2023/11/16 のログ
ゼロ > 手ごたえが妙だった、鉄の槍は、狙い違わずに鬼の額にぶつかる音がして、然し、逸れていく。
鉄が、鬼の頭蓋の強度に負けて、肉を引き裂き、滑る様にずれていく、強く突き込んだが故に、突き刺さらなければ。
目の前に、見える紅い鬼の雌の顔。
闘争に喜びを見出し、にたりと笑う、その顔は、このダメージが致命ではないと理解できるものだ。
意気軒高にて、闘争心むき出しの鬼が、其処に有り。

右腕が高速で動く、持ち上げられて、振り下ろされる。
音を割りそうな勢いのそれは、普通の人間が受け止めれば、無論粉々になるのだろう。
先程も、鎧を身に纏った兵士が、かの一撃でズダズダの肉片にされているのを見た。
少年兵の仮面にぶち当たる、女鬼の爪。
しかし、僥倖だったとも言えるのは、少年の仮面は、古代の遺産で作られたものであり、現在の物ではなく。
だからこそ、か、その衝撃に、少年は吹き飛び、鉄の鎧のままに地面にぶち当たりゴム毬のように跳ておちる。

「―――かっ―――っ!?」

呼気を強く吐き出し、ダメージを受ける、内臓にまで入ったダメージもしかし。
ゼロの仮面と、鎧との治癒能力に直ぐに、修復されていく。

「人間かどうか、それは、大事な事か?」

衝撃で、仮面がずれた、仮面を押さえる紐は、残念でもなく、普通の革だから、今の一撃で弾けた。
仮面を懐に仕舞いながら、少年は見やる。
東方の人間を思わせる、黒髪に、黒目――思わせるというよりも、東方の島国の顔立ちだ。
其方から来たと言われても、納得しかないだろう、この国の顔立ちではない。
唯、その目に映るのは、敵を見やるどす黒い敵意だけであり、隠す事もなく、見やる。

再度、ガントレットに包まれた手は、ぎり、と槍を握り掴み。
踏み込みからの接近。
一歩で最大速度へと持って行く体術、は人間の技術。
しかし、人間であるが、その身体能力は、速度は――低級の鬼にさえ、匹敵する。
目の前の女鬼が、どのレベルかどうかは知らねど、戦う事の出来るステージに有る、と言う事だ。

今度は、額ではなく、その豊満な胸―――その左辺り、心臓を目がけた容赦のない突きを繰り出した。

天ツ鬼 >  
少年は一撃を受け、吹き飛んでゆく
やれ、此れで仕舞いかとやや女鬼が落胆しかけた、その時
跳ね上がり叩きつけられた少年が起き上がる様子が見える
仮面が特別なものだったか、破壊には至らず
しかしそれを仕舞い込む様子を見れば、防具として宛にしているわけではなさそうでもある
不可思議な少年である、と女鬼は思うが…今は、それよりも

「無論!重要でなかろうはずがない!」

少年からかかる言葉に鬼は意気揚々と応える

「定命の者は闘争の記憶に残さねば100年と経たず朽ちてしまおうが。
 強者であればことさら、我の肉体に傷を遺したとあらば尚の事!」

故に問うたのだ、と

「しかし、どうやら普通の人間とは異なるらしい。
 それより、如何なる醜男が出てくるかと思っておったのだが、何故仮面などつけている?」

気分が高揚しているせいか普段よりも饒舌な女鬼
しかし少年が体勢を立て直し攻撃に転ずる様子を見れば、再び笑みを浮かべ、それを迎え撃つ
先の一撃は甘んじて受けた
獲物こそ普通であったものの、その膂力は並ではない
で、あれば…棒立ちで受ける理由も為し
──但し、女鬼は避けることを知らない、同時に、防御(うけ)ることも…

故に相対する少年目掛け、こちらも地を爆ぜさせながら前へと己を発射する
その姿勢が低かった故か、胸を狙った一撃は鬼の強靭な肉体…その左肩を貫き──そして

「呵呵、これではどうか?」

闘争におけるある程度のダメージなど意にも介さぬ鬼は己が肩に突き刺さった槍を剛力で鷲掴み、嘲笑う
言葉の終わりと同時、掴んだ槍を持つ、少年の腹目掛け怒涛の前蹴りを放つ
鋼の鎧など簡単に拉げさせ、巨竜を一撃で苦悶させるほどの一撃を

ゼロ > 女鬼の落胆をよそに、少年は起き上がる、ダメージがないわけでは無いが、肉体に仕込まれた魔術。
治療魔術の込められた鎧に、仮面、三重の自動回復が、少年を死から遠ざける。
防具、と言うよりも、仮面の能力の方が大事、なのだ。
しかし、その能力は、今は―必要は薄い、それに、悠長に革の紐を直すている時間はないからこそ、しまうのだ。

意気揚々とした返答、大事だと、言い切った相手。
その理由を聞けば、成程、とは思う、鬼は、唯、戦うだけの存在、なのだろう。
彼女の中心は闘争であり、それ以外は些末事でしかないのだと、理解する。
詰まるところ、これは魔族の軍の戦争ではなく、女鬼の暇つぶし、なのだと。

つまり、彼は軍に所属しているわけでは無く。
唯々、闘争したいだけで、だからこそ、言っても広まる事はないだろう。
そもそも、ゼロ自体は、一般の兵士、情報が洩れて何が困るか、と言う程度。

「これで、生きてるからだ。この仮面が俺の生命維持している。
之が無ければ、全力で戦うと、1分で死ぬ。
仮面をつけてても、全力を出すと10分で死ぬけどな。」

戦闘が無ければ、仮面をしていなくても生きては生きられるが。
目の前の鬼としてしまえば、仮面がなくすぐ死ぬというのは、詰まらない、と言う感想に向かうのだろう。

「ぎぐぁっ……!」

槍が肩に突き刺さる、小さな体で、逸らされた結果で。更に筋力で、締め付けられる。
魔法の武具ですらない槍はそれで絡め取られて、抜けなくなる。
そして、カウンター気味の前蹴りだ。
腹部に命中するが、鎧は、鉄ではなく、ミスリルで作られた強力な鎧だ。
その強度もあったから、あと、槍に執着せずに手を離し、バックステップも敢行。
それ故に、ある程度のダメージは抑えられたが、ずざざざざざ、と後ろに滑り、ダメージに息を吐き出す。

「は―……っぁ。
 は――っ。」

呼吸を二度、三度繰り返し、腰のシースから一対のナイフを取り出す。
ククリナイフと呼ばれる鉈のような大きなナイフ。
此方には、防御の魔法が込められた大振りのナイフであり、これを少年は構える。

天ツ鬼 >  
渾身の前蹴りにも耐えて見せた少年を見据える
加減など知らぬ鬼のこと、当然本気で蹴り込んでいた

「ふぅむ…」

女鬼は追撃はせず、その場に佇み…左肩を貫いている槍を強引に引き抜いた
無論、鮮血が噴き出すが、本気で力を込め、筋力で出血を抑え、止める
紛れもない脳筋の止血方法である

「つまり今の貴様は全力ですらなく…」

「全力を出して戦えばものの一分でその命を散らす、と」

仮面に呪われているのかその他の理由か、鬼に預かり知ることは出来ないが
結局のところ鬼の興味が在るのは唯一つ

「ではその一分を我との死合いに使え。
 峻烈なる火花の如き一瞬を我が身に刻み果てるがいいぞ、それとも──」

「戦場に生き、鬼と斬り合うても尚、やはり命は惜しいか」

で、あるのであれば、興は失せる
大型のナイフを構えて見せる少年にそう問いかけ、自身は返答を待つかのように鉄の槍を手遊びに、少年を見据えたまま──

ゼロ > 「―――兵士とは、民を守るためにある者だ。」

懐から、再度、仮面を取り出す。
新たな革紐を取り出して、仮面に革ひもを括りつける。
そして、仮面を付けなおす。

「―――封印限定解除申請―――」

首元にある、スカーフの下、其処に有る隷属の紋様。
其処に有る魔力が解放されていく、未知り、と筋肉の密度が上がる。
目の前にある、女鬼と同等までに、魔王と呼ばれる存在クラスまで。

「俺の命と、民の安寧、それを天秤に、と言うならば。
 命一つで、貴様が黙るならば、安い。」

ぶしゅり、と鎧の隙間から、血しぶきが走る。
鎧の治療効果を超えて崩壊し始める少年の体。
その代わり、人間の限界を超えた力を、少年に。
魔法で、薬物で強化された人間、崩壊する体を厭うことなく。

少年は踏み込む。
女鬼と比べて遜色のない踏み込み、それと同時に、その首に、右から左の横薙ぎの、一撃。
その首を描き切り、堕としてしまおうという一撃。

天ツ鬼 >  
鬼に、少年の矜持は理解らぬ
限りある己の生命をよく知りもしない大衆よりも軽んじる
まぁ、そういう生き方もあるのだろう、としか

そんなことよりも、目の前の少年の力が遥かに増大し──自分に向かってくること
そちらのほうが重要だ
見るに、既に彼の肉体はダメージを受けはじめている
その力を解放する代償なのだろう

「成程のう」

「それを全力と呼ぶのであれば、喜んで受けよう。
 ──しかし、己を殺す程の力を全力とはそう言うまい」

そういったものは、過ぎたる力というのだ───
小さくそう呟き、鬼も体勢を前傾に、迎え撃つ

全ての攻撃が急所狙い
邂逅の一撃からそれは一切変わらぬ、少年の攻撃
まともに当たれば、通れば…一撃での生物を即死を狙う攻撃ばかり
互いの力比べを好む鬼は変わらぬその狙いにやや苦笑を浮かべる
しかし───

「生涯二度も首を落とされるのは、御免被るぞ」

突然の落雷───そう錯覚させるような蒼雷が女鬼へと落ちる
頭部の双角が蒼く帯電し、その肉体が普段の赤褐色よりもやや黒く染まっていた
使わねば楽しむ間もなく殺られるだろう、そう判断しての奥の手であった
鬼の肉体の頑強さが鋼を超え、蒼雷を纏った鋭い爪撃が少年を迎え撃つ
どちらが先に届くか──、ギラついた瞳から電荷を迸らせ、腕を振り下ろす
首狙いの一撃にすら防御はしない
少年の刃が先に届いたならば、浅黒く変質(かわ)った肌を切り裂き、硬質の樹脂のような肉を斬り裂いて、その金剛が如く頸の骨を、断てるか否か───

ゼロ > 「―――――。」

過ぎたる力、と言われても、何と言われても、敵を倒すための力に変りはない。
そして、それは、今ここに発揮させて、目の前の鬼娘を斃すために使うのだ。
それで死んでしまうのであれば、それは誉、と言うのだろう。
本人の記憶になくても、魂には、侍の生きざま、と言うのは有るのだろう。


ぎゃりりりりぃぃぃぃぃっ!と、周囲に高らかな音が響き渡る。
少年のククリ刀に込められた魔法の力は、護りの力、悪辣な魔法攻撃から、武器破壊から、護るための力だ。
詰まるところ、攻撃力を求めた武器ではなく、少年の全開の膂力で振り回して壊れない為の、武器だった。
故に、首を切り落とすことは敵わず。
然して、その一撃の攻撃力、筋力から、今までの少年のように、鬼女を吹き飛ばす程度の威力はあるだろう。
ただ、彼女が逸れに耐え切れなければ、と言う話だ。

とは言え、彼女も何もしていなかったわけでは無い。
全身を変質させた蒼い電、それを身に纏い、強化された肉体。
そもそもの肉体の強度や強さが違うのだ、それらを此処まで埋めた、狂気の強化のお陰なのだろう。
電を纏った爪が振り払われ、それが、少年にカウンターとして打ち込まれる。

「ぐは……っ!」

衝撃を受けて、そして、電が全身を舐める様に。
流血している部分から、体内迄を電撃で灼かれて、全身を震わせる。
それでも、振り切るククリ刀、首を刈り取る事が出来なくても相当のダメージは与えられる―――だろう。

天ツ鬼 >  
「グ───ッッ!!」

大人数人分はあろうという女鬼の目方
頸を断ち切ることこそ叶わねど、横薙ぎにその身を弾き飛ばされる程には高められた膂力
大きく跳ね飛ばされ、着地をするも骨まで達する手傷を負った首から赤黒い血が滴り落ちる──

「此方の一撃を受けて尚、刃を振り切るとは。天晴」

流石に出血の夥しい首を片手で抑え、少年を見やる

普段は溜め込まれたまま使われることのない鬼の妖気
それが変質した蒼き雷はは少年の身体を内側から灼き、その自由を奪った。筈だった
にも関わらずこれだけの傷を手向けるとは……
──肩の傷と違い、首の出血はそう簡単には止まらない

「名残惜しいのう…痛み分けとするか。
 貴様もその程度ならばまだ死には至るまい?」

まるで、次に死合う時は文字通り最後まで、と言わんとするように

「呵呵、この勝負預けるぞ、仮面の童!」

地を蹴り、遠巻きに距離をとっていた魔物の軍の中へ女鬼が姿を消す
人間の軍も中央を崩されかけはしたが、魔物の群れに遅れを取るほどではないだろう
結果として、少年が砦の兵達の多くを護るという結果を遺し、暴風は今宵は去ることとなった──

ゼロ > 「が―――は――――っ」

全身を焼き尽くすような、電に。
元々の筋力から振り払われる、強大な一撃。
先程のように、受け流したり、する事も出来なかったから、か。

どさり、と倒れ伏す。
死んでいるわけでは無くて、大ダメージを受けたから、力尽きた。
電の後が、しゅう、しゅう、と音が響き渡り、全身を音を立てて、修復していく。
鬼の目の前て、無力な体を五体を投げ出していて。

「―――く、そ。」

彼女は、まだ元気であった。
此処が、自力との差と、言って良いのだろう。
しかし、また次があれば、命尽きるまで戦う、其れに関しては、同意と為ろう。
封印が自動で施されて、動けぬままに倒れ伏したままにある。

そして、魔物の軍を斃した他の兵士達に救護室に運ばれて。
珍しく、救護室で治療を受ける事になるのだ。

天ツ鬼に対する敵意を更に募らせて、治療されていくのだった―――

ご案内:「タナール砦」から天ツ鬼さんが去りました。
ご案内:「タナール砦」からゼロさんが去りました。