2023/10/09 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にネリさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からネリさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城/地下書庫」にネリさんが現れました。
ネリ > 王城内に在る地下書庫に、淡く灯ったランタンの明かりがひとつ。
陽光の下で茶会や談話に花を咲かせる地上の風景とは別世界の如き無人の暗闇の中で、カリカリと響き渡るのはペンの走る音色。
林立する書架からは少し離れた場所に並べられた机の内のひとつ、幾冊もの書物が積まれた其処に向かう修道女の背中がその傍らに置かれた明かりに浮かび上がっていた。

「 ...... ふ ぅ ...... 」

紙の上に走らせていたペンを止めてから、開いていた書物の最後の一頁を閉じ小さく息を吐く。
その机上に広げられていた幾枚もの紙束に綴られていたのは、今しがた閉じられた書物の内容。
写本作業を終えた修道女は丸めていた背中を大きく伸ばして固まった肩を解し、束の間の小休止を挟むのだけれども。
傍らの机の上には未だ積まれた侭の書物の塔と、白紙の束が残されていた。

ネリ > それは神聖都市に住まう修道女が、ここ暫くの間慣れぬ王城に滞在している理由。
この地下書庫に保管された幾冊かの蔵書の写本を作成し神聖都市に持ち帰るというもの。
幸いにして広大な書架の森の中から目的の書物を見つけ出すという作業自体は、親切による手助けもあって然程苦労する事無く終える事が出来たが、肝心の写本作業ばかりは他者の手を借りる訳にもいかない。
薄明かりに浮かび上がる修道女の表情には僅かばかりの疲労の色が見て取れはしたが、苦にした様子は微塵も無かった。

作業に打ち込んでいる間は余計な事に思考を回さずに済んだし、何よりも書写を通じてそれらの書物に記された知識を得る事が叶うのは、世界を知らぬ修道女にとって得難い経験だ。
今しがた写し終えたばかりの歴史書も、基礎知識が足りぬ故にその全てを理解するには至らなかったけれども、いつかその知識が身を助く事があるだろうと、少なくとも修道女自身は信じる事が出来よう。

「 ............ 」

そのような事に考えを巡らせた処で束の間の休息を終え、塔の最上段に積まれた次の書物へと手を掛ける。
それは先の歴史書に比べれば厚みは控えめだが、革張りの表紙に凝った装丁の施された書物だった。

ネリ > ペンが走る音は無く、静寂の中に響くのははらりと規則的に頁を捲る音。
気が付けば写本作業も忘れ、菫色の双眸は夢中になってその頁に綴られた文章を追いかけ続けていた。
それが如何なる内容の書物で、修道女の心の何処に触れたのかは本人にしか与り知る術は無い。
けれどもまるで魅入られたかのようにその内容を読み進めてゆく修道女が最後の頁を閉じたのは、数刻程経った後の出来事だった。

「 ...... ぁ ...... 」

其処で漸く我に返り、本来の目的である写本作業を忘れ夢中になってしまった事を思い出す。
無人の地下書庫にその様子を見ている第三者など居ないにもかかわらず、恥じ入るようにその身を縮めてから、こほん ... と気を取り戻すように小さな咳払いをひとつ零し。
つい今しがた閉じたばかりの書物を表紙から今一度開き直し、すっかり乾ききったペン先をインク壺に浸してから修道女は独り静かに写本作業を再開するのだった。

ご案内:「王都マグメール 王城/地下書庫」からネリさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」にセリアさんが現れました。
セリア > 「───これくらいにしておくわ」

王城内、騎士の常駐する広間。
その隅で直属、あるいは王城に仕えている騎士を相手に鍛錬を行っていたセリア。
心地良い疲労感、頬や首筋を伝う汗。
それらの感触と共に構えていた木剣を下ろし、元の場所に立てかけて仕舞う。

三々五々、散っていく騎士たち。それらを見送って広間に一人残ると、やれやれ、といった風に長椅子へ座り込んだ。

「……一度、魔族討伐の為に遠征する必要があるかな」

そういった場を設け、少々気の抜けている騎士を死なない程度に扱き倒す。
そうした気付めいた行動が必要だと考え始めていた。

とはいえ、自身の判断で気軽に決められることではない。
遠征任務も一長一短。一度上の方へ提案し、その返答を待たなくてはならないのだ。
めんどくさいな、とひとつ溜息をついた。

ご案内:「王都マグメール 王城」にステラさんが現れました。
ステラ >  
とある王族からの仕事を受けてやってきた王城。
王族と言うのはあれだこれだと色々良くない話やら噂やらを聞いていたから、さぞ変態的な内容なのかとビクビクしながらやってきたが、依頼相手は年の頃一桁くらいのお子様だったし、実際のところやらされたのは倉庫整理だった。
結構な重労働ではあったが、種族柄大変パワフルなのでさほど苦にはならなかった。
むしろ作業中ずっと――むしろ終わってからもしばらく――聞かされ続けていた少年王族の一族がどれだけ素晴らしいものかと言う自慢話の方が堪えたぐらい。
そんなわけでやっと解放され、あとは帰るだけ、なのだが。

「ここ……どこ……?」

迷子になってしまった。
道を覚えるのは得意な方ではあるのだが、攻められた時に進行しにくくしている王城と言う建物の特性のせいか、来るときに入り口から倉庫までずっと喋り倒していた少年王族の話を聞いているフリして聞き流すのに夢中だったからか。
何度目かのどこに繋がっているかわからない扉を開ければ、

「――ぁ」

人がいた。
格好からして騎士の方だろうか。
扉に半分隠れたような立ち位置のまま軽く会釈。

セリア > ここであれこれ考えていても埒は明かない。
ひとまず持ち帰るかと立ち上がりかけた時、扉の開く音が聞こえて、反射的に其方へ視線を流す。
やや扉の陰に隠れ、此方へ会釈する姿が見て取れた。

「───?」

見覚えはない。勿論王城に出入りする者すべての顔を知っているわけもないので、
覚えがなくともおかしくはないのだが。
銀髪から覗く狐耳からしてミレー族だろうか。それとも…

「……何か用事?ここは騎士の間だから、騎士以外はあまり用のない場所だと思うのだけれど」

そう声をかけ、首を傾ぐ。
近づいてみると案外小柄──最も、自身が女性の中では割と上背ある方なのだが──だったので、いきおい見下ろす形となる。

ステラ >  
騎士の間。
なるほど言われてみれば王族の部屋と比べてどことなく質素な気がする。
自分が住んでいる宿よりよほど豪華ではあるが。

「ちょっと――迷って」

自分より背の高い相手から見降ろされ、反射的にマントの襟に頭を埋める様に目を逸らす。
近くで見ると美人だし、騎士っぽい威圧感もある。
陰キャの自分が直視するには耐えられなかった。

セリア > 「迷った……か」

となれば、王城は初めてだろうか。
確かに此処で働いている、あるいは住んでいる者以外からすればその造りはわかりづらく、覚えにくい。
外部から訪問して城内で迷い、あてもなく彷徨っている貴族は何度か目にしてきた。

「まぁ…仕方ないわね。それなら出口まで案内するから、ついてきて」

やや幼くも整った顔がマントの襟に埋められる様を見てちょっと笑う。
そう誘い掛け、ちらりと室内に目を向けて片付いているか確認。
それから相手を伴い廊下へ一歩踏み出そうとする。

ステラ >  
「ぁ」

彼女が一歩踏み出そうとするのを見て声が漏れた。
見たところ彼女はちょっと前まで身体を動かしていたらしい。
騎士の間と言う彼女の言葉と、広間の床に細かく刻まれた傷から、ここで鍛錬などもしているのだろう。

「その前に、あの……ちょっと、付き合って貰って、も……?」

身体中の勇気を振り絞って言葉を発し、腰の刀に手を乗せて見せた。
正直なところ自慢話にうんざりしていて身体を動かして発散したいという気持ちはちょっとあったし、王城の騎士の強さと言うものにも興味があった。

「ぁ、や、無理にとは」

すぐにヘタレるのだけれど。

セリア > 「ん?」

呼び止められた。廊下に半身を出した状態のまま振り返ると同時、何やら提案をされて瞬く。
見ると腰の刀に手をかけている。何となくやりたいことを察し、肩を竦めた。

「まぁ、私は別に構わないけど。…もしかして、騎士志望の冒険者だったりする?」

私は採用を決める立場にないけど、なんて冗談めかしつつ、了承を表すよう自らも腰の剣に手をかけた。

「お望みなら木剣も使えるけど、真剣の立ち合いでもいいわ。まぁ、殺す殺されるまでやるつもりは無いから、
良いタイミングで止めさせてもらうけど」

ステラ >  
「ぁ、興味本位、で」

受けて貰えた。
ちょっとワクワクする。
もたもたとマントを脱ぎ、背中の斧も下ろす。
刀は二振りあるが、どうしようかとちょっと迷って片方を下ろした。

「じゃあ、抜き身で」

見た感じ結構やれそうな人だ。
ならば真剣でやっても大怪我はしないだろう。
広場中央からやや外れた位置に立ち、腰にぶら下げた鞘から刀を抜いて右手に携え、

「よろしくおねがいします」

ふかぶかとお辞儀。
腰を低く落とし、やや身体を斜に構えて刀は正眼。

セリア > 相手が準備している間、此方は刃を鞘から引き抜いて何度か振ってみせる。
空を切る音が数度。馴染みの良い片手剣を握り直し、視線を前方へ。

「ご期待に副えればいいんだけど」

折り目正しいお辞儀に合わせ、此方も軽く一礼。
して、握った柄を軽く腰元に引き寄せ、刀身を水平に倒す。

「お手柔らかに」

そう呟いた刹那 たっ と靴裏で床を蹴り、数歩分で距離を詰める。

セリアの持ち味は敏捷性を駆使した斬撃の嵐。

ということで、一撃、続けて二撃。
防がれることを前提で立て続けに斬撃を浴びせ、相手の体勢を崩さんと畳みかけるよう。

ステラ >  
「っ」

速い。
軽い動きであっという間に距離を詰めてくる。
最初の一撃は刀で弾き、しかし矢継ぎ早に繰り出された二撃目に、こちらの刀が追いつかない。
後ろに跳んで避ける。

「ふっ!」

しかしきっとそれだけでは追いつかれる。
だから刀を大きく横薙ぎに、追い払うように振り回した。
ブン、と空を切る重い音から、小柄な身体に見合わぬ膂力が伝わるだろう。

セリア > 「───っ」

後方に跳んだ相手を追撃しようとした最中、横薙ぎに振るわれる刀身。
空を切る重厚な音を耳にし、本能がその膂力を察する。
いきおい後方に跳んでも間に合わない。ならばと、その場に素早くしゃがみこんだ。

頭上、すぐ其処を横切っていく刀の気配。
それを感じながら速やかに反撃へ転ずる。

並行ではなく垂直。
下から上へ、切り上げるようにして剣を振るった。
丁度、当たれば左肩を裂く程度の切先。

当たるか当たらないかに関わらず、その一撃を加えた後は数歩後方に跳んで距離を取る。

ステラ >  
刀を受けてくれればそのまま弾いたのだが、しゃがんで上手く避けられた。
僅かに顔を歪め、追撃に備えようと右手に力を入れ、

「っく!」

ようとした瞬間下から跳ね上がってくる切っ先。
刀を止めようと力を入れかけた右腕から咄嗟に力を抜き、振り抜いた刀に泳がされるように敢えて右側へバランスを崩す。
すんでのところで服が引っかかった感触。
確かめる間もなく右側に倒れ込み、その勢いのまま転がって体勢を立て直す。

「――ふぅー……」

どうやら相手は距離を取ることを選択したらしい。
追撃されていたら危うかった。
左腕もどうやら被害は服だけで、腕そのものまでは届いていないようだ。
ならば、と今度は刀を上段に構え、両手で握る。
身体は前傾、重心も思い切り前へ倒し、

「――ヂぇすとォォォオオオ!!!!!」

裂帛の気合と共に全速で踏み込む。
上段から思い切り右肩めがけて最短距離で刀を叩き込む。
防がれようが避けられような関係ない。
外したらその時はその時のサツーマ剣法。
ホントに刃の方を叩き込んだら大変危ないので、峰側を向けておく。

セリア > 振り上げた剣先は、微かに相手の衣服を裂くのみで終わった。
互いに距離を取るようにして立て直す体勢。
つっ と首筋に微か、滲む汗の粒。

「───」

未だ集中は解かない。
相手の出方を窺いつつ、気配で辺りに十分なスペースがあるか確認。
転がって避けるにせよ、躱すにせよ問題はなさそうだ。

すると一転、上段に構えられる刀。
何を繰り出してくるか等予測の範疇外。
なんだ…と瞳を眇めるのも束の間、

「───ぃ、っ!」

とてつもない圧、気合と共に全速で飛び掛かってくる小柄な体躯。
空気を揺るがすような怒号に度肝を抜かれ、初動が遅れた。
慌てて横へ飛び退こうとするも、恐らくは間に合わない。ならば──

剣で受け止める姿勢。ながら、そのまま横へ受け流すかのようにして身体への一撃だけは避けようと試みる。
握る手から剣は叩き落されるかもしれないが、その時はその時。
両脚で地を握りしめるよう、目一杯の力を籠める。

ステラ >  
刃の向き以外は完全に仕留めるつもりで繰り出した一撃。
相手の剣にこちらの刀が振れた瞬間、受け流されるとわかった。
だからと言って止められるタイミングは既に過ぎているし、止めるつもりもない。
元よりそう言う技でも無かった。

「――いぃああ゛ああ゛ア゛ァ゛ァ゛!!!」

だからより一層ひたすら強く打ちこむ。
相手の剣をこちらの刀がギャリギャリと不快な音を立てて流されていく。
瞳孔が縦に裂けたような瞳は、打ち倒す相手――彼女の瞳をまっすぐに捉えている。
視界の端で剣と刀が火花を散らしているような気がするが気にしない。
受け流されたとは言え、相手の身体を剣ごと斜めに弾き飛ばすような勢いで振り下ろした刀は、ドゴン!と物騒な音を立てて床に半分ほど突き刺さった。

「――あっ」

・・・・・・
突き刺さった。
刃のない方を振り下ろしたにもかかわらず、膂力と武器の強度だけで床を砕くように。
青ざめた顔を彼女に向ける。