2024/09/01 のログ
■アルマ > 硬質な爪と石畳みがぶつかり合う音がちゃかちゃかと。
魔物が息をひそめている無名遺跡の迷宮に爪音と共に「くぁ~」と小さなあくびが混じり始める。
小さくも獰猛なるオオカミをベースにしたキメラ型の魔獣は安全な場所を探して巣にすべく、当初の目的とは違う目的をもって迷宮をさまよい続けるのであった。
ご案内:「無名遺跡」からアルマさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」に影時さんが現れました。
■影時 > ――無名遺跡は広く、その階層は多く、広く多くであるが故に複雑極まりない。
真の意味で踏破を果たしたものが居るかどうかは、ついぞ聞かない。
遺跡はまるで生きているように深化を重ね、さらに何者かが手に入れているかのように、悪辣さを増している。
故に幾つもの需要がある。
宝物に目を眩んだもの、修業の場と選ぶもの、哀れにも罠に引っかかったものを狙う魔族、悪漢。他にも色々。
「……ここまでの経路は、これで記しきったとは思うが。
売り付けるにしても、持ち帰らなきゃぁならんのは当然なんだが、いつまで有効になるやら……なぁ?」
そんな言葉を零すものは果たして、どのような例に当てはまるのだろう。
宝はあれば良いが、在り過ぎても困る。鍛えの場は幾らでもあって良いが、生きて帰れなければ意味がない。
迷宮を弄っている魔族でもたまたま居たら? 女だったら殴り倒し、犯してみるのも一興か。
ぼう、とカンテラの光が点る迷宮の一階層はさながら、石造の古の神殿に似ていた。
ごつごつとした洞窟そのままの内壁ではない。精緻に加工された白亜の石材が積み上げられ、飾りも兼ねるのか石柱が並ぶ風景が続く。
時折、黒焦げとも鮮血をぶちまけ、そのまま凝固、風化するに任せたような染みも見えるのはご愛敬か。
「……通路ごとに部屋があり、大体のところで何か居る。その法則なら、次もそうだろうが」
進路を閉ざすように硬く閉ざされた大扉。その傍にカンテラを置き、胡坐に座した人影が声の主。
煤の強い光を頼りに筆を操り、巻物状の地図に書き込みを入れるのは忍び装束に羽織を重ねた男の姿だ。
肩の上で、男の言葉を聞き流しつつ、もしゃもしゃとナッツを食べるシマリスとモモンガも見える。
が、飼い主の真面目ぶった思案の言葉は知ったことではない、と言わんばかり。食べ終え、おかわりをせびり出す姿に、ひょいともう一粒。
一人と二匹、突入記録としては一応は単独行。次の部屋に突入する前の休憩の情景がそこにある。
■影時 > 地図に記した墨跡が乾いたとみたら、筆含む用具と巻物を羽織の下の雑嚢へと詰め込む。
気勢を整えれば、肩上の毛玉たちと同様に、だが、手早く食事を摂る。
傍に置いていた袋を取り上げ、口を開けば中身を摘まみ取る。小粒状に練った茶褐色の携行食だ。
まずくはないが、それよりも甘みやら生薬由来の香気が強い。水袋から水を飲み下し、流し込んで一息。それで終わりだ。
肩上の二匹からは、味気無さそうでやんすね……、と言わんばかりの眼差しを受けつつ。
「お前らが食べ終わったら行くぞ。……鞄の中にでも入っておくか?ン?」
ほっとけ、と嘆息した後、二匹に声をかける。心得たとばかりに尻尾を立てる姿を見て、床に置いた諸々を雑嚢に仕舞う。
携行食と毛玉たちの餌の袋、水袋にカンテラ。おぼつかなくともまだ強い光源を仕舞えば、後は天井に宿った淡い光のみ。
瞼を閉じ、生じる暗がりに目を慣らしつつ、最後に残るものを手に取る。
刀だ。それを立ち上がりつつ腰に差し、扉に手を伸ばす。
基本的には肩上の小動物達は、首に巻いた襟巻の中に身を忍ばせているが、場合によっては雑嚢の中に避難することもある。
進む先が危険地帯であったり、はたまた、遭遇する敵が思いのほか色々厄介である――等々。
「――……行くか」
扉を蹴破る前に、ぴたと扉に耳を付ける。
あからさまな異音の類は――ない。
異様な気配は――まだない。
それとも扉が色々と特別――かもしれない。大きく息を吸い、長く吐いて気勢を整えて――開く。
【お遊び・敵難易度判定(1d3)⇒1:普通 2:そこそこ 3:とても強い】 [1d3→1=1]
■影時 > 開く。扉は、思いのほか軋みも何も無く、寧ろ獲物に食らい付く顎のように勢いよく開く。
見える情景は先程までいた通路と大差はない。ただ縦横に、かつ高いかどうかどうかという違い位だ。
玄室と云うべき広い空間の中に詰めている数は――複数。
いずれも揃いも揃って骨、ないし、腐りかけた風情が分かり易いのは、彼とも彼女ともつかぬそれらが屍だからだ。
骸骨の騎士または戦士、魔術師の屍人、といったところだろうか。
動きは基本的に緩慢だが、時折切れがあったり、或いは魔法を使ってくるのは生前はそれなりに腕があったのか。
「……なぁるほど。扉が特別、というワケも無ぇわな。何も無けりゃじっとしてりゃそれで済みそうだ」
愚にもつかない言葉を零し、一歩。中に踏み込めば、ばたむ!と勢いよく扉が開いた。決着がつくまでは開けぬとばかりに。
そんな扉の音を契機に蠢き出す屍たちを見つつ、走り出す。
肩上の毛玉たちがしゅばっと襟巻の中に潜るのは、この位はどうにかして見せるだろう、という親分への信頼だろう。恐らく。きっと。
破損が酷い筈の鎧や帷子を纏った骸骨たちは、邪魔になりそうな装備も構うことなく闖入者に向かってくる。
その背後で、杖らしい棒切れを振り上げ、詠唱らしい姿勢をみえる屍人を認めれば。
「……兎にも角にも、まずはアレからどうにかした方が良いなァ、と……ッ!」
疾走の勢いを殺さぬまま、跳び上がる。殺到する骸骨たちを足元に飛び越えて、屍人の魔法使いの方へ。
予想だにしなかったのだろう。そもそも思考活動が出来るかどうかも怪しいものが、あたふたとしたようなのは、きっと気のせいか。
ともあれ、魔法使いの方へと飛びかかりつつ、腰の刀を引き抜く。抜きつける刃がひらめき、着地と同時に一つ。首が飛ぶ。
血は流れない。流血の代わりに経年を思い出したように崩れる骸を一瞥し、遅れて得物を振り上げ、来るものに向かう。
■影時 > この手の敵には、“せいなる”武器が良いとはよく言う。その手の品は手持ちに一つある。
だが、それも状況と場面による。特性頼みをし出す局面とは、突き詰めなければ勝てないようなギリギリなものだろう。
振るえば斬れる。刃金を以て鋼鉄を断つのを当然とする刀匠が手掛けた刃を持つ以上は、此れ位凌げなければ先が思いやられる。
そうでなければ、限界は多少は弁えていても、単独で迷宮を歩くという冒険には興じられない。
「お前さんの方は、……並みだが、そっちは……こりゃ生前はそれなりに使えてたクチかね」
残るは二体。骸骨騎士と骸骨戦士。前者は盾と剣を構え、後者はいかにもな拵えの大斧を振るってくる。
刃を提げ、骸骨たちが放ってくる剣撃と斧旋を躱す。大股で下がりつつ回避し、寸分の見切りを得ようと紙一重で凌ぐ。
不死者の技量はそもそもの肉体に培われた経験による、という学説やら与太話をふと、脳裏に思い出す。
装備自体がマジックアイテムのような特別仕立ては相当稀だが、そうでない場合、脅威を定める指針は何か。――数と質だ。
質の良さを大斧遣いの骸骨戦士の技量に、嗅ぎ取る。
筋肉と内臓が失せても、その差分も勘案して大斧の慣性を制御し、断ち切る威力を損なわない。それ程のもの。
「……であれば、こう、するか……!」
大振りの振り下ろしを半身をずらして躱し、踏み込む。斧の柄を滑るように切り上げ、ひゅぅ、と息吹と氣を吹き込んで刃を駆る。
形状こそよく残った胸当てごと、骸骨戦士の肋骨、背骨を叩き切り、身を回す。
横目で次に捉えるのは、残る骸骨騎士。戦士のそれよりも劣るとはいえ、生前は鍛えていたのだろう。剣筋はそう悪くない。
突きの鋭さも、悪くはない。悪くはないがこの有様では、冴えを増すことも適うまい。
そんな感慨を得つつ、刺突に拝み打つようにタイミングを合わせ、真っ向から白刃を振るう。
刃の稜線、鎬で突きを滑らせていなしつつ、背骨に沿って一刀。ごとり、とも、がちゃり、とも両断された骨と鎧が崩れ落ちて。
【発見物判定(1d6)⇒1・2・3:良品/普通 4・5:高級品/業物 6:最高級品/大業物】 [1d6→1=1]