2023/12/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にシルフィアさんが現れました。
シルフィア > 富裕地区の一画にある噴水公園
緑も多く落ち着いたその周辺には劇場やホールが並ぶ。
夜ともなれば、貴族たちが馬車で乗り付けるために、そうした馬車の待機場所になる。
けれど、まだ日が高い時間であれば、散策する人影がちらほらと見えるだけの落ち着いた空間で。

「いただきまーすっ♪」

そんな公園のベンチに腰掛けて、サンドイッチを頬張る少女の姿は、浮いて見えるかどうか。
平民地区とは違って、辺りに屋台も見当たらないから、どこか別の場所で調達してきたものだろうと知れる。
軽く焦がしたパンに、シャキシャキレタスに真っ赤なトマトに熟成ベーコンを挟み込んだそれに齧り付く。
もぐもぐと幸せそうに味を噛みしめ。

「んーっ、ひと仕事した後のご飯は、とっても美味しいです。」

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にタマモさんが現れました。
タマモ > 今日は厄日だ、そう思えて仕方無い。
いつの事かは分からないが、何かがバレて、数時間もの説教地獄。
下手な体罰よりも、このひたすら正座をさせられ、説教を続けられる。
それが、己にとっては、堪えるものの一つである。

…まぁ、そんな事は置いておいて。

それが行われていたのが、この富裕地区にある邸宅の一つ。
説教から解放され、ふらりふらりとやって来る、その先がこの公園だった。

とりあえず、この説教に疲れた心と体を癒したい。
後、数時間の説教で、小腹が空いた。
訪れたのは、きっと、後者の理由。
無駄に鋭い臭覚が捉えた、美味しそうな香り。
その匂いの元を探ってしまえば、この公園のベンチへと辿り着いてしまったのだ。

「………おぉ、何とも美味しそうな…
この辺り、そんなものがあった記憶はないが…どこの店のものなんじゃろうなぁ?」

とか、そんな問いを、気安く向けながら。
へちょ、とそれを食べる人物…人物?の座るベンチの反対側に、倒れ込むのだった。

シルフィア > ランチボックスに入った最後のひとつを手に取って。
いざ食べようと口を開けたところに、訪れる人影。

「ん…? 元気なさそうですね、大丈夫ですか?
 これはですね、シルの手作りなので、非売品ですよー」

強いてどこのお店のものかと問われたら、食材を売っていた平民地区の市場のものになるだろう。
ベンチに倒れ込んだその人物にそう答えてから、改めて口を大きく開きかけ。

「もしかして、お腹ぺこだったり、しますか?」

視線を感じて動きを止める。
こてん、と首を傾げると、手にしたサンドイッチを掲げて見せ。

タマモ > 美味しそうな匂いの元、少女が手にしたサンドイッチを見遣れば。
ベンチに転がる己へと、口が動く代わりに瞳が向けられる。
そして、次いで紡がれるのは、己に対する心配と、問いに対する答えだった。

「うむ、なかなかに、酷い仕置きを喰らってのぅ。
少し休めば…出来れば、美味しいもので、空いた小腹を満たせれば、元気になるやもしれん。
…と、冗談はさて置き。
なんじゃ、手作りの非売品か…それは残念無念…」

いや、売り物であっても、貰う気あっただろう、とのツッコミは勘弁して頂き。
少女の言葉に、ぐてり、と残念そうに垂れてみる。
だが、次いでの言葉を聞けば、むくり、と頭が擡げられた。

「あー…はらぺこ、って程でもないが、ちょいとばかり、入れておきたい気分でのぅ?
全部とは言わんが、一口二口、貰えると嬉しいやもしれんな?」

そのサンドイッチを掲げる少女へと、ひらりひらり、手を振って素直に答えながらも。
とりあえず、転がったまま、向ける瞳は期待の光に満ち溢れているようだ。

シルフィア > 「そんなにぐったりになるほど、あくぎゃくひどうなお仕置きだったのですね。
 ごしゅーしょーさまです。
 シルは腹ペコさんには優しいのです……が、腹ペコじゃないならどうしましょうか?」

傾げた首を元に戻した後で、再度、反対側へと傾ける。
サイドに結ったポニテが、それに合わせて揺れ動き。

「でも、嬉しくなるなら、ご飯を分けてあげるのもヤブサカではないのです。」

転がったままの少女に向けて手を伸ばす。
けれども、反対側にいる少女には、微妙に届かないだろう。
腰を浮かせて、少女の方へと近寄ろうとすれば、どうなるか。

―狙い澄ましたカラスが獲物をかっさらうか。

――それとも知り合いの誰かが声を掛けてくるか。

―――はたまた、すってんころりと地面とランデブーするか。


運命(サンドイッチ)に翻弄されるか、選び取るかは、少女次第で。

タマモ > 「そうそう、その通りじゃ。
正座をさせて、数時間も渡り説教をするなんて、正気の沙汰とは思えん程じゃろう?
む…それならば、妾ははらぺこ、と言う事にしておこう。
そうすれば、あー…シル、とは名前かのぅ?お主に、優しくされるんじゃろうからのぅ」

うん、その内容は、お仕置きと言うよりも…な感じのものだったが、さらりと答え。
少女の言葉、それに合わせるように、それに賛同する意見を返しておいた、余計な一言が加わっているが。

「おぉ、それはありがたい。
それでは………あ?」

そんなやりとりをするも、結局は分けてくれるらしい。
腰を浮かせる少女、そのまま、こちらへと近付こうとするのだが…
どんな運動神経か、なんかバランスを崩して転がりそうになる、それを感じ取れば。
ぐぅたらしていた、そんな態度とは一転した風に、ゆらりと身を揺らがせ、共に伸ばす手が、そんな少女を抱き留めた。
その身を己の胸の中へと包むように、やんわりと抱き寄せるよう。

…少女が手にしていた、サンドイッチ?
それも、もう片方の手で、しっかりとキャッチをしておこう。

「おっと、大丈夫か?
妾の口にも入れるもの、落とさせる訳もゆかぬし。
それを与えてくれる者を、転がす訳にもゆかぬものじゃ」

そんな、抱き留めた少女を見詰めながら。
にっこりと笑みを浮かべ、そう伝えておくのだ。

シルフィア > 「シルの名前は、シルフィアって言います。
 腹ペコなおねーさんは、なんてお名前なんですか?」

名前を訊ねられれば、自分だけのそれを名乗ってみる。
『シル』だけなら、他にもたくさんいるわけで。
正確には、たくさん居たということになるのだろう。

それは兎も角、手にしたサンドイッチを手渡そうとしたところで、何故だか天地が逆転した。
ぐるんと一回転―――しそうになって、ぽすっと柔らかく受け止められ。

「およ? 今日は痛くなかったです。
 ありがとうございます、です?」

何が起きたのか一瞬分からなかったようで。
抱きとめられたのだと知れば、感謝を口にする。
手にしたサンドイッチの方も無事だと知れば、それを少女の口元へと運ぶだろう。

「ひとつじゃ、腹ペコさんには足りないかもですが。
 残念ながら今日は品切れ店仕舞いなので。
 よろしければ『劇場』の方にもお越しくださいませ、です。」

少女がサンドイッチに齧り付けば、するりとその腕から抜け出して。
VIP席なら食事付きもあったはずだと、名刺サイズの広告を手渡すと、
そろそろお昼休みも終わりだからと、手を振って駆け出していく。

―――その姿が小さくなる前に、ズベシャと盛大にこけたのが見えたことで。

タマモ > 「………おぉ、愛称か。
なるほどなるほど、シルは、シルフィアなんじゃな?
おねーさん、かどうかはあれとして。
妾の名はタマモじゃ、覚えるも忘れるも、お主次第じゃのぅ」

その言葉を聞けば、ぽむ、と手を打って納得顔。
と、名乗る少女に、己の名も問われれば、それをいつもの常套句で返す。

抱き留めた、は良いのだが。
そんな折の、今日は痛くなかった、の言葉に、かくん?と軽く首を傾げるも。
無事だったサンドイッチは、少女の手に戻すも、己の口元へと運ばれれば、あむ、と食べる。

「んぐ…んぐ…んむ、美味いものじゃ。
まぁ、後一つしかなかったんじゃ、仕方あるまい。
なかなかに美味なさんどいっち、美味しく味合わせて貰ったぞ?
劇場………おぉ、なるほど、これか。
そうじゃな、機会あれば、行ってみよう」

味は…良し、美味しそうに頬張り、食べ終えて。
その感想を、感謝を述べながら。
劇場、がいまいち分からずも、受け取った広告に、あぁ、と理解の反応を示した。

小腹は満たされた、手を振って駆けて行く少女に、ひらりと手を振って返し。
己も、気を取り直して散歩か…とか思い、身を翻そう…としたところで。
少し離れた何かが見えて、あ、とか声を出した。
うん、さすがにこの距離は、どうしようもない。
あれは、本当に大丈夫なんだろうか、とも思いながらも、その場を後にするのだった。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からシルフィアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」からタマモさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 富裕地区」にリセさんが現れました。
リセ > 「ぃ、いや……離、して……離して下さい……誰か……誰か…!!」

 富裕地区から学院までの通学路となっている住宅街の歩道で響く切実な声。
 それはとうに日が暮れて真っ暗になった人気もない夕刻。冬の日は短く、あっという間に暗くなった頃。学院を出て帰路についていたのだが。
 いつも通りの帰り道は右手に狭い路地の続く十字路に差し掛かった際にいつも通りではなくなった。
 不意に横合いから伸びて来た手に腕をつかまれ、そのまま路地に引っ張り込まれ。
 街灯が壊されて真っ暗な路地に連れ込まれかけている、そんな真っ最中……
 生来気弱で非力で人類としては最弱の部類に入る何も鍛えていない貴族の娘。その上没落貧乏家。
 身を護る術もない上に護衛もつかない、無防備が服を着て歩いているような娘だったのでそんなことになっても不思議はないと云えばないのだが。基本的には日々何事もない。
 富裕地区と云えば都内でも特に治安が良く、学院の通学路となれば通学帰宅時には衛兵の巡回も頻繁。蛮行など滅多に起こることではない……けれど、巡視の隙を掻い潜って獲物を虎視眈々と狙う輩も存在していて。
 不運にもそれと出くわしてしまうと――、

「誰か、助け――……」

 突然襲われて路地に引きずり込まれることになる。
 悲鳴を上げかけた口を塞がれて力ずくで先が袋小路になった路地へ押し込まれる、防御力紙、メンタルはプティングな女学生……。

ご案内:「王都マグメール 富裕地区」に影時さんが現れました。
影時 > 生計を得る手段は幾つもあるが、さて。どれが本業なのだろうか。
それを問われると少し答えに迷う。
冒険したがりで新しい物好きの目線で考えれば、冒険者であり。
そして、冒険者よりも少し真っ当で外面が良さそうなコトを考えれば、教師とも言える。
だが、実際に己が身分を保証する肩書が実は他にもある。此れは先に挙げた事項よりも優先度が高い。
“武術指南役”と云う名の家庭教師だ。それは日々の食事と寝床を支えている重要事なのだから。

「……この様子だと、お前らどっか行きたいのか?」

さて、富裕地区の一角に位置する或る邸宅。
砦めいた風情漂う其処から出て、散歩めいた風情で歩く人影が先ゆく小さな姿に向かってそう声をかける。
人影は羽織袴を纏った男の姿をしており、先ゆく姿は小さな二匹の齧歯類の姿をしていた。
白い法被を茶黒の毛並みの上より着込んだ二匹、シマリスとモモンガは周囲を見回しつつも、或る方向を向って歩いているようだった。
その行先を飼い主たる男は聞かない。小動物の気紛れはいつもの事であり、それを追うのもいつもの事だった。
だから、嗚呼。その二匹が急に立ち止まり、耳をひくひくさせる。そして――、

「どうした? ン、っと……」

何を感じたのか。急に一気に走り出す姿を見れば、左腰に差した刀の柄を押さえつつ男も走り出す。追い縋る。
その速度は速い。だが、それ以上に気配が薄い。まるで逢魔が時に降りる薄影に紛れるように。
飼い主の加速を感じれば、二匹が飼い主の身に跳び上がり、両肩に捕まる。
その二匹が飼い主の頬を突いたり、尻尾で肩を叩くなら、その方向に向かう。誤っていれば違うアクションもあるが、それがないのは一応は意思が通っているのか。

巡回する衛兵の誰何も受けることもなく、二匹と一人の組み合わせは或る路地へと踊り込む。

リセ >  富裕地区では数少ない暴漢。通学路を張っている辺り女学生狙い。
 寒くなると張り込んでられなくなるのが通常で、普通はその数を減らし、遭遇率は格段に下がる。
 故に少し暗くなってもそんなには危なくはない、筈だったのに。
 その少ない確率を引き当ててしまった女学生であったが。
 口を塞がれて悲鳴も封じられ一巻の終わりかと覚悟し、

「……! ……!! ――……っ」

 後から抱き着くように腕を回されて口を塞がれ、泪を溜めて藻掻くが。
 その抵抗は果敢なすぎてなんの意味も効果もなく、碌に腕力もない小柄で重量も然してない17やそこらの貴族の娘などまるで子供のように軽々と扱われて。
 行きどまりでどこへも繋がっていない、つまり誰も来ない小路。 

 ――その連れ込まれた狭い袋小路へ小さな友人である二匹がその鋭い感性をもってして異変に気付いて主を引き連れて来てくれたのであれば、見えるのは明らかな不法行為犯行現場。
 通り魔ならば死に至らしめられるところだったし、変質者ならば命までは落とさなかったかも知れないがそれなりに悲惨な末路、金品目的の犯行ではなさそうだったのでそのどちらかに及ぼうとしていた、まさにそんな時……。

影時 > 近頃はこの辺りも物騒というのは、嗤えない冗談だが真実であるらしい。故に余計に嗤えない。
その所以の一つとして例えば、富裕層の子女を狙って攫うその動機とは如何に。
身代金狙いか? 貴族社会や学院でコケにされたことの支援か? それとも、他には、或いは。
理由は仕様もないものから、多少は尤もらしいことまで多種多様だろう。
だが、恐らくは貧民地区よりも一層明確と考えられる要素がある。

この辺りに住んでいるなら、たんまり金を持っているだろう――という先入観だ。
そうでない場合は、よりもっと下卑た。或いは嗤うしかない所以なのだろうか・

「――こっち、か?」

さて、忍者を右に。左肩に乗っかったシマリスが身体を使って、ぐいぐいと飼い主の頬を押す。
飼い主の右肩に捕まったモモンガが、相方の所作が正しい、従えとばかりに尻尾で肩を叩く。
そのどれもが妙に切迫めいている気がして、今ここで余分な突っ込みを挟むことが男は出来ない。
導きのままに次に見える先を右に曲がれば、其処がどうやら目的地のようである。
身に纏う羽織と袴の裾をたなびかせつつ、行き止まりの路地へと一人と二匹が辿り着き、見える光景は。

「――……ははぁ、こういうことか。であるなら、こうしても文句はあるまい。なァ?」

見知った娘の姿と、その口元を塞ぐ何者かという組み合わせであった。
何処からどう見ても明らかな不法行為の現場に、目的やら何やらを問い質す余分を挟む理由はない。
着衣を風に揺らす中、続く微かな踏み込みから生じる動きは、娘と犯行に及ぶ何者かには男の姿が一瞬掻き消えたようにも見えたかもしれない。

路地を為す壁の片方に跳び、さらに撞球のボールめいた所作でその反対側の壁に跳ぶ。
そうして跳び上がり、くるりと頭上で身を回して飛び降りる先は彼らの背後。ないし、その頭上。
背後を取る、または頭上からの急襲を以てこの場を押さえ、娘の安全を確保するために。

リセ >  大体、並みの貴族と云うものは娘には護衛や従者を付けて身を守らせるか、それともそれを好まないような跳ねっ返りならば護身術の一つも心得ているもので。
 どちらも持ち合わせないような無防備な令嬢は通常ほぼ存在しない。
 故に、そんないる確率の至極低い存在を狙って通学路を待ち伏せるような暇な犯罪者もいないのだけれど。
 共もつけずに登下校する、数少ない女学生……例えば毎日張ってればそんなのがいるのにも気づくし、狙うのが容易い、衛兵の巡回の隙も把握できる。
 つまり、今日がその日。

 その機を逃さずに着実に襲撃を掛ける周到……と云うか、そんなことくらいしかやることがないとしたらただの暴漢でもないかも知れない。付近に住む堕落した素行不良な貴族の愚息だったり。
 特に非力で碌な抵抗もできない地位も腕力もない相手に犯行に及んだ後に揉み消すことさえ可能。
 だから下手をしたら、気づいてくれたのが、現場に駆けつけてくれたのが慕っている小さな友人たちとその飼い主でなければ、見なかったことにされていたかも知れない。
 主人を急かしてまで窮状へ駆けつけてくれたことを知るのは、少し後のこと。

「――……!?」

 大して鍛えてもいなさそうな少し弛んだ体型の中肉中背の男に身体を抑え込まれ、暗がりの現場へ急行してくれた、一瞬のちには掻き消えるようにはっきりと認識できなかった長躯の人影。
 見えたのは幻かと目を瞠ったほど、刹那にその人は影のように壁へ跳躍していて。

 聞き覚えのある声がしたかと思い、被害者は助けを求めかけてイレギュラーが現れたかと加害者は警戒したが、

「――……っ!」

 消えたように思えた人物が背後を取っていた。何が起きたかも分からない内に一般人程度の武力しかない、暗がりに紛れるように黒衣を纏った男は制圧されるだろう。