2024/05/08 のログ
レアルナ > 「あ、確かに。
 私が自己洗脳で不要だと思った記憶を改竄したり捨てている可能性はありますね」

ぽんっと手を打ったエルフの女。
こんなことを素直に口にしてしまうあたり既に性格と性癖が破綻しているのだろう。

「ふふっ、大丈夫ですよ。
 別に噂が立ったところで、私はご主人様に隠し事なんてできません。
 どうして私が興奮していたのかちゃんと分かってくださいますよ」

ピンヒールを履いた脚をパタパタさせながら笑う。
惚気けているつもりはなかったのだが、よくよく自分の言動を思い出すと…惚気けているも同然だった。

「ふふっ。
 良いですね、恋愛認定。
 あ、お姉様から私を奪った形になるのですから略奪愛でしょうか?」

操り人形になってしまったお姉様の美しい横顔を思い出しながらまた興奮する。
自分は既に壊れているのだと確信してしまった。
眼の前の男は自分を見つめるための鏡。
ご主人様がこの男との話に私を差し向けた理由の一つに含まれていたのかもしれない。
そう思うとたまらなく興奮する。
これは洗脳されて壊れてしまった自分を自覚させてくれるという高度なプレイでもあったに違いない。
美女を洗脳するときよりも興奮する。
ぎゅっと太腿の間をきつく締めた。

「ふふっ、いくら私でもそんな迂闊なことはしませんよ。
 きっと自然に捕まって洗脳されますから……なんて☆」

にぱっ。良い笑顔をした。

「魔術を極めるためには高度な集中力を要求されますから素地はあったのかもしれません。
 確かに……」

ご主人様に子宮の奥に植えつけていただいた魔真珠を意識する。
そして身体に刻まれた魔術回路を意識する。
自己洗脳を思い出す。
…………。
危ない。目が虚ろになりかけた。
こほんこほん。慌てて咳払いをしてその場を取り繕った。

「……できそうな気がしてきました。
 ご主人様ほど隙を小さくすることができるかどうかはわかりませんが、やってみます」

最大の障害はこの洗脳されたがる性癖。
男との会話で自分自身を整理して考えることができた。
普段はどうしても淫らな方に流れてしまうのを男のツッコミによって考察を進められた。

「こう申し上げるのはおかしいかもしれませんが……ありがとうございます」

漏れてしまう吐息に熱っぽさが紛れてしまうのは致し方ない。
男が周囲を牽制するような一瞥を向けるのを頼もしそうに見つめる。
音が漏れないようにはしているがどこかで唇の動きを追っている者がいれば会話は漏れる。
もちろんこの店であれば一応の安全は確保できるはずだが。

「洗脳に使う強度の高い薬ですか?
 錬金術はそんなに深くは研究していませんでしたから……どこかで調達しないといけないですね。
 けど、私が望む方向に変わってしまうのは洗脳とは呼ばないんじゃないでしょうか。
 望む方向への洗脳だったら自己洗脳でやっているわけですし」

そこは真顔になった。
もっともっと深くご主人様を愛するように、ご主人様の好みに近づくようにと自己洗脳は欠かしていない。

「けど、ご主人様を誘惑することはできるかもしれませんね。
 ふふっ、なんだか楽しみになってきました。
 今度、怪しい薬屋を巡ってみますね☆」

王都の目立たないところにある老舗をいくつかは知っている。
あるいは良い錬金術師がいないか学院で探してみるという手もあるかもしれない。
蕩けた表情になりながらカクテルに口をつける。

「そんなものなのでしょうか…
 とは申せ、ここで否定しても仕方ありません。
 まずはやってみてそれから判断することとしましょう。
 “個人を自覚しなくする”ことは多分できると思いますから」

薬を使って暗殺者を育てる教団のことを聞いたことがある。
自分を洗脳することで潜入する時の“設定”に自分を強引に合わせることは可能だろう。
そして技術をある程度吸収することができるならば……。

「ふふっ。
 なんとなくできそうな気になってきました」

対人特化の諜報員。
必要な人格に自分を合わせていくことができる。
思考の表層ではするべきこと(目的)を忘れて無意識の中で必要な諜報活動を行うことすらできるかもしれない。

「あはっ、そうだと思います。
 こればかりは自己洗脳でも消せそうな気がしないんですよね」

はしたなく興奮してしまっていることを見抜かれて、下半身をぎゅっとすぼめながら肩を竦めた。
照れ隠しにカクテルをもう一杯オーダーする。

「ご主人様は手回しの良い方ですからきっともう準備を始めておられると思います。
 もしかしたらコルボ様のおっしゃるとおり手配が済んでいるかもしれませんね?」

くすっと笑って出てきたカクテルに口をつけた。

「ええ、学院の前にドミニクイーハ家に潜入するときにその手法を試してみましょう。
 学院ほどはセキュリティも厳しくないでしょうから」

必要なら魔力も封印することができるかもしれない。
必要なときに封印が解けるように条件づけをしてやれば良い。
そうすれば、平凡なエルフの女として学院にでも潜入することができるかもしれない。

「いえ、教わるときには先生と技術への敬意を忘れないようにしないと。
 よろしくお願いします、先生♡」

酔いと性感で顔を赤らめながら男の傾けたグラスに自分の手に持ったグラスを軽く触れさせた。
洗脳により全てが歪んでしまったエルフの女は華やかな笑みを浮かべていた。

コルボ > 「なんだかんだで元の輪郭は、そういう姿勢に遺ってる気はするなぁ」

 先生と己を呼ぶ。そんな貴女へ苦笑しながらグラスを軽く打ち合わせて。
 かたやご主人様に身を捧げて自らを洗脳する者。
 かたや復讐の道に身を捧げて自らを歪め逝く者。

 出会い方では敵同士になるはずの奇妙な師弟関係が誕生し、
 二人して酒精を飲み干すとバーを後にする。
 仇敵の元へ”生徒”を送り届けて、男は夜の闇に消えていった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区『BAR アメジストセージ』」からレアルナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区『BAR アメジストセージ』」からコルボさんが去りました。