力を詠み、分析する観点に於いては、魔術師として来客の片割れよりもずっと長けている。

「もちろん出来るわよ。首飾りでもチャームでもね。
 オジサマだと、根付とか言ったかしら? あっちの国の仕立ての方がいいかも?
 
 けど、良いの? オジサマ、ジギィさんにあげたかったみたいだけど」
 
精霊が宿ったと思しい水晶はじっと見れば、カットされた結晶で転がるとも微睡むともつかない光の加減が見える。
それを身に着ける方法は、指定されれば如何様にも用意はできる。
だが、先ほどの片割れの口ぶり、提案を考えると念のため確認はしてみよう。別品のお買い上げ?もちろん大歓迎であるが。