2023/11/13 のログ
アドラー > 「いや、強そう、という印象だとやはり筋肉だと思ったが…
 しかし、私の強みを見抜くとは、慧眼だな」

一昔前は筋骨隆々の男たちがいる場所に身を置いていたからか、そのような印象が根付いてしまっている。
そして自分の強みを素直に見抜かれたことには驚いたような表情を浮かべる。
存外、彼女の洞察力も侮れない。

が直後に子供のように笑う様子に、年齢相応なのだなと微笑みの表情へ変わる。

「…冗談だ。普通の瞳だよ。
 人を信じることは悪いことではないが、搾取をしてくる大人もいる。
 半信半疑くらいが丁度いいぞ。メア」

自身の嘘にまるっきり信じている様子に目を細める。
あまりにも純朴な彼女に罪悪感と心配が入り混じりながら、真実を打ち明ける。
この調子だと悪徳の商人や盗賊に騙されるのは時間の問題だろう。この純粋さが汚されないか、心に傷を負わないか、
彼女の想いは耳に入りながらも、未だに駆け出しといった彼女の行く末の心配が勝る。

「君のようなうら若き乙女の唇を汚すわけにはいかない。
 私と行動を共にするとき、どうしてもと言うのであれば考えるが」

自身が作るフィーカは酸味が強かったり、渋みが強かったり、逆に苦すぎたりとその時によって味が異なる。
この前の依頼の時のものは…思い出したくもない。
あれをこの少女が口にするとは、あまり考えたくないものであるが、美女の笑顔が最優先。
機会があれば、作ってあげようか。と足を動かす彼女に少し甘くなる。

「それは大層な。
 ご両親はなんて?」

貴族の娘という言葉に目を丸くする。
まさかそのような大物に出くわすとは、冒険者とはわからないものだ。
しかし気になるのは両親の対応。一人娘を生死が関わる職に就かせていいのか。どう反応しているのか気になって。

メルリンディア > 「パワーも大事だけど、やっぱりシュバって動ける速さとか、ダーツでブルズアイしちゃうみたいな器用さとか、強い以外も色々あるかなって。そんな事ないですよっ、だって、アドラーさん、他の人と比べてスリムだけど強そうだもん」

パワーファイターとは違う、アーチャーやスカウトといった印象を抱く彼の体付き。
口調の大人っぽさと怜悧さからも、力で押すというよりは、的確に相手の弱点や虚を突いて戦うテクニシャンに見えてしまう。
見た目から来る安直な印象だからと謙遜しながらも、あわあわと視線がさまよって、その後にはにかんだ微笑みに変わる。
ありがとうございます、と照れくさそうな子供の微笑みでお礼を言うのが大人になれない今の精一杯。

「えっ、冗談……? む、むぅ……!! そんな嘘つかないでよっ。半信半疑って言われても、現に見抜かれてるもん」

真実の告白にキョトンとして凍りついた後、次第に見開かれたままの瞳が瞬きを増やす。
騙されたと自覚すると不服そうに眉根を寄せていき、半目閉ざした瞳になりながら唇を尖らせる。
見ての通りの子供っぽい拗ね方をしつつも、冷ましたハーブティーもどきに再び口をつけて、気持ちの溜飲ごと喉の奥へ下がらせていく。
彼の心配は当たっているともいえて、こんな子供っぽい子が普通にウロウロいていたら、あっという間に貪り尽くされるのは明白だろう。

「う、うら若き乙女……ふふっ、そんなお姫様みたいな感じじゃないよ? でもありがとう、ちょっと照れくさいけど嬉しい。じゃあその時は飲ませてもらうね? 今日みたいな夜営の時間だったら、美味しくなくても気付け薬にはなったりして」

彼の様子をみるに、上手に淹れられたことがあまりないのは明白。
けれど、スマートに何でも出来てしまいそうな雰囲気の人が見せる小さな苦手は、人らしく感じて思わず頬が緩む。
苦いとか美味しくないとかだったとしても、上手なことをいってくれるのかななんて想像して目を細めていく。
想像に浸るせいか、足の動きは少しだけ緩慢になり、ぱたりぱたりとペースが落ちていった。


「危ない仕事は絶対駄目って言われちゃった。今日のは、商人がいっぱい集まって団体だから大丈夫ってなって、OKもらった感じかな。あとは……私に何か魔法をかけてたみたいだけど、なにか教えてくれなかったの。お守りだっていってたけど」

自身が危機に陥った時、直ぐ様屋敷に叩き返すための離脱魔法。
そんなものを己の体に仕込まれているとは露知らず、過保護ではないけど窮屈だなぁなんて思いながらハーブティーもどきを啜る。
今日の仕事も、余程の命知らずか、餌に飢え尽くした魔物でもない限りこれだけの団体を襲うことはあまりないだろう。
万が一がきたら大変だが、低いからこそ活かせたのかどうなのか、脳天気な娘をもった両親の苦労が眼の前にある。

アドラー > 「お褒めに預かり光栄だが、私は君が思っているほど強くはない。確かに人より手先は器用な方だが…
 魔力や魔法に関しては君の方が上手だろう。教えを乞いたいくらいだ」

最近は会う人にやれ強そうだのと評価されることが多く困惑する。
強いという評価は良いように作用することもあるが、自分にとっては弱いという評価の方が相手の油断を誘いやすくて戦いやすい。
もう少し弱そうな風に振舞うべきだろうか、と謙遜したように微笑みながらも心底では悩む。
が、直後に彼女のあわただしい表情には悩みも吹き飛んで、魔法の話に転換していく。

「ははは、悪かった。そう怖い顔をするな。
 しかし、怖い大人が多いことは真実だ。足元を掬われないようにな、メア」
 
名前を知り、ハーブティーを嗜みながら、素性を語った相手が不幸になるのは目覚めが悪い。
揶揄ったことについて笑いながら謝罪しつつもその心配は本心。
でも自分にできることと言えば、このような簡単なアドバイスしかなくて、それが歯がゆくもある。

「ふふ、口説き文句としてはくさすぎたか?再三言っておくが味は期待しないでくれ。
 そうだな。眠気覚ましには最適かもしれない」

人には得手不得手がある。料理なんかは特に、この男が苦手としている分野。
コーヒーを淹れるなどもっての外だ。
しかし、相手が楽し気にしているのならばその期待に応えたい気持ちもある。
ハーブティーを嗜みながら、そのような機会がいつくるのか夢想する。

「貴族の両親としては娘が冒険者として活動すること自体、危険が伴うし反対する家庭もあるだろう。
 お守り…いいご両親だな。大切にした方がいい」

どのような魔法をかけたのか詳細は不明だが、身を守るものであることはわかっていて。
目の前の少女の行動を制限せず、それでも大切に思う家族の情景が浮かび、やや感傷に浸る。
余計なこと、と分かっていても大切にしろと、お節介な言葉が出てきてしまって。

メルリンディア > 「そうかな? ふふっ、私も魔法自体は普通かも。この子のお陰でちょっとそういうのには強いけど」

物静かで怜悧さを感じる口調や振る舞いからは、全てを振り払う強靭な力というよりは理知に置いて巨悪を払う、静かな強さを感じさせられる。
謙遜する彼にクスクスと可笑しそうに微笑みながらも、悩む本心には気付けないまま。
感情と心模様がそのまま顔から溢れるのもあり、こうして会話していても変化は大きい。

「絶対怖いなんて思ってないでしょ!? もぅ、でもアドラーさんの言うとおりかも。もうちょっと用心しなきゃ」

膨らませていたほっぺたの空気を緩く吐き出しながらも、不服そうな表情を緩めていく。
事実簡単に騙されているのだから、警戒はすることに越したことはない。
両親もこんな子供な部分を心配して、危うい橋は渡らせまいとしているのが、彼にバレているようなもの。
簡単なアドバイスでも、その方がこうしてわかりやすく伝わっているところもある。

「ふふっ、意外とそういう口説き言葉は苦手かもって感じて、アドラーさんは真面目な人なんだなって思ったけどね? うん、期待は、ちょこっとだけにしておく。でしょ? その時は淹れ方レクチャーしちゃうかもだよ」

下手でも頑張って淹れたくれたコーヒーは、きっと頑張って飲み切るのだろうけれど。
それでも何でも出来そうな彼の苦手が見えるのはきっと楽しそうで、クスクスと子供っぽく微笑みっぱなし。
冗談めかした言葉を重ねながらも、そんな楽しい夜営見張りがあったなら、あっという間に朝を迎えられそうと想像も膨らむ。

「うん……アドラーさんが言うとおりだし、私の我儘だから、容認してくれたのは感謝してるの。うん、お父さんもお母さんもすっごくいい人、自慢の両親だもん。大事にするよ」

本当だったらやめろと閉じ込めてしまえばいいものを、好きにさせてもらっている。
そこは嬉しいことで、余計なことと思う彼とは裏腹に、事実を素直に受け止めながら目を細めていく。
ありがとうと改めてお礼を告げながら、ぱたりと両足の爪先が地面に降りて、吐き出す吐息が先程よりも白んでいった。
そんな緩やかな会話をしながら夜警の時間は過ぎていくのだろう、きっと子供っぽい仕草がもっともっと溢れていくことは間違いない。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」からメルリンディアさんが去りました。
アドラー > 「魔法を扱える、ということだけでも私としては尊敬だ。
 私なんて簡単な魔法や、エンチャントしかできない…この子?」

小さな火の球を出す。小さな光源を出す。魔法と呼べるのはその程度しかできず
唯一、戦闘向きの魔術もそれ単体では効果はなく、ナイフなどの得物が必要となる。
純粋な魔法でも戦える彼女を尊敬しつつも、この子という発言には首を傾げる。恐らく愛用し、愛着の湧いている武装や魔法の類だろうか。

「ふふ、怖いさ。
 気を付けてくれ、と言っても難しいだろうが…時間をかけて信用できる仲間や居場所を作るといい」

頬を膨らませるのを愛らしいと思いつつ、分不相応ながらもアドバイスを送る。
冒険者として活動し、酸いも甘いも経験した身からいうと、仲間や居場所を作るのは大事なことだ。
自分は特定の誰かと依頼をこなす。ということはしばらくしなくなったが、彼女のような駆け出しであれば、誰かと固定のパーティを組むことで得難い体験や経験、信用ができる場所を作ることができるだろう。
それは一人で活動するよりもより大きく成長する糧にもなるはずだ。

しかし、信頼できるパーティを作るのも、難しい場合があるのだが。

「私が真面目?ふふ、真面目だったら冒険者の仕事などせずに百姓にでもなっていたさ。
 あぁ、このハーブティーのように、優しい味の淹れ方を是非とも教えてほしい」

真面目と言われたことも笑いながらも優しく否定して。
自分の淹れたものは舌が痺れるような味がするだろうが、彼女と共に飲むのはきっと悪い心地はしないだろう。
ついでに美味しい淹れ方を教えてもらえるならば、願ったり叶ったりだ。

「あぁ、親孝行は出来るうちにしといたほうがいい。私も、何かあったら君の力になる」

両親に大切にしてもらい、それでも自由に生きる彼女が羨ましく思える。
自分の場合、両親は――――であったのだから。
表情に陰が差しそうになるところを振り払い、どういたしましてと、彼女に微笑みを向ける。
楽しい時間が過ぎ去るのは早い。二人で焚火の前でした話と彼女の仕草は、厳しくなってきた寒さをも忘れさせるほど愉快であった――――

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 野営地」からアドラーさんが去りました。