2025/02/01 のログ
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グライド > 治安の悪い地区だ。
そんな場所で在ればこそ、人が集まると、一層無法地帯と化す
これがせめて平民地区で在れば、騎士の巡回などが在って多少の規律が守られるのだが
目の届きにくいこの場所では、そう言った制御が効きにくい。

勿論――だからこそ、そう言った場所でしか売られない物も多いのだろう
己もまた、其れを目当てに人ごみの中をふらついて居る
己くらいの巨躯であれば、悪さを仕掛けて来る様な輩も少ない
体格と言う判り易い圧は、其れなりに有用なのだ

だが、当然ながら、その逆もまた然り。

「…………相変わらず殺伐としてやがんな…。」

呟いて、片眉跳ね上げ乍ら、人を掻き分けつつ進む。
その視線の向こう、なんと無しに振った先に
目に留まったのは、見覚えの在るローブ姿。 ……ただ、其の姿も人の合間。
波に漂う様に、ちらちらと眼で負える程度の影。

先日の件が在り、こういった市場で見かけても、別段不思議の無い相手だと知って居る。
挨拶でも掛けて遣ろうか、と、何となく其方に歩みを向けようとした、其の際。
――そのローブ姿の直ぐ背後に、違和感を感じた。

誰かが、後を追いかけている。 思い当たる節は無い、が。
こんな場所だ、相手の様に見目華奢な存在は、何事も狙われ易いものだ。
スリか、物盗みか。 或いは……人攫いの類か。

ニュア > 育ちが良いわけでも、お高くとまる気も無い。貧民窟の歩き方は心得ている。
ただ、人が多くて煩くて、感覚に障るのが、腹が立つ。
甲高い娼婦の呼び声も、酔っ払いの莫迦笑いもムカつく。
注意を払わずに歩いてきて、勝手にぶつかって勝手にキレる奴らも腹立たしいし。
つまりは、そろそろ帰る以外の選択肢がなくなってきているということだ。

背後から、誰かがついてくるのに一々意識を払ってなんていられない。
勿論、その更に裏を歩く男の姿だって言わずもがな。

ただ――…人並み以上に、警戒はしている。
たとえば、背後を追い掛けていた男の手が、肩から斜めに掛けた鞄に伸びた、途端。
『ぃ゛、ってぇ!!!』と男が声をあげ、挿し込みかけた腕を引っ込める。
何らかの“防犯装置”が発動する程度には、神経を尖らせているということだ。

「 ッ………… 」

そして、その当人も、相手の荒げた声で漸く事態に気づき、振り返る。
雑踏に逃げ消える相手の背を忌々しげに見送り、そして。

「………………………何。」

どうやら、もうひとりの存在にも、気付いた。

グライド > ひゅう、と、口笛を鳴らした
流石に、自衛の手段くらいは備えて居ると言う事か
逃げて行った男を一瞥してから、此方に気付いたらしきローブ姿に近付いて行く
よう、と片掌を掲げ、取り敢えずは其の傍まで寄りながら

「なぁに、揉みくちゃにされてるのが見えてよう、大丈夫かとよ。」

何が、何て事は無い。 こちらを見るその視線にも慣れた物。
其の顔を見降ろしながらに、男が逃げて行った方向、親指で示せば。

「やるじゃねぇか、奴さん、反撃されるとは思っても居なかっただろうよ。」

一度痛い目を見せる、と言う事も時には必要だ。
そう言う意味では、良い薬になった筈だろう。
逆に、己も迂闊に触れれば、其の防犯装置とやらに晒されると判った訳だが。
――さて、前回の依頼時も、そうだったのだろうか。

そうして――そんな折、ふと、相手は気付く筈だ。
巨躯の、この男の傍に居ると、防風林ならぬ、周りが其れを避けて歩くせいで
――妙に、歩きやすい、と。

ニュア > それは血を使った簡単な護符だ。
特定の行動と意図がセットで向けられた時にのみ発動する類の。
だから、当人は発動を知るまで不審者の存在を全く関知していなかった。

故に。……何やら友好的に近付いてきた、雑踏にも目を引く鬱陶しい大きさの男に、
娘は憮然とした視線を送ろうか。

「……オマエ、今の気付いてただろ。どうにかしろよ。」

酷い言われようである。そしてきっと、男が先んじてどうにかしたらしたで、
この薬師は「余計な事するな」と罵っただろうは想像できた。

そして、此方に来るのはちょっとウザいな、と思うので、
歩み来るを待たずにすたすたと娘は歩き始める。
尤も、歩幅が違えば追うも難無しであろうし、結果として男は娘の背後に陣取ることとなるのだが。

「………。」

相変わらず鬱陶しい。しかし、道は僅かに歩きやすくなった。
ぶつかる前に雑踏が割れ、避けてゆく所為だ。歩きやすい。

「…………………………………。」

こいつがいるからか、と思い到る。
思わず男を振り仰ぎ、見遣り。そしてまた、すたすたと歩き出した。

グライド > 「おいおい、この狭っ苦しい所で動いても見ろ。
全員跳ね飛ばす勢いなら如何にか出来たがよ。」

その場合は猪の様な災害が発生して居ただろう
ついでに恐ろしく恨みを買う。 己も、そんな方法で助けられた相手も。
結果的に、助けなんて要らなかっただろう、と肩を竦めつつ
早々に歩き出した相手の後ろを、のんびりと付いて行く

――決して暇人と言う訳では無い。

「……………………。」

無言で、歩く二人。 相手が何も言わないなら、暫くは淡々と。
かと言って、会話に困って居ると言うていでも無く
あくまで周囲を眺めつつ、物見遊山はしている暢気さは何時も通り

途中、此方を振り返った相手に気付いては、視線併せて、何だと首を傾けるが
また歩き出されて仕舞えば、くつくつと、背後で笑う気配が感じ取れるだろう
――間違いなく今のは、先を歩く気まぐれ猫の其れだ。

「しかし、こんな所に買い物とはな。
何かタチの悪い物でも作るのか、余程貴重品なのか。
……よう、それはそれとして、だ。 この間は有難うよ。」

そうして――この際だからと、ひとつ、相手に声を掛けた。
巻き込んだ形では在るが、先日の依頼は、相手が居なかったら苦労した筈だ
礼は其の時にも向けた、が。 改めて、助かったと告げようか。

ニュア > 「狭苦しいって思うなら跳ね飛ばせば広くなるじゃん。」

つらりと悪びれず少年風貌が言う。
ああ言えばこう言いたいだけというのもあるが、半ば本気ではあった。
人が多いのがいけ好かないのだろう。
あとは、スリに気付いていなかった間抜けさを見られたのが。

先を歩いても鬱陶しい男は変わらずついてきた。
歩む方向が一緒なだけといえばそれまでだが。
男を仰いだ視線には、「コイツ何処迄ついてくんだ」的な
怪訝も含まれていただろう。言葉を交わす迄も無い。ただ、面倒なので放っておく。
そしたら背後で何が楽しいのか、低く響く笑いが聞こえてくるものだから、

「……………………何笑ってんの。キモいんだけど。」

さすがにそれには眉間を顰めて一言ツッコミをいれようか。
勿論、足も止めないし横に並ぶ事もしないのだが。
届いた礼に、また。少しばかり眉根が寄るのだけども。
其処はビジネスライクに応じるところだと、弁えてはいる。
結果として素材も手に入り、娘としては上々だったのだから。

「別に。貰うものは貰ったしどうでもいいよ。
 ――…てゆうか、お前さ。さっさと飯でも娼婦でも買いに行けば?」

本当に何処迄ついてくんのさ、と言いたげに。
奇特な男を呆れた風に見遣るのだ。
まぁ――…人避けとして役立ってる内は、使ってやってもいいけども。

グライド > 「そう言うのは戦場だけで良いんだよ。
一瞬広くなった後で、余計狭っ苦しくなるのが落ちって奴だぜ。」

道が開いた後で、怒りを買った連中がこぞって襲って来る気がする。
そうしたら、寧ろ狭苦しいでは済まないのだ、襲撃である。
己一人ならば良いが、其の場合に巻き込まれて嫌な思いをするのはそっちだと
口端吊り上げ、肩を竦めて告げてから
相変わらず治安の宜しくない人相ばかりの周囲を、見回して見せた。

「いんや、嬢ちゃんは相変わらず、猫みてぇだなと思ってよう。」

何と問われれば、其の儘隠しもせずに言う。
勝手に自分がそう感じて居るだけでは在るが、相手にとっては不服だろうか
確かに態度は良いとは言えないが、一度猫みを見出して仕舞うと、可愛げが出て来るもので
――告げた礼を受け取って貰えれば、ひらりと片掌を振って見せる。

「なぁに、そんなのは嬢ちゃんが心配する事じゃあねぇさ。
俺様の時間を如何使おうが、俺様の自由だからな。
……其れとも、こんな図体のでかいのが一緒じゃあ、鬱陶しいか?」

―――つかず離れず。 娘が、歩き易いように。
まるで用心棒だ。 依頼の時も、同じだったろう。
護衛として歩く時と同じ、直ぐに其の身を庇えて
さりとて、最初の条件の様に、無暗みだりに触れぬ距離感で。
けれど、今は当然依頼中では無いのだから――奇特と言われても仕方あるまい。

ニュア > 「………………。」

沈黙、と見せ掛けて。 ごく小さく、フゥン、と鼻を鳴らしつつに
どうでもいいことのように呟いたのが相手に聞こえたかどうか。
男の言う戦場は、恐らく娘の垣間見る事の無い世界なのだろう。
そんなことをふと思ったがゆえだ。

そしてその“猫”は。
男の発した言葉に、実に厭そうに視線を一度向け。

「は?ナニソレ。…………背後から頭とか撫でてきたらコロスから。

 ――――…あと、嬢ちゃんじゃない。」

其処の訂正も勿論忘れずに付け加える頃には、
また視線は男から剥がれ、相手に構わず歩き出す。
男に欠片も頓着してない癖に、声が掛かれば可愛げの無い言葉を返す。
実際、男が背後に添ってからいうもの、道行きは酷く快適だ。
存在感が実に鬱陶しい所為だろう。今も鬱陶しい。ので、それを率直に伝えるまでだ。

「は??? 心配なんてしてないんだけど。
 鬱陶しいし邪魔だよ。黙ってればイイのに話し掛けてくるしさ。
 …さっさとどっか行くかと思ったらまだいるし。」

鬱陶しい、が。――…道行きが一緒ならしょうがない。
利用価値という妥協点に、娘は背後に男がいることを受け容れつつある。
追い払いはしない。必要以上に構いもしない。
喋るなら、…たまには言葉を返してやってもいい。でも触ったらコロス。
そんな奇妙な遣り取りは、道行きの間繰り返されるだろう。

結局、なんだかんだと平民地区界隈に戻るまで、
娘は男という共連れと歩むことになったとか――。

グライド > 「其れで喜ぶんならしてやるが…。
猫っつーのは気まぐれだからよう、俺様は如何しても逃げられがちだからな。」

だから、警戒されない程度の距離で見守るのが良いのだ、と。
完全に猫扱いしながらに、くつくつと笑った。
本当に嫌ならば、己の言葉なぞ無視すれば良いのだ
言葉尻は刺々しくも、こうして会話を交わしてくれるならば、其れで良い
声の通りが良い分、そうやって喋り合って居れば、一層歩みは快適になるだろう
前を進むローブ姿の方は置いといて、後ろの巨体に当たり屋をしたい人間なぞ居ないのだし。

「なぁに、こうして顔を合わせたんだ、ちょっとの道連れの間、仲良くなりてぇじゃねぇか。
邪魔なのはすまんな、諦めてくれ、図体のでかさが取り柄なんでよう。」

開き直って居る声が背後から返る。
馴れ馴れしくて、存在感は間違い無く鬱陶しい。
けれど――彼女が敷いた一線は守りつつ、必要以上の事はせず
結局、其れはまるで、おせっかいな保護者の様に。
――彼女が、人込みに揉まれなくて済む様になるまでは
のんびりとした、豪放な声が、後ろから響いている筈だ――。

ご案内:「王都マグメール 露店街」からニュアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 露店街」からグライドさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 無名の建物」にクロスさんが現れました。
クロス > (夜遅く、月夜が街を照らす時間帯となった貧民地区。
外は寒く雪が積もり、道の端では焚火を燃やして暖を取る浮浪者達が大勢居た。
そんな貧民地区のとある建物、ほとんどが半壊してボロボロな外見をしており、室内もほんのりと明かりが灯っているも弱々しい炎によるものであった。
だが、周りの建物とは違い一段と強く明かりを灯す建物が一つあった。
そこは、クロスの事務所である)

「…フゥ…」

(ため息交じりにソファの上で煙草の煙を天井へと吐き出す男。
建物内は貧民地区の中では綺麗であり、談話室の様な作りとなっていた。
大き目のソファにテーブル、山の様に積み重なっている書類に最低限の飲食物を作れるキッチンが備わっている。
男の本職『何でも屋』の為の事務所だ。
報酬と内容次第では何でも行い、人探しから借金取りの代行、ギルドの応援に夜の相手…どんなことでも受け付けて行うのが男の仕事である。
だが、この場所を知る者は少なく、滅多に客なんて来ないのである。
万が一の為に部屋の中で居るが、退屈そうに目元を帽子で隠し、ソファの上でだらけては今夜やって来るかもしれない依頼人を待つのであった。)

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 無名の建物」からクロスさんが去りました。