2023/09/08 のログ
ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にネリさんが現れました。
ネリ > 王城内のとある一室、部屋の中心に設えられた天蓋付きの豪奢な寝台の上。
其処で眠る一人の老人は名の有る貴族か或いは王族か、いずれにせよ相応に身分の高い人物であろう事は一目で見て取る事が出来た。
けれども、その寝顔は穏やかと呼ぶには程遠く、弱々しく乱れた呼吸を繰り返すその様は酷く憔悴しているように見える。

ひそひそと声を潜めて囁き合うのは彼の縁者であろう、寝台を取り囲むように顔を並べた数名の男女。
敵対するあの家の者の仕業に違いない。否、内部に叛逆を企てている者が居るのではないか―――。
彼らの交わす憶測の真相は修道女には知るべくも無いが、目の前の老貴族を蝕んでいるのが病ではなく、何者かの悪意によって齎された呪いである事は紛れも無い事実であった。

縁者たちの中の一人が目配せするのに頷いて、修道女は寝台の傍に膝を付く。
失礼致します、と断ってから老貴族の手を両手で握り、小さな声で聖句を紡ぎながら祈るように瞑目する。
そうして、沈黙が暫くの間続いた後。
少しずつではあるが彼の表情から苦悶の色が抜け、寝息が穏やかなものになってゆくのを確かめてから、修道女は小さく息を吐いて。

「 ... これで ... ひとまずは大丈夫です ... 」

その言葉を皮切りに、老貴族の無事を確かめるように寝台の傍へと集う縁者たち。
安堵と歓喜の声を上げる彼らを他所に、役目を終えた修道女は隅の方に控えていた従者に連れられて部屋を後にするのだった。

ネリ > 部屋を出て、衛兵の守護する廊下を抜けて階段を下り、王族や貴族以外の立ち入りを制限された区画を出た廊下の片隅まで連れられた後。
あの部屋で見聞きした事はくれぐれも他言無用でお願い致します、と事務的な口調で告げる従者の言葉に頷いてから、踵を返して去って行くその後ろ姿を見送った。

外で降る強い雨が窓ガラスを叩く音だけが響き渡る、誰も居なくなった王城の廊下のその片隅で。
不意に、修道女は胸元を強く押さえて蹲る。

「 ...... ッ ...... !! 」

薄紅の唇が喘ぐように開閉を繰り返すけれども、まるで周囲の空気が一瞬にして消え失せてしまったかのように息が出来ない。
代わりに、じわじわと全身に広がってゆくのは身体の内側から無数の針で刺されているかの如き鋭い痛み。

修道女が老貴族に施したのは、彼を侵す呪いを解く為の奇蹟では無く己に移し替えるだけのささやかなもの。
幸いにして、体力の衰えた老齢の貴族とは異なりすぐさま死に直結する危険は無いけれども、それは確実に命を蝕む為の、悪意によって施された呪い。

辛うじて息を整えながら、傍らの壁に手を付いてゆっくりと立ち上がる。
その足は何処かを目指そうとするように、弱々しくも一歩、また一歩と進もうとしていて。

ご案内:「王都マグメール 王城【イベント開催中】」にオウルさんが現れました。
オウル > 『ギルド』の仕事は様々な場所で行われる。
例えばラジエル学院で生徒や教員相手に『飴玉』を配りお客様になってもらう仕事や、貧民地区で試験的に作った『飴玉』を配り被験者になってもらったり、等……。

今夜は王都マグメールの心臓部とも言われてる王城で『ギルド』の仕事をこなす少年が仕事を終えて王城の廊下を歩いている。

今夜は配布よりも『お届け』の仕事。
とある貴族宛に『飴玉の入った革袋』を届けて、引き換えに小遣いをもらうだけの簡単な仕事で、今届け物を終えて小走りで廊下を歩き、後は『ギルド』に報告して終わりなのだが……。

「………ハァ?なんだありゃ……。」

眼帯で隠した眼と人の眼の両方の眼を細めて、行く先を歩く先客の姿を捉えた人物の様子に思わず首を傾げそうになるが、それよりも弱弱しい歩みが気になり、首を傾げる間も勿体無いと廊下をトトトトっと軽快な足音を響かせ小走りで前方を歩くその人影に駆け寄る。

此処は王城である。
普通こんな風に歩いている人物がいればメイドや警備を行う兵士達が良くも悪くも駆け寄るものだと思うのだが、その気配は無いし、珍しく周囲に人の気配も無い。

だと、すると……この人物は誰かの手付き?なのだろうか、にしては服装を見る限りそんな風には……。

「……大丈夫?足でも痛い?それとも、見えない部分でも殴られた?」

壁に手をつき歩く女性の横合いからその人物の顔を表情を覗き込もうか。
こちらは一応心配そうな表情を作り浮かべて、声もそれに合わせて心配そうな声に変えて、言葉を掛ける。

左眼に眼帯を装着し、王城という場に少し似つかわしくない装備の少年、悪巧みもするが体調の悪そうな人物にはそれ相応に心配するのである。

ネリ > 「 ...... ッ ハ ...... 」

白い喉が掠れた音を立てて息をする。
けれどもそれは窓を打つ雨の音に掻き消され、他に人気の無い王城の廊下に他の音が響き渡る事は無い。

軽快な足音を伴って、修道女の方へと駆け寄って来る少年の姿が現れるまでは。

「 ............ ? 」

その音は当然修道女の耳にも届いていて、出処を確かめようと菫色の双眸が緩やかに持ち上げられる。
其処に映った眼帯をした少年の姿は、王城という場では些か見慣れない装いで、少し意外そうに小さく首を傾げるのだけれども。

「 ... ご心配、ありがとう御座います ... はい ... わたくしは、何ともありません、わ ... ? 」

気遣うように己の表情を覗き込みながら掛けられたその言葉には、弱々しくも微笑みの表情を形作りながらそう答えるのだった。

オウル > 職業柄というのは少しおかしいかもしれないが、毒物の扱いや『飴玉』を食わせた人間がどのような反応を示すか見たり、貧民地区という下層で生きるには相手の顔色を伺う事も多々ある所為か、――弱弱しい笑みが非常に気にかかる。

しかし、毒物や食あたり見たいな様子はパっと見た感じではしないし、なら左眼で……と思うが、此処であまり他者に見せない切り札を切る理由も今はない。

だから、今は顔を覗くに止まる。
修道女だろうか、あまり王城では見かけぬ装いに好奇心の芽が生まれはするが、それをまだ静かにしておけと自制する理性もある。

にこーっと誰が見てもわかりやすい程に人懐っこそうで、年相応に見える笑顔を作り浮かべながら、行く手を塞ぐように修道女の前へと回り込み、修道服の女性がそうしたように、自分も軽く首を傾げて見せてから、利き手ではない方の手の親指を自分の顎に添えて思案する素振りを見せた。

「んー………何とも無いって顔じゃないと思うんだけど。
 ウソを見抜く、何て大袈裟な事はいわないけど、無理してる顔をしてるよー?何ともある顔になってるよ?」

弱弱しい顔をしておいて、何とも無いと言われても。
自分の眼には修道服の女性は尋常じゃない様子に見える、そう見えるし、外は雨が降りしきる様子であれば、少し遊びたくもある――此処には都合良さそうな部屋は幾つもあるし、介抱するついでに遊ぶのも悪くない。

善意の皿と悪意の皿、その両方を上手に天秤にのせて揺らしながら、修道服の女性を様子を伺う。

ただ視線は修道服姿の女性の顔を今一度。
すぐに滑り落ちるように首元から修道服に包まれた胸元へ、そうして直ぐにまた顔へ、眼帯に隠れた左眼と裸眼の右の目の視線を向ける。