2024/04/30 のログ
タチ > 先ほどの問答では未だ好奇心が満たされなかったのか、貴女は頭を左右に振る。
独特の、抑揚のない声で紡がれる貴女の出自の一部。そして続けて発せられる己への問いかけ。
改めて聞かれれば、こちらも首をかしげ、しばし目を瞑り悩みこむ。

「…………そこまで大それたものではあるまい。
 拙者はただ、海の向こうにも剣を振るう国々があると書物で習い、確かめに来たまで。
 意味……ふぅむ……意味か。言葉で表すのは難しいが」

可笑しな問いを投げかける娘だ と、あまり他者に関心を強く抱かなかった女剣士にしては
貴女が放つ独特の”気”にどこか惹かれるところもあったのか、「退屈からは離れられたかもしれぬ」と付け足す。

一番の意味……日々の営みの飽きを、この旅がかき消していった事と言っても過言ではない。
……この国での営みが千日続けば、それもまた新たなる飽きが来るのかもしれないが。

「妖怪……そなた、”アヤカシ”の類か?肝の据わった女とは思ったが……。
 うむ、まことそうだと言うのであれば頷けぬ話ではあるまいな」

僅かに見下ろす女は、どこまで本気なのか分かりかねるが、はっきりと”妖怪”と口にした。
己の故郷では陸、海を問わず人を化かして驚かせたり、時には危害を加える存在として土地ごとに異なる逸話が残っている。

意思疎通の出来るこの女が噂で知る妖怪のうち何者に該当するかは分かりかねるが、
魔物や異形と対峙した経験も少なくない故に「奇妙なものだ」と面白おかしく微笑むに留まる。

「んむ……」

ふと、己の胸へと貴女の鼻先が近づけば押し隠していた情欲がざわつき始める。
体格で勝る女剣士の言葉に臆する事なく、寧ろ好奇心を向ける貴女が妖怪であったとしても、なんと無防備な娘だと訝しむ。
だが、一方でなかなか異郷の娯楽に通じていなかった故、期せずして”いい女”が現れたというのが本心。

貴女の左手が己の右手を掴む。女剣士はそれを振り払う事なく、ただその場で握り返すのみ。
剣士が持つ本来の握力ではなく、あくまで己の手指に伝わった圧をそのまま返すように。

「そなたが知りたいモノとは離れておるかもしれぬが……直に試すのが早かろう?逃げるなら追わぬが……」

貴女の頭髪の近くで、女剣士もまた軽く貴女の香りを嗅ぐ。
そして、掴まれた右手とは反対の手は、そのままの距離を保っていたならば肩から背、そして尻を物色するように静かに這い。

人ならざる存在だったとしても、貴女に目をつけた女剣士の下半身は、不自然に隆起しはじめて。

もしも貴女が女と対になる、もう一つの性を知っていたならば。
或いは知らずとも、貴女の知る”女”にはない筈の存在を触覚で認識すれば、果たしてどのような顔をするのか。

枢樹雨 > 触れ合う手から伝わる、貴方の体温。
離してはならないと、改めてそう感じれば、白い指先が貴方の手首を撫でて―――…。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」から枢樹雨さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からタチさんが去りました。
ご案内:「富裕地区『BAR アメジストセージ』」にコルボさんが現れました。
コルボ > 【待ち合わせ待機中です】
ご案内:「富裕地区『BAR アメジストセージ』」にレアルナさんが現れました。
レアルナ > 男の呟きにエルフの女は小さく唇を綻ばせた。

「ご主人様が絡まない範囲では元の人格が残っているそうですので」

自分が洗脳されたという自覚はあった。
記憶もご主人様にとって都合の悪いもの以外すべて残っている。
…少なくとも主観的には。
自分の人格が洗脳される前と後でどう変化したのかは自覚がなかった。
元の人格はご主人様が自分を調査した過程で把握していたものを聞かされた程度でしか分からない。
…洗脳が関わっていなかったとしても自分の人格をきちんと把握できている者など多くはない。
華奢な形のグラスに細く白い指を滑らせつつエルフの女は男の方に翠色の瞳を向けた。

男の言葉はご主人様と自分の関係性に何かを見出したように聞こえる。
情報屋である彼の視点は自分を多角的に見つめるには有益なもの。
だから男の言葉を記憶にとどめつつ濃いルージュを刷いた唇を開いた。

「私はご主人様の所有物で道具ですよ。
 ですが、より使い勝手の良い道具でありたいと思っていますし…
 ご主人様に愛されたいというのも確かです」

自分がご主人様を愛していることは言うまでもないことだ。
そうなるように洗脳されていることも分かっている。
心を弄ばれている自覚はあるが憤りは感じない。
むしろゾクゾクと被虐心が刺激された。
股間が熱くなって乳首がきゅんっと勃つのを感じる。
黒いミニドレスの短い裾から覗いている太腿の間をキュッと閉じた。

「ありがとうございます♡
 カミサマを信じている人たちもこんな風に興奮しているんですか?
 ……なんて」

いたずらっぽい笑みを浮かべて小さく舌を出した。

「私はご主人様以外の誰からも説教は受けませんよ。
 それに私が洗脳されてることを知っている人なんてそんなにたくさんいません」

他人がどう言おうと洗脳されたこの身がご主人様を疑うことなどあり得ない。
そう思いながら少し顔を赤らめて男の顔を覗き込む。
この国に棲む者たちがどのような神を信仰しているのかは聞いて知っている。
その信仰が正しいのか間違っているのかは自分にとってあまり関係ないし興味もない。
そもそもどの信仰が正しいのかを誰が決められるというのだろう?
明確なご主人様のいる自分にとって何が正しいのかは自明のことだった。

「私の幸せはご主人様とともにあることです。
 できる限り死なないようにはしますけれど…
 糸を手繰る主がいなくなった操り人形は存在している意味がありません」

自ら死を求めるような価値観は持ち合わせていない。
それでも洗脳されている以上、自分の生命よりもご主人様が優先される。
ご主人様がいなくなったからといって洗脳の影響がきれいさっぱり消えるわけではないのだ。

話の流れで男が肩口を見せてきた。
軽く首を傾げて目を細める。
そこに見えるのは歪な刻印だった。
長い時間を生きてきた自分の記憶にもない刻印はこれまでの男の話から考えて呪いの類なのだろう。
ご主人様が生命に関わる呪いにこの男との共闘以外直接的な対処をしていない以上、自分に解呪できるものではないはずだ。
それでも刻印の形を脳に深く刻みつける。

「ありがとうございます、コルボ様。
 ご主人様にお願いして見せてもらいますね。
 おそらくご主人様が私を貴方に会わせた目的の一つでもあるのでしょう。
 ……あ」

ここで一つ思い出したことがある。
ご主人様から預かってきた書状があったのだった。
黒いミニドレスの胸の隙間に挟まった小さな羊皮紙片を取り出した。

「そういえばご主人様からこれを預かって参りました。
 何やら遠い国のとある氏族を滅ぼして欲しいのだそうです。
 詳しくは書状にしたためてあるかと。
 依頼の対価の交渉も託していただいているのですが……何がよろしいでしょう?」

操り人形でしたらお好みの子をご用意いたしますよ。
音が外に漏れないよう精霊を使っているので声を潜める必要はないのだが、男の耳元に唇を寄せてそう囁いた。

コルボ > 「そこが珍しいんだよな。あいつそんな風に元を残さないで人形に良くしてたのに。
 俺を洗脳しようとした時もそだったし。」

 ふと、過去にそんな関りがあったのだと。
 おそらくは、最初から予定して人格を残そうとしたわけではないのだろう。
 消したというより、消えてしまった。そんな印象を受ける。
 それもこれも、自分が一度レアルナの主に洗脳されかけたことで手管を知っているが故。

「そ。駒としては特段にお気に入りの道具、より先の操り人形辺りなんだろうよ。
 だから普段関わらせない手合、それも男に絡ませたんだろうな。
 まー、こっちに気を使ってるのは分からねえが、多分レアルナの五感と繋げていつでも不測の事態に待機してんだろうな。

 愛されたい、というか望む形、なら……。
 多分洗脳される前のレアルナの復元と共存、を俺に求めてんだろうなあいつ。
 レアルナは今仕上がり過ぎてんだよ。
 多分それが長所で弱点。」

 主を完璧であると思うほど、己もまた完璧な道具だと思う。それこそが危険な発想なのだと。
 連携を前提に想定された洗脳。それは二人揃えば無類の強さを発揮するが、
 今こうして己から、主とレアルナ二人を知る者からすれば、
 今目の前で高揚してること自体が隙を見出せる。
 この辺りを補強する為の策を、ということなのだろうかと。

「ノーシス主教以外の邪教とか基本乱交とか儀式でやるだろうしってか、
 そもスルーシャもたまにやってんだろ人形集めて乱交。

 まー、ぼちぼちあいつが抑えたいところの落としどころは見えたけど、
 多分それスルーシャが直接レアルナに仕込まないの、お前が幸せそうにならないからだろうなぁ……。」

 冗談めいた多幸感。盲信。それこそなのだと言い、それを補うなら
 レアルナに色々ひっかかることになりそうで。

「まーな。だからスルーシャ以外で洗脳のことが調査されてたら教えるし、
 アリバイ作りに手がいるならレアルナの判断で俺のところに相談に来い。

 スルーシャから受けた魔力で出来ることは増えたけど、
 泥臭い技術方面でしか補えない穴もそろそろ見えてきた頃じゃないか?」

 敵である。人と魔である。だというのに、親身になって協力体制を敷くのだと。
 顔を覗き込む様は、どんな過程を経たとはいえ、幸福であることは間違いなく。
 カクテルがなくなっていればバーテンダーに追加のグラスをレアルナに薦めて。

「今のレアルナは昔より強くなってるけど、弱くなってる可能性もあるからな。
 てか……、まさかとは言わないけど、スルーシャに心酔してる一方で
 他の誰かに染め直されて、またスルーシャに一から染め直されて独占されたい、とか思ってないよな」

 なんとなくだが、スルーシャが好みそうな方向性を想像して
 その上で隙が多い。欲望ありきである振舞いを見て、そんな点と点を結んだ考察を口にして。

「……反応からして、レアルナぐらい長生きしてても見たことないんだな。
 多分、もっと単純に、レアルナを失いそうになった時に自分の手が届かない時に備えての保険じゃねーかな。
 だからま、表向きはスルーシャより俺とのつながりができやすいんだし、
 せいぜい困ったら利用するこった。」

 表の顔の活動領域を増やす為の布石。それは必然これまでより裏で行える立ち回りの選択肢を増やせることでもあり。

「……スルーシャのものになってから胸大きくなってない?
 ん? ……ああ、あー……、ここか。
 何を勘違いしてるのか、交易の阻害をしてる氏族の一つだなこれ。」

 書状を見れば、目を通してすぐに鉱石を擦って書状をカウンターの灰皿で燃やす。
 不死鳥の涙石。燃やしたものの復元を魔術でも不可能にするもので証拠を消しながら。

「男でも女でも良い。数人、使い捨てても良い”尖兵”を何人か貸してくれ。
 それで始末してくる。一人残らずでいいのか?
 顔立ちはいいからな。捕らえられたら”商品”にしやすいように薬漬けにしてそっちに流すけど。
 後は、この地域の氏族はここが落ちると勢力図が変わる。
 そんだけでかい勢力だ。後の権利分配はこっちで適当に、は、
 多分あいつ興味ないからこっちに丸投げしてきたんだろうな。」

 対価の話より、仕事の仔細。
 その後もアフターケアに至るまで、多くさまざまに聞いてくる。
 それは人の手管、人の目線。
 それも多角的、俯瞰的。
 エルフほどの聡明さでもあれば可能であろうが視野の狭い森の民では得られぬ視界の広さ、見聞の深さを見せる。
 ……それも、スルーシャが貴女に右腕として求める視野の替え方を学ばせる為でもあろうかと。

「……にしても、ここをわざわざ落としにかかる、俺の手も借りる程、ってことは、
 確か……、ここの氏族の奴が王国に来てたな。
 あいつも”お気に入り”になったってわけか。

 ん……。」

 囁かれる言葉にレアルナを見る。
 以前見た時と比べてはるかに色香が増し、それ以上の危うい印象を、影を抱くようになった。
 火遊び程度に手を出すのだろうが、一つの男の特色がそこで見受けられる。

「いや、そっち方面はいいよ。レアルナの仕込みだと多分手駒は同性嗜好じゃないのか?
 対価の為とは言え、手駒に無理矢理普段と反することをさせるのはレアルナの手腕に泥がつく。
 その泥はスルーシャにもつくことになる。

 それでもそう言う対価を欲する男は殺せ。お前さんはそれでいいんだよ。」

 道具であるが、操り人形であるが、それ以上に貴女はスルーシャの手駒なのだと。
 であれば、主と同様に矜持を抱く余裕を持てと。
 一度転べば堕ちる高潔。宵闇の魔将たるレアルナに闇を穢すなと、カラスが囁き返す。

「代わりにちょっと手伝ってくれ。
 ……ドミニクイーハって貴族家系がある。
 最近魔族討伐に対して強硬的な姿勢を示しててな。
 魔族の国のナグアルにも喧嘩売り出してる。
 ほっといたら人間と魔族の国の不必要な戦争が起きかねないし、
 何よりスルーシャやお前達にもこのままじゃ火の粉がかかる。

 その家の没落と商品にしてもなんでもいいから、経緯が表にならないように口封じ。
 対価にするかは、一度そちらでも家について調べてからでいい。」

 人形に二つ返事で頷かせるのではなく、主の役に立つために必要な立ち回り。
 その教材代わりに貴族の家一つを標的として。

レアルナ > 「ご主人様にはご主人様にしかお分かりにならない深い思慮があるのだと思います。
 元を残さずに洗脳しようと思えば簡単にできたと思いますし」

ご主人様のことしか考えられないお人形にされることを想像するだけでどうしようもなく興奮してしまう。
おそらく洗脳することでそういった性癖を植え付けてくださったのだろう。
お尻をもぞもぞと動かして下着が濡れないように下半身に力を入れる。

「尖兵たちはもっと雑に洗脳されることが多いようですね。
 ふふっ、ご主人様ったら私を心配してくださっているのでしょうか?」

五感を繋げて待機していると言われると嬉しそうに唇を綻ばせる。
カウンターテーブルの上に乗せていた左手を黒いミニドレスの上からそっと胸に当てた。
それから指先で乳首のあたりを探ると指先で思い切り弾いた。

「…んっ♡」

瞬間的なオナニーでご主人様への挨拶をする。
きっと今の乳首の痛いくらいの快感がご主人様にも届いているのだろう。
小さく身体を震わせてから後を引く快感を誤魔化すために脚を組んだ。
黒いピンヒールの爪先をふらふらさせる。

「洗脳される前の私の復元ですか?
 ん~、どうなんでしょう……。
 私ってそんなに変わってしまったのでしょうか?
 ……ああ、淫らになってしまったことは確かですね。
 毎日自己洗脳オナニーをするような日課はなかったはずですし」

弱点だとしたら問題ですね、と軽く笑った。
おそらく彼が言いたいのはご主人様に依存する部分を減らせということなのだろうと察する。
もっと独立して動けるような同盟者に近い存在になってもらいたいということか。
けれど、ご主人様の操り人形であることに歓びを見出してしまっている自分がどう自分を変えていけば良いのか。
なかなかに難しい問題である。

「乱交しておられますね、ご主人様は。
 教会の皆さんも陰では色々と愉しんでおいでだと噂では聞くことがあります。
 ふふっ、私はご主人様にしていただくことならどんなことでも喜ぶ自信がありますよ?」

こういうところが依存なのだろうと自分でもよく分かる。
手っ取り早く変えるためにはご主人様にもっと都合よく再洗脳されることなのだろう。
しかし、そういう考え方こそご主人様が良しとしないのだろうと男の言葉から察する。
残念ながらご主人様との付き合いが長いのはこの男の方なのだから、彼の方がご主人様をより深く理解しているはずだ。
組んでいた脚を解いてグラスを手にとって唇を湿らせた。
甘い酒精が舌の上に広がっていく。

「ええ、私のことを調べている方がいらっしゃったらお知らせください。
 女性であれば私も調べてみますし男性であれば貴方にお任せします。
 正直、魔法が絡まない諜報の世界では私はあまり役に立ちません…
 さしあたっては貴方の力をお借りするしかありません」

磨き込んだ指先をそっと顎に当てて思案する。
諜報の世界は魔術とは全く違った技術の世界だ。
一朝一夕に技術を習得できるようなものではない。
眼の前の男のような専門家の力を借りるか、専門家を洗脳して操り人形にするかのどちらかが手っ取り早い。

「ええ、貴方は私よりも私のことを知っているでしょうから言いますが……
 魔術でできることは増えたはずですが、その分自分で考えて動く部分は確実に減っているはずです」

小さく礼を言って薦められたグラスを手に取った。
しかし、その次に続く男の言葉にあやうくカクテルをこぼしそうになった。

「ふふっ、まさか。
 いくら私でもご主人様を裏切りたいだなんて思っていませんよ。
 罠をかけられるのであればその罠を踏み破ってみせますよ」

くすくすと笑いながらも、もう一度再洗脳されることを想像するだけでまた股間が熱くなるのを感じた。
自分は想像以上に変態になっているのかもしれない。
ふるふると頭を振ってからこほんと咳払いをした。

「そうですね。
 私も色々と呪いを見たことはありますがこれは初めて見ますね。
 ……ふふっ、貴方が生きている6年間はしっかり頼らせていただきますね。
 もしも生命を失うのがご主人様だったなら、私を殺しに来てくださいませ」

冗談めかして言っているが半分以上は本気だった。
もし洗脳が解けないままでご主人様がいなくなったのなら自分はどう生きれば良いのか分からなくなっているかもしれない。

「ご主人様は胸が大きいほうが好みだそうですので多少は大きくなっていると思います。
 形を崩さないままにもう少し大きくしたいですね」

男が書状を見ている間、書状からは目を離してカクテルで喉を湿らせる。

「使い捨てできる尖兵を数人ですね。
 かしこまりました。
 それでは適当に容姿が良い子を選んでお渡しします。
 ええ、ご主人様の書状にあることが全てです。
 できましたら一人か二人くらい愛玩用に女の子を欲しいですね。
 その地方の子は肌の色合いが少し違うようですから…
 検疫の全ては貴方のよろしいようにしていただければと」

最近ご主人様が肌の色の違う子を連れてきたことは知っていた。
おそらく依頼は政治的な必要というよりも何か精神的な理由によるものが大きいのだろう。
でなければこんな丸投げのような形で男に託すはずはない。
男と必要な情報の交換を行う。

男は特に対価を要求はしなかった。
欲のない男だと軽く首を傾げるエルフの女。

「ふふっ、お渡しする操り人形は私とは限りませんよ?
 ……ですが、承知いたしました。
 そのような案件があるのでしたら私が調べに参りましょう。
 その…諜報について勉強してみるのも良いかもしれません」

聞き覚えのある貴族の名前だった。
これはご主人様の利害にも大いに関係があることだ。
せっかく勢力のバランスを取って大きな戦争が起きないようにしているところ。
平地に乱を起こすような愚を犯されては困ってしまう。
エルフの女はそこで何が起きるのかまだ何も知らなかった。

コルボ > 「えぇー……、レアルナに夢中になり過ぎてうっかり削ったとかじゃねえのか……?」

この感覚はなんというか、同性カップルののろけを聞く空気に近い。
事実レアルナはスルーシャ好みであり、手管は洗脳でこそあれ、
スルーシャはレアルナの心を解き放ち、レアルナはスルーシャの右腕としても嗜好としても存分に充たしているのだろう。

……後、こう、表向き大丈夫なんだけど嗜好がギリギリアウトな気がするのは気のせいだろうか。
今度会う時は香水でもプレゼントしておこうかなどと。

「お前認識阻害ぐらい使えるだろうがよ。そういうので足引っ張ることになったら、
 ああいやあいつ愉しみそうだ……。」

洗脳主従レズカップルの同調を介した高度なのろけ、というより遠隔プレイに
大丈夫かと思いつつ、色々な意味でセーフなのだろうなと”二人”を見る。
己に向けての蠱惑的な仕草ではないからこそ、二人同士の仕草だからこそこちらは介入せず。

「そこも含めて俺に調査してほしいんじゃないか?
 今のレアルナって評判上がってるし占い客も増えてるだろ?
 だから昔と今を比較するのに周囲の評価を集めるのは無理じゃないしな。

 変わったかどうかってより、んー、お前の全部が過去も含めて余さず、てなると
 その一度消した部分も欲しくなったとかじゃないか?」

 人の人格を、尊厳を破壊した末での再構築とも言える所業。
 それに対して二人はまるで当事者の恋バナではないかのような振舞いで
 疑問と考察をかわしあいながら。

「自己洗脳って、スルーシャを思いながらってことか?
 尖兵にした奴等見せてもらったことはあるが、自己洗脳どころじゃなかったし、
 昔と比較してプラスアルファ、なんだろうなあ。

 ま、ご主人様がレアルナのことをとことん欲しがってるんだから付き合ってやればいいさ。」

 一応隙は多くなってると思うよ? 等と言いながら、
 そのぐらいは明確に言っておけば自己洗脳で改善を進めていくだろう。
 手段が手段、ではあるが。

「相変わらずだなあいつ。てか、レアルナ込みなら乱交も女だけになってるのか。
 ま、この国はどこもそういうもんさ。
 ……その受け入れてる感じがどういう意味なのかは、分かってるっぽいな」

 思考が弱くなっているが、ご主人様へ思考を特化させれば能力は以前より向上している。
 要はベクトルの繋げ方、ではあろうかと思う。
 だからこそ多幸感の根源である依存を口にした後に悩む素振りを見せる。
 その前の、人形であること、幸福の根源が配分を間違えれば主への貢献度が損なわれることも。

 難しいが、提起された問題を抱くところまでは持ってこれた。
……ただの洗脳人形であればここまで至ることなくループに終わっている。
そう言う意味では非常に高度な洗脳で幸福に充たされていると、
この悩む時間と追及する時間こそ、ご主人様への貢献だと理解すれば
そこからの進化は早いし、本人の子宮から脳髄に至るまで絶頂に翻弄されるほどの
恍惚を努力するだけで得られるようになるだろう。

「あと心配すんな。今はスルーシャとはヤッてねえから。
 あいつバイなのにレアルナ達としかしてないのはお前に夢中だから。

 だな。やりあう相手次第で分担した方がお互い都合が良いだろうし
 こっちも負担減るなら言う事ないしさ。女相手ならレアルナも楽しめるだろ。

 でも、一応言うけど、多分スルーシャは俺と組んで俺から諜報方面取り込んだら、
 多分、スルーシャさんは、レアルナを、嬉しさのあまり、バッキバキに三日三晩レイプする」

 洗脳された操り人形に提示するメリット、デメリット、コンセンサス、その他諸々。
 このやりとりで如何に会話のやりとりでアドバンテージを取ってるか、理解を示しているか、
 どこまでも協力的であるかを提示して見せる。
 その上でスルーシャに褒められることを想像して脳イキしてしまったらアフターケアで自前の香水で甘酸っぱい香りをごまかしもするのだ。

「まー、スルーシャがレアルナに色々スキル身に着けて欲しいのはなんとなくわかるだろ。
 俺の持論だけど、本気で追及したら技術的にも魔術的にも人間よりエルフのほうがスカウトスキル上だからな?」

 その言葉の意図は、洗脳されて魔術の手札は増えたが他の分野で得手が減ったというトータルプラマイゼロの打破。その提示。
 本来エルフは人の上位種。広義ではエルフとヒューマンは同じ”人間”だが性質が違うのだと。
 であれば、その性質を生かせば、いくらでもやりようがあるのだと。

「え、でもあいつ、お前が裏切ったら絶対再洗脳する為にすっげぇ丁寧にセッティングして
 逃げ場なくして取り戻すと思うぞ。
 ……それ、ちょっと興味あったりしない?」

 ご主人様の意図を汲んで、操り人形の自我を強める為のアプローチとして欲望をくすぐりもする。
 実際欲望の大きさはスルーシャに匹敵する。それは、確かな原動力となるのだ。

「それはねえから安心しろ。」

 ぽつりとそう呟く。誰が死ぬのが先か。それは占い通りになるのだと。

「仮にそうなる可能性があるとして、それを潰せるのはレアルナ、お前自身だ。
 だからご主人様の為に足掻け。その為に俺を利用してもいい。

 ……俺は、最終的に敵を葬ればそれでいい。そうなれば、スルーシャもお前も無事だ。
 だから、最終的に俺を出し抜いて、敵も俺も死ぬ様にして見せろ。
 それが多分、スルーシャの中で俺に対するもっとも理想的な結末だ。」

 己が死ぬ。スルーシャが出し抜く。それでも、敵が死ぬのなら良い。
 死なせないのは決して倫理道徳の類ではなく、己の目的に届かないと言うだけ。
 己の目的を果たせるなら、逆を言えば、レアルナが己を利用して捨て駒にしても良いのだと。

 エルフに、上位種に、妄執に覆われた人の悪しき可能性の体現、その片鱗を見せて。

「あー、胸ならじゃあその氏族を取り込んだなら秘伝聞きだしたらいいんじゃないか?
 確か儀式に準ずる巫女の体型を理想的にする為の秘伝がある、とは聞くし。

 お互い利害が一致してるだけなんだけど、目を付けた相手の胸を如何に大きくするかは
 スルーシャと割と飲み明かしてるからな……。

 ああ。さっきの流れからして、男の尖兵のほうがあぶれてるだろ?
 そっち中心で再利用のつもりでもいいよ。こっちは捨て駒にするつもりだしな。

 なら、そっちへのリターンを確保しつつ、地域一帯の再構築はこっちで、だな。
 ……そう言えばレアルナ、お前学院に入り込むのに興味はあるか?」

 と、ふと、そんなことを言い出して。

 一方で、己の反応に対して、損得勘定ありきの反応を見せているのは危うくもあるなと感じて。
 これでは損得勘定を越えた感情に対応しきれない。
 これはスルーシャも不得手とするところ。大方感受性の高いエルフにそこを補ってもらいたいのだろうと。

「なら、いっそ諜報活動する時は俺を誘え。予定は合わせるから。
 盗めるところは盗んで、やりやすいようにアレンジするのも相談は受けるからよ。

 レアルナが無事に生き延びて諜報活動も出来るようになるのは、最終的に俺も得になる。
 ドミニクイーハは、弱くもないが強くもない家柄だからな。練習相手にはちょうどいいだろう。」

 ご主人様だけでなく、貴女にもそう共闘関係を持ちかける。
 いつか自分が死んだ時、別の誰かが世界を動かせるように。

 男から、世界の結末がどうなるか、人に傾くか、魔に傾くかは重要ではないのだと感じ取れるなら
 操り人形にもご主人様の意図する思惑に近づけているだろうかと

ご案内:「富裕地区『BAR アメジストセージ』」からレアルナさんが去りました。
コルボ > 【次回継続】
ご案内:「富裕地区『BAR アメジストセージ』」からコルボさんが去りました。