2023/10/10 のログ
■セリア > 金属同士が激しく擦れ合う耳障りな音と共に、とてつもない圧が剣を握る手指にかかる。
グッ と割れそうになる程歯を噛み締めて耐えるも、耐えられず剣は横にすっ飛んで壁に叩きつけられ、
小気味良い音を立てて床に転げ落ちた。
一撃はどうにか受け流せたのでセリア自身に傷は無い。のだが──
「───」
すぐ真横。刀身を受け流した先の床は、無惨に砕けてその刃を受け止めている。
いっそ砕き潰すといっても過言ではない程に。
視線を上げると、青ざめた表情の相手と目が合った。
一瞬の間。見つめ合ったまま、肩を竦めてみせる。
「───鍛錬の力加減じゃないよ」
そう言ってから、思わず苦笑してしまう。
■ステラ >
「アッ、アッアッ」
刀から手を離し、わかりやすいぐらい狼狽えている。
鍛錬とは言え負けたくはなかったのと、最近知ったサツーマ剣法を試したかった気持ちが強すぎた。
「ご、ごごごごめんなさ、わた、そんなつもり」
あわあわと冷や汗をだらだら流しながらしどろもどろに言い訳しながら刀を引き抜く。
かなり無茶に床を叩き割ったというのに、刀の方にはそれらしい損傷も見当たらない。
恐ろしいほど頑丈だということがわかるだろう。
「ああああのこれ弁償とか、その、今すぐは多分無理だと思うけど一週間ほど、いやもしかしたら一か月ほどかかっちゃうかもしれないけど待っていただければなにか依頼こなして必ずお金用意するのでその、……ゆるして……」
早口でまくし立てる。
最後の方はもう消え入りそうな声で、顔は真っ青を通り越して真っ白である。
■セリア > 「あー……えーと」
傍目から見てわかりやすい程に狼狽えられると、逆に此方は冷静になってしまう。
ひとまず壁の方に追いやられた剣を拾いに行き、腰の鞘に納めた。
それから相手へと向き直り…
「まぁ、此処は鍛練場だから。ちょっとやそっとの傷なら問題ないんだけど…流石にここまでのものは、ね」
とてもじゃないが、見逃されないだろう。
さてどうするか。考え込むように視線を足元に落とした刹那、弁償だ何だと早口でまくし立てられて再び顔を上げた。
「とりあえず、落ち着いて」
両手を翳し、制止するようなポーズ。どうどう、と言い始めそうな。
「一旦私の方で、補修の費用を出してもらえるよう上に伝えておくわ。鍛錬で勢い余ってしまった…とでも言って。
ただ、無罪放免という形にはさすがにいかないし…どうしようかな…」
うーん、と悩ましそうに考え込む王城騎士。
■ステラ >
「ぅ、ぁ」
最早涙さえ浮かんでいる。
やらかした、やらかしたやらかしたやらかした。
そんな言葉が顔に書いてあるように見えるほどで。
「ぁぅ、ぁぅぁぅ」
やはり何か稼ぎに出る必要があるかもしれない。
しかし割のいい依頼などそう都合よくあるものでもないし、月一の宿代の支払いもそろそろだ。
依頼があればいいが、無ければどうにもならない。
そうなったら、
「娼館、にでも、いくしか……」
ぼそり、と思わず声に出た。
金銭的に危うい時に何度かバイトしたことがあるが、出来ればあんまりしたくない仕事だ。
■セリア > 「娼館は確かに稼ぎは良いけど、あまりおススメはしないわね…」
王都内に娼館など掃いて捨てる程ある。
流石に地区によって大小はあれど、どこも割と盛況だ。だがあまり薦めることはしない。
困り切っている姿を見、仕方ない、と一つ息を吐く。
「……仕方ない。弱みに付け入るようで申し訳ないけど、私の元で少し働いてくれる?
弁償代と引き換えに、うちの旅団で雑用だったり何だり。
無理にとは言わないけど……いつ入るかわからない依頼を待つよりかはこっちの方が幾らかマシな気もする」
どう?と首を傾ぎ、相手の返答を待つ。悪くない提案だとは思うが…
■ステラ >
「えっ」
そんなことで良いのだろうか。
普段の依頼でダンジョンに潜ったりすることに比べれば、騎士団の雑用など天国だ。
触手生物の巣に引きずり込まれたり、スライムの卵を穴と言う穴に産み付けられたり、ゴブリンのザーメン袋になったりすることもないだろう。
「無理なんてそんな! よろこんで! ――あっでも」
王城の騎士団に自分みたいなよくわからない魔法生物がいていいのだろうか。
生まれとか種族とか、色々厳しいのではないだろうか。
思わず自身の狐耳を触る。
■セリア > 「うち、そういうの気にしないから大丈夫よ」
生まれも種族も不問。ミレー族こそ騎士団内にはいないが、基本的に差別意識は皆無だ。
「まぁでも、気になるなら魔法なり被り物なりで隠しておけばいいんじゃないかな」
そこは相手自身にお任せするとしよう。
決まりね、と微笑みつつ──
改めてその姿を見ていると、思いのほかスタイルが良いことに気が付いた。
小柄、童顔、ながら豊満な体躯。
王城内で働いていると、否応にも下卑た貴族の視線を集めるかもしれない──と。
考えていればつい不躾に眺め回してしまう。
■ステラ >
「そ、か」
とりあえずは良かった。
豊満すぎる胸に手を置いてほっと一息。
「――?」
視線を感じて自分の身体を見る。
まさか女性の彼女がそう言う目で自身を見ているとは思いもよらず、不思議そうな顔を向けた。
「ぇ、と。ステラ、冒険者のステラ。耳、あるけど、ミレー族、じゃなくて」
冒険者のことをある程度知っていれば、その名が冒険者の間でそこそこ知られたソロプレイヤーだとわかるだろう。
騎士の彼女が知っているかどうかはわからないが。
ともかく改めて名を名乗り、右手を見せる。
その形が崩れ、スライムになり、触手に代わり、ドラゴンの腕になり、人の手に戻った。
「魔法生物、らしい」
らしい、と言うのは自分でも自分の種族が良くわからないからだ。
■セリア > 胸に手を置かれると、自然視線がそっちに行ってしまう。
変な顔をされたので、そっと視線を外しておいた。
「ステラ、ね。私はセリア」
自己紹介として、自らの名を名乗る。生憎冒険者ではないし、ギルドにもそうそう足を運ばない。
だから彼女の評判については耳にする機会はなかった。
差し出された右手。何の変哲もないそれ──が形を崩し、様々なものに成り代わっていく様を驚きと感心をもって見つめていた。
魔法生物。魔族とも異なる……人工生命体のようなものか。
「へぇ………不思議なものね」
とはいえ、今のを見たところで先程の提案を取りやめようとはならない。
よろしくね、と微笑む。
「それにしても──強いのね。その腕、うちの団員として欲しいくらい」
冗談めかし、笑ってみせる。
■ステラ >
「――セリア、よろしく」
人の手に戻した右手を差し出す。
握手の誘い。
「なんか、よくわからないけど、大抵のものになれるし、怪我とかもすぐ治る、から、便利」
冒険者の割に女性らしい柔らかい掌。
だが、その膂力はさっき彼女が見た通り――そして床の惨状の通りだ。
「――え、と、それは……人と、動くの、苦手で」
なんせ知らない人どころか、ある程度知っている人ですらまともに話せないぐらいだ。
騎士団なんて団体行動が求められる仕事は出来る自信が全くない。
困ったように顔を伏せる。
■セリア > 差し出された右手を、右手で握る。よろしくの握手。
その女性らしい柔らかさに瞳を眇めた。
見るだけではわからない、底に秘められた膂力。その片鱗を見せた床の惨状を一瞥して。
「怪我がすぐ治るのは有難いことではあるね」
特に騎士という仕事柄、そう感じざるを得ない。
冗談めかした誘いをやんわりと断られれば、大丈夫、という風にからりと笑ってみせた。
「それなら仕方ないか。気にしないでいいわ」
冗談みたいなものだから、と釈明し、握って揺らしていた手を離す。
■ステラ >
「あ、でも、手伝いとか、は、する、ので」
別に床の修理費の引き換えとかじゃなくても。
人の相手をする必要がなければ、雑用や戦闘の助っ人みたいなことは喜んで手伝うだろう。
人と話すのは苦手だが、人の助けになることは苦じゃない。
「セリアは、なんだろ、結構話しやすい、から。セリアの頼みなら、そんな無茶なことじゃなければ、聞くよ?」
きゅ、と首を傾げてみせる。
剣を合わせたからか、それとも初手でとんでもない失態をやらかしたからか。
彼女の柔らかい物腰も相まって、今日初めて会った人にしては自然体でいられる。
■セリア > 「そう? なら、雑用以外でも…たまの戦闘の手伝いとかはお願いするかも」
流石に、彼女ほどの腕の持ち主を雑用だけに留めておくのは申し訳ないと思う。
何せ討伐任務を主軸におく部隊。
戦闘に駆り出されることもままある為、その手伝いをしてくれるならば有難いとばかり飛びついた。
「無茶なこと、ねぇ」
特に無茶ぶりをする気はない…のだが。
思った以上に警戒心を緩めてくれているものだから、悪戯とかもしてみたくはなる。
ちょっと微笑んで、おもむろに手を伸ばした。
人差し指で、その豊満な乳房をむにゅ、とつついてみたい。
「こういうことも? ──なんて、ね」
■ステラ >
「うん、わかった。安くしとく」
彼女からの依頼は優先的に受けるとしよう。
へら、と笑って冗談めいたことも。
「ふぇ――わ、ぁ!」
また首を傾げていたら、胸を突かれた。
一瞬何があったのかわからずきょとんとして、次の瞬間真っ赤になって飛び跳ねた。
多分ノーモーションで10㎝ぐらい飛びあがっていたと思う。
「な、は、ぇ、~~~~~~~っ!!」
思わず守る様に自身の身体を両手で抱いてしゃがみ込む。
驚いた顔やら恥ずかしそうな顔やらジトっとした視線の顔やらくるくると表情を回し、最終的になんとも言えない顔でしばらく思案した後、
「~~~~、セ、リア、が、どうしても、って、言う、なら……」
絞り出すような声で。
■セリア > ノーモーションで10cmくらい飛び上がったり、いきおいそのまましゃがみこんだり。
コロコロとめまぐるしく入れ替わる表情だったり。
その様が面白くて、つい笑み混じりに眺めてしまう性。
胸を突っついた指を引っ込め、肩を竦めてみせる。
「冗談よ。気になってたのは事実だけど…ステラの気が向かないならやらない」
そこは当人の意志を重視したいのだ。
ほら、立って。なんて言いながら片手を差し出す。
立ち上がる手助けをするつもり。他意はない。
■ステラ >
「うぅ……」
涙目で睨みつける。
差し出された手を取ろうと手を出し、一瞬躊躇してもう一度上目遣いで睨み付け、改めて手を取って立ち上がった。
さっきの視線の意味が分かり、自分の身体を隠したいが、なんかそれも失礼な気がして中途半端な手の位置。
「気が向かない、って言うか……おんなのこ、相手は、したことない、から」
そう言いつつも彼女の胸――鎧に覆われてはいるが、その鎧の膨らみから大きいことはわかる――をちらちらと見ているあたり、興味がないわけではない、と言った風。
■セリア > 差し出した手に一瞬躊躇する様も予想通りで、くつくつと喉を震わせる。
取った手に力を籠め、引き上げて。
なんとも中途半端な位置で留まる彼女の手を見ながら、首を傾いだ。
「そっか。………」
ちらちらと胸元に視線が向くのがわかる。全く興味がないわけではないようだ。
「──教えてあげてもいいけど。興味はある?」
ブレストアーマーを外す。
その下、衣服越しでもわかる程に豊満な胸元を露わにすれば、そっと問いを投げた。
避けられなければ彼女の手を取り、自らの乳房に触れさせようとして──
■ステラ >
「ぁ」
鎧を外した彼女の胸。
予想通り、いや予想以上か。
自分と同じぐらいの大きさのそれに目が奪われる。
「ぅ、は、――っ」
思わずゴクリと喉が鳴る。
触れれば崩れそうなほど柔らかそうで、触れれば弾けそうなほどぱつぱつなそれ。
引かれた手がその胸に、
「ッッッッ~~~~~~!! まっ!!! またこんど、おねがいしますっっ!!!!!!」
到達する前に恥ずかしさの限界が来た。
顔を真っ赤にし、振り払うように引き戻し、自分でもびっくりするぐらいの大声を出した。
床に置いたマントと武器の元へダッシュし、それらを拾い上げ――直後に転んで一回転してから――広間の扉をドバァンと乱暴に半ば体当たりで開け放ってドタドタバタンと騒がしい音を遠ざけながら走り去ってしまった。
充分に離れて冷静になった後、自分が迷っていたことを思い出したが、恥ずかしくて今更引き返せないので何時間かうろついた末に先の依頼主の付き人に出会ってやっとこさ王城を脱出出来たとかなんとか。
■セリア > 「あら…」
顔を真っ赤に熟れさせて、手を振りほどくようにしながら嵐の如く去っていった彼女。
マントと武器は忘れずに、瞬く間にこの場を後にした姿を見送り…少し強引すぎたかな、と首を傾ぐ。
「まぁ……いいか」
約束したのだからまた会う機会もあるだろう。
まさか再び城内で迷っているなど思いもよらず、セリアもまた片づけを終えてその場を後にした。
日を改め、2人の間でどんなことがあったかはまた別の話として。
ご案内:「王都マグメール 王城」からステラさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城」からセリアさんが去りました。