2023/11/21 のログ
ご案内:「布都の工房」に布都さんが現れました。
布都 >  
 メグメールの森の奥 ひっそりと建っている東洋の庵
 其処から響き渡るのは、金属を叩く音。

 ―――ギィン

     ―――ギィン

 金属が金属を打ち、均し、静かな森の中、休むべき時間、休むべき時に、騒音を作り上げる。
 煙突からは、煙が立ち上り、庵の窓からは、赫々と光が零れ堕ちる。
 夜に在り、其処の住人がいまだに起きて作業をしているという証左。
 冬と言うのに、主は作務衣に、手拭いを頭に巻いて、鎚で、金属を叩く。
 朱く光る金属を叩き、伸ばし、一つの形を作り出していく。
 不純物を叩きだし、純粋を作り上げる。
 刃を作る主も又、一つの刃のような視線で、只、只、鎚を、全身の力を込めて打ち付ける。
 たらりと零れる汗をぬぐう事すらせずに、鎚を振り下ろし、紅い金属を、叩く。

 ギィン―――

    ―――ギィン

 一打、一打、魂を込めて、心を込めて、主は、只、鎚を振るっていた。


 それももうすぐ終わろうか、刀の形が作り上げられて、完成に近づいていることが、よくわかる。

布都 >  
 更に、更に、時間がかかった、最後の調整に。
 水で刀を冷やし、熱し、叩きなおし、刃を作り、刀としての形を作り上げていく。
 金属を打つ音は静かに成り、最後の調整として、柄に刀身を嵌めて、目貫を嵌めて………。
 そして、一振りの刀が出来上がる。
 出来上がった刀を、確認する様に、目を細めて見つめ、見据えて、見分する。


「…………ふん。」


 一つ鼻息を立てて、腰に差して、打ち込み台の方へと、歩いて行く。
 打ち込み台は、藁で作られているわけでは無くて、一本の円柱型の―――鉄。
 試し切りするようなものではない筈のそれ、鍛冶師はいったん休業し、剣豪へと。
 右足を前に、刀は、鞘に収まったまま。

 一つ、二つ、深呼吸を繰り返し。

「―――ふっ。」


 ――――(kin)と、言う音と、銀線。

   ごとり。

 そんな音を響かせて、金属の柱は切られた。
 斬鉄、ある程度以上の腕と、名刀以上の刀があって初めて行える技。
 鉄を打ち作り上げた刃金で、鉄を切り裂く。
 出来合いに満足したので、鞘に戻し、何本も刀が作られている樽に収める。
 売りものにできるレベルの刀だ、と認めた証。

 そして、切り裂いた鉄の柱を引っこ抜いて、炉にくべる。
 溶かして、戻して、再利用する積りだ。