2023/09/30 のログ
アティル > 結果。特に何事も無く夜は更けたのだった
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からアティルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にシロナさんが現れました。
シロナ >  平民地区、学校が終わって帰宅する時間になった。
 妹達とは合流できなかったから、シロナは一人で家路につく。
 とは言っても、健康的で元気な小娘はおなかが直ぐに空くもので。

「んー………。」

 ほわわわ、と良い香りを立たせている屋台、おいしそうな料理を作って居そうな酒場。
 そう言った所に視線が向くのである、あと、それと同じぐらいに服飾のお店にも、視線が向く。
 妹達に、可愛らしい服を着せたい。
 美味しいご飯を食べたい。

 両立しなければならないのが、姉の辛い所。
 でも、お財布に入っているお小遣いの量は一定。
 欲しければ、ギルドなりなんなりに行って、お小遣い稼ぎをする必要がある。
 一応、商会のお嬢様の立ち位置ではあるが、お金は大事だと母親の教育があるので、お小遣いは少なめ。
 なので、使うための物を厳選する必要があって、空腹(じぶん)に使うか、洋服(いもうと)に使うか。
 それを、確りと考える必要があるのだ。

 可愛いお尻を、ツン、と突き出す格好になり、学生服のショートなスカートから白い輝きが見えるが気にすることもなく。
 シロナは、じっと、お肉の誘惑の前で、その奥に見えるファンシーな洋服店を見て。
 うぬぬぬぬ、と悩んでいた。

シロナ > 「ぐぬぬぬぬぬぬっ………!」

 美味しそうだ、とってもおいしそうだ。
 学校で頭を使って、運動して、お腹がグーグー鳴っている、ドラゴンの本能が、ご飯くえーとあんぎゃ―と鳴いている。
 家に帰れば、たっぷり美味しいご飯を食べる事が出来るのは間違いはない。
 そのまま直行で帰れば、美味しくて素敵なご飯をたっぷり食べる事が出来るのだ。
 そう考えた故に、シロナは視線を全力で、屋台から離す。
 白いショートカットの髪の毛がぐいぐい引かれているような気もするが、それを全力で振り切る。
 ぐぅうう、と、全力でお腹が鳴るのであった。ご飯食べよ、と誘う様に。

 視線を外して、それだけで全力を使い切ったような気もして。
 此処から、ファッションのお店に行く気力もなくて。
 とは言えども、何かお腹に入れたいし、と飲み物の屋台を見かけて、ジュースを買う。
 ふう、と気力尽きた様子で、ベンチに腰を掛けて、秋口の空を見ながら、ジュースを軽く吸い始めた。
 ちゅー、と桜色の唇で、ストローからジュースを吸い始める。
 矢張り、甘いものが、食べたくなる、ぐう、と腹がなっていた。

 この後、如何しようかな、と、周囲を見回す。

シロナ > 暫くの間、ジュースを吸って、考えていたものの、通りがかる人に、興味がわきそうな人がいない。
 まあ、仕方がないかーと、小さくつぶやいて、大きく伸びをする。
 んー、ぽきこき、と体を鳴らして、立ち上がった。

「かーえろ。」

 誰もいないし、お腹もすいたし。
 ジュースを飲んだから、少しばかり動けるようにもなった。
 妹たちも見えないし、そのままかえろう、と歩き始める。

 そのまま、街の中、富裕地区の方へと、消えていく―――

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」からシロナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にロロさんが現れました。
ロロ > ――夜の酒場。
獣の空気を纏った犬一匹。円卓を囲み歓声を上げ、酒杯を酌み交わす、賑やかな酔客達に背を向けて。
カウンターの隅に頬杖を突き、注文の品が出て来るのを待っていた。
独りの背中を軽く丸め、スツールの底へとギリギリ届かない足先を軽く揺らし。
目を閉じてはいるのだが――頭上には獣の耳が立ち上がり、辺りの音をはっきりと聞き分けている。
ゆらり、ゆらり――淺履きの上から延びてたゆたう尾も。さながら犬ではなく猫が、獲物に目を付けている最中の如く。

何処か、近寄り難い。客の誰ぞを害するつもりなのではないか――とすら思わせかねない在り様には。濃い酒の一杯でも有れば似合うのだろうが。

「 ――っ、おぉ。待ってた、やっぱ――こんくらいじゃなきゃ、ちょいとお高い店に来る甲斐がない し」

どずん。店主が犬の前へと差し出すのは。分厚く切られ血と汁を滴らせる、じゅぅじゅぅと焼きたての音を奏でる、肉。

早速ナイフとフォーク片手、切り分け喰らい付いていく…そりゃぁ当然だ。
こちとら元々半分狼である。肉欲カッコ文字通りの意味で、を。満たしたいに決まってる。

ロロ > 恐らく既に顔馴染みなのだろう。
嘆息した店主曰く、野菜も食え、と。まるで保護者のような言い草に。
行儀悪くフォークを噛み噛み、肩を竦めてみせてから。

「わぁかってる。配分はするよ、肉野菜肉、肉肉野菜肉肉肉、くらい?」

あからさまに偏っている気もするが。肉食動物なので仕方ない。
仕事上がりは割といつも。こんな風にがっつりと喰う…恐らく。成人男性の平均よりも。
見てくれは細いが、良く良く見れば確かに腹筋を宿す腹。底にしっかり蛋白質を詰め込んで漸く。人心地が付いた、と息を吐き――
殆ど手つかずだった酒杯を。思い出したように口へと運ぶ。

これで後は。肉欲カッコ良く有る意味で、も。満たせるのなら万々歳なのだが。

ご案内:「王都マグメール 平民地区2」にバーンハルド・ストルムさんが現れました。
バーンハルド・ストルム > ──酒場の扉をその男が押し開けた時、喧騒がほんの一時だが消え失せた。
平民地区の安酒場には似合わぬ風体、似合わぬ気配の男であったからだ。
涼やかな顔立ちも、生活の汚れを感じさせぬ清潔な衣服も、いずれも貴族階級のそれ。この様な場を訪れる者の姿ではあるまいに。
……が。その男は、慣れ親しんだ庭園を歩くかのように、椅子や酔客を避けてカウンターへと向かっていく。
店主に何事かを伝え、金銭の代わりに何やら、走り書きを記したメモだけを渡し──それっきり店主の視線は、この場に似つかわしくない男から離れてしまった。

そして、男はカウンター席の後ろを、靴の硬い音を鳴らして歩き、貴女の背後に立つと。

「貴様、〝──家〟の犬だろう」

かつて存在した貴族の、とある家名を小声で告げた。

ロロ > 「 ―――― …ぁぁ?」

そんな、食という欲に満足気な犬ではあったが。
寧ろそうして一時餓えから解放された為…なのかもしれない。
瞬間的な、店内の雰囲気の変化。僅かな間とはいえ生じた空白。
無の出所へと横目を向けてみたのなら。貧民地区の安酒場どころか、この平民地区であろうとも。そぐわない存在が其処に居た。
露骨に場違いなそれが、一直線に此方へと歩み寄ってくるのに合わせ。詰まる距離とは正しく反比例、犬の機嫌も下降する。
さながら近付いて来る相手の、見てくれこそ良い物の、仏頂面と称しても良いのではないか――という造詣が。空気感染したかの如く。

面倒な事になりそうだ、と。即座に判断したらしい店主は、何ぞ記されたメモの中身で、自らの予想は正しかった…そう判断したらしく。
そそくさとカウンター内、反対側へ移動してしまった。
再び騒ぎ始めた客達も、明らかに此方を視界から外しているようで。孤立無援と化した犬は、直に背後へ到達した男の一声に…

「――前は、って付けて貰えます? あの家がもう無いの御存知でしょ、何せ――」

子細不明の嫌疑にて、嘗て犬を育てていた貴族を潰したのは。同じ貴族――彼のような者達なのだから。

バーンハルド・ストルム > 「何せ、の続きはなんだ? 王国に害為す者として、愚かにも命を落としたからか? ふん──」

尊大に鼻を鳴らし、男は、貴女の隣の席に腰を下ろす。
先には他に、この席を狙っていた客のひとりやふたりも居たのだろうが、既に今はそのような状況ではない。
誰もが皆、巻き込まれぬようにと距離を取っている。……視線すら向けないのは、〝何を見ている〟と不興を買わない為か。
ただそれだけの事で他者の命を左右できる──それが、この国の貴族だ。
無論、その権力を誰よりも知り尽くしているのは、当人である貴族達──その中でも、特に貴族らしい男が言う。

「探したぞ。あの家が潰えた折、屋敷に残っていれば、我が家の鎖に繋いでやろうとも思っていたが。
 しかし犬とは言え素早いことだ。ついぞ今まで、足跡ひとつ見つけられなんだわ。
 ……ああ、問う前に教えてやる。お前の事は知っているぞ、飼い主に見合わぬ毛並みの犬よと、覚えていた」

カウンター席から手を伸ばし、届く範囲にあった適当な酒瓶を掴む。

「……安物なのはやむを得んが、趣味は良い」

同様に、適当にその辺りにあったグラス二つをひっつかみ。
いずれにも、表面張力で零れぬギリギリに酒を──中々に度数が強いもののようだが──注いだ。
ひとつのグラスは自分の手元に。もうひとつのグラスを、貴女の手元に押しやる。

ロロ > 「――………ま、間違っちゃねーですけど」

勝てば官軍。それが真実。実際どうであったかを、飼い犬が全て承知している訳ではないのだが。
結果として疑いを掛けられ、それを晴らす事が出来ず、潰されたのは紛れもなく事実。死人に口なし。
相手の言い方には流石に鼻白みもするのだが。世の中そんな物だろう、とも解っているので。敢えて口答えはしなかった。

というより。迂闊に口答え出来る相手でもないのだと。店主より、酔客より、犬自身が。しっかり把握していた為に。
平時は冒険者である者等も含まれているのだろう…関わらない事を決めた客達の判断は、大正解だ。
例え謂われが有ろうと無かろうと、権力という名の力を持つ男、その気分次第で。真も偽もあっさりと入れ替わる。
勿論力の有無それ自体には、良いも悪いも無いのだが――男が、悪い使い方という物に通じているのは。
先の店主への行動を見ても明らかだし、経験を積んだ者であれば…雰囲気だけで。察せてしまったに違いない。

「それは遅かった――ですね。空き家に居ても飯が出て来る訳じゃないんで、とっくに再就職済み だ。
言い方を借りるなら…王国に、害為す者の墓守なんてするつもりもないし…帰らぬ主を待ち続ける程、忠犬って訳でも、ない」

隣席に着いた男から、グラスが押し付けられた。
犬にとっては普段から飲み慣れている物と比べて、随分と強い代物ではあったのだが。
断るという訳にもいかず手に取りながら。

「 だから。捨てられた野良犬を拾って、世話して下さるつもりだったなら。申し訳ないけど無理――なんで。
首輪の主に話を持っていって欲しいと思う――思い、ます よ。こっちとしては ね」

それとも。同じ貴族同士で取り合いでもする気なのか。犬一匹の為に。
だとしたら酔狂な事だ、なんて。少しばかり口端を緩めてみせた。

バーンハルド・ストルム > 強めの酒を一息に飲み干し、渋い顔をする。酒精の強さが故か、味の為か。そのいずれもであろうか。
空にしたグラスをカウンターに置き、貴女がグラスを手に取るのを見ながら、

「値と味わいは、必ずしも比例せん。酒も食も然り。
 貴様らが飲む安酒と、我らの宴席に並ぶ酒とでは、100倍も値が変わってこような。
 ……だが。その味に100倍もの差は付かん。或いは1000倍の値がありながら、安酒に劣るものすらある。
 貴様はどうだ、野良犬?」

講釈を語る口は、不機嫌そうな顔に比べて饒舌だが、声音は顔立ち同様に冷たいもの。
他者を見透かし値踏みする目は、グラスから貴女の顔へと向かう。
値ばかり嵩む貴種であろうが、食指の動かぬ獲物がいる。
一方で眼前の、平民の酒場に並ぶような──

「貴様は安酒だが、色と香りは悪くない。後は味だ──かつては味わう前に逃げられたが。
 今宵こそは試させてもらおう。……〝両家の友好の深化を願い〟会談といこうか?
 ──命令だ。俺をもてなせ、どこぞの飼い犬」

──この国の価値観においてはきっと、珍重されぬものであろうが。
きっと値ばかり張る酒より、よほど良い味がするだろう──と目を付けた、貴女へは。
男は傲慢かつあからさまに、その欲望を剥き出しにした。

ロロ > 「結局の所酔えれば充分。そういう連中だって居るかと。
…この場合はどうかな。正直言うと今お相伴に与っても、ちゃんと味を確かめられないし…比べる対象も、ない。
序でに言えば酒がなくても、こういう所なら場で、雰囲気で、良い気分にもなれたんじゃないか な――さっきまでなら」

今は違う、そう言い切った。明らかに雰囲気を変えた元凶、その張本人に向けて。
相手の返答を待つ事なく此方も、倣うようにグラスを煽るものの。同じく微妙な表情となる、その原因は。
肌で感じる雰囲気に、味覚も露骨に左右されてしまうからなのだろう。
結局。折角の高級な酒ではある筈なのだが。グラスの半分程を干した所で、再度カウンターへと戻してしまい。

「そう。味わうなら、雰囲気作り。大事だと思います――よ。皿の柄一つでだって、間接的に、料理の味は変わって来るんだから。
けれど――そぅ、か。そう来るか…ぁ……」

一応本日は既に、勤務時間を過ぎた仕事上がりの身ではある。
オフの時間にそれこそ、相性の良さそうな者にでも声を掛けられたなら。拒む事なく、付き合いの素振りを見せたかもしれない。
しかしこの男は最初からずっと、貴族である。貴族としての目線で値踏みし、貴族としての声音で、犬に命じてくる。
其処に犬を「その気にさせる」ような空気はまるで無いのだが。…それでも。家の為、今現在の飼い主の為、という言い草をされてしまうと。
決して上役に確認した訳ではないが――断れなくなってしまうではないか。
狡いとは思うが、この場合当然ではあるのだろう、男の命に。軽く髪を掻き上げ、その手指の影で一つだけ、溜息を吐いてから。

――スツール毎、男の方へと向き直った。
片方の手を胸元に、視線を伏し頭を下げてみせる、そんな姿勢のまま。

「そういう事なら、そうだ な、……謹んで。お世話をさせていただきます。 ――然るべき場所までお供しますよ、ストルム様」

さらりと相手の家名を口にしてみせた。最初の露骨な態度の変化も然り――どうやら犬の方も。相手に見覚えが有ったのだろう。
但し、実際に面識が有る等という事ではなく。単純に…男の凶状を。貴族達の噂として、聞き及んでいたという所。

バーンハルド・ストルム > 紳士的な態度で迫り、口説き、合意の元で寝所へ連れ込む──そういうことも、きっと、出来ない訳ではないのだろう。
だが、そうしなかった。ミレー族の相手に対し、そういう経緯を踏もうと考えない、これもきっと貴族的な発想。
故に〝誘い文句〟はほぼ脅迫と同義であるし、互いへの愛情なぞ其処には生まれようもないのだが──

「……ふん。目端が利く。いいや、この場合は〝鼻が利く〟というのか?」

互いに名乗りもせぬまま、だが自分の素性を知っていた──弁えていた相手に対し、興が乗ったのだろう。
また鼻を鳴らしたが、其処に滲む感情は不満ではなく、嗜虐心由来の愉悦が故。
立ち上がり、貴女の腕を掴もうとする。大きく、強い、騎士の手だ。
或いは〝反逆者〟の家を取り潰す際、武力抵抗などあれば、それを摘み取る程度の働きはしたのやもしれない。
その手が貴女の腕を引き、どこかへ運んでいこうとするだろう。

「行くぞ。……店主、請求はそこへ寄越せ」

カウンター向こうで息を潜めていた店主へ、顎で示すように要求する。先程の走り書きにはおそらく、屋敷の所在でも記していたのだろう。
かくして少女は酒場の喧騒から連れ攫われる──。