2023/09/09 のログ
■ネリ > 行く手を塞ぐように目の前へと回り込んだ少年の姿に、修道女は緩やかながらも進めていたその足を止める。
外見から察せられる年齢相応の人懐っこい笑みを浮かべながら、けれども容易く看破された己の嘘を追求されてしまってはたじろいだ。
「 ... ご心配をお掛けして、申し訳御座いません ...
... 少々、体調が優れないのは確かですが ... 教会で少し休めば、良くなると思いますので ... 」
その笑みを前に、これ以上嘘を重ねてしまうのも躊躇われて。
観念した風な面持ちで、けれども話しても差し障りの無い言葉だけを慎重に選びながら、目の前の少年へとそう答える。
彼の胸の内で天秤の揺れ動くその様子には、今の修道女では気付くべくも無く。
「 ... そう言う貴方は、どうして此処へ ... ? 何か、御用事があったのでは御座いませんか ... ? 」
突き放す意図は無く、唯純粋に。己の様な存在に拘ってしまって良かったのかと、浮かび上がった疑問を問い掛けた。
■オウル > 行く手を遮るのは相手を逃がさぬ為であるが、同時に相手のことを良く観察できるような位置に立つ為でもあって、たじろぐ様子も観念した風な面持ちも、正面より眼帯下の瞳と裸眼の双方で眺めて、年上の修道服の女性が見せる表情にはちょっと、いやかなり意地悪をしたくなったのだが、一先ずは、我慢。
「まあ心配は僕が勝手にしてるだけなんでいいんだけど。
と、それはおいておいて……。」と独り言のような言葉を一度途中で切ってから、自分の顎に添えていた指を外して、軽く自分の腰に当ててから心配そうな表情で下心を隠して言葉を返そうか――腰に手を当てたのは飴玉の残りがあったのをそれと無く確認する為だ。
「貴方って言われるよりもオウルと呼んでくれると嬉しいな。
それでどうして?と言われるとちょっと貴族のお歴々に届け物をした帰り道なんだけど、その帰り道に廊下で辛そうな人を見つけてつい話しかけちゃったわけだ。」
疑問に対して言わなくていい情報を隠して、自分が内包する情報の取捨選択をして言葉を返しながら、少し矢継ぎ早になったが言葉を更に重ねる、なんせ……。
「体調が優れない人をこの大雨の中をひとりで帰すのもアレだし、この辺の部屋を一部屋借りて、休まない?雨宿りって奴。」
そう、外は大雨。
今もチラっと外に視線を向ければ大きな雨粒が窓を叩く。
そんな中を一人で帰すわけにはと思うもあるし、それを理由に部屋に引きずり込んでしまいたいのもある。
――…だってこの修道女に興味が湧いたから。
■ネリ > 眼帯越しに己の方を見詰める少年の双眸に、何だか全てを見透かされてしまっているかのような錯覚を覚えながら。
菫色の双眸は彼の手の動きを追うように、顎から腰へと移ってゆく。その腰元にあるものの正体は判らなかったが、興味本位で無闇に詮索するつもりは無く。
「 ... 失礼致しました ... それではオウル様と ... わたくしはネリと申します ...
わたくしもオウル様と同様、貴族の御方に少々用事があって王城へ参りました。」
名乗られた少年の名と、経緯を尋ねた答えに得心がいったように頷いてから、修道女もまた同じように自らの名乗りと、王城へ訪れた経緯を語って述べて。
「 ... お気遣い感謝致します。 ですが、先を急ぎますので申し訳御座いませんがこれにて ...
大丈夫 ... お陰で、大分良くなりましたから ... 」
穏やかに笑んで見せた表情に先程程の弱々しさやぎこちなさは薄く、謝辞と共に投げ掛けた言葉に嘘偽りは無い。
全身の痛みも呼吸の苦しさも依然として修道女を蝕み続けていたが、少年との会話のお陰で幾分か気が紛れたのは紛れも無い事実だ。
とはいえ、部屋を借りて休んだ所で良くはならない事は承知していたが故に、辞退と謝罪の言葉を述べてから深く頭を垂れる。
それでは、と小さな挨拶を最後に、修道女の足取りは依然覚束無いながらも先程までよりはまともになった様子で、少年の脇をすり抜け教会への道のりを辿ってゆくのだった。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からネリさんが去りました。
■オウル > ――名前さえ教えてもらえただけも良しとするか。
必要以上に道を塞ぐ真似はせず、修道服の女性が通り抜けやすいように道を空けると今夜は見逃すとしよう。
「またねネリさん!風邪など引かないでね?」
縋るもせず、執拗にもせず、軽く手を振り見送ろう。
表情は少し、いや、結構残念そうな笑みを浮かべて。
辞退と謝罪、それを引っ繰り返すほど野暮でもないし、子供でもないつもりだ。
そうして彼女の姿が消えるまで見送った後に、髪を軽くガシガシと掻いてから、大きく溜息を吐き出すと自分はもう一つの仕事をするために逆の方向へと消えていくのであった。
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」からオウルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城/広間」にヴァンさんが現れました。
■ヴァン > 定期的に催される、さる王族主催の昼食会。
参加費さえ払えば誰でも入場することができるこの会は、今回は特に盛況のようだ。
アスピダ方面で状況の進展があり、利に聡い者達が“その後”を見越して商談の頭出しを行っている。
護衛のニーズに惹かれて冒険者や傭兵が、金の匂いにつられて娼婦や奴隷商が群がっていく。
黒い軍服を着た銀髪の男は何人かの商人と話をし、融資――あるいは投資の相談に乗っていた。
男自身に商才はない。ただ、貸した金が戻ってくるか、あるいは他のもので回収できるかの判断力はある。
まだ商談をする相手がいるか、会場を見渡す。見慣れない顔も多く、商機はまだ眠ってるようにみえる。
あるいは男に興味を持った人物が近づいてくるか。
ご案内:「王都マグメール 王城/広間」にマーシュさんが現れました。
■マーシュ > 慣れないざわつき。
人いきれ。喧騒も街並みとは違う。俗世的な熱に、一歩下がりたくなるのは己の在り方があるうえでは仕方ない。
とはいえ、復興に関することであれば、主教に連なるものも顔を出す必要がある。もちろん己が主たる存在などではなく、随伴者として司祭の後ろに従っているだけなのだが──。
立食形式とはいえ、実際それらを口にするわけにもいかない。
其方は特に問題はないのだが──。
己の携わる祭事とは全く違う形式は、広さと規模も相まって。
…………壁、壁際。───人気のない場所を望むようにそろ、と歩を踏み出す。
……司祭とはとうに逸れている。おそらくは懇意にしている高位貴族と挨拶でも交わしているのではないかと思われるが。
■ヴァン > ひとしきり交渉を終えた後は壁際に向かうのが常となっていた。
喧騒から離れた者に声をかけるにはそれなりに強い動機が必要だ。中身のない社交辞令から逃れられる。
また、集団から離れることで誰と誰が話しているかも見えてくる。特に先程まで話していた者達の動向は気になる。
もっとも、重要度が高い商談は先に済ませておくのが鉄則だ。別の商談を纏めてからでないとできない商談がある、という例外はあるが。
昼食会ゆえ、酒はない。
果実水を口に含み――危うく吹き出しそうになる。いる筈のない姿を認めたからだ。
立ち上がり、軽く礼をしてみせる。おそらく相手も気付いただろうか。
「こんな所でお会いするとは」
普段と違う、やや堅苦しい言葉遣いなのは周囲の視線があるからだろうか。
食事が必要かなど、当たり障りのない言葉を紡ぐ。目敏い者は二人の姿を認めるが、ヴァンの姿から「ナンパでもしてるのだろう」と視線は逸らされていく。
■マーシュ > 壁際、あるいは柱の陰。どちらでもいいから隠れられる場所、と己の身の置き所を探しながら。
……………ふと、視線を感じて視線を転じた。
「─────…………」
向けられた例に応じる様に頭を下げる。
少しだけばつの悪そうな様子なのは、……現在進行形ではぐれてるからとかそんな子供じみた理由ではない、はずだ。
意外そうな声音にも己でもそう思う。
幾分改まった語調には軽く眉を上げて。
周囲から向く視線とあまり聖職者の数は多くないこともあって、ゆるく首肯を返し。
「司祭様のお供で、おそらくは……あのあたりであいさつをされているかと」
あのあたり、というのは貴族が溜まってると思しき近辺をそっと示す。ふっくらとした威厳のある姿がほんの少し見え隠れするかもしれない。
アスピダの復興関連は、主教も興味を示さない話ではない。実利、現世権益的な話を表だってすることは無いというだけで──教会もまたその題目次第では資金源としての流れを形作る一派になる。
現状は挨拶を、ということらしい。