2025/04/05 のログ
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」に宿儺さんが現れました。
■宿儺 >
「──変わらず、か」
八卦山の山中。
峠に近い集落後でそう零すのは双角を聳えさせる浅黒肌の鬼。
目の前には数百年、己を封じた石碑の残骸。
女鬼の爪痕が深々と残されたそれは、女鬼が封印から解き放たれてより、不明にて滅びていたかつての鬼の集落の中央にへと突き立てたもの、
都の道士、あるいは何者かに滅ぼされたか、自然と月日に果てたか、何処へと失せたかは知るところではない。
鬼の里に縁ある者が訪れれば、この真新しい爪痕を見つけることで何かしらの……というささやかなメッセージではあったが。
「クク。どいつもこいつも戦狂いの荒くれであった故。滅びたとしてもそれもまた道理よな」
同族が一匹も、というのは心に空くものがあったが。それで感傷に浸る様な女鬼ではない。
それだけを確認すれば、鬼の集落跡を去り、薄暗く正気漂う八卦山の山道へと踏み出していった。
■宿儺 >
鬱蒼とした森を抜ければ、やや拓けた岩場に出る。
当たりには視認出来る程に濃い瘴気が立ち込め、霧のように遠景に幕を張る。
数多くの怪異が発生する、妖仙どもの膝下に相応しい光景と場所である。
…かつてはこの場で妖を相手に存分に死合ったものだと、視線を巡らせる。
「あの頃のような力は未だ戻らず。しかし───」
道士どもにかけられた封印の枷は未だこの身に残る。
天を裂き山を砕く、などといった芸当は到底できまい。
笑みのままに牙を噛み締め、右腕を振り上げる。
肩、二の腕──そして膂力の要となる腹に力が漲り、めきりと筋肉が張り、隆起する。
刹那、振り降ろされた渾身の拳は足元の巨岩を叩き───落雷かの轟音と共にそれを真っ二つに砕いた。
巻き起こった暴風が瘴気の霧を晴らす中、手応えを確認するかに、女鬼は自らの右手へと視線を落とす。
「──肉体そのものの強さは、随分戻ったか♪」
ご案内:「北方帝国シェンヤン「八卦山」」にボルフライさんが現れました。
■ボルフライ > 「ふぅむ…鬼か…」
それはあまりに唐突な出現。
まるでそこにいなかったはずなのに、声が聞こえた瞬間にも鬼の身体を突き刺さんばかりの存在感。
なに、妙に強くそれでいて感じたことのある気配に足を向けてみたというだけのことなのだが、たいていの相手にとってはとんでもなく傍迷惑な話だろう。
視線を向ければどこか怠惰に振る舞うも、常に殺気と存在感を微塵も隠しもしない大男。
鬼の一族と言われても遜色ない逞しき体躯を誇るその男はかつて鬼の彼女に苦汁をなめさせるだけでは済まない体験をさせたようなもの。
彼女の行った力の行使、巨岩を真っ二つに砕き、瘴気を晴らすほどの暴風を巻き起こす一撃を間近で目撃したにも関わらず、興味も無さげだ。
というより彼女の身に何をしたか、覚えているかどうかも怪しいかもしれず。
しかし彼女の言動から本来の力を取り戻さんとしていることは聞き取れて。
その本来の強さとやらがどの程度のものか興味があるのは確かだろう。
ゆったりとした動きで、しかしその眼光は鋭く彼女を見抜き、どれほどのものか、あるいはどの程度遊べるのか試しているかのようだ。
■宿儺 >
唐突に響いたその声。
そして鋭き視線を向ける先にある巨躯の威容。
それを視界に納めればぞわりと女鬼の背に震えが奔る。
沸々と滾るのは雪辱の意思。そして──その日に感じた得も知れぬ感覚。
苦渋とはとても呼べぬかつての忌憶は、然程頭の出来の良くない女鬼とてすぐに思い出せるもの、だっただろう。
なぜこの男がこんな場所にいるのか。
そんな疑問など最早浮かぶべくもなく──。
「──、ガアッッ!!」
猛獣めいた咆哮と共に地を割り、亜麻色を棚引かせ跳ぶ。
黒き疾風と化し、巨躯の男の顔面を狙い繰り出されたのは屈強な右脚による蹴り一閃。
大木すら圧し折らんとする一撃を容赦なく見舞わんと、弾かれた様に攻撃を仕掛けたのは──自らが自覚するまでもなく、"怖れ"に背を押されてのものだったか。
■ボルフライ > 「あぁ、思い出した」
男が目の前の鬼の事を思い出し、そうつぶやいたのは、まさに顔面に迫りくる筋肉の塊による強烈な疾風の如き蹴り。
その一瞬の一撃は、大気を切り裂き暴風を生み出し、与える衝撃は周囲の土と岩を砕くほどだった。
…だったはずだ。
バチンッ!!という音と共に男が鬼の繰り出した渾身の…怒りか恐怖かわからぬが滾る意思を乗せた脚が男の手のひらに容易く掴まれ止められているのだ。
「学習しないやつだ…」
至近距離で男の鋭い視線が彼女を捉える。
捕食者が被捕食者に向けるような冷徹な、本能のままの視線。
思い出したことで初回会ったときもこうして有無を言わさず手を出しては瞬く間に…
ベキンッ!!
鬼の脚は甲高くも鈍い音を響かせては、男に掴まれているところを基準にして脚があり得ぬ角度に折れ曲がる。
屈強以上の屈強、筋肉も骨もその密度は既存の生命体とは比べ物にならぬはずの鬼の健脚が、いともたやすく圧し折られたのだ。
前回の屈辱…まるでそれの再現と言わんばかりに、おんなじような事態に陥りかけていた。
■宿儺 >
ぞくっ──。
男に蹴りを掴み取られた瞬間、目を見開き本能的に感じるのは──、そう、身の危険。
肉を切らせ骨を断つを言葉通りに実行し、あらゆる闘争に興じてきた鬼であるからこそ、
真っ先にとる手段は逃げでも様子見でもなく、攻撃の一手である。
頑健、頑強。火竜の尾撃ですら壊れぬ己の肉体に全幅の信頼をおいての猪突猛進のみが戦術──、故に。
「ぐあ゛ァアアアァあッッ!!?」
剛脚が容易く圧し折られる。
角を除けば、女鬼の筋骨の中でも最も硬質だろう太く硬い脚が拉げ、さしもの女鬼からも喉が裂けんばかりの悲鳴があがる──。
されど、ただ一本の脚を折られたとて闘志は折れぬとばかり。
「お、のれ…!!」
怯みは見せども、即座に…左腕による爪撃が振るわれる。
双角、として鋭く睨めつけた瞳から蒼雷が迸り、めきりと肩腕の筋が盛り上がる、その一撃に女鬼の全力が籠められていることには相違ない。
「為れば、此奴をくれてやるぞ!!!」
先程の蹴りは挨拶がわりとばかり。
腹から力の限りを籠めんと筋骨が張り、隆起し──全身の力を漲らせた破壊の一撃を男の首元へと迫らせる。
───その攻撃性が、己も知らぬ恐怖に突き動かされた、生物としての機器敵本能から来るものだとは知らずに。