2023/08/04 のログ
ご案内:「九頭龍山脈 山中」にシャイナーさんが現れました。
■シャイナー > 【待ち合わせです】
ご案内:「九頭龍山脈 山中」にテイアさんが現れました。
■シャイナー > 九頭龍山脈を遥か高くまで上り詰めた果て……冷たく強い風が吹きつける山中にて。
一歩、足を踏み外せば死は免れないであろう断崖から、返り血や裂傷だらけのマントを靡かせて風景を見下ろす真紅の女騎士が一人。
強風をものともせず、冷風よりも冷たい殺気に近しい気を放って眺めるは、かつての戦友が旧き時代に功績を認められ、領地として与えられた自然の豊かな領地。
「……『テイア・ルア・ルミナス』……」
在りし日の記憶の内で未だ輝きを放ち続ける、聖騎士の名をそっと呟いた。
"黒の王"ナルラート・カルネテル……かの愚かなる王を戴いたが最期、失われた栄光。訪れた恐怖と混迷の時代。
そんな闇の時代の中、誇りを掲げ真っ向から愚王に立ち向かった「王国」に忠を捧ぐ同士の姿を想起する。
「……王国聖騎士団……ルミナスの森。……今頃、彼女は何を思っているのか。
いかに永い時が経てど、容易く王国を蝕む闇に呑まれて潰える器ではないでしょうけど……」
とはいえ、己と彼女が共に国へ忠を誓い戦っていたのは途方もない過去の話だ。
度々勇名を耳にした事はあっても、直に対面した事はない。
そんな、過去に英名を又聞きするだけだった者同士が、悠久の時の末にようやく手紙を送りつけたところで、会える望みは遥かに薄い。
……王国に見切りをつけ、何処かへ姿を消した”過去の”同胞……会って話した事もない存在など、名だけでも覚えていれば御の字だろう。
或いは、新たなる己の生き方によって、「敵」としてその名を知らされる事はあったかもしれないが。
少なくとも、過去に相対した記憶もない。……本当にやってくるのかは期待薄だった。
幸運にも、聖騎士テイアその人が現れたとしても……その先は更なる困難を極めるのだが。
「…………」
兜をそっと脱ぎ、白髪交じりの暗い赤髪をなびかせながら、風にあおられて戦友を待ち続ける。
……返り血を浴びたように暗い赤の鎧を纏ったその姿は、恐ろしさの一方でどこか哀愁さえ感じさせる。
■テイア > 風が銀の髪を揺らす。
騎獣である二足歩行の鳥、オルカモントを駆って九頭龍山脈を登っていく。
悪路でもオルカモントは問題なく、最高速度に近い速度で走り抜けていく。
そしてたどり着くのは、ルミナスの森を見渡せる断崖近く。
身軽な様子で、オルカモントから飛び降りてエメラルドとアメジストの視線を向けた先には、古い血で汚れ裂けたマントを風に揺らす鎧姿の女性の後ろ姿。
「生きていたとはな…シャイナー・エグリシス。」
女の元に届いた一通の手紙。
それは、この場所と日時を指定してテイアとの面会を望む内容の手紙の差出人は、ある時を境に姿を消してしまった騎士の名だった。
声を掛けた彼女は、昔と同じような彼女の象徴のようでもある赤い鎧を身に付けながら、靡くその赤い髪には白髪が目立つ。
ポンポンとオルカモントの首元を軽く撫でて、労を労うと彼女の元へと歩み寄っていくだろう。
会話に支障がない程度近づくと、足を止めていく。
「手紙には、会いたいという事のみだったが…?」
出奔した彼女からの突然の手紙の真意を問うように、静かに声をかけて。
■シャイナー > 強風に髪とマントを靡かせながら地を見下ろす女騎士の顔は張り詰めていた。
訪れるかも分からない待ち人……その姿をかつて耳にした英名から思い起こそうと……或いは空想し無言で時を過ごすのみ。
やがて、目を瞑れば馬鹿な夢でも見てしまったか…… 断崖へ歩みを進めようとしたその時だった。
「…………!」
女騎士がぴたりと歩みを止める。もはや王国には忘れ去られて久しいとさえ思っていた己の名を呼ぶ者が現れた。
すぅ と一呼吸し、脱いだ兜を片手に振り返れば、右目を眼帯で覆いクマだらけで瞳の色さえ分からなくなった闇色の瞳が覗き込む。
美しい銀髪のエルフ……『ヴァルキュリア』の異名と共に伝えられていた美しき純白の騎士の姿と荘厳な佇まいから、
眼前の騎士が己が呼びつけた聖騎士テイア本人であると知り、暗い瞳にほんの僅かな間だけ光が戻った。
「…………わたしはまだ、忠を果たせてはいない」
生きていた そう告げる純白の聖騎士には再び光を失った瞳に険しさを込めて静かに言い放つ。
そのまま近づいて来る聖騎士を張り詰めた表情のまま見つめ、再び口を開くのを待てば発せられた問いに目を瞑り、閉口。
「……このような場所で、ただ顔を突き合わせて話して終わる訳ではないことを、あなたも薄々察しているはず」
しばしの沈黙の末に、覚悟を決めた様子で女騎士は語る。
只ならぬ何かを秘めた、ピリピリとした表情のまま一歩、歩み出てそっと口にしたのは
「……”アイオーン”……。名を口にする事さえ忌まわしい、紛い物の……異教の神ではない。
わたし達が真に仕えた王国と共にあった真なる神の名……。……覚えているかしら?」
■テイア > 後ろ姿の彼女がこちらへと向き直っていく。
見えた顔…瞳は、右目は失われたのか眼帯が目立ち、残った左目も昏く闇色を湛えている。
「………。」
こちらの姿を認めた瞬間、ほんの一瞬闇色の中に光が見えた気がしたが、言葉とともにその光も消えていく。
忠を果たせていないという言葉に、微かに目を細めて瞳を閉じた彼女を真っ直ぐに見つめたまま言葉の続きを待つ。
「楽しく昔話に花を咲かせる…という訳ではないだろうな。」
彼女が姿を消した理由は、なんとなくでは察しがつくというもの。
そして、彼女の赤の目立つ容姿と血で汚れたマントはアスピダでの情報として入ってくる、暁天騎士団と共にある人物と合致するところがある。
軽く吐息を吐き出すと、一歩歩み出てくる彼女を見据えたまま女はその場から動かなかった。
「…忘れるはずもない。今も昔も、私自身の信仰はアイオーンとアイオーンに連なる神々にある。」
人々に忘れ去られて久しい、この世界を創りたもうた偉大なる神の名。
今はミレー族のみが、その神を崇めるが人間の歴史の中からは抹消されている。
存在を消されたとしても、人々に忘れ去られたとしても、その存在を忘れるはずもない。
ピリピリとした殺気にも似た雰囲気のまま、張り詰めた表情の彼女は何かを確認するかのように女へと問いかけていく。
問いに対しては、誤魔化す事もなく、また誤魔化す必要もなく女はそう答えていくだろう。
■シャイナー > 女騎士の語る”忠”。その為に無数の血と呪いを浴び続けてきた昏い瞳の先には、己が惨めにも思える程に神々しい聖騎士の姿。
亡霊武者の如き、血を思わせる黒ずんだ赤の鎧を纏った女騎士の言葉を黙って受け止める聖騎士。
己の出で立ちに何らかの察しがついたか、神々しく美しい顔は険しい表情を作る。
昔話に花を咲かせる……それだけならどれだけ心が洗われる時間を過ごせただろう。
己が、聖騎士テイアへ真に話すべき言葉には未だ辿り着けていない。
”楽しく”……その何気ない言葉が、女騎士の耳には呪いのように重く響く。
……今すぐにでも浸ってしまいたい、在りし日の素晴らしい思い出。だが、それに溺れていてはならない。
目的を果たせねばなるまいと、昏い瞳をじっと向けて創成神アイオーンの名を口にする女騎士。
聖騎士テイアの返した答えは、己の期待する通りのものだった。
変わらぬ信仰を、変わらぬ忠を抱いている事に安堵すれば、幾ばくか気の休まった様子で瞼を下ろし一息つく。
「…………そう答えてくれると信じていたわ。テイア・ルア・ルミナス。
既に失った数は計り知れない”きょうだい”とも呼ぶべき戦友の、数少ない生き残りであるあなたならば」
女騎士の表情に笑顔は戻らなかったが、ピリピリとした雰囲気からは微かに、喜びを帯びたほんの少し明るい声で、
眼前の聖騎士の名を呼ぶが……喜びの影には尋常ならざる執着心を感じさせる迫力を込めて”きょうだい”呼ばわりする。
「……あなたに問いたい。……あなたの眼にはどのように映っている?……わたしが離れた王国の姿が。
…………あなたが、今も騎士として名を残す王国の姿が」
ぎゅ と眉間に皺を寄せて続けて問う女は、先ほどの喜びからは一転してどこか怒りのような感情を漂わせる。
さらに一歩、歩みを進める女騎士。……兜を持つ手を微かに震えさせながら。
■テイア > アスピダの現状と、その現状を作り出した人物たちの情報が脳裏を過るものの、微かに目を細めただけで女の表情は動かない。
友好的に彼女に笑いかけるわけでもないが、かといって敵対的に睨みつける事もなく彼女を異なる色の瞳で静かに見据え続けて、言葉を待つ。
何かを振り切るように、アイオーンの名を口にする彼女に答えると、どこか安堵したような雰囲気へと変わっていく。
「歴史から消されてしまっているからな。
時が移ろい、過去を知る人間は既にその寿命を終えて久しい。
今もその信仰を守っているのはミレーと昔を知る者くらいだろう…。 …………。」
歴史そのものから消されてしまった、創世神の正しき名。
知らなければ信仰のしようもなく、穢れなき信仰心を持つものはなんの疑いもなく異なる神の名を、偉大なものとして崇め奉る。
それは仕方のない事だと瞬きの間、瞳を閉じて再び瞳を開いていく。
”きょうだい”と呼ぶ彼女に口を閉ざす。
彼女とは、お互いに名と顔を認識している程度の関係だ。
昔を共に懐かしめる者、信仰を同じくする者への喜びは分かる。
しかし、お互いに永くを生きる者だとしても、”きょうだい”と言い表すのは違和感を覚える。
「………。そなたは、私に何が言いたい…?
………この国は…既に洛陽の時に差し掛かっているのかもしれない。
輝ける太陽は、いつかは地平の先に沈む。
或いは若木が育ち、実を結び、青い果実が熟していく…。
けれど、熟した実はいずれ腐れ地に落ちる。
長い歴史の中で、この国は実と同じく地に落ちようとしているのかもしれない。」
言葉の真意を問うが、眉根を寄せて怒りのような感情を漂わせ、更にこちらへと歩みを進める彼女を見据え続けていれば、兜を持つ手が微かに震えている。
一瞬視線を横へと逸らすと、吐息を小さく零してどう答えるかと考える。
山の冷えた風が、女の銀の髪と彼女の白髪まじりの赤い髪を揺らす間だけ沈黙が流れ…。
取り繕った答えを彼女が望んでいる訳ではないだろうと、自身が感じている本音を彼女へと伝えていくだろう。
■シャイナー > 己へと向ける視線は、国の為に剣を振るった朋友を懐かしむわけでもなければ血に染まった己を異物として排する様子もない。
翠緑と紫の異なる輝きを放つ双眸は、ただ静かに己を見据え続けている。
だが、両者が信ずる神の名が互いの口から発せられれば、二人の心に残るかつての王国の記憶がそうさせたのか、自然と気が安らいだ……そんな気がした。
「……ええ。理を捻じ曲げてまで時の流れに抗えなどと、冒涜的な無理を言う気は毛頭ない。
…………、しかし」
聖騎士の言葉に、目を閉じて項垂る。
やるせない現実。認めたくはないが、防ぎようのない時の流れがもたらした結果。
今や迫害対象のミレー族……そして、続けて話される昔を知る者……ほかならぬ自分たちだ。
過ぎてしまった現実を歪曲させる事は困難を極める。
聖騎士の言葉には無力感や喪失感、やるせなさで胸が締め付けられていく……。
逸る感情に突き動かされるまま、女騎士は重ねて王国の姿を問う。
聖騎士に問い返され、一時期我に返ったと思われた女騎士は思わず手が震えていたのを自覚し、呼吸を整えて聖騎士の言葉をじっと聞き届けよう。
……しかし、共に在りし日の国へ仕えてきた聖騎士が続けて紡いだ言葉には、いつしか兜を持つ手だけではなく肩まで震わせる。
今にも、掴みかかってもおかしくない剣呑さを漂わせたまま、堪え続けた女騎士は最後の言葉まで聞き届ければ、はぁ……と深いため息をつく。
この国は実と同じく地に落ちようとしているのかもしれない。―――
そんな、盛者必衰の理になぞらえて語る聖騎士が全てを話し終えようとしたその時、女騎士が動いた。
■シャイナー > 「それは違うわ、テイア」
■シャイナー > 眼を瞑り、しばし沈黙を保っていた女騎士は、光のない瞳を再び開いて首を横に振った。
……聖騎士テイアの言葉に、納得がいっていない様子で、語気を強めて否定する。
「……わたし達は、この暗黒の時代を許してはいけなかった。
邪なるカルネテルの暴虐を阻止し、わたし達の……マグメールの真なる神アイオーンを、
マグメールの栄光を築き上げた王たちの遺したものを守らねばならなかった……」
女騎士は項垂れたまま、兜を持つ手を震わせて悔恨の言葉を並べる。
ぎり と歯を食いしばったまま、光のない瞳に無念さを込めて
「この国は熟しすぎて腐った訳ではない。必然の滅びを迎える時が訪れたのではない。
……毒され、貶められたのよ!かの愚かなるカルネテルがもたらした暴政を、腐敗を!
あなたもその目で見て来たのでは……!?」
そのまま興奮混じりに震える足取りで進み、まくしたてて女騎士は続ける。
対面したまま立ち止まっていれば、鼻と鼻が触れあいそうな距離にまで縮まるかもしれない。
「どれだけの同胞が陥れられた?どれだけの戦友が謂れのない理由で消えねばならなかった!?
わたし達が築いてきたものを、あなた自身で否定してはならない。
奪われたのよ!穢されたのよ!!……愚かなる王によって!異教の神によって!!!」