2024/05/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にカルロスさんが現れました。
カルロス > 【約束待機】
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にエウヘニアさんが現れました。
カルロス > 気持ちのいい春風が吹き抜け、晴れやかな青空が広がっている昼下がり。
待ち合わせは確かギルド前。待ち合わせた相手は女神。一方的に自身がそう呼んでるだけだが存外馴染んでしまったのでそのままだ。
ギルドの受付嬢の仕事もしているという女性と食事を共にする。本業は錬金術師。
同じく錬金術に精を出す自身と同士であり、腰を据えて話がしたいのと、前回膝を借りた礼で食事に誘った経緯。

ギルドの入り口に来て辺りを見渡す男もそれなりに目立つだろうから目印になるはず。
灰白の長い髪、治癒術士(ヒーラー)とは思えないような鍛え上げられた筋肉質な巨躯。
服装こそいつもの一張羅。今日はしっかり睡眠もとったので顔色も正常。大きな隈を作っていたゾンビ顔とはまったくの別人のように見えるかもしれない端正な顔立ちだ。

「そろそろ来る頃か?」

昼の鐘が鳴ってから集まろう、とかわりと雑な時間指定をしてしまったが平民とはそういうもの。
学院の時計台とかいうのもあるし、教会が鳴らしてくれる鐘もあるし。
個人の時計なんて持たない平民はだいたい鐘で動くもの。少なくともこの男はそう。なので、ちょっとばかり彼女にはわかり辛かったかもしれない。
先に来ていても、後から来ても問題はなく、あの大きな三つ編みを目印に行き交う人を眺めている。

エウヘニア > ある種通いなれた道。
依頼を報告するのにも、あるいは依頼を出すのにも。──何ならたまにバイトしてたりする建物が目的地。
とはいえ今日はそのどれもが目的じゃないのはちょっと不思議な感じ。

ちょっとした縁で知り合った相手との待ち合わせに向かっている。
丁度ギルドの通りに差し掛かったあたりで──ざっくりとした待ち合わせの指標の鐘の音が聞こえてきた。
一つ、二つ、と数えながら───行き交う人ごみの向こう側に視線を向ける。

(……………背が大きいと目印いらないですね)

見慣れた建物の前に佇んでいるのは、この前膝の上に頭を乗っけた人。
名前はちゃんと聞いてるのに、そんな認識なのはその印象が強いからか。
今日はゾンビ状態じゃないらしくふらふらもしてなさそうだなーなんて思いながら距離を詰めていった。

「おまたせしちゃいましたかー?」

通りの人波から抜け出すように、ひょい、と顔をのぞかせる。
明るい陽差しの下で、朝焼けに似た薄い色の髪を三つ編みにして横に流した女
ゆるい笑みを浮かべて軽く手を上げてご挨拶しつつ到着を伝え。

昼時だからか、食事に向かう人の波がそれなりに多いことに目を細めつつ
これから向かおうと思ってる店が混んでないことを祈るばかりだ。

カルロス > 「おっ、時間に正確だなあ、女神様?」

こちらに近づいてくる足音、気配。明確な視線を感じた方向へと視線を向ければ、目印の三つ編みはすぐに見つかった。
150半ばほどの小柄な背丈は人波に埋もれやすい。そこからひょいっと抜け出してきた女性を見れば、前回の去り際に見せたような快活な笑みで出迎えた。
同じように軽く手を挙げて返しつつ、腰に手を当てて軽く首を傾けて。

「食いたい飯や行きたい店、決まったか? さすがに富裕地区のリストランテとかだとちょっと話し合いが必要になるが」

一食で一日の稼ぎが全部吹き飛びそうな店がごろごろしてるのが富裕地区。
そんな風に冗談めかす口調でいたずらっぽく笑いながら、案内は女神に任せよう。
男が知る店は女性を誘いに連れていくより、男同士や女冒険者を引き連れていくような店ばかり。
そんじゃ行こうか、と並び立って、向かう先の店の名前や、どんなものがお勧めかを聞きながら、ギルド前を離れて通りを歩いていこう。

向かう道中もおそらく話題は尽きない。この男、元気な時は本当に気さくに喋りまくる。元気でない時もわりとそんなものだったかもしれないが、その1.5倍は良く喋る。

エウヘニア > 「ふふふー、時間を計るのは得意なんですよ?
……でもそろそろ女神はヤメテクダサイ」

工房にそろえてある計測器具のおかげで、それなりに身に沁みついてることを冗談めかして告げつつ。
結局のところ定着してしまった呼びかけに、馴染んでしまいそうなのが怖いけども。
自分はそんなたいそうな呼びかけされるような存在じゃないのは重々承知してるからちょっと困ったように笑った。

挨拶を返してくれる相手のもとにたどり着くと、一息入れる。
こちらに向けられた問いかけには、大丈夫ですよーと頷きを返した。
……気の置けない相手に対してなら、そんなおねだりをする悪戯を仕向けることもやぶさかではないが
さすがに膝枕の対価にお昼ごはんをおごってくれる、なんて気のいい提案にそんなことはするつもりはない。

「そーですねえ、カルロスさんももしかしたら行ったことはあるかも。
ここの近くのお店なんですけど、冒険者の人もよくいますしちょうどいいかなあって」

ギルドの前で立ったまま話すのもなんだし、と歩き出して誘導しながら言葉を返す。
背の高い相手の前をちまちま移動するがすぐに追いつかれてしまう感。コンパスの違いを実感する瞬間…!

「『猫の皿亭』っていうんですけど」

向かってるのはこの通りでも酒場や食事処の並ぶ区画。
……肉の脂の焼けるいい匂いがふわんと漂ってきたりもする界隈に足を踏み入れ、人の入り具合をちらちら確認し。
向かおうとしてるのはその中でも比較的値段と味の比率がいい意味で裏切られてるお店。
少しだけお値段は他の店舗よりも高いが、昼間から営業していてこのあたりの界隈で働いてると選択肢にはよく上がるお店。
お酒も置いてるけれど、甘いものもそれなりにそろってるのが女的には魅力的。

テーブルもカウンターもそれなりに人が入ってるだろうから、席があるといいですね、なんて暢気に会話しながら

「カルロスさんは食べられないものとかありますか?」

大衆食堂的な店ではあるし、そんなに突飛な食材もないだろうけど、と相手の好き嫌いを会話の中で言葉を交わす。
それ以外にも向けられる言葉に応えてるうちに、お店にはあっという間にたどり着いてしまいそう。

カルロス > すっかり女神呼びが愛称として定着しそうな彼女の返答を聞けば笑いながら「わかったわかった」と軽く返す。本当にわかったのかどうか相手からは判別しづらそうな軽さである。
さておき案内がてらに歩き出す彼女と歩幅がまず違うので、あっさりと隣に並んでしまうだろう。ちょこちょこと歩く小さな背中を追うのも面白いが、せっかくだから並んで話したい。そこから男は歩幅を合わせて、女神の歩みに寄りそう形。

「俺も? へえ。――――あー、猫皿! 知ってる知ってる、あそこの飯美味いよなあ。
いい稼ぎになった時はよく食いに行ってた。あそこならまず間違いねえ」

女神が口にした店名は冒険者の中でも一稼ぎできた時に行きたい店ランキングで常に上位を取ってるところだ。
店の内装もお洒落な造りで女性人気が高い。お値段も他に比べればまあ高いが、富裕地区に比べれば全然問題ない範囲。
最後にそこへ行ったのはいつだったか、なんて話ながら、昼時のランチタイムは確かに混みあいそうだと笑う。まあ昼は冒険者がいないので、その分余裕がありそうだが。

「俺? ないない。基本的に何でも食うぜ。あー、けどアレだな、極端な味つけが苦手なくらいか?
辛すぎたり甘すぎたり苦すぎたり。けどそんなモン、冒険中の失敗飯でしか食う機会ないからな。
エウヘニアは? どういう料理が好きなんだ?」

かけられた問いに答え、こちらも問いかけ、返ってきた答えに笑ったり同意したり、あるいは驚くなんてこともあったかもしれない。
そうやって会話を重ねていくうちに、猫がお皿をぐるんと囲むような木彫りの吊り看板が見えてくるだろうか。
ここまで来るまでに肉の焼けるいい匂いに空腹を刺激されて、程よく腹の虫が鳴いている。
木目の美しい扉を開ければ、お先にどうぞ、と女神を先に通してから自分も後に続こう。

「ほー、さすが人気店。けど席もありそうだな」

テーブル席やカウンター席があるそこそこの広さ。カウンター席の方はすでに埋まっているようで、テーブル席に余裕がありそうだ。
店員に2名と指で伝えれば、奥の方にあるテーブル席へと案内してもらえるだろう。

「とりあえず水と今日の前菜二つでいいか?」

料理を選んで注文し、出来上がって届くまでの間に、軽く摘まめる野菜中心が小皿に乗せられた前菜と、水を注文しようかと。
サラダよりも量が少ない上に、この前菜も内容が変わったりするのが面白い所。
席に着けば、正面に向き合うように顔を合わせることになるだろうか。

エウヘニア > 返された返事に「軽いー」と不満は表明するものの、そこまで意固地になって訂正するわけでもない。
案内するつもりが、結局並んで。ただ言葉を交わすならそれがちょうどいいのだろう。
身長差にこちらが見上げるのは仕方ないが、相手の頸が痛くならないかはちょっと心配。

「そう。………たまーにバイトもしてますけど。たまに」

だってギルドに依頼あったし!それなりにお給金よかったし!
お給金は素材代に消えました。

女性人気が高いのは、料理長が女性だからか、料理にちょっとした気遣いが多いところだろう。
食べやすくカットされてたり、彩がよかったり。デザートの品目が月替わりだったり。
ほんの些細なところだがそういうところに手を抜かないお店だったりするから自然居心地がいい。

「へー、そうなんですねえ…うーん、私もあまり濃かったり匂いがつくような料理じゃなかったらいいかな?
……薬草の味とか匂いとかわかんなくなっちゃうんで。あ、でも薬草汁は普段食べてるんでもうイイデス」

粗食、というよりは、手元の素材を無駄にしないための健康食(?)がおおいから。
だから外食は大体なんでも嬉しいですね、なんてそれこそ猫が機嫌よく目を細めるみたいな表情を浮かべている。

「しいて言うなら……あまいの、かな。やっぱり幸せになれるし、好きですね」

庶民なので甘味はやっぱりお高い。手が出ないわけじゃないけれど何か理由が無ければ…といった立ち位置。

紳士的に先を促す動きに、ひょいひょい、と扉を潜れば──昼時ということもあって活気がある。
給仕に軽く挨拶と、それから人数を告げると空いてる席を示されるのに、緩い語調でお礼を言って
すいーと泳ぐ様に店の中を進んで奥の席に。

そんなに距離を歩いてたわけじゃないけれど、席に着けばほっとする。
昼時ということもあってひとまずの注文にはこちらも頷く。
本日の前菜は、根菜の蒸し野菜、もしくは葉物野菜とフレッシュチーズのサラダ。
どちらか好きなほうを注文する形。

席に案内してくれた給仕役の店員がそれを受けて一度厨房へと引っ込む間に主菜やデザートの相談をしよう。

「───なので私は、……ここの季節の果物のパイが食べたい、です!」

…主菜をすっ飛ばしてデザートの主張を始めた女が一人。

カルロス > 道中のやりとりも盛んに行われて、たまに猫皿でバイトしてる日もあると聞けば「へえ~~?」とニマニマ笑う悪戯顔。これは次いつ依頼でバイトをしにいくか聞きだしておこう。
女性店長ということもあって給仕の制服も猫足の刺繍がエプロンにワンポイント入った可愛らしいものだったと記憶している。それを付けてせっせと働く女神も見てみたいという好奇心だ。

返ってきた内容を聞いて「薬草汁は普段食にするもんじゃなくね?」という真顔の疑問も投げかけつつ、薬茶みたいにしてるんだろうかと顎に手を当てて考える仕草。薬草汁。子供の頃、熱を出したら麦粥と一緒に出された記憶がある。とても苦くて青臭い味だった。食べやすいように工夫をしているんだろうと思ったがそもそも普段食??となるループ。

――――店の中に入って落ち着いた後、頼んだ前菜は二種類という贅沢。
「んじゃフレッシュチーズの方」と注文し、彼女も注文をしたならば、さーて何を食べようかと相談しようとして……女神の口から主張された内容に「ん??」となる。
あまいものがすき、幸せになれるからすき、とまあ道すがら言っていたことを思い出した。なるほどここにつながったか。

「おいおい果物のパイってデザートじゃねえか。え? 俺目の前で肉食うけどいい?」

がっつりとした肉でもいいけど細かく叩き刻んだ100%ビーフのハンバーグもいい。せっかく猫皿にきたんだからいい肉が食いたいとなるもの必定。男だもの。
問題はその肉を食ってる前でいきなりデザートで平気? 匂いとか気にならない? という一応配慮的な質問だった。

「エウヘニアが食いたいモンならいきなりデザートでも構わねえけど」

女性人気が高いが故に、小食な女性でも満足できるランチセットとかもあったはずだが、それでもパイが食べたいと主張を曲げない意思の強さを見たなら、わかったと頷くだろう。

エウヘニア > 「基本的にギルドに依頼が来るような繁忙期のお皿洗いですから、表には出ないです」
にやにやな表情に、どや顔。───給仕の練習中に料理零したから裏方ね、と突き付けられた事実はそっと包み隠しておこう。
制服は、制服着ますけども。

真顔の質問に対しては、すまし顔。
スン、と背筋を伸ばして、なにか問題でも?と首を傾ける。
常食にしてるのは節約というか、さまざまなものをケチってる涙ぐましい努力の果ての行為であって
ごはんが普通に食べられるときはちゃんと食べてます。
ループってる相手の表情に楽しげに笑ってはいたけれど。

相手がサラダにするなら此方は蒸し野菜。
お互いちょっとほしくなったのをシェアできる小技、は女子ならではのモノだろうか。

「────いえ、ご飯も食べます。食べます、けど!……ちょっと先走っただけです」

食べたすぎて。
好物を宣言しておけばとられないみたいなルールもないし、そもそもうちは一人っ子なんですけども。
てれ、と気恥しそうに視線をそらして、もしょもしょ追加した。
なお、とくに小食というわけでもないので普通に何がいいかなあ、とメニューを眺めて悩む。

鹿肉や仔羊のグリルはお店の火加減や、羊はオリジナルのスパイス配合が絶妙。卵とベーコン、それからチーズのたっぷり入ったキッシュも美味しい。
お肉だけかと思いきや、新鮮な魚の香草蒸しもさっぱりとして暑い時期にもぺろりといける逸品で。
スープ類はあっさり系から具沢山までその日の気分で楽しめそうな品揃え。

籠で提供されるパンはライ麦と、豆入りでずっしり来るのが体を酷使する冒険者にとってはありがたい。

前菜とともに提供された水のグラスを傾けて唇を湿らせる。
デザートのパイが外せないから、とものすごく真剣に悩んだ末。

「今日はー、ライ麦のパンと、レンズ豆と豚のスープ煮にしようかな。デザートは、パイで。」

前菜も含めてしっかり頂きますよ、の顔。

カルロス > 「あー、臨時の依頼ならそっち系かあ」とどや顔に納得したのか残念そうに肩を落とす男。どうやら女神の不名誉な事実は無事隠し通せたようだ。
常食していることに関して住まい自体も貧民地区に近しいところ。ちょっと彼女の実生活が心配になっている。
素材欲しさに生活を切り詰めて、金に苦労して借金して、知らぬ間に騙され膨れ上がり娼館に送られたりしないだろうかという心配。とはいえしっかりしている?ところはしているので大丈夫か、と思い直した。女神もれっきとした大人の女性なのだ。

その大人の女性が食事より先に食べた過ぎるデザートを主張する様が子供っぽくておかしくて噴き出してしまったが。

「っはは、慌てなくてもパイが足はやして逃げたりしねえから安心しなって」

軽く笑いながら一緒にメニューを眺める。
少しで構わない事務職のお姉さん向けのメニューから、がっつり食べたい体力仕事向けのメニューまで、いろいろな料理に相変わらず目移りしてしまいそうだ。
肉は食うね。絶対食う。肉料理に合う絶妙なスパイス配合も胃袋を鷲掴みにすると知っている。

「そんじゃ俺は子羊と鶏の抱き合わせグリルと、ライ麦パン、スープはあっさりのオニオンスープでいいか。
デザートは……ふむ、んじゃチーズタルトにしとくかな。デザートまで食うの久々だわ」

二人の注文が決まったところで給仕に頼み、出来上がりまで小皿に盛られたサラダにフォークを突き立てて大きな口で咀嚼する。一口で半分消えた。シェアという文化が基本的にない男にとって早く申し出ないと一瞬でなくなりそうである。
さて、注文も終えて後は料理がくるまでの間は歓談タイムだ。
思い出したように、腰につけているマジックポーチから何かを取り出した。

「そうそう、エウヘニアにお土産」

小さな革袋をテーブル、彼女の前に置く。
中身はメグメール森林地帯の奥地で得られる希少の薬草エフェシオ――主にいろいろな素材の調合に適合し、効果を上げてくれる万能草とも言えるもの。ピンクの淡い花弁を持つ花と、茎から根っこまで役に立つ。
数としては少量ではあるが、軽い実験にも使えるくらいだ。これを取りに行けるくらいの実力はあるという証明。人食い魔樹に逆さづりにされて食われかけ死闘したことなど感じさせないようなにっこり笑顔である。

エウヘニア > 上手く誤魔化せ(?)たらしい。満足そうに頷いて。
けれど自分の言動によりほんの少し心配されているらしいというのには気づいていない。
結局のところ女もまた研究に注力しすぎるタイプで、自己のことを顧みるのは二の次……あるいはそうした術の研鑽が女にとっては大事なのかもしれないが。

「ちょっと笑いないでくださいよ、大事なんです。たまのご褒美なんですから!」

自分でもちょっと子供っぽかったのは自覚してるので、ほんの少し目許が染まる。
メニューの量が多くて、目移りするのはこちらも同じで理解できるから
どれが美味しいとか、量が多いのはこれ、とか言いあいながら選ぶのは楽しい。
自然と笑みが浮かんで、言葉の数が増えるのも当然。

そうして決まった注文を請け負った給仕が、厨房へ引っ込む。
店内はそういった客とのやり取りがあちらこちらで見えてはいる。
確かに制服はかわいいなあ、と視線を向けて考えたりしてたが
考えてる間にあっという間に前菜を収めてしまいそうな相手に慌てた。

「あ、あーあー、このっ、蕪とお芋と、チーズとお野菜一口交換してくださいー!?」

そんな言い募り。
無事に一口交換できたかは置いておいて、でも蒸された根菜類にディップソースを絡めていただくのはとても美味しい。
シンプルな野菜の甘味と、ソースの塩気がちょうどよかった。

そんな感じで食事の合間、水分を口にしつつ飽きることなく言葉を交わす。
その合間に取り出されたものにいぶかしそうな目を向ける。

「お土産…?」

相手は冒険者だし、薬草の株か何かかな、と思っておかれた革袋の口を素直に弛めて中を確認した。
灰色がかった緑の双眸が緩く瞠られる。
深い森の香りと、淡い色合いの花弁に小さく息を飲む。

「ちょ。……んんん、大変だったんじゃないですか?」

自分では許可が下りない森の深部でないと手に入らない。
見た目の美しさよりも、その植物が持つ効能が術師界隈にはおそらくは有名だ。
だって、その特性からかほかの素材の特性を阻害しない触媒としての性能が高い。
その全草がポンと目の前にあるんだから驚かない方が不思議だろう。
この薬草がそれでも全滅の憂き目にあわないのは、その生息地が容易にたどり着けない場所であることも大きいだろう。
そこまでたどり着けるなら、きっとほかの魔物素材だったりするほうが効果に取引されるから。

「ぅー……不意打ちすぎません?そもそもお土産にしちゃっていいんですか?むぅ……」

そりゃあ欲しい、もらえるならうれしい、とっても。
分かりやすい表情と懊悩は女のお人好し加減の所為でもあるだろう。
唸りつつ、そっと袋の口を閉じる。傷つけないよう運んでくれたその気持ちを汲む様に。

「……カルロスさんの気持ちなので、有り難くいただきます。でも、そう……
次からは買い取りでお願いします。あ、手持ち無かったら貸しとかツケとかそういう体にしてもらえると助かりますが」

緩い、冗談めかした言葉で、くすぐったいような喜びを隠しつつ。
何ができるかな、と考えながら──。

「でもしてもらうばっかりはちょっと、私が収まらないので
カルロスさんがしてほしいことあったら言ってください。」

約束してくださいね?なんて言いながら穏やかに笑んだ。

カルロス > 【次回継続】
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からカルロスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からエウヘニアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にヴァンさんが現れました。
ヴァン > 「あ゛ー、疲れた」

会議のために聖都まで呼び出され、前入りしたと思ったら用事を頼まれる。
水晶球でリモート会議ができる現在、時代に逆行している神殿騎士団である。
無事に会議は定刻までに終わり、飛竜便で帰宅した銀髪の男。スタウトを呷り、はぁと息をついた。

「聖騎士団会議の主催かぁ……面倒くせぇ」

心底嫌そうに呟くが、主教傘下の騎士団が毎年持ち回りで主催するので仕方ない。
団長から受け取った何通かの手紙は、王都を本拠とする騎士団への案内状だ。混迷する王国をいかに主教として善きものとしていくか――そして勢力を拡大していくか、暴力装置としての見解を統一する場。
こちらは<探査>をはじめとする魔術介入を防ぐため、水晶球を使わない対面の必要がある(ということになっている)。

会場の手配、宿泊先の手配、参加者の確認、アレルギーや酒の好みの確認……面倒なことこの上ない。
普段は酒量を抑えるようになった男だったが、今日ばかりは飲みたい気分だった。

ヴァン > 服に違和感を感じたため、ポケットの中を探り出す。ある大聖堂に落ちていた紙包だ。
やらかした。目を瞑って呻くと、バーテンダー服を着た正面の女に語りかける。

「……悪い。こいつの中身、解析してくれ。持ち主に詫び入れにいかにゃならん」

聖堂の誰かに渡していればつつがなく終わったことだ。薬が足りないことで苦しんだり、死に――はしてほしくないが。とにかく、困った事態になっている人がいるに違いない。
薬の種類がわかれば、落とし主も辿れるだろう。こういうのは先に謝っておくのが大切だ。
店主の女は不審げな視線を隠さないが、頷くと男の伝票にさらさらと追記した。

ご案内:「王都マグメール 平民地区/酒場」にベルナデッタさんが現れました。
ベルナデッタ > 「あらあら、結構飲んでますね?」

その時、ヴァンの隣に座る者あり。
質素な私服に身を包んだその女だが、ヴァンには見覚えがあるだろう。
そして、己にとってあまりイメージが良くない組織の人間であることも知っている。

「そういえば、今年の会議はそちらの騎士団が主催でしたね?」

主教参加の聖騎士団の会議であるからして、当然主教の聖職者も参加する。
彼女の属する異端審問庁の人間も毎年会議にオブザーバーとして参加していた。
聖騎士団が効率的に聖務を遂行できるよう、また主教の正統教義から逸脱することのないよう、
常に監視の目を光らせているのだ。

「あ、私にはミルクをください。」

そして、ベルナデッタはわざわざ酒場でミルクを頼む。
修道服を着ていなくとも戒律は絶対なのだろう。

ヴァン > 空になったジョッキを店主に渡すと同時、声をかけられた。
首を左に曲げ、隣に座った者をみとめると目を細める。住宅街にある酒場兼宿屋に偶然立ち寄った、と考えるほど男は無思慮ではない。男のホームたるこの場を訪れる以上、何らかの意図がある筈だ。

「いや、まだ三杯目だ。……まぁな。君の所もそろそろ正式参加でいいと思うんだが」

啓蒙局も鉄槌局も相手は外部が多く、騎士団と協調する場面もある。
例年オブザーバーという形をとっているが、他騎士団との接点は一番多い組織だし、彼等本人も暴力装置だ。
男としては本心から正式参加を望んでいた。その分主催が回ってくる期間が伸びるし。

「何かあったかい?」

私服と思しき相手に質問する。
シスター服であれば周囲の常連客から浮気だの何だの、ろくでもない噂を立てられるところだ。
店主は黙って頷くと一瞬屈み、グラスに冷たいミルクを注ぐと渡した。なぜか男の伝票にさらさらと記している。

ベルナデッタ > グラスが差し出されれば、ベルナデッタは上品にそれを口にする。
当然、異端審問庁から要注意人物扱いされているヴァンの情報は容易く手に入る。
ここを突き止め、いつも彼がいるであろう時間に訪れるのは簡単な話だ。

「いえいえ、私達は騎士団ではありませんので。今の立場で十分ですよ?」

ベルナデッタは笑みを浮かべながら答える。
男が正式参加を望んでいる理由が、女が正式参加を望んでいない理由でもある。
会議の主催の大変さはベルナデッタも聞いている。

「……あぁ、そういえば今年参加するのはハックス審問官だと聞きました。ご愁傷様ですね…。」

ベルナデッタが出した名前は、ヴァンにも覚えがあるだろう。
啓蒙局の異端審問官であり、禁書を焼くことに手段を選ばないことで定評がある。
図書館に度々乗り込んでヴァンと諍いを起こしたのも二度や三度ではない男だ。

「何か…ですか。いえ、まぁ大した話ではないのですが。」

ヴァンに問われれば、ベルナデッタはようやく本題を話し始める。
出した名前は、今しがた男が店主に渡した小包を拾った、あの騎士団。

「最近は信徒も戦力も右肩上がりに増やしているようで、私達としても頼もしい限りなのですが…。」

ベルナデッタは視線をヴァンに向け、ひっそりと話す。

「どうにも、私の勘が怪しさを感じているのですよね。」

ヴァン > 今のままで十分、という言葉に苦笑する。
情報を集めることができ、必要ならば進言もできる。気楽な立場だ。

「まぁ……俺が会議に出る訳じゃないからな」

名前を聞くとあぁ、と呟いた。聖都からわざわざ足を運んでくる人物だ、嫌でも覚える。
来賓の対応をするなどで顔を合わせるぐらいはあるだろうが、大きなトラブルにはならないだろう。
大した話ではない、と聞くと鼻をならした。

「あぁ、昨日用事があって顔を出したよ。 設立からまだ間もないのに大したもんだ。間もないからあれだけ成長するのかもな。
怪しい……? どこが? 資金源とか?」

建国とほぼ同時期に設立された騎士団や修道会が多くあるなかで、数十年というのは相当に若い。
不正については主教全体がずぶずぶと沼に嵌っている。男とて無縁ではない。
新しいスタウトに口をつけながら、首を傾げてみせる。大抵の無法は経典の“再解釈”でどうとでもなる。

「昨年あたりから、貧民地区への炊き出しが増えたな。信徒の数も増えている。教義にも特に違和感はない。
あえていうならば……他よりも教祖崇拝の傾向が強い。この調子じゃ生きてるうちに聖人認定されるんじゃないか?」

修道会について知っていることを箇条書きのように紡ぎ出す。
主教の常識でいえば、聖人認定は死亡後だ。ただそれも現在の常識。冗談っぽく笑ってみせる。