2024/02/29 のログ
ファルスィーク > 夜が更けても所々明るいのは大きな都市の証でもある。
王都ともなれば、その傾向は顕著ではあるが、それでも光源が多いのは富裕層の区画となる。
王城から見ればそれは特に分かりやすく目に入るのだろう。
それは、煌びやかな宝石のようでもあり、地面に撒かれた星のようにも見えた。
もっとも…今の時間であれば、そこにあるのは誘蛾灯のように人を引き寄せる魅惑的な物であることがほとんどではありそうだ。

冴え冴えとした月光は、より清楚さと神秘性を増したように照らされた姿は…陽光の元より似合うと感じたのは女性の雰囲気から己の抱いた率直な感想でもあり。

「お目にかかった私には齢など関係なく、称号は貴女…アンネリーゼにふさわしく感じられる。
神官騎士…か。力もそれに相応しく、旗印以上に存在自体が尊い者である事は、拝見して納得した」

称号の違いについては、それほど詳しくはない。
が、現在もそれに相応しい力を保持しているのが分かる程に強く恵まれた才であり、それを磨き続けてきた結果か。
名で呼ぶようにとあれば、その名を口にして目礼を返した。

「王都は広い。
区画が分かれているとはいえ、慣れていなければ確かに迷ってしまう。
私も王都へ来たときは、何度も貧民区へ迷い込み、騒動に巻き込まれた経験がある」

当時の事を思い出しつつ、浮かべるのは苦いものではなく楽しさを含ませたものではあったが。
警戒心の強い者であれば、己が言葉に不自然な部分を見つけ、追求するなりより警戒を煽ってしまったかもしれないが、素直に受け止めて信用する辺りは、育ちの良さの表れなのか。
浮かべられた笑みも本心からの物であるらしく……では、と案内をするように歩き始めるのは城門の方向。
例え、女性を待っている者がいたとしても、先行する己がいれば声もかけられることはないだろうと。

「ああ…祝いの言葉が遅れてしまい申し訳ない。
この度は婚礼を挙げられたとか。
よろしければ、祝いの品でも送りたいが、貴女から何か要望があれば応えよう」

貴族の間でも、それなりの話題になっていた件を加えながら、時折振り返りつつ投げかける言葉は、その菫色の瞳を捉えながらの。

アンネリーゼ > 「まぁ。公はわたくしを買い被っておられる。
 もしわたくしが尊いと仰るなら、それはすべては女神より賜った恩寵ゆえでしょう。」

少しばかり戯けたように双眸を丸めてから微笑んで返す。
己なぞ一介の神官に過ぎぬのだと謂わんばかり。
男の後に従い乍ら、歩み、穏やかな言葉を向け。

「本当に。何度か訪れてはいるのですが、未だ道を憶えなくて。
 広くて賑やかで、─…。 貧民区、ですか。何処の都にも在るのですね。光が華やかなだけ、王都の闇は深いとも窺いました。」

僅か、女が憂うように眉を顰めた。女は未だその区画に足を踏み入れた事は無い。
何処の都にも存在する、貧富の格差。王都ともなればその溝は酷く深かろう。
騒動が如何なるものかは考えも及ばねど、相手に大事が無くてよかったと、女は小さく付け加え。

次いで向けられた祝言に、驚いた表情を見せる。

「そんなことまで御存知なのですね。お恥ずかしい…。
 要望なんてとんてもない。こうしてお言葉を戴いて、宿迄案内いただけるだけで…。」

有難うございます、と丁重に礼を述べ乍ら、恐縮にほんのりと頬を染め。女の靴先は闇を踏む。
男の言葉に寿がれ謙遜を口にしながら。過ぎた城門には本来の案内役が待ち惚けていたかもしれないが、女には勿論知れぬ事。
足取りはゆったりと、他愛も無い会話を穏やかに交わし乍ら、辿り付いた先が如何なる場所であったか。
知る由は未だ無く、月が皓々と夜を照らすのみであり──。

ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」からアンネリーゼさんが去りました。
ファルスィーク > 「女神の恩寵は今もなお変わらず…であれば、女神は貴女を認めているという事に他ならないと思うのだが。
事実は変えられないが……そこは貴女の言葉通りに受け取っておこうか」

女性の言葉は謙遜ではなく本心からの物に聞こえる。
まさしく聖女に相応しい在り方ではあるが、人の世では畏敬と尊敬とは反対に疎まれることも多々ありそうではある。
と、女性の周囲に取り巻く環境…修道院や神官騎士団内にも、色々とありそうだと思うのは、白百合の乙女と称される価値の裏の面の事も知る限りではあるから。

「共もなく出歩くには少々難がある場所も多い。
光が強ければ。同等に闇も濃さを増すのは道理である。
余程の賢帝でなければ、等しく…それに近しい形を取るのも難しいな。
貧民区を良くしようと動く派閥もあるようだが、それはそれで苦労はしているようだ」

歩きながらの言葉のやり取りは、己が知る限りの大まかな王都の様子。
女性が気にしているようなので話題に触れながら……どうかやら関心がある事のようだとの判断をしつつも、触れるのは婚礼についての話。

「それだけ関心があるという事だ。
貴女と…と思っている貴族も少なからず居たのは確かではある。
さて…私としては、それでは大したものにならないのが惜しくはあるが」

丁寧な例の言葉とともに頬を染める顔を見れば目を細めつつ……城門は身分の知れた者であるので、あっさりと通り抜けると道中、閑談をしながら案内するのは王都に来た際に気紛れに使用する富裕地区にある己の邸宅へ。
その頃には夜も更け、煌々と静かに月が輝くばかり―――。

ご案内:「王都マグメール 王城2【イベント開催中】」からファルスィークさんが去りました。