2024/05/04 のログ
ベルナデッタ > 「それです。何かこう、やけに末端まで熱狂的な気がします。
……いや、まぁ、本来ならいい事なのでしょうけど。」

何でも教派を率いる女(まだ童女にしか見えないが)は数々の『奇跡』にて人々を癒し、この教派を立ち上げたのだという。
その由来を聞けば熱心な信者が生まれることも納得できる。だが、少々度が過ぎている気がした。

「まるでこう…熱に浮かされているような、そのような信徒の姿も見かけます。
果たしてこれがあの教祖の力なのか、それとも時勢によるものなのか…。」

あるいは、何か別の理由があるのか。

「……と、言っても魔族と繋がりがある、といったことでもない限り私の管轄ではないのですが、気になるものは気になりますね。
なので同じ聖騎士団の貴方に印象を聞いてみたかったのですが…訪れたことがあるそうですね?
もう少し詳しく経緯を聞かせていただいてもよろしいですか?」

そういえば、店主に何か渡していたような気がするが、それもその時に関係するものだろうか?
ベルナデッタはふと、今更に気になった。

ヴァン > 「……ハ! 君が言うか……?
まぁ……教祖は外見が変わってないっていうし、フツーの人間じゃないのは確かだろうな。
カリスマめいて人を煽動する話術に長けているのか、魔術的なものか、錬金術か……あるいはそういう組織構造になっているか」

熱狂的――より悪く言えば狂信的な者は異端審問局に多い。
信心深いから審問局に行くのか、そこでの業務が人を変えるのかはわからない。
人を熱狂に駆り立てるものが何か、思いつくものをつらつらと挙げてみる。

「印象、なぁ……。教祖は知らないが、騎士でまともな奴はいないだろうな。
信者は礼拝している姿を見ただけだが、普通だな。貴賤問わず、ってスタンスがちょっと気になったが。
訪問した理由は会議についての案内だよ。お偉いさんとは合わず、司祭に手紙を渡してきた。
……そうだ。近々聖都に行く機会はあるかい?」

仕えるのが国であれ、主教であれ、この国内でまっとうな奴は騎士などしないという自虐めいた思考。
何か思いついたのか、店主に顔を一瞬向けた。
いわく、落とし物を拾ったが誤って持って帰ってきてしまった。聖都に行く用事があるなら届けてほしいと。
女店主が胸ポケットから取り出した紙は主に薬を包む用途で用いられている。

ベルナデッタ > 己が言う事かとヴァンに言われれば、一本取られたとばかりに笑みを浮かべる。
確かに、異端審問局は主教の狂信者の集まりと言えるだろう。
だが、身も心も主教に捧げる人間というのは本来数少ないはずだ。それも、特定の教祖にとなればもっとだ。

「別に、聖職にある者、神々に全てを捧げし者が熱狂的なのは構いません。
ですが…世俗にある者、生活に余裕の無い者までがあそこまで熱狂的なのは他の教派では見た事がない…。
まぁ、貴方の言う通り教祖のカリスマか、あるいは組織が余程優れているのであれば問題は無いのですが。」

それが教祖の能力であるのなら、ベルナデッタとしては認めるしかない。
神々に遣わされた真正の聖女なのであろう。
そう思っているとヴァンに一つ問われ、次いで女店主に何かを見せられる。

「……薬?」

どうにも粉薬か何かが入っているようだ。
ベルナデッタは興味深げにそれを眺める。

「ふむ…彼らの聖堂に落ちていたと…。そういえばあの教祖様は病魔を癒せるそうなので、癒しに来た誰かが置き忘れたのかもしれませんね。」

と、そこまで推測してから、ベルナデッタは申し訳無さげな顔をヴァンに向けた。

「生憎…私は王国の東に行く用事がありまして…。」

もっといえば、タナール砦付近に。
魔族の国との距離の関係上、王国東部の方が魔族の活動は活発だ。
必然、ベルナデッタも東部に赴く事が多い。

「しばらくは聖都には帰らない予定です。すみません…。」

ヴァン > 世俗の者がなぜ熱狂するかと問われ、正面に向き直った。

「こんな世の中だ、助けてくれる人に頼ってしまうんじゃないか? 特に明日をも知れぬ貧民や病人は。
祈りの言葉よりスープや薬の方が役立つし、彼等は助けてくれた人に応えよう、となるだろうね。
金のある連中は……特に男連中は、君には興味のない話だろうが、教祖様とよろしくやってるんじゃないの。
――開けてないから中は見てないが、顆粒状のものじゃないかな。こういった感じの」

考えを纏めるように話す。徹底して現世利益を考えれば、修道会はぴったりといえる。男は外見が幼い女性に性的な興味を持たないが、世の男達は必ずしもそうではない。案外それが収入の一角を占めているのでは、と考えるのは下世話といえよう。
こういった感じ、と言いつつ示したカウンターのに並んでいる調味料は種類が多い。塩や砂糖といったものから、胡椒にソース、油まである。女店主が軽く紙包を振ると、確かにそれっぽい音がした。
教祖が病を癒せると聞くと安堵した表情になる。応接室は王侯貴族、あるいは豪商といった者が使いそうな所だった。
多額の寄進をしてでも病を治せるのなら、薬は不要となるだろう。

「あぁ、じゃあ落とし主も困ってない……といいな。とはいえ、一応確認はしておくか。
タナールの辺りがまた大変だ、ってのは聞いたよ。お疲れ様」

休みが少なそうな様子を察し、労いの言葉をかける。彼女が訪れてきたのは情報収集が主だったようだ。べらべらと無料で情報を流すのは男のポリシーに反するが、何か価値のある話をしている訳でもない。鉄槌局の修道女に、己のスタンスを伝えておくのは良い事かもしれないと思い至る。

「なんにせよ……俺はどこで誰が何をしようが構いやしないさ。この刀が届く範囲の外ならな。範囲内は俺の領土(シマ)だ」

カウンターにたてかけていた刀を左手で軽く触れる。鞘に黒い布が巻かれたそれはただの武器ではない。
徹底した自分本位だが、だからこそ己の領分が侵されそうになったならば何の躊躇もなく噛みつくだろう。

ベルナデッタ > 「そういうもの…ですかね。」

まぁこのご時世だ。単純に手を差し伸べてくれた聖人には熱狂的についていくものなのかもしれない。
未だに違和感があるのは事実だが、己の考えすぎの可能性のほうが高そうだ。

「聞いてしまったからにはどうなったかが気になるので、今度会った時にでも教えてくださいね。
……えぇ、本当に。あそこはずっと安定しない。」

神々の加護は、王都から離れるほど弱くなる。タナールなどは一番弱いところだ。
この包みが何なのかも気になるところだが、それより気にせねばならない事は山ほどある。
今回の任務がひと段落した時にでも、また聞きに行けばいいだろう。
あるいは、今度は助力を求めに行くこともあるかもしれない。

「あらあら、随分と聖騎士にあるまじき発言ですね?」

揶揄うようにベルナデッタは言う。
聖騎士ともなれば、本来は信徒を守り、騎士の規範となるような存在でなければならないはずだが、
そんな騎士など、今はほぼほぼ聖騎士にはいないのだ。

「と…それでは私はそろそろお暇します。
会議の準備、頑張ってくださいね?」

ベルナデッタは立ち上がると、軽く会釈をしてから店を後にした。
男の伝票に己の分が記載されていたのを見たのか、当然のように代金は支払わずに。

ヴァン > 「俺が知ってるまともな騎士は自由騎士か、墓の下だ。
あぁ、ほどほどにやっておくさ。……次は支払ってくれよ?」

過去に会った青年を思い出す。しがらみから解放されている方がよほど騎士らしいことができるだろう。
会議の準備として、明日から王都内の騎士団への顔出しが始まる。並行して図書館の司書業務もせねばならない。
なんとも気が滅入る話だが、明日に備えるためにもそろそろ休んだ方がよさそうだ。
己の伝票にミルク代を書きつけた女店主を一瞥した後、銀髪の男は扉から出る姿を見送った。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からベルナデッタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」からヴァンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にテイラーさんが現れました。
テイラー > 夕日が落ちて月が昇って暫く経った、夜の更け始め。
通りを行き交う人気は少なくなりはじめた。
しかし、通りに立ち並ぶ酒場からはどこからでも喧騒が響いてくる。
其処な隅~っこのほうにぽつんと赤提灯をぶら下げた屋台があった。
席が四つ、人が詰めれば五つになる狭いカウンターの向こう側には、
ぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつぐつ……
琥珀色の液体が中では大根や蒟蒻や馬鈴薯に牛串などが茹でられている。

傍を通り掛かるだけでも芳醇な匂いが鼻腔と腹の音を刺激する。

“ODEN”なる遠い遠い国の料理を専門に出す小ぢんまりした店の一席にて、
出汁が染みに染みて実った稲穂もかくやと黄金色になった大根を頬張る。

「あっっっっつぃ……!」

噛めば、歯が触れたそばから崩れ落ちる柔らかさと溢れる出汁の旨味が熱々に口内を満たした。
唇から舌からを火傷しそうになりながら、あふい、あふぃぃ……! 等と悲鳴を上げながらも、
良く噛んで砕いてたっぷりと味わってから直ぐに冷えた酒をグラスで一口煽る。

「はーーー……」

堪らん。
と、声に出さずとも漏れる心情しとどに溢れる溜息とともに、一息。

「まさかこの国でこれに出会えるとは……いやぁ……いやぁ~~~……」

寡黙な主人とともに頷き合っては、大根をまたひと齧り、冷酒を一飲み。
また、大きな大きな吐息が溢れる。