2024/03/17 のログ
ご案内:「無名遺跡」にE・T・D・Mさんが現れました。
■E・T・D・M > ダンジョンが居る
ダンジョンが在る
迷宮はその時々で必要に応じて形を変える
奇想天外摩訶不思議、決して暗くてじめじめしていているばかり能じゃない
触手で撫で付けた床面は、清潔な白い床材となった
その上に毛織の絨毯を敷いて回る、素足で踏みつけても大丈夫なフカフカさ
あちこちにテーブルや椅子などの黒檀で出来た家具が取り揃えられている
その上には貴族の家でしか見掛けないような広いテーブルクロスに銀の燭台、燃える蝋燭の炎が卓上を照らす
毒除けの銀の皿には透き通ったコンソメスープ
山盛りのサラダボウルは緑黄赤色取り取り目の覚めるような新鮮な野菜
皮に焼き目のついた魚料理の周囲には繊細な味付けのソースが添えらえ
かと思えば大皿にはこんがりと色づいている豚の丸焼きが伏せるようにして座り込んでいる
黄金色のパンは純粋混じり気のない小麦だけの香りを漂わせ
望むならばクリスタルのグラスに注ぐ為のワインボトルも備わっている
ちょっとしたレストランでも余り無いような、格式高さをにおわせるフルコースの準備が出来た一室
■E・T・D・M > 同室に設営されている竈には火が起こり
石窯のオーブンはたった今も仕事をしている
シェフは何処を見てもいないのに、寸胴鍋の蓋は茹るシチューの湯気に押されてぐつぐつと踊り
まるでたった今もいで来たばかりの瑞々しい果物が丸のままで置かれていた
口にしてみれば解るだろう、全て皆美食を求めて来た人類の歴史を凝縮したものであると
品行方正に匙やナイフやフォークで戴くものも在れば、下品に手づかみでむしゃぶりつく茹でた蟹の足や豚のあばら肉の滴る脂の匂いたるや…
舌を悦び弾ませる味の快楽の数々
だが口にしてしまえばその味覚の官能の代償への支払いを求められる
此処にある全てはダンジョンの一部を支配する主の血と肉に等しい
胃袋にたまった食味は腹に寄生して重たくなり
吸収された栄養は体中の臓器に行き渡って不全をかける
簡単に言ってしまうとお腹いっぱいで動けない、という以上のへとへとになってしまう
その上…
おとぎばなしの魔女は獲物の少年少女を戴く前にたらふく太らせたと言う
むちむちと肉付きよくなりたくば、滋養たっぷりの此処の飯を口にすると良い
あっちこっちのお皿には水晶眼が仕込んである
即ちにおいて撮影の準備は万端だ
ご案内:「無名遺跡」にセリノさんが現れました。
■セリノ > 若き女冒険者・セリノ、単身潜り込んだ古代遺跡にて珍妙な光景に出くわす。
まるで貴族邸や王城での祝宴のごとく、あまたの料理が配膳されているのだ。
並ぶメニューも、その周囲を彩る調度品もまた祝宴のごとし。とてもじゃないがダンジョン内の光景とは思えない。
その宴席を目の当たりにする前から、遺跡の通路を漂ってくる匂いにセリノはついつい誘導されてしまう。
「………な、なに、これ………ありえない………」
何が一番ありえないかって。
呪いによって鈍らされ、性臭以外をマトモに感じ取れなくなったはずのセリノの嗅覚にも明確に『いい匂い』と感じられたことだ。
暖炉から発せられる熱も心地よく、ここまでの旅路の疲れを癒やす休憩ポイントとしてもよさそう。
……当然、常識で考えれば遺跡のど真ん中に突然そんな都合の良い宴席が設けられるはずはない。
これが何らかの罠であることは理性の片端で承知してはいることなのだが。
「………絶対、この先に何かある……確かめないと………」
ここまでの道のりは一本道。成果なしで引き返すよりは罠を承知で進んだほうが冒険者らしい。
ごくりと生唾を1つ飲み込んで。セリノは明るい空間へと慎重に足を踏み入れる。
……もっとも、豪華な食事の数々を目にした後は、口の端から涎がだらだらと溢れてしまうんだけど。
ぐううっ、とお腹が鳴る。
■E・T・D・M > 或るいは…
その料理一つ一つ、この調理場と食堂に籠っている目的と情念が
被害者となる少女に仕掛けられた呪いのニーズに一致するものであったのかも知れない
立ち込める香気は本来の食欲求を痛く誘うものであるが
その根幹に宿っている性への強い欲望こそがその鼻孔を、またはその下腹の下に埋もれた臓器を誘う
一歩、二歩、踏み込むその足取りのみならず、生理的現象に基づく腹の虫の声をスイッチとして
テーブルの一つの蝋燭の炎が一層に眩く輝き出した
そしてあたかも見えざるウェイターが客人の到来を歓待するかの如く
椅子がひとりでに動いて後方にへと音を立ててズレこむ
さあ、どうぞお座りください
まるでそう言っているかのように
まだ相手はかける意思すら示していないというのに
クリームチーズに魚卵の塩漬けを水に戻したものを載せたクラッカーのオードブル
香り高いドレッシングと粉チーズをふんだんに振り掛け、胡桃とあえた葉物のサラダがどっちゃりと銀の皿にへと勝手に盛り付けられつつある
フォークとスプーンが動いてセッティングされた
汚れ防止の純白のナプキンがほどけてくるりと蛇のように鎌首をもたげる
もしも近づくならばマナーに従い相手の首元にへとかかることになるに違いない
ふんわりと漂う出来たての湯気は生き物宜しくその周囲を取り巻き躍っていた
…ともすればその下腹の刻印を中核にして
■セリノ > 「えっ? えっ? あ、あのっ…!?」
他の賓客どころか、シェフも給仕も見当たらない孤独な宴席。
であるにも関わらず、セリノが踏み入るや否や、不可視の給仕でもいるかのように椅子が動く。
ビクリと一瞬肩をすくませて身構えそうになるも、それが排除ではなく歓待の意思であると知ればすぐに警戒を解いて。
……当然、まだこれが罠であるという疑念は捨てきれない。
しかしそれ以上に、食欲をそそる匂いと湯気の湿り気、柔らかい床の絨毯、温かな食卓の雰囲気に呑み込まれてしまって。
「……う、うう。何なんでしょうか、ここ……」
きょろきょろと周囲を警戒しつつも、つい、促されるままに着席してしまう。
もっとも五感の鈍いセリノにとって警戒の心得などあってもないようなもの。当然ながら魔法のカメラ等にも全く気づいてない。
冒険者になる前も、悪辣な呪いを受ける前からも貧乏暮らしだったセリノ。高級な食事とは縁遠い人生。
眼の前に並ぶのは、絵本の中でしか見たことのないようなごちそうの数々。
どんな味なのかすら想像できないが、美味しいことは疑いようがない。
テーブルマナーについても教科書で読んだ程度の知識しかないため、ナプキンが躍りかかればされるがままに首に巻いて。
フォークを手に取り、おずおずとサラダに手を伸ばし、口に運ぼうとする……。
■E・T・D・M > 歯切れ良く、シャクリと水分を程好く絡んだ繊維質の葉物は歯で簡単に嚙み千切れる
然程癖の無い青野菜を用いられているサラダの味の主役は酢をたっぷりドレッシングに脂気の補填に用いた胡桃と粉チーズ
舌先に絡んだ味わいは訛った五感の一つである味覚に触れようと味蕾の上を泳ぎ回る
風味を報せる為に、例え鼻づまりを患っていたとしても強制的に鼻腔を開口させて匂いを通した
美味しい、と、一言言わせなければまずこのトラップに先は無い
腰掛け食事を始めてくれた相手の前で、首にかかったナプキンの一部が長く伸びた
呼び掛けや疑問に応ずる明瞭な返答を返してくれる声は此処に存在せず
その代わりに食事の続きの進行が自動的なまでに進んでいく
巻き付くようにして取り上げるのは、数々の皿の横に配備されているワインの一本だ
赤、白、それともロゼ…?相手の味覚を調べながら舌に合いそうな一本を選択するソムリエ的振舞い
その眼前でよりぬかれた一本のコルクが抜けると、ナプキンの手によって傾けられ
とくとくと空っぽのワイングラスの中身を八分目になるまで満たし始めた
さあ、そろそろ下ごしらえをして行く必要性が在る
相手が食事中であっても常に給仕はその体内より相手の肉体情報を走査している
酸味程好く水のような口当たりの良さを優先したワインの中身には異物が混入していた
いかなる色味であってもほんのりと、その底に沈殿する白い混濁にもしかしたら気付くかも知れない
…精液だ
鈍った五感を勝る淫魔の先鋭感覚に訴える為の人工ブレンド
ワインに篭められたスパイスは、その味覚にへと挑戦する
さあ、こちらも
グラスを手にとるナプキンはそのまま食事中の相手の手元にへとそれを誘導させた
■セリノ > 味覚が衰えていることをいいことに、普段は徹底して『安くて保存性の良い』糧食ばかりを摂っていたセリノ。
オートミール、圧し固めた黒パン、干した芋茎、etc…。野宿の際は雑草を食べることさえあった。
人が見れば「家畜の餌か?」と呆れられるような普段の食生活。
そんなセリノが、こうも都合よくダンジョン内に並べ立てられたごちそうを口にしてしまえば……。
「………う、うええっ……お、美味しいよぉ……! 味がするよぉ……!
ドレッシングが酸っぱくて、チーズがしょっぱくて、くるみは甘くてぇ……! いろんな味がするぅ!
これがっ……これが普通の人が食べてる食事なんだぁ……ううっ、うあああああっ!」
……サラダをもぐもぐと口いっぱいに頬張りながら、泣き始めてしまった。
匂いがする、味がする。しかも性的なものでなく、明確に心を喜ばせる美味しさ。
様々な味の調和が舌を、そして鼻を喜ばせ、次の一口へといざなう。もはや抵抗など不可能。
涙を流し、えづき、鼻水すらも光らせながら、どんどんとサラダを平らげていく。
さすがに手づかみとは行かないが、盛られたサラダをフォークに刺して直接口に運ぶあたり、行儀は悪い。
貪食の大罪に囚われた彼女に、あらたな味覚が準備される。
私お酒はまだ……と拒否の言葉を発しそうになるが、口いっぱいに頬張られた葉物が舌を押さえる。
注がれて手元に差し出された白ワインのグラスにも、つい手を伸ばしてしまう。完全に雰囲気に飲まれている。
「んぐ、んぐ、もぐっ……ごくっ……。はふ。……う、うう。せ、せっかくだから貰っちゃおうかな。
冒険中だけど1杯くらいなら……うん、1杯だけ……」
サラダの後味をすすいで次の料理へと備えるべく、セリノはグラスを取り、口に付けた。
当然これもまた、呪いを貫いて刺激的な味を舌の上に広げる。
白の辛味はちょっと強くて、まだ自分には早かったかなと思わせる。しかしそれ以上にやはり、味をマトモに感じられることが嬉しくて。
……グラスの底に、ワインの澱とは思えない白濁があったことには、半分ほど飲み干してから気づいて。
しかし『ごちそうのワインってこういうものなのかな』とさして疑わず、底まで飲み干してしまう。
ワインに混ぜられた精液はどんな味なのか。というか誰の精液なのやら……。
「ん、美味しい、ですっ……♥」
ワインと精液が織りなす複雑な味わいに、顔がほころぶ。もっとも精液を飲まされた事実すら自覚してないのだが。
■E・T・D・M > 安物の食えるだけで贅沢、という食料事情を打ち砕かんとする高級志向の手間暇をいかにもかけた料理の数々
貧困に喘ぐ相手の美味、という感想を得た瞬間にしたり!とばかりにテーブルに乗った皿や食器ががちゃがちゃと躍り出す
胃袋を鷲掴まなければならない、文字通りに
がつがつと貪られ手品のように消えゆく食料品類はあっという間に胃袋に落とし込まれ、相手の血となり肉となる
だが勿論、フォアグラの鴨の如きに給餌を行うばかりではない
これはアダルト映像の撮影であるからして
する、と、食事に夢中になっている相手の腰掛けている椅子に変化
背もたれの裏側から伸びる有機質の触手のベルトが前に巡り
その腹部回りを囲んで緩やかな拘束をはかり始めている
余り窮屈にするつもりはない、既に暴食の虜となりつつある相手がより御飯を沢山食べる前、ベルトの穴の位置を三つ四つズラす程度
それと同時進行で、テーブルクロスの一部が撚り合わさりながら卓端より這い降り始め
いかにも見目野暮ったいローブの裾を摘まみ上げようとしている
踝、脹脛、太腿、お腹。許される所までを試すよう順番に、被さった黒い布切れの位置を捲り開けていこうとする流れ
グラスワインを一杯呷ったのは既に認識している
混ざり合った精は非常に濃縮された濃い味だ
蔓延る魔物達や罠にかかった冒険者達より搾り出したそれらの混在の織り成す風味の多重奏
ミックスさせた御陰で一本だけの味覚に終わらず、相手の淫魔の感覚を新鮮な味わいに驚かせようとする
…それ即ちにおいてはクロスの動きは、上の口だけではなく、下の口でも如何でしょう
ということを雄弁に物語る性的な接触だ
もしも眼下に目を向ければしめしめとばかりに床や机から鎌首を擡げ生え始めている肉の触手が見えるかも知れない
撮影本番の始まりなのだ
■セリノ > 「はふっ♥ おいしい……おいしいれす……♥ ワインってこんな味だったんですね♥
私、薄められた安い奴しか飲んだことなくって……ピリピリした中にとろっとした甘さと苦さがあって……これ好き……♥」
ワイン1杯ですでにほろ酔い。頬を赤らめ、顔をうっとりとさせ、口調もとろけている。
もとい油断しきっている。もはやこの宴席を罠であるとは微塵も疑っていない。
次の1杯が注がれれば躊躇なく口に運び、付近の盛り付けにも身を乗り出しながら手を伸ばし、どんどんと胃に収めていく。
……がたんっ。セリノが遠くのクラッカーに手を伸ばそうと軽く立ち上がると、椅子が鳴る。
いつの間にか椅子の後ろからベルトが腰に回されていたため、立ち上がる拍子に椅子を揺すってしまったのだ。
しかし拘束されている事実も、そしてその拘束具がありえない肉感を持っていることにさえ気づかない。
いまのセリノは食欲の権化である。食べたいものをひとしきり皿に取ると、また元通り座ってしまう。
そして、テーブルクロスの下で己の着衣がはだけられつつあることにも無頓着で。
それどころか、はしたなく脚を広げたまま暴食に興じる始末。誰にも見られてないのだから油断するのも致し方ないこと。
お腹まで捲り上げることは器用な触手にとって造作もないことだろう。
下着は着用しているが、側面に結び目のある紐パンで、それを解けば足首まで下ろさず取り去ることができる。
……お酒に混ぜられた精液は、バカ舌のセリノ当人は未だに自覚していないものの、雌の躰には着実に作用している。
下着のクロッチの奥ではすでに乙女の花弁が潤いながら開きつつあり、陰唇の形にくっきりとシミを作っている。
そしてワインをまた一口含むごとに、ひく、ひく、と蠢きながら、雌の匂いを卓の下に放つ。
もし下着を取り去るなら、白く濁った本気汁がクロッチと陰唇との間にねばっと糸を引くことだろう。
そんな痴態を撮影されていることにすら気づかず、ひょいひょいぱくぱくと食事に興じるセリノ。
さすがに下着を取られたり性感帯に直接触れられたら気づくかも。気づいたところで手遅れではあるが……。
■E・T・D・M > 最初は格調のある店のような振舞いだったが、相手が美味しい美味しいと言い始めるに連れて段々勧め方が下品になって来た
ふわ、と、浮かび上がる、肉汁がぽたぽた滴るじっくりオーブンで絶妙に火通しをした骨付きのカレースパイス風味の鶏もも肉が
ジューシィな豚肉のロースを香味焼きにしたものをオランデーズソースあえにしたものを焼いたパンに挟んだサンドウィッチが
左右から座したお客がオーダーもしていないというのに、食え食えと押し付けられ始める
もしもお客自身が求める選び放題のビュッフェから料理を取り分けていたとして
あっと言う間に目の前の皿は見た事がない程の山盛りになって行く
酒は一杯飲めば即座にもう一杯が注がれるという、わんこ酒が如く無限スタイル
相手の意識を飯にへと引き寄せるかのように…
そしてそれは成功したと言えるのだろう
みち、と、相手が据わり直した拍子に椅子の足が僅かな悲鳴をあげる
貧困な食事の割りには既に中々肉付きが良い
その体重を受け止める家具の足部分が僅かに震える
このまま更に宴の食事に舌鼓を打って詰め込めば一体どうなってしまうのか
しかし戦慄以上において今は撮影を続けなければならない
相手が食事に集中しているその間隙にめくれる面積は既に大分広く、下腹部の刻印まで睨めあげる水晶眼に映し込まれるまでに拡がりつつある
その撮影場面の只中において小器用な触腕は、ついにはするんとその派手な紐パンの結ぶ目に引っ掛かって
それを果実の皮を剝き上げるようにしてほどいてしまう
さあ、気付かれるだろうか、多分気付かれるだろう
故に迅速に動く二手目の触手たちは毟った隙間にへと直ぐにわが身を捻じり込んで吸い付き出した
その腹部に描き込まれている唇の形を模したかのように先っぽに分かたれる口吻の幾つかは
そのむき出しにした下腹にキスをするかのように吸い付き
丸見えにしたクリトリスに細長い触手を巻き付け始め
そしてあまつさえには滴り出している雌の汁気の味見をするかのように
ぴちゃぴちゃとうねる触手を絡めていやらしい音を立てるように、その割れ目の入り口の周囲をねぶり出してしまう
■E・T・D・M > 【中断となります】
ご案内:「無名遺跡」からE・T・D・Mさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からセリノさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」にエスクレンタさんが現れました。
■エスクレンタ > 無銘遺跡の中層。
様々な人間が、冒険者はおろか一攫千金や魔導機械の出土を見込んで動く術師等も入り乱れる上層から少し先。
ある者は見込みを間違えて消耗品が底をつく頃。
ある者は罠に嵌って転移しほうほうの体でたどり着く頃。
ある者は
彼女との取引を求めて至る頃。
丁度いい頃合いを見計らうような領域に腰を据えて巨大な背負い袋から取り出した商品を天鵞絨の絨毯へ並べて。
「さてはて、そろそろ春も頃合いだ。人の足取りも軽くなる頃だろうよう」
独り言ちて呟いて。更なる過酷な環境へ至る手前の地底湖拡がる大空洞であくびをするように触腕を戦慄かせて。
ご案内:「無名遺跡」からエスクレンタさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」に影時さんが現れました。
■影時 > 何も用事も依頼も抱えていない時は――遺跡に潜る。
日々の糧もそうだが、戦いの勘、感覚を保つためには重要なことだ。
生死を占うような戦いでしか得られないものがある。それはヒトであろうともなかろうとも、きっと同じらしい。
――ここは無名遺跡の浅い階層。
時折、まるで生きているように変遷する迷宮めいた遺跡は、現時点では変化の手を止めているらしい。
トライアンドエラーで開拓され、マッピングされた内部構造は時に鍛えの場として利用されることがある。
未発見のトラップに引っかかる、深層から這い出してきた魔物と遭うリスクはあっても、ある程度はリスク管理が出来るのだから。
しっかりと生き残り、魔物がいずこから持ち込んで隠していた宝箱を無事に開封できるなら、稼ぎにもなる。
そういった挑戦や試しやらを遣りたがるのは、人ばかりではない。賢い動物もそうであるらしい。
(…………!)
薄暗い石造りの回廊を二匹、走る姿がある。白い法被を着た小さなシマリスとモモンガの二匹だ。
息急いて、一直線に疾走してゆくのは背後から追いかけてくる薄汚れた魔物から、逃げようとしてのこと。
守りの力は持っていても、攻撃力らしい攻撃力は持っていない筈の二匹がこうするのかは、ひとえに生存力を上げようとしてのこと。
冒険の基本が走ることにあるのは、人間以外の動物でも変わりはない。
一目散に走りに走って、やがて前方に見えてくる光の中へと飛び込んでゆく。
「――ご苦労さん。ちゃんと離れてろよ」
光は回廊の先に繋がっている玄室への入口だ。
ホールのように開けた空間に飛び込んだ二匹がぱっと左右に離れた刹那に、天井から声が響く。
天井に貼りついていた人影が放つ声だ。僅かに遅れ、小動物を追いかける魔物が玄室に飛び込んできたのを見計らい、影が落ちてくる。
その姿は柿渋色の羽織を来た男のカタチをしていた。落ちながら、腰から引き抜く刃が着地と同時に魔物を切り伏せて。
■影時 > 玄室に飛び込んできた魔物は、ヒト型にしては小柄であり異形をしていた。ゴブリンの類だろう。
刃にまつわり付いた淀んだ血を振り払い、腰の鞘へと納めて一息つく。
待ち伏せしたうえの急襲であれば、仕留めるにあたってそうそう仕損じることは無い。
ただ、小さな毛玉のような二匹には脅威でしかない。囮を買って出るような鍛え方は、確実に仕留められる飼い主が居てこそだ。
「囮が居てくれる分には、楽じゃあるンだが……んーむ。
俺に引っ付いて地獄巡りの方がまだマシじゃねえかね。違うのか?」
しかしながら、傍目からすれば動物虐待のようにも見えてしまうのが難点だ。おまけに目が行き届かない場面もある。
偶々近場のゴブリンをひっかけ、誘導してきて精魂尽きたような二匹が足元にすり寄り、ぽてんと座り込む。
そんな二匹に声をかけつつしゃがみ込み、ごそごとと羽織の内側を漁る。
取り出す小袋から出した兵糧丸を二つに割り、二匹に与える。好物のナッツ類よりも味に癖があるだろうが、もしゃもしゃと飲み込んでゆく。
食べ終え、顔を挙げてじっと見つめてくるのは喉が渇いたという主張、サインだろう。
自分に答えるよりも、欲求優先な有様に小さく笑って、今度は腰に吊るした水袋を外す。窪ませた掌に水を貯めれば、二匹が顔を突っ込んで舌の音を連続させだす。
「他所だと、首を刎ねるウサギとか大ネズミとかが出るらしいが、お前さんらの先達じゃ……ないか、流石に」
そんな情景を見下ろしながら、噂話を思い出す。
可愛らしい見た目に騙され、死んだ仲間の骸を抱えて戻った同業者が宣ったという真偽不明な与太話だそうだが、さて。
知ってる?あっしも流石に……、と言わんばかりに喉を潤す動きを止め、首を傾げる仕草を見遣り、肩を竦めよう。