2024/02/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にアンネリーゼさんが現れました。
アンネリーゼ > 王城の謁見室より聞こえる声。
耳障りの好い妙齢の女の、深いアルトのよく通る発声が広い室内に凜と響いた。

「ええ… それでは、私どもの修道騎士団から、神官を派遣致しましょう。
 此の程度の災厄でしたら、二名程いれば御期待に添えるかと。 ───はい。手筈どおりに。」

卓に座す大臣や王都の騎士に大教会の使節として、伝えるべき事項を述べる。
女は、通常王都に居ない。
自身の所属は、斜陽の古都アーレイシャの修道騎士団。
教会に仕える女神の御遣いとしての役割が強い、所謂私設騎士団に近しいものであった。
それでもこうして時折王都より命が下るのは、崇め奉る女神イシャスに傅く聖女が、おしなべて強力な癒し手であるという事実。
死霊の類の出没の折には、こうして派遣依頼が舞い込むのである。

「では、失礼致します。」

恭しく礼をし、荘厳な扉を閉ざす。
大理石の敷かれた回廊を歩けば、かつり、かつり。硬質が残響を刻んだ。
月明かりに肩当ての銀細工が鈍く光る。一角獣と草花を遇った古い意匠だ。

「───… ふぅ。」

今宵は王都に宿泊し明朝直ぐに馬を駆らねばなるまい。
大教会へ此度の仔細を報告し、急ぎ人員を選任しなければ。

「そういえば、宿を用意してくださっていると仰っていたけれど…。」

厚意は有難かった。話に因れば、逗留先迄の案内人がいると聞いている。
城の者か、はたまた小金を握らせて雇った誰ぞなら城門で待つのか。
ともあれ、雑踏に不慣れな田舎騎士としては迷わずに済むのは非常に助かった。

ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」にファルスィークさんが現れました。
ファルスィーク > 久方振りに王都まで足を延ばしたのは、ちょっとした戯れでもあった。
王城にて開かれていた地方貴族が催した名ばかりの会合と宴に参加し、振舞われる食事と酒を堪能しつつ、主に気を向けるのは情勢や噂話等々。
とはいっても大体が主に王家とそれに近しい貴族の権力闘争、そして魔族関係の話となっているようではあるが。
宴の時間になれば貴婦人も参加し華やいだ雰囲気から、色艶事へとお決まりのパターンへ移行していくのだが……ある程度、飲食を楽しんだ後は気付かれないようにホールを出て冷たい夜気と新鮮な空気を求め、静まり返った廊下を一人歩く。

反響する音は自らの物だけであったが、ふとそれに重なる音に気付いた。
夜更けにも近い時間に珍しくはある。
見回りの衛兵だろうか…とも思ったが、音が一人分であるので違うようだ。
誰だろうか…と音の主は気にしつつも歩みを止めることはなく…耳に届いたのは女性らしき声の呟き。
角を曲がったところで目に入るのは、月光に煌めく銀が眩く―夜の薄闇には特に強調されて見えた。

「………ほう。
確か、古都アーレイシャの修道騎士団所属の聖女…だったか。
私、地方領主のファルスィークという。お目にかかれて光栄だ」

丁度、先程の貴族間にも挙がっていた聖女が嫁いだという話を思い出しながら、ゆるりと軽く一礼をしながら改めて見る女性の姿。
成程、容姿もさることながら気品もあり、強い神聖力も感じ取れ聖女と呼ぶにふさわしいと思いつつ…先程耳に届いた言葉を思い出しての……。

「そういえば……宿の手配と案内をと仰せつかっていた。
王城での用件が済んだのであれば、案内をさせて頂くが?」

女性の呟きに便乗しての申し出ではあるが、どうやら言葉がらはそのものがどういうものであるのかは把握していないらしいという事で、即興での言葉となるが、流れるような言葉に違和感は少ないか。

アンネリーゼ > 「…しかし、此処の夜は私には明るすぎるわね…。」

歩み乍ら、苦笑は自ずと表情に浮かんだ。正直、修道院暮らしが長過ぎた己には未だに遠出は慣れぬ。
殊に王都に関しては、途絶えぬ人波も夜の姦しさも、女神の御座す都には絶えて久しく。
最初に訪れた時は、毎日が祝祭なのではないかと訝しんだ程。

かつては我が豊饒の女神に愛されし古都も、王都に勝るとも劣らぬ栄華を誇ったとされる。
斯様な事は口に出すのも烏滸がましいが、どうしても王都に訪れると思い馳せてしまうもので。

そんな事を取り留めなく考えていれば、掛かる声。
菫色のマントが夜風に揺れ、女は振り返る。
向けられる声に緩くかぶりを振り。

「いいえ。既に聖女という齢ではありませんもの。今は還俗して、神官騎士に御座いますれば。
 お初にお目に掛かります、ファルスィーク公。わたくし、アンネリーゼ・ヴィエリと。」

尤も、アーレイシャの者でなければ聖女も神官もさして変わらぬ扱いであろう。
男の言葉をやんわりと訂したのは、聖女と呼ばれるのがこの齢になると妙にこそばゆいというだけのことだ。
相手の物腰からは、王城に佇むに相応しい貴さが感じられた。
若しかしたら案内役とは彼だろうかと推測する。──案の定だ。

「まぁ。それはよろしく御願い致します。
 助かりますわ。王都には未だ疎くって。お恥ずかしいのですが、直ぐに迷ってしまいますの。」

女は、男の言葉を全く疑っていないようだった。微笑み、礼を述べ。
彼が歩を進めるのなら、数歩の後ろを従って歩むだろう。