2024/08/19 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 洞窟」にシトリーさんが現れました。
シトリー > 王都からもそう離れていない森の中に点在する洞窟のひとつ
こうした湿度の高い日陰に自生するキノコが本日のターゲット
滋養強壮の薬になるらしく、薬師ギルドで高く買ってもらえるらしい。
そんな儲け話を学院で耳にして、何人かでパーティを組んでやって来たのだけれど……

「みんな、どこに行っちゃったんでしょうか……」

どうやら採取に夢中になっているうちに、逸れてしまったらしい。
争うような音は聞いていないから、戦闘になったとかではないと思う。
尖った耳をぴくぴくと動かしながら澄ましてみるも、これといったもの音は聞こえず。

洞窟の比較的浅い層とはいえ、いくつかに分岐したそこは、初心者が迷い込めば簡単には出られない天然のダンジョンに成り得るもので。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 洞窟」にタマモさんが現れました。
タマモ > 色んな場所に赴けば、どこに面白いものがあるか、どこに美味しいものがあるか。
そうしたものは、色々と覚えてゆくものだ。
そうした内の一つ、今居る洞窟は、美味しいキノコが手に入る。
それが薬になるとは知らず、今日もキノコ採取にやって来ていた。

が、今日は珍しく、どこぞの集団を見掛けるも。
悪戯をするにも、相手が多くては面倒と、スルーをしていたのだが…
ふと、耳に届くのは、そこから離れた一つの足音。
そもそも一人で来ているのか、その集団からはぐれたのか。
どちらにしても、一人なのは都合が良いと、そろりそろりと足音を忍ばせ、そちらへと向かう。
そうして、近付いてゆけば…その内、その足音の主の側まで付くだろう。
まず気付かれぬよう、通路やらの物陰からそっと顔を出し、その誰かさんを確かめるのだ。

シトリー > 洞窟の中、少女の目の前には、ふわりと浮かぶ光の球
それのおかげで暗がりは苦にはしてはいないのだけれど、分岐を前にどちらへ進んだものかと迷っている様子。
一応、背には簡単な野営はできそうな荷物を背負ってはいるものの、使い込まれた様子はなく。
見るからに初心者というのが、透けて見えるだろう。

腰に提げた袋には、まだキノコがひとつきり。
これではいくら高値で買い取って貰えると言っても、稼ぎにはならないだろう。
ひとりきりで進むのは少々心細いけれど、進んだ先で逸れた仲間に会えるかもしれない。
きょろきょろと辺りを見渡してから、分岐の中でも一番大きなそれを選んで、一歩足を進め。

タマモ > 相手が使う光源の強さから、余り強い光を必要としない、己の光源は隠れているか。
そのお陰でで、相手の位置はまるわかりだし、近付くのは容易だった。
ひょい、と顔を出せば、そこに見えるのは…あぁ、うん、覚えのある顔だ。
記憶の中の少女も、目の前に見えるその姿も、いまだ初心者の枠を抜け出してない風は見て取れる。
…まぁ、当然なのだろうが。

さて、そんな少女も、やはりキノコ狙いか…いや、それ以外の目的、ここでは知らないし。
ともあれ、一人なのを見付けてしまったからには、何かやるしかないだろう。
進む少女の行く先は、この洞窟内にある幾つかの内の分かれ道の一つ。
少女が選んだ選択肢は…確か、キノコの群生地の一つがあったはずだ。
そして、そこは己が悪戯を仕掛けた場所の一つ、でもある。
キノコ採取に気を取れれば、周囲に漂う淫気に当てられ…と言うもの。
そこに向かうのならば、好都合、そんな考えを浮かべながら、その後を付いてゆくのだった。

シトリー > 身なりは初心者のそれでも、進む足取りはしっかりとしたもの。
手にした木の杖を構えながら、周囲を警戒することも忘れてはいない。
この辺りは学院で習ったセオリーをそのままなぞったもので。

道は緩やかな下り坂―――それを降りきったところで、少し開けた空間へと出る。
周囲には、ぽたぽたと尖った鍾乳石から水が滴り落ちる音が響くだけで、やはり他に気配は感じられない。
ただこんもりとしたキノコの群生を見つけ。

「ここにも誰もいらっしゃいませんね……
 せめてキノコだけでも採取して帰りましょうか。」

とりあえず、これだけあればここまで来ただけの苦労に見合う額にはなるだろう。
くるりと周囲を警戒してから、その場にしゃがみこんで一本一本丁寧に採取していく。
聞いた話では、傘の部分だけではなく根元の部分も薬になるらしい。

辺りに漂う、どこか甘い香りはキノコの胞子のものかどうか。
そうして十本ほども袋に入れたあたりで、少女の動きに変化が現れ始め――

「なんだか……身体が、はぁ……おかしい、です……」

じっとりと額に汗を浮かべ、胸元を開くとぱたぱたと風を送り込み。

タマモ > うん、一人での行動とは言え、なかなかに堂に入ってきたものか。
周囲をしっかりと警戒し、慎重に進む少女、それを背後から見詰め続け。
そんな事を、感慨深く思ってはいても…まぁ、やる事はやる。

そうしていれば、少女はキノコの群生地へ、もちろん、己も後ろから付いて来ている。
さて、それなりに強い淫気を振りまいているんだ、諦めて引き返さなければ、晴れて犠牲者の一人だろう。
…と、思ってはいたが、やはりキノコ狙いか、少女は足を踏み入れた。

己は入り口から見詰めたまま、そんな少女の様子を眺めてはいるのだが。
そう経たず、少女の変化には気付く事が出来る訳だ。
呟きも、耳を澄ませば聞こえるし…その仕草も、淫気に当てられるも、気付かないままのそれだ。
仕込みは上々、良い感じだと思ったタイミングで、足音を忍ばせたまま、するりと少女の背後に位置取る。
ここまでこれば、後はもう…

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 洞窟」からタマモさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 洞窟」からシトリーさんが去りました。
ご案内:「布都の工房」に布都さんが現れました。
ご案内:「布都の工房」に影時さんが現れました。
布都 >  
 メグメールの奥に有る、鍛冶師の工房。
 鍛冶師が己の目的のために作り上げた場所で、秘境と言って良い場所に有る。
 そして、排他的な場所の奥で一人、鎚を振るい、玉鋼を打つ

 ―――ガキィ……ン


   ―――ガキィ……ン

 森の中に、金属を打ち付ける音が響き渡り、そして、消えていく。
 其処に有るのは、唯々一つの執念、妄執、そして、狂気か。
 誰も寄せ付けず、誰も居ない、唯、其処には一人の鍛冶師のみ。
 森の中、河原の近くの水場であり、涼し気な場所と言うに、熱気が籠るばしょ。
 作務衣から露出する派だから、汗の珠を幾つも、幾つも、滴らせ。
 鬼気迫る表情で、玉鋼を鎚で打ち付ける鍛冶師。

 ただただ、それの為だけの、場所が、有る。

影時 > そんな秘境めいた鍛冶師の工房を訪れるものが、ある。
偏屈な鍛冶師に用があるものは主にその刃を求めるものであろうが、何事にも例外はある。
例えば、今すぐに刃を用立てるのではなく、都度差し入れを持参する者とはどうだろう。例外たるや否や。
深い森を慣れた風情で突っ切り、数日前の嵐で激流と化した流れを悠然と飛び越える姿一つある。
夏の陽気を湿気と共によく含む風に、白い羽織の裾を靡かせる男の姿が工房の入口に立ち。

「――よーぅ、やってるかー?」

飲み屋のつもり、ではあるまいし。だが、勝手知った風情で入口を開きながら声を上げる。
その手に提げるのは、縄で括られた緑と黒の縞々が入った一抱えもある果実。スイカ、という奴だ。
答えが返るかどうかは、気にしない。
聞こえてくる槌音から思えば、極度の集中故に答えが返らないことも大いに在り得る。

答えが返ろうが返らまいが、敷居を跨いで中に這入ろう。
肩に担ぐように携える果実に掴まった二匹の毛玉が日陰に入ると、ふぅ、と汗をぬぐう仕草を見せて。

布都 >  
 金属を打つ音は、止まらない。
 誰かが来たからと、止まるような物では無い、止めて良い物でもない。
 玉鋼を熱して、鎚で叩き、形を作り上げていく。
 それが、鍛冶師の行う事でしかないのだ。
 障子が開いて、入ってきた人物の事に意識は向けない。
 これがもし、布都を殺す気で入って来たのならば、どうなるかはわかるだろう。

 ―――ガキィ……ン


   ―――ガキィ……ン

 唯々、只管に金属を打つ音が響き渡る。
 彼がどれだけの時間を待っているのかはわからないのだけども。
 鍛冶師は、唯々、金属を打ち付け、刀を打っている。
 それこそ、鍛冶師は、鍛冶師としての行動を、行っているだけであり。
 彼がどんな風に寛ごうが、言葉も意識も向けないのだ。

 前から、彼が着たときは自由に待っているのだ。
 飲み水を飲んだり、酒を飲んだり、食事をしていたり、だ。


 時間が過ぎ去り、一本の刀が、出来上がる。

布都 > 鍛冶ダイス判定 刀のランク
4d6+10で判定。
14 失敗作
15~20 高品質
21~27 名刀
28~33 神具
34 神器
[4d6+10→2+3+3+6+(+10)=24]
影時 > 「桶勝手に借りるぞ」

ああ、やってるな――と。声をかけても言葉は帰らず、槌音のみが聞こえる時はだいたいそうだ。
それこそ何らかの撃意でも投げ掛けない限り、明確な反応は生じるまい。
もっとも、明瞭な敵意や殺意を放った場合はどうなるか。その答えは火を見るよりも明らか、だろうが。
勿論、己にそうする理由はない。
気配を隠すのが上手くとも、槌で殴られるだけではなく、赤々と焼けた鉄の棒で殴打されたら、痛いというものではない。
ともあれ、勝手知った風情で桶を探し、見つければ土間に置くその桶の中に持参したスイカを転がす。
その後、羽織の裾を払い、腰裏につけた雑嚢を漁ってこれまた一抱えあるものを引っ張り出そう。
白い薄紙で包まれたそれは、外気に触れて白い靄を放つ。一塊幾ら、という値段で町売りされていた氷だ。
魔法仕掛けの倉庫に放り込んでおけば、保温が効く。一定の温度に保たれるなら、勝手に溶ける心配はない。

桶の中にスイカと氷を一緒に据え、あとは飲用の水を流し込んでおけば自ずと冷えよう。
まるまるとしたスイカの上に、くつろぐように捕まるシマリスとモモンガの二匹に肩を竦めて。

「ふむ。……――そろそろ、頃合いかね?」

座敷に腰の刀を外して転がし、座せば暫し目を閉じる。目を閉じれば自ずと作業の音が耳に入る。
槌から、別の音に変わり、また別の音が生じるなら、少なくとも一段落に近づいてくる頃合いだろう。出来栄えは、如何に?

布都 >  
 刀を打ち終わり、出来を見やる、刃を綺麗に研いで、刀身を整えて柄を作り、鍔を作り。
 仮の鞘を作る、鞘に関しては後程ちゃんとしたものを作らねばならぬので。
 しかし、その前にやる事が有る。

「………ふむ。」

 刀は、それなりに良い物が出来たが、銘を入れるほどの出来栄えでは、なさそうだ。
 暫く刀を眺めてから視線を、ゆっくりと移動する。
 そして初めて、其処に新しいという訳では無く、知った顔があった。

「あン?居たのか、ジジィ。
 丁度良い。
 手土産やンよ。」

 知っている顔は、今の所唯一の顧客だ。
 ギルドを介さずに外貨を稼ぐ手段、と言って良い、同郷の存在。
 彼が居る事自体には別に驚きもない、前にそんな事が有った事もあるのだ。
 取り合えず、と言う形で、普段捨て売りにする為に置いてある樽に、今できた方の刀を差して。
 二階にあがる。

 少しの時間の後に、一振りの鞘に入った刀を持って降りてくる。
 それを、彼の前まで持って行き、胡坐をかいて見せる。

「銘を外道國(とつくに)と言う。
 尖った所は無いが、全体的に強くできてる、それでいて使いやすい。
 刀を持ったことのねぇ様なトーシロでも、斬鉄出来ンぜ。
 久々に、良いのが打てた。」

 呵々と、笑いながら差し出す。
 少なくとも、自分の思う、良い刀が出来たのは、刀鍛冶として心が躍るものだ。
 先程のも、良い刀ではあったが、それだけ。
 玄人であればうまく使えるだろうというだけの刀。
 同じ名刀レベルでも、違いが大きいのだ。

「―――で、ジジィはなンか、用か?」

 今更のように、問いかける。

影時 > あとは、どうしようか。茶でも淹れるかどうするか。
荷下ろしをしてもいいが、向こうの許可なく荷下ろしをするのは少し憚られる。
こうして時折この工房を訪れ、燃料や食料を差し入れるのは、自分の得物の面倒を見て貰っているからだ。
他者が手掛けたものは兎も角として、他ならぬ知己が鍛えた刃だ。これ以上の適任が思い当たらない。
茶葉のストックがあるかどうか含め、確かめようかと草履を抜きかけた処に。

「よう、勝手に上がってる。スイカ持ってきたから喰うか、と……、手土産、だと?」

右手を挙げ、ひらと振れば、スイカの上で涼んでいる毛玉たちも揃って前足の片方を挙げてみせる。
そうしながら、向こうの手にあるものを見遣る。
この同郷の鍛冶師は仕事が早い。鞘は兎も角として、仮組み、仮の誂えだろうとしても凡その拵を誂えてみせるのは中々見ない。
まさに、出来立てほやほやと思えるものを、樽に放り込んでいくのは――ああ、と察してみせよう。
さて、問題はここからだ。工房の二階へと上がってゆく姿が何かを持って、戻ってくる。

「……ほほう?お前さんがそう云うってこたぁ、よっぽどの会心の奴なんだろう。さて……」

刀鍛冶が作るものが何かと云えば、当然刀だ。陶芸等に勤しんでいるケースもあるかもしれないが、先に出るものは自ずと定まろう。
さて、そんな女鍛冶師が差し出して見せるものを目を瞬かせ、手を伸ばして受け取る。
これは珍しい。ここまで言ってみせるのは、良いものだろう。
袂から手巾を取り出し、咥えてはそっと鯉口を斬る。ゆっくりと抜き放つ刃金を一瞥し、僅かに氣を流す。
氣を流す際の抵抗、手応えを確かめる。
内心でううむ、と唸るのは、良く馴染み、違和感なく奔る感覚。それは斬れる、という証に他ならず。

「……いつもの、って奴だ。差し入れだ。今日は珍しく木炭が多く出てたから、纏めて仕入れて貰った。使うだろ?」

刀を鞘に戻し、咥えた手巾を取ればそっと詰めた息を吐き出す。
外道國なる新作を己が右手側の畳の上に置き、用件を述べる。
いつもの、だ。雑嚢の中には日持ちするしないも含めた食料、鉱石、そして燃料といったものを積み上げている。

布都 >  
 勝手知ったる何とやらと言う感じで、手を上げて西瓜の所在を伝えてくれる。
 視線を其方に向ければ、確かに、西瓜が桶でぷかぷかしている、氷も有るので冷たくなるのだろう。
 とは言え、もう少し待っておいた方が良さそうだ。
 それは其れとして、手土産の言葉に驚き、聞き返す相手に対しては、にんまり、と口角を上げて笑いを見せる。
 ぎしぃ、と言う擬音が出てきそうな、邪悪な笑みだが、会心の笑みでもある。

 毛玉たちには視線を向けるが、ただそれだけ。
 可愛いとか、そう言う意見はほかの誰かがやればいい、用事があるのは会話をするのは、目の前の男のみだ。

 樽に入っているのも。別に悪い物では無いのだ。
 高品質の刀であり、名刀……業物であることに間違いはない。
 ただ、鍛冶師の出来栄えの気に入り方の違いでしかない。
 使う物が使えば、立派に使える刀なのは、間違いは無いのである。

「刀の強度、粘り、握りに刃の切れ味。
 全てに於いて、上手く行っている。久方ぶりの満足できる仕事だった。
 まあ、アンタには不要だろうが、そうさな、誰かにくれてやると良い。」

 人殺しの武器なのだから、人殺しに渡せばいい、美術品として保管すべきものでは無いのだ。
 だから、彼であれば使い手に渡りを付ける事が出来よう。
 それに渡せばいい、そう言う意味で、手土産、と言う物だ。

「ああ、正直助かる。
 未だ、木炭を自分で作れる程整って無くてね。」

 自分ですべて作り整えているからこそ、完成するまでは人の手を欲するもので。
 彼が持ってきてくれる補給物資は素直に喜ばしい。
 変りに出せるのは、代金代わりに、彼が持ってきたものを育てた小豆と、米と。
 此処の畑で作れる、島国の食料。後は、味噌くらいか。

 それと、作品と。
 彼の武器の調節位。
 どれを求めるのかは、彼次第だが。

影時 > さながら、勝手に家に押し入り、我が家の如く振る舞ってみせる妖怪のそれのよう。
事実、近しいことが出来る。気配を隠して忍び入るのは、忍びの者の習い、習性のようなものだ。
だからと言って、手土産もなし、というのも少し憚られる。何よりも芸がない。
風通しがよくとも、ここは火を使う場所だ。
火に当たってばかりでは、人間芯まで燃え尽きかねない。それなら夏らしい果実でも差し入れて涼むのも偶にはいい。
氷を用意するところまでは出立時の準備に含んでいたが、行きの途中で見かけた市場で見つけたものが珍しかった。

――丸々とした大きいスイカとは、中々見かけるものではない。

天然のスイカは見かけなくもないが、大きいサイズというのは恐らく栽培されているものだろう。
小玉よりも当然値は張ったが、珍しい物を見ると不思議と財布の紐も緩むというもの。
可愛がられるでもなく、一瞥されるだけの毛玉たちも、いよいよその反応には慣れやした……と言わんばかりのもの。
スイカの表面を滑り、ぽちゃんと入れば、ばしゃばしゃと浅い水面を泳ぐ。
冷えすぎた、と思えばタライの縁に攀じ登り、ふるふるふると水気を払ってみせて。

「筵でも束ねて試し切り――すンまでもねえか。この氣の通り、疑いなく斬れる奴に違いねェわな。
 まぁ、相分かった。一先ず預かっといてやる。渡せる奴が居たら、いいンだがなあ……」

本当に切れ味でも確かめたいなら試斬をすればもっとも手っ取り早いが、そこまでは要るまい。
大名たちがやるような死罪人の骸を用意し、胴やら何やらを斬るといった試しはできない。
だが、其れ以前の巻藁切りの類も、要るまい。よく斬れるという確信がある。もうそれだけで十分だ。
己が今の愛刀と同じか、遜色ない手応えを握っただけで感じられるのだから。
後は、これを使いこなせるものがどれだけ居るか、という位か。そんな懸念を顔に浮かべつつ、息を吐いて。

「そりゃそうだろうよ。まぁ、これで暫くは持つかね。
 ……ついでに、と言っちゃァなんだが、一本貰っていいか? 屠龍の手前位までイケる奴がありゃいいんだが」

何でもかんでも、とまではいくまい。炭まで自分で拵えられるとすれば、もっと人出も必要になるだろう。
世話になっている分、同時に将来も世話になる分も含めて、こうして差し入れは続ける。
その代価は栽培を依頼している一部の作物と、武具類の作成と調整と。今回は、どうしようか。
そう思いつつ、先程見かけた樽の方に目を遣る。託された一本とは別に、手頃なものがあれば一本貰えないだろうか。
声を放てば立ち上がり、樽の方に進もう。
何本も放り込まれた中で、愛刀と遜色ない――は言い過ぎでも、眼鏡に適うものがあれば、丁度良い。

布都 >  
 許可をしているし、そもそも、鍛冶中には対応できないし、対応しないから。
 ある程度勝手にしていても怒る事はない、というか、この人里離れた鍛冶の場に来て、何をすることもあるまい。
 なら、くつろぐ程度許してしまえ、と言うのが、鍛冶師の考えだ。
 盗むものもありはしないし、盗んで使えるものがあるかどうかで言えば、否でしかないし。

「へぇ。西瓜。
 こっちにも、あンだねぇ……。」

 久しぶりに見たものだ、丸々としている、大きな西瓜。
 農家が必死子いて作ったその結果と言わんばかりの物は、此方で言うなら幾らになるのだろう。
 それよりも、久しぶりに見た物に、目を細めながら台所に歩き、その途中で、冷えた西瓜を持ち上げる。
 台所で、まな板の上、菜切り包丁を取り出して、4等分する。
 音もなくストンと切れる包丁の切れ味は、やはりこの辺りは、鍛冶師の面目と言う奴か。

「ほれ、喰え。
 試し切り?してぇンなら。そこに、鉄柱置いてあンだろ?
 好きに切れば良い、どうせ切った後は、炉にくべて、固まりにすンだからよ。」

 影時と、毛玉一匹に1/4ずつ。自分に1/4。
 食えればいいのだから、量なんて拘りはないというか、毛玉にそれだけ食わせる積りの鍛冶師だ。
 渡す相手に関しては、彼に勝手に一任したので、もう何も言わない。
 手を離れたら興味を失ったかのようでもあるのだ、だれがどのように使おうが、構わない。
 武器は武器、道具は道具、殺人の為の武器なのだから、殺人鬼に渡ろうが、この鍛冶師は厭わない。

「あぁ、持つ。と言うか、悲しい事に、自分の食うモンを作らねばならンから。
 鍛冶だけしてるわけにゃいかねぇのさ。
 足りなくなれば、食いもンに注視しなきゃいけねぇし。

 ん?ああ、今樽に入れたのなら、丁度いいンじゃねぇの?」

 この国は色々と進んでいるから、炭などを自分で、作る道具もありそうだ。
 それを見つければ良いんじゃないだろうかとは思うが、それは其れとして。
 高品質の石炭や木炭を持ってきてくれる存在は得がたいものだ。
 色々な対価を持って、金意外になるが、それで礼とするが。

 彼が、刀を求めてきたので、今まで作った武器の、銘を入れるほどではないが、それなり以上の性能の刀。
 まとめて置いてある樽を指さして持ってけばいい、と。
 別に売り物としている訳でもないし、一本とかそんなけち臭い事も言う積りは無い。
 必要な分持って行けばいいさ、と。