2024/04/13 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にルフィナ・エニコフさんが現れました。
■ルフィナ・エニコフ >
「流石にこんな時間になると静かね」
夜も更けた時間。
普段であれば浮浪者や中毒者などが多く徘徊するエリアとはいえ、彼らもどこか軒の下で眠っているのだろう。
春めいてきた夜風は決していい匂いというわけではないがそれでも日中よりはましに感じられる。
かといって安全というわけでもなく、道を歩けばどこかしらからくぐもった悲鳴のような声や、湿り気のあるような音が暗闇から響いており。
手に持ったランタンの明りがなければすぐにその闇に飲まれるような感じがして思わず身震いし。
しかし恐怖より好奇心が勝るように口元に笑みを浮かべていて。
「深夜のこの辺りを久しぶりに散策するのも悪くないわね。
けどまずは用事を終わらせましょうか」
小さく独り言をこぼした後、再び路地を歩き始め。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からルフィナ・エニコフさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にミコトさんが現れました。
■ミコト > 夕暮れ時、世界のすべてが紅く変わっていく。
それは薄暗い路地裏も例外ではなく、何もかもが紅に染まっていく。
しかし、その中にあって一点白があった。
少女の形をしたそれは、紅を穢れを拒絶するよう服も、髪も、肌も、そして、瞳までもが白かった。
少女の形をしたそれは、一抱えほどの石を両手に抱え路地をゆっくりと進む。
ただ歩いているだけ――しかし、周囲の空気がソレは人ではない、お前達の同胞ではないと訴える。
「……ここ。」
それは路地の一点で足を止めるとおもむろにしゃがみ込み、石をそこへと据える。
そして、両手を組み合わせて瞳を閉じ、しゃがみこんだまま動きを止める。
ただそれだけ……しかし、不潔な路地裏にあって周囲の空気は冷たく浄きモノへと置き換わっていく。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にバゼムスさんが現れました。
■バゼムス > 月に何度かはこうして所謂貧民地区と呼ばれるところで足を向けることがある。
馴れた足取りで安い酒場で、安酒を飲んでその場の雰囲気を楽しみ、ほんの少しばかりのスリルを味わうばかりのありきたりな日になるかと思いきや――僅かに感じる空気が変わるそれ。
馴れたものの鼻につくような臭いが取り除かれる、そんな感覚に興味を惹かれてか、臭いが薄くなる方へと足を向ける。
路地を曲がった先――しゃがむ小さな姿のそれに目を細める。
びりびりと張り詰めたような空気に気後れこそはしないが、堂の入った祈り方を眺め見やり、
「誰ぞがここで死んだのかい?」
敢えて軽口、悪辣な物言いでそう声を掛けたのだった。
■ミコト > 不意に声を掛けられても少女の形をしたそれは跪き、両手を合わせ続ける。
まるで自らも石と化したかのように身じろぎひとつなく、しかし、ソレが何かをしていることは周囲の空気が指し示す。
そして、しばしの時を経て、ソレはゆっくりと立ち上がり、背後へと身体ごと視線を向ける。
「誰か、死んだの?」
瞳孔までもが白い瞳を向け、少しかすれた甘い声で問い返す。
その足元からはいつの間にか石が消え失せていた。
■バゼムス > この狭い路地裏の一角とはいえ、一瞬ここが貧民区であることを忘れてしまう程に清められているそれは、人であれば聖女か聖職者か。
とはいえ纏う気配が人ではないことを知らしめているのだからそれ以外の何かだろうと思っている矢先に、己の声に反応――というよりも用事が終わったからだろう、振り向き様に告げられる問いには目をぱちくりとしてしまった。
「いや、知らんな。
まあ、こんなところで祈るのならそんなことかと思ってな。」
真白と形容するにたる色の薄さと、己の耳朶を叩く甘い声は人とは違う異様さと――見目の良さと愛待った妖しさに背筋が僅かに興奮を帯びてしまう。
ちろり、と視線は先ほどまで見えていたはずの石へと向け
「死者への祈りでもないなら、こんな所で何をやってたんだ……………?」
見間違いか?と首を傾げてしまう。
■ミコト > 「そう、死んでないならよかった。
人はすぐ死んでしまうから少しでも長く生きて欲しいもの。」
男の返答に表情を変えないまま、しかし、どこか満足げに頷く。
「お役目。結界を作ってる。」
さらに与えられる問いかけにも静かな甘い声音で答え、男の視線を追うよう足元へと視線を向ける。
「後で祠を作ってもらう。
要石は見えなくても此処にあるから。」
男へと下から白い視線を真っ直ぐ向け、右手の人差し指で路地の入口のほうを指し示す。
そこには木で作られた簡素な祠……と呼ぶにはこじんまりとした工作物が設えられていた。
もしかしたら、王都のあちこちで同じような物を見たことがあるかも知れない。
■バゼムス > 「それはまたお優しいことだな。」
見た目の幼さは実年齢であるとは当然思ってはないが、それにしては達観していると喉を震わせて笑ってしまう。それ故に普段なら皮肉交じりな物言いも少しばかり鳴りを潜めさせてしまっている。
「………ふむ。」
お役目、結界、王国では珍しい東方作りのそれに目を細める。
言葉の通りであれば、この辺りは既に結界としての体は為している。
門外漢であるが故にその強度や結界の指向性までは分からないが、鼻につくような臭いが失している様子から場を整えるためのものか。
と、少しばかり考えに耽っていたが、その祠のようなものを幾つも見た事を思い出す。
それがいつからあったのか――
「十数年、いや…それより前か。
はて、このような話は聞き覚えがあったような。」
己が王都に戻ってきた頃には既に散見はされた。
人の手で悪戯として壊されているのも穢されているのも見た。その時に聞いた覚えがあるが――記憶の霞みの向こう側にあるそれは容易に取り出せそうにはなくて。
■ミコト > 「優しいと云う概念はよくわからないけれど、よく云われるから多分そう。」
祠と同様に少女の形をしたそれも東方の装いを色濃く宿す。
白い狩衣に白い袴、袴の長い裾の中には唯一紅があるのだが、男の高い視線からは伺い知れないだろう。
「30年。まだ結構かかる。
汝らの為にやっているから壊さないで欲しい。」
しれっと口にした年月は男の年齢の三分の二以上。
男が少年の頃の話。
はるか東国へと侵略し、その国の神を徴収したと言う眉唾なお伽噺。
今なおそのチカラと身体で王国に奉仕し続けていると言う……。
「妾に何か用がある?」
少女のような形をしたそれは、男の心を見通すよう白い瞳でじっと見つめ続ける。
何もなければ、また手頃な要石を探す所から作業を再開しなければならない。
■バゼムス > さてその"優しい"という言葉は額面通りか、それとも揶揄か。
とはいえ目の前の少女の容をした彼女にはどちらでも構わないのだろう。
泰然としたその振る舞いに何ら気負う様子もないのだから。
「…――随分と気の長い話だ。
俺ならもう少し効率よく進めたくなるものだがな。」
少女の口から告げられた年月には恐らく嘘はないだろう。
己が王都に戻ってきた頃と合致し――記憶の片隅にあった与太話として聞き流しかけてつつも、妙に耳に残った逸話。
それが目の前の少女かもしれない――と思うが、さほどそれ自体に昂揚は覚えることはなかった。
本当かどうかも分からぬお伽噺に興じるには年を重ねすぎた己にとってはそれにも勝るものがある。
「…――あると言えばあるがね。」
己を見透かすような――神のような視線を向ける少女を見下ろす男の視線。
神に向けるには不遜で、無礼な――淫心まじりのそれは、己の耳朶を甘く叩くその声音がより甘く響かせたくて、或いはその身をより穢したいと言わんばかりのそれ。
「人に優しいお嬢さん。俺にもその慈悲に与りたいんだが。」
なんて、言葉で言うには下品さ混じる言葉を紡いでみせた。
■ミコト > 「そう?1000年は掛からないと思っているのだけれど。」
男の言葉に不思議そうに小首を傾げる。
髪飾りの鈴が小さな音を奏で、酒場から聞こえる喧騒の中へと消えていく。
「そう。慈悲は常に与えているつもりだけれど、汝の云う慈悲は違うものなのだろう?
それくらいは妾にもわかる。」
早く済ませて欲しいと呟く。
1000年を結構程度で済ませるスケールを持つそれが早く、と。
少し悲しげに視線を落とし、初めて感情のようなものを見せた。
しかし、それでも男を受け入れる意思を示すよう一歩前へ……路地に小さく下駄の音が鳴り響いた。