2025/02/06 のログ
:: [一覧へ] :: :: ::

アンジェレッテ > 「ええ。ぜひ。そのときはヴィティスコワニティが、お部屋を御用意させていただきたいわ。
 お茶菓子だって、私が貴女に食べていただきたいものを用意してさしあげる。」

まるで雪白の鳥が羽を休めているかのよう。
己よりも幼く儚い聖女は、愛らしく、確かに清廉で稚い。

――けれど。心酔したかに聖女の善きさまを語る信徒と、
微笑む清き聖女のありように、少しばかり――…思うところがあったのだ。
それはきっと、好奇心の三文字で片付くこと。

その少女は、きっと目の前の聖女と、まるで纏う彩を対にしている。
貞淑で清廉で、清らかな聖女様の前に対峙するは、
好奇に輝石めく双眸を燦めかせる、毛艶の佳い仔猫姫。
注がれるティーカップの湯気帯向こう、金色の睫毛をはためかせて双眸向けて

「そうね… 貴女にききたいことなんて、たぁーくさん!あるわ。
 どんな食べ物が好きなのか、趣味は何?どんなお茶がお好きなの?」

指折り唱える。他愛なく屈託の無い、数多の――好奇と興味。
己の従者がヒヤヒヤと目配せしながら背後に控えているのも知っているけれど。
敢えて無視。ころころと謡うように問いを重ねた。

「あとは――…そう。たくさんの大人に囲まれて。
 話も長くてくだらなくて、うーーんざり!するほど鬱陶しいでしょう?
 ほんとうに――…いつも清らかな聖女様なの?

 貴女は、どんなときに声をあげて笑うの?」

バティスタ >  
「くすくす、まるで質問攻めですね」

矢継ぎ早に口にされる、聞きたいこと、の羅列。
本当に何にでも向かっていく仔猫のような、無垢なる好奇心…。

「そうですね…食べ物に好き嫌いはありません。
 全ては御神の与えてくださるお恵み…すべてに感謝し、いただくものです」

まるで定型句。
けれど神の従僕の語る言葉であればこそ正しい。
けれど、目の前の少女はそれを見透かしたかのような問いを続けるのだ。

「くだらないなんてことはありませんよ。
 どう感じ、受け取るかは人それぞれ…ですが。
 ──…いつも清らかな聖女…ではないほうが、面白いですか?」

そう、問い返す。
笑みを崩さず、柔和な雰囲気を崩しはしないものの…
一歩、踏み込んだ少女に対してこちらもまた興味が湧いた…と言ったところ。

(わたくし)が声をあげて笑う様…。
 もしかしたら、貴女にはそのうちに見せてあげられるかもしれませんね」

異色の瞳が細められ、少女を見据える──。
言葉の裏に孕んでいるのはある種の狂気…では、あるものの。
今は、その言葉には鋭さも、危うさも感じさせない。

アンジェレッテ > 質問攻め。まさにそのとおり。
指摘に少女は悪びれず、唇ににっこりと御機嫌かつ理想的な弧を描かせてティーカップを持ち上げた。

「そうなの?? 
 私は晩餐会でパンにたっぷり塗られたレバーパテを与えられたら神様になんてぜったい感謝できないし、
 本当は、蜂蜜をたっぷり入れた紅茶がいちばん好きなの。」

一言、まるでお仕着せめいた回答が返れば、それに我を繋げ。
言葉にのせぬままに、聖女様の“正しさ”に、
仔猫はそのキトンブルーの眸を好奇に閃かせ、ふわふわとした毛並みを揺らし、小頚を傾ぐのだ。

「いいえ。今のままの貴女も面白くて興味深くてよ。聖バティスタ。
 だけれど、――…、そぅ。多分、…
 もっと面白い貴女が何処かに隠れているのじゃないかしらって、思うのだけれど――…」

どうかしら?と娘は、紅茶を口に含んで、華奢な咽喉を潤した。
吸い込まれそうな異色の眸。弟のそれも綺麗だけれど、聖女のそれは蠱惑的。
少し羨ましい、と思う。自分も珍しくも美しい左右を違える輝きが欲しかった。

「ええ。貴女がちゃんと笑うのを、いつかお目にかかれたら、とても嬉しいわ!
 でも、それを見るにはまだまだ――…駒を進めなきゃ。
 貴女とお友達になる(チェックメイトする)には、一度じゃあ無理そうなのだもの。」

まるでゲームに挑むように、無邪気に娘は一度唸ってみせて、双眸を細めた。
『アンジェレッテ様…』侍従の動転しきった声が聞こえる。嗚呼、此の儘じゃ卒倒してしまいそう。
だから、くぃっとカップを高く持ち上げ、紅茶を飲み干して。

「だから、御挨拶にきたの。お友達への第一歩よ。――…聖バティスタ。」

――とん、と軽やかに立ち上がり。

バティスタ >  
「貴女のその振る舞いや好き嫌いも、神は全てお許しになられますよアンジェレッテ様」

くすりと小さな笑みを浮かべ、まさに年頃の少女の言葉を並べる様…。
──嗚呼、実に無邪気、実に爛漫。この国の偏執にまだ汚れていない、無垢。

こんな少女が、いずれはどのようにしてこの国で生きていくことになるのか。

口元の笑みを深め、少女の芯を突いた言葉を受け取る。

「もちろん。私も常に畏まっているわけではありません。
 今は、ヴィティスコワニティ家のご令嬢とお話をしていますので、当然礼儀を欠くわけにも参りません」

「──そうですね。…ああ、少しお待ちを。 ──お召し物に糸屑が」

立ち上がる少女に続いて、聖女も席を立ち、少女の肩へとその手を触れる。

「次は二人きりでお話をしましょう。アンジェレッテ様。
 ──侍従の方の心労も、心配で御座いますしね」

少女にしか聞こえない小声での耳打ち。それを終えれば、ふっと軽やかにその身を離し。

「ふふ…お友だち、ですか」

「…お気をつけて。ヤルダバオートのご加護のあらんことを」

祈りを切り、去りゆく無垢なる少女を見送る───。
ヴィティスコワニティ家の令嬢、噂に聞く呪われた血族とは感じさせない無垢…。
薄く細めた異色の双眸は、少女の背をじっと見つめていた。

アンジェレッテ > 「ええ、私もそう思ってるの。聖バティスタ。」

娘は至極当然と、頷き微笑んだ。
無邪気に爛漫に、無垢に。けれど、まるで――…
本能で気付いた真白に生じる一縷の染みに、爪を立てたがる仔猫の危うい衝動を孕んで。

聖女の穏やかにして清らかな真白の礼節を、軽妙なスタッカートで彩ってゆく。

「ええ!もっとたくさん、いろんなお話がしたいわ。
 私、もっとたくさんお聞きしたいことがあるのだもの。――…?」

糸屑。その一言に聖女が齎すは、まるで福音めいて耳朶に響く鈴音。
仄甘い蜜融けのように、或いは幽かな痛みすらも無い棘のように。
心に残る、秘密の言葉だ。

「是非、ふたりきりで。
 その時は私、貴女を――――バティスタ、と呼ぶことにするわ。
 貴女は私をなんて呼んでくださる?」

聖も貴きも、不要と。娘は一笑して、疑問符を返す。
答えは――今は欲しない。次の邂逅の愉しみに、ひとつ種を蒔いただけ。
少女は最後に、―――恭しく、貴族の礼をしてみせた。

「それじゃあ、御機嫌よう。聖バティスタ。
 佳き夜と―――… 佳き朝が訪れんことを。」

後は、マントを被り――…くるりと華麗なる踵を返すだけ。
延びる翳を置き去りに、聖白の少女に暇を告げて――。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からアンジェレッテさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からバティスタさんが去りました。