2025/01/25 のログ
■アイシャ > 「わたし?…うーん…そうかしら?
お父さまが一番大きくていらっしゃるんだもの、ちょっとずるいわ。
ただ…どちらにせよ姉さまと兄上が砂を弄っている姿は何となく想像できないのよね」
不思議、と呟きながら小さく笑う。
最近顔を合わせていないからだろうか。
長兄と姉への家族愛は決して薄くはないのだけれど印象としてどこか遠いのは顔を合わせていないせいか、それとも
「そういう、こと……ふふ、嬉しい。
お礼だなんて、私こそ。…大好きよ、兄さま」
この兄から与えられる愛があまりにも大きくて印象深いからだろうか。
重なる唇に、子猫のようにほんの少し喉を鳴らせば銀色を甘く細めて自分からも兄へと口づけを贈ろう。
「…でも、楽しみに、なんて言われてしまうとちょっと構えてしまうわ。
初めて『お話し』したのに、何か貰ってしまう、なん…て…」
海の精霊は一体何を企んでいるのだろう。
兄に抱き着いたまま、少し日が陰った気がして視界をその肩越しに持ち上げれば──蒼とも、碧とも、取れない色が視界をいっぺんに埋めて
「~~~?!!」
上げてしまったのはあ。とも、え、ともつかない驚きの音声、そしてけらけらと、海の精霊達の笑う声。
大波、という言葉があるのは知ってはいたけれど、それをまさか海との交信初回で洗礼として受けるとは。
文字通り頭のてっぺんから爪先まで、それどころか下したばかりの白いワンピースも、もちろんその下まで全部余すところなくずぶ濡れだし、海水は眼に染みるということもたった今知った。
猫のように顔を振って海水を拭えば足元に転がるきらきらとした光。
しゃがんで拾い上げれば、それらは上質な珊瑚であったり、大粒の真珠や橄欖石に、翡翠、それから不思議な香りのする何かを拾い上げてながら──。
「……贈り物って、これのこと…?」
だが、贈るにしたって随分と派手な贈り方ではなかろうか。
思わず呆気に取られて、ポカンとしてしまった。
■レオンハルト > 「俺は紙の上に文字を書くのは得意だけど、形を作るのは得意じゃない。
作れたとして、立方体のような図形ならまだ、かな。」
どうしても物事を理屈や算術で考えてしまうために、上手い下手以前の問題なのだと笑った。
その笑いも卑屈なものではなく、自分はそういうものだから、と楽しげに笑ってみせるのだ。
「兄様も、姉様も、砂を弄って形を作るくらいなら、砂を叩いてくぼみを作る方が得意そうだからね。」
冗句めかした言葉だが、同時に真実も孕んでいる。
この家では、年上の方が肉体的に優れているのだから。
「ああ、そういうこと。
……ふふっ、アイシャこそ、ありがとう。」
口づけが行って帰ってくる。
それだけのことながら、それが幸せなのだと。
そんな最中に大波が1つ。
抱き合った二人の体の上からざぶん、と二人を濡らしつくすほどに。
一瞬ぽかんとしたものの、アイシャの言葉と動きにその意味を理解すれば
楽しげに笑いをこぼしながら、己も広いものを手伝いつつ
「そうだね、これの事だろう。
ぱっと見ただけでもそれなりに高価なものも含まれている。
アイシャは大分好かれたみたいだね。」
楽し気に紡ぐ言葉。濡れたことは良いとは言えないが、
こんな不思議な体験を、愛しい妹とできたのであれば、こぼれるのは笑いだけだろう。
一通り拾い終えれば立ち上がり、そっとアイシャに手を差し伸べて
「二人して濡れてしまったからな、宿に戻って着替えよう。
大丈夫、海の音が聞こえるほどに近い宿だから。」
■アイシャ > 「そうなの?難しいわ…。
でも煉瓦造りの建物は比較的に形も決まっているわよね?
実用的な作品になるのなら、兄さまらしい気がするわ」
勿論、邸から出たことがない少女にとってはそれらは専ら図録で見かける備蓄庫だ。
王都で見かけるような優美なデザインでないにしろ、機能美を称賛する声が世の中にあることも知っている。
「砂を叩く…?防波堤でもおつくりになるの?
でも、それを言ったらテミスもこう…何か…ゴーレムみたいなものにしてしまうんじゃないかしら…」
一番の未知数である弟の名前をあげたかと思えば。むむむ、と眉をよせたあと、途方もなく広げてしまった空想の布巾の大きさに自分で笑ってしまった。
そう、自分がここまでびしょぬれになっているということは、勿論自分は抱き着いていた兄も同じ洗礼を受けてしまったということ。
服よりもまず心配になったのは母とそろいの眼鏡の事。
視力矯正が必要な自分と違い、兄には必要なものだと思っているのだが、濡れたままでも機能するのだろうかと。
「んもう!
気に入ってくれたのは嬉しいけれど、もうちょっと優しい贈り方だってあるでしょう?!」
兄の肩越しに海に向かって物申すけれど精霊たちには悪びれる様子はないようだ。
けらけらと輝いてさざめく波間の囁きにしょうがないと肩を竦めながら兄を見上げれば、存外起こっている気配もなくて、そこで漸く安心が出来た。
びしょ濡れのワンピースのポケットからハンカチを取り出して景気のいい贈り者たちを広い上げれば包みきれなくて、四隅から零れ落ちないように結局はそのまま腕に抱えて持ち運ぶしかなさそうだ。
「そうね、着替えたいし…一度、お風呂に入りたいわ」
差し伸べられた手に自分も同じように重ねて。
護衛の耳には届かないだろう至近距離、そっと兄の耳へと『…一緒に』、そう耳打ちする王女の頬は一足早く季節がやってきたかのような花の色。
■レオンハルト > 「最終的にはそうなるかもしれないが、俺の場合はレンガを作るまでが限界かな。
建物に組み上げるのは、安全性も考えて職人に任せるよ。
俺が得意なのは、砂で物を作ることではなくて、砂を集めてくることだからね。」
自分は芸術家ではなく、その手前の準備をする人間だ、と笑った。
適材適所、サポート役。そんな言葉が似あうと自分でも思っているがために全く気にした風もなく、
自分は裏方と言ってのけるのだった。
家族の状況は二人とも認識はほぼ一緒。
故に最終的には二人で笑うこととなり、
波に濡れて、妹の視線が何か案ずるようなものと感じ、その視線の先を察すれば、
一度眼鏡をはずして袖で軽くぬぐってからまたかけて
「大丈夫、特に問題はないよ。」
メガネは大丈夫だ、と言葉を返した。
宿へ戻ることを提案し、それを受け入れるアイシャの様子。
重なる手を握り、笑顔で頷けば、宿の方へと足を向け
「……そうだね、もちろん。」
自分にしか聞こえなかったであろう言葉に、護衛に聞かれても問題ない言葉で返事を返せば、二人連れ立って宿へと消えていった。
■アイシャ > 「ふふ、わたし兄さまのそういう合理的なところもとっても大好きよ」
自分にできること、自分よりも人に任せた方が合理的であること。
それを総合的に判断し、複眼的な視点で常に物事を考えることが出来る。
何かと穿った嗜好になりやすい少女には中々出来ないことだったから、出来るだけでも尊敬に値する。
そして、その事を自覚し実践に移せるだけの能力があることも。
「本当に?
その…ちゃんと前ご覧になれる?」
視界が不明瞭になるという感覚が自分にはよくわからない。
だから、水滴を拭って改めて装着されるそのフレームをじっと仰ぐ。
油断すれば懐の簡素な包みからこぼれてしまいそうな贈り物たちを落とさないように気を付けながら
「よかった、……嬉しい」
少しばかり後ろを振り返るのは、程よく、けれど極力気取られぬようについてきているのだろう護衛の存在を確認するために。
改めて重なる掌を握りなおせば、少しでも温かさを感じたいとばかりに身を寄せて、当面の逗留先へと爪先を向けた。
ご案内:「セレネルの海/海岸」からレオンハルトさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海/海岸」からアイシャさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海」にエレイさんが現れました。
ご案内:「セレネルの海」からエレイさんが去りました。
ご案内:「セレネルの海」にエレイさんが現れました。
■エレイ > ──夜。
寄せては返す穏やかな波の音だけが響く海岸、その岩場。
冷たい月光の下、腰掛けるのにちょうどいい高さに出っ張った岩の上に腰掛け、海の水面に糸を垂らす釣り竿を握り無言で佇んでいる金髪の男が一人。
傍らのランタンの光が浮かび上がらせる男の顔は、まるっきり気の抜けたような無表情をたたえていた。
「……くあぁぁ……」
大口開けて盛大な欠伸をかます始末である。
ランタンとは逆の傍らに置かれた銀色のバケツの中には、海水以外何も入っていない。
釣果は現状、まったくのゼロのようだった。
「……いやまあ夜釣りとか思いつきでやってみただけなのでそんなに期待はしていなかったが、
こうも全然掛からんとは……これは場所を変えるべきかな?」
などと独りごちながら、少し眉尻を下げて手元の釣り竿を見やる。
なんかもうモンスターとかでもいいから引っかからねえかな、とか些か物騒な事まで考え始め。