2023/10/02 のログ
ミューア > 「そうだったんですか……ご無事で何よりです。
 私はミューアって言います。この遺跡の調査と言って良いのか、散策に来ました。」

罠に掛かって聞いて、少し驚きを見せる。
未だに遺跡の中で生きている罠の内容も気に掛かりはするけれど、それよりは罠に嵌った相手のことを心配するべきで。
小走りで近づいてくる彼女の足元は、本人が言うとおりしっかりしたもので、そうと言うならそれ以上は余計なおせっかいなのだろう。
その口ぶりから、人間ではないのは察せられたけれど、特にそれに言及することもなく。

「えっと……とりあえず、一度、此処から出ましょうか? 道なら分かりますから、案内はできます。
 それとも、どこか仲間の方々と落ち合う場所とか決めてあったりしますか?」

そう言って色々と書き込まれたノートを見せる。
そこには道中のマッピングだけではなく、植生や組まれた石の種類までもが、事細かに記されており。

ミケリア > 「罠と言っても、ただの落とし穴でしたから。
下に棘もありませんでしたし~……それに、一応魔法使いですので」

心配してくれるのが嬉しいのか、にこにこと笑みを深め。
あなたの見せてくれたノートを覗き込めば、驚いたように目を丸くし。

「ミューアさん、ですね。よろしくお願いします。
ミューアさんは冒険者ではなく、研究者……学者さんなんでしょうか?

案内してくれるのは嬉しいのですけどー……その後は、また1人で調査を?」

仲間がどこにいるかもわからないので、遺跡を出ることに異存はないけれど。
どうやら連れもなく1人で遺跡探索をしているあなたに、大丈夫なのだろうかと首を傾げ。

ミューア > 「棘がなくても落とし穴を舐めちゃダメです。
 落ちた時に怪我でもしたら、どうするんですか。」

妙ににこにこしている相手に、メッと注意する。
魔法使いなら治癒くらい使えるのかもしれないけれど。
それでも怪我なんてしないほうが良いに決まっている。

それはそうとして、やっぱり罠は気に掛かる。
罠があるということは、侵入者を撃退しなきゃいけない何かがあるということなのだから。

「学者なんて名乗れるような立派なものじゃないです。
 ただの趣味みたいなもので………一応、学生ではあるんですけど。」

好きで調査に来ただけだと首を振る。
なので、途中で帰るのも問題ない。
何やら心配してくれているらしい様子に、そう答え。

「今日はもう戻るつもりなので、だいじょうぶです。
 ミケリアさんは、王都を拠点にされてるんですか?」

そうであるのならば、街まで一緒に戻ろうかと。

ミケリア > 「あぅ~……ごめんなさい。ちゃんと気を付けます」

しょぼんとしつつも、注意してくれるあなたの優しさが余計気に入ったよう。
笑顔のまま嬉しそうに距離を詰めてくる。
どうやら懐かれてしまったらしい……頭に載せた花冠のせいか、甘い香りがあなたの鼻孔をくすぐるだろう。

「あら、学生さんだったんですか。
小さいのに、しっかりしてるんですね~……。

あ、はい。普段はマグメールの施療院で癒し手をやってるんですよ。
そういうことなら、お言葉に甘えちゃいましょう」

迷惑にもならないとわかれば、一緒に帰ることに同意して。
それが当然というように自然な動作であなたの手に自分の手を絡めようとする。
どうやら手を繋ぎたいらしい。

ミューア > 「分かってくだされば、問題ないですよ。
 ……うぅ、小さいはちょっと余計だと思います。」

反省の色を見せる相手に、うんうんと頷いて。
埃っぽい遺跡の中では嗅ぐことのない甘い花の香りが鼻先に漂ってくる。
その香りの源が相手の花冠と知れば、物珍しそうに見つめ。
ただ、付け加えられた一言に、ほんのり頬を膨らませてしまい。

「施療院で癒し手……ですか?
 冒険者さんじゃなかったんですね。教会のひと……ではないですよね?」

施療院といえば、真っ先に浮かぶのは教会のそれ。
けれど隣の相手は、そういった雰囲気とはまた違う。
そんな相手に自然な動作で手を取られてしまうと、振りほどくのも憚れる。
浅い階層の此処であれば、魔物の類も滅多には出ないし、手がふさがっていても大丈夫だろう。
年上に見える相手に甘えられるのも、なんだか不思議な感じで。とはいえ嫌な気はせず。
手を繋ぐ二人の姿は傍から見れば仲の良い姉妹のようにも見えるかもしれない。
それが遺跡の中だということを除けばだけれど。

ミケリア > 「……おや? 気にしているのですか?
大丈夫ですよ~、焦らずとも、人の子は短い期間ですくすく成長しますからね。
それに、ミューアさんは小さくても可愛くて素敵ですし」

頬を膨らませる様子を微笑ましそうに見つめて。
振り払われなかったので、そのまま嬉しそうに手を繋ぐ。
指まで絡めて、ぎゅっと。自然と腕同士が触れ合い、甘い香りがより強く感じられた。

「教会の所属ではないですがー……そうですねぇ、町医者、と呼ぶのが近いかも知れません。
使うのは医学ではなく魔法ですけど。旅人や貧しい人に、治療や寝床を提供しています。
冒険のお手伝いは副業といったところでしょうか」

うっかり罠を踏んで孤立してしまっているのも、本職ほど探索慣れしていないからなのだろう。
それでも怪我もなく、一人で悠々と徘徊していた辺り、魔法使いとしての腕はあるようだが。

ミューア > 「そういうのが気になるお年頃なんです。
 むぅ……すくすく成長したらいいんですけど……」

可愛くて素敵だと言われると照れてしまう。
ただまぁ、素敵なお姉さんからそう言われるのは、信じていいのかどうか。
より密着してくるのは、ほんとにそう思ってくれているのかも。
鼻先を擽る甘い香りに、何だかふわふわした気分になってきてしまい。

「お医者さん……ミケリアさん、偉い人なんですね。
 私なんて、自分の好きなことばっかりしてるのに……」

教会の人よりも、よっぽど教会の人らしい仕事をしている相手に、尊敬の眼差しを向け。
一応は自分もそういうことをしなきゃいけない立場ゆえに、何だか申し訳なく思ってしまう。
自然と身を寄せてしまいながら、良いことを閃いたとばかりに、パッと顔を上げ。

「そうだ。今度、ミケリアさんの施療院にお手伝いに行っても良いですか?
 こう見えても、治癒の魔法は得意なんです。」

断られるとは露とも思っていない、真っ直ぐな瞳で相手を見上げ。

ミケリア > 「うふふ、そういうところも可愛らしいですね~。
ミューアさんは素材が良いですから、きっと綺麗なレディに成長しますよ」

照れているらしいあなたに愉快そうな笑い声を漏らす。
もちろん、可愛らしいと思っているのはお世辞ではない。
今の時点でもあなたのことを魅力的だと思っているのだから。

……漂う甘い匂いは誘惑の香。
樹木精霊に咲く花が、人間を誘うために発する至福の芳香。

「偉くはないですよ~。
私も好きでやっていることですからね。……おや?」

突然の申し出。少しばかり意表を突かれて、目をパチクリさせる。
真っ直ぐな視線に見つめられ、しばし見つめ合えば、それが真剣であると理解し。
女はふわりと花が咲くように甘く微笑み掛けた。

「もちろん、歓迎しますよ。何分、いつでも人手不足ですから。
……でも、結構ハードですよ? 大丈夫ですか?」

ミューア > 「ミケリアさんに、そう言ってもらえるとちょっと嬉しいかも…です。

はにかんだ笑みを浮かべて、そう照れる。
その言葉どおりに嬉しそうにもじもじとして。
辺りに漂う甘い香りに誘われるように、自然とぴたりと身を寄せて。

「はぅ……ハードなんですか?
 うぅ……、が、がんばります……!」

一瞬、その笑顔に見惚れてしまった。
そのことを自覚して、真っ赤になってしまい。
誤魔化すように、ぐっと握りこぶしを作って気合を入れる。

そうこうしているうちに、遺跡の入り口付近にまで戻ってくる。
向かう先にまだ傾きかけたくらいの明るい日の光が射しこんでいるのが見え。

ミケリア > 「ええ、なので見せてくださいね。あなたの成長していく姿を。
これからよろしくお願いします、ミューアさん」

指を絡め、肩を寄せ合い、寄り添って歩く姿はまるで恋人のよう。
香りに惹かれて急速に距離を詰めるあなたを訝しむこともなく、女は当然のように受け入れる。
もちろん、近付けば近づく程、花の香りは濃くなって。
もはや美しい花畑にいるような心地にさえなるだろう。

「ふふ、お仕事ですから……期待していますね」

寄せた顔が、そのままふわりとあなたの頬に触れる。
それは一瞬の出来事だったが……露に濡れた花びらのような、柔らかな感触。

「……おや? もしかして、あれが出口ですか?
わ~、ようやく出られました……!」

女は何事もなかったかのようにすぐに顔を引き。
久し振りに浴びる太陽の光に大きな歓声を上げるのだった。

ミューア > 「こ、こちらこそ……不束者ですが、よろしくお願いしますっ」

聞きようによっては、意味深にも感じられるその言葉にどきまぎしてしまう。
密着したままで、ぺこりと器用に頭を下げる。
と、再び顔を上げた瞬間に、ふわりと何かが頬に触れる感触

「ふ…ぇ………?」

ぽん、と頭から湯気が沸き上がるような勢いで、顔が真っ赤に染まる。
腕を絡めるように抱きついていなければ、そのまま腰が抜けてへたり込んでいたかもしれない。
先程の行為が、まるで気のせいだったんじゃないかと思うほどに、無邪気に喜ぶ相手を見つめて。

「は、はぅ……
 な、何だか心臓がバクバク言ってます……」

無事に遺跡を出れば、高い空の下、数時間ぶりの解放感を味わえる。
まだ夕暮れに差し掛かるのまでも時間のある陽の高さで。
遺跡を出ても、繋いだ手はそのまま。むしろしっかりと自分から腕まで絡めていて。
そうしていることに何の疑問も感じず、それが当たり前だという様子で王都への道中も始終べったりと甘えてしまって―――。

ミケリア > 「うふふ~……本当に可愛いですね~、ミューアは」

そんなわかりやすく真っ赤になる反応も、女にとっては好ましい。
意図的に誘ってはいたけれど、まさかあちらから飛び込んで来てくれるなんて。

「私も胸が高鳴っていますよ。これからの日々が楽しみです。
……それでは、帰りましょうか。マグメールへ」

真っ赤な顔のあなたへなおも蕩けるような笑みを向け。
王都までの旅路を、ぴったりと寄り添うように歩んでいくのだった。

──余談だが、花の香りの効果はしばらく消えず。
女と別れた後も、その晩の間はぽわぽわと体が火照るような感覚が抜けなかったことだろう……。

ご案内:「無名遺跡」からミューアさんが去りました。
ご案内:「無名遺跡」からミケリアさんが去りました。