2023/10/08 のログ
ヴァン > 待つこと数分。閑散とした広場に訪れた修道女に声をかけられると壁から背を離した。

「やぁ、マーシュ。変な所を見られたかな……」

変な所、というのは先程の練兵場での一幕のことだろう。
時折そうしているように、相手の行き先を尋ねてから一緒に歩き出す。用事も終え、男は後は帰宅するだけだ。

「さっきのは俺の後輩でね。図書館ではなく騎士団の方のだが。元々聖都の出身で、最近ここに配属になった。
まだ王城にも不案内だと思うから、困ってるようだったら助けてやってほしい」

多少は事情を話しておかないと二人で大道芸の真似事をしてたとも思われかねない。
練兵場のエリアから離れつつ、自分たちに注意を向ける存在がいないかを確認する。

マーシュ > 歩みを寄せて。それから向けられた言葉に対しては首を横に振った。
己はそう言った武の素養があるわけではないが───。

「自分を狙う矢の前に立つことも、己に迫る敵から逃げないことも
どちらも決して簡単なことではないでしょう?」

先ほどの、対峙する二人に対する感想を告げる。
己の周囲でこぼれていた感嘆に比して、ずいぶんと拙い言葉だとは思うものの。

行き先を尋ねられるのなら、練兵場の先にあった詰め所に届ける書類はもう届けたから戻るだけだと返す。

「────ああ、なるほど。練兵場で普段いらっしゃる方とは雰囲気が違いましたから。……ええ、私がそうしていただいたように」

普段王城で彼を取り巻く存在はどちらかというと彼を扱いかねているようにも思う。
だから互いに笑みを見せあっているのを思い出したのなら柔らかく目を細め。
それからそういうことであれば問題もない。己にできるのは道案内くらいだけれど。

「───どうかなさいましたか?」
女は相手の後を追っていた存在を知らない。別々の道からたどり着いたから当然といえどもだ。
だから警戒するようなそぶりに首を傾ける。
王城だからと言って、安全が保障されている…とはいいがたいが、それでも目立って何か行動を起こすような存在は少ないはずだから。

ヴァン > 言われたことはもっともだ。だが、どちらもその必要がないのにやることではない。
決闘で勝負をつけたがる手合いとそう違いはない。改めて、少し照れくさく思う。

「王城勤務の神殿騎士団はあまり訓練が好きじゃないからな」

半分は事実だが、それ以上に王城の大きさに比して人数が少ない。司教の護衛や礼拝堂付近の警護で手一杯なのだ。
先程の若手も今日は非番だった筈だ。

「いや――大丈夫だ。さっき目立ち過ぎたから」

置いてきた若い騎士は、今頃多くの人に立ち合いの理由や相手――己のことだが――について質問攻めにあっているだろう。
彼が理解していたかどうかはわからないが、男はその点を含めて後片づけと言った。
礼拝堂に近づくと、あぁ、と思い出す。

「それじゃあ、また。バーベキュー、楽しみにしてほしい」

マーシュ > 横目で、わずかの表情の変化を見やりながら。

「………あまり練兵場でお見掛けすることはない、ですね」

そもそも己も必要な書類や、人員手配の折くらいにしか訪れることはないから、職分として縁が近いかと問われるなら、そうじゃないほうが平和なのだと認識すべきだろう。
今は様々な事案が重なって、薬や、人員の行き来が多くはあるのだろうが。

「そうですね。私のようなものも目を向けに行ってしまいましたから」

目立っていたことは事実だったので素直に頷く。
その先で目にしたのが単なる暴力沙汰ではなかったのは僥倖だったけれど。
残された彼がどんなふうに玩具にされているかは女は知る由もなく、相手もまた語らない。

穏やかな歩みが礼拝堂に近づくごとにそんな時間も終わりに近づきつつあったが、そんな中での言葉に一度足を止めて。

「……、……バーベキュー?」

なじみのない単語に思わず問いを返し。
あまり礼拝堂に近いと耳の早い同輩につかまりかねないのだけれども、穏やかに目を伏せると頷いた。

「ええ、楽しみにしていますね」

ヴァン > あまり礼拝堂に近づき過ぎると噂好きの同僚に見られるだろう。
少し名残惜しいが、すぐに会えると自分に言い聞かせる。
軽く手を振ると王城の出口へと向かっていく。
その姿を見られたかどうかは定かではないが――。

ご案内:「王都マグメール 王城/練兵場」からヴァンさんが去りました。
マーシュ > いつものように、分かたれた道の交差でその歩みを終える。

また、と重なる声音に頷いて、許される限りはその背中を見送ることにした。

そこから踵を返すと常のように扉を潜り。

─────噂好きの誰かにつかまったかどうかはその後の話にて。

ご案内:「王都マグメール 王城/練兵場」からマーシュさんが去りました。