2025/04/11 のログ
グスタフ > 灰皿に押し付けて薬を潰すと、そのままお代を置いて出ていく。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からグスタフさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 大酒場」にメイラ・ダンタリオさんが現れました。
メイラ・ダンタリオ >  
 王都マグメール 大酒場
 天候は夜 夕餉と酒で満ちた場所。

 その日も酒場は大いに賑わっていた。
 冒険者の帰還 船乗り 娼婦
 色々な立場がいる中で、二階建ての大型木造建築のそこは一回の中央が今大騒ぎに発展しようとしていた。
 原因は、とある一団の諍い。


   「―――(アグッ はぐっ  グビッ)


 メイラは食事 目の前の肉質に関係なく作れる、挽肉をツナギを混ぜて焼くそれ
 腸詰と同じ要領でくず肉を美味くさせるステーキを攻略する作業に取り組み続けている。
 3皿目といったところだろうか、樽ジョッキからはエールだろうか 通常の白や黒とは違う黄金色のエール。
 そんな中で、開いた中央で装備を身に着けているわけじゃない
 軽装や動きやすい鎧を身に着ける前のようないで立ちの者ら。

 拳と蹴りが主。
 武器を使用していないそれは互いに挑発しあい、周囲が止める野次も聞こえてはいない。
 メイラが切り込む為にいる轡を並べている者達。
 いわば同じ一段に所属する者らの喧嘩事。

 メイラはそれを最初スルーしているのは、小さく争う内はいいもの。
 不平不満を飲み込むよりも、こうして小さな争いの内にすっきりさせるほうがいいとしているせい。
 元は二名 群れと群れの喧嘩じゃない。
 見世物同然に行われるそれと、目の前で切り分けて口に運び続けるハンバウグ・ボール・ステーキが酒場の状況だ。
 
 

ご案内:「王都マグメール 平民地区 大酒場」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」にユーミルさんが現れました。
ユーミル > 採取してきた素材をギルド員に渡すと、彼はそれを一度奥へと運び、
秤で量と材質を検分すべく引っ込んでいった。
それを待つのは、小麦色の肌の若い娘だ。
はっきりした目鼻立ち、銀雑じりの翠白の猫っ毛と、同色の長い睫毛に縁取られた薄色の双眸。
きょろきょろと周囲を窺い乍らにギルド員が戻るのを待っていれば、
程なくして職員は報酬の入った袋を片手に戻り。

「―――… ん。」

ギルド員の言葉に、したり顔で短く頷くだけなのは、言葉が得意でないからだ。
そして受領のサインを求められてそれっぽく蚯蚓を描くのも、
文盲がバレない程度に、書き慣れぬ文字をそれっぽく見せるため。

報酬を受けとって、皮袋を腰のベルトポーチに仕舞ってから。
事を成し遂げた安堵感からか、漸く少女は少しだけギルド員に話し掛けることをした。
指差すのは併設の酒場。

「アッチ、 食べる。――…できる?」

『ああ、できるよ。』そう返されて、ほっとした表情を短く浮かべたなら、踵を返して酒場へと向かう。
夜は余りに人が多く酒の匂いに閉口して立ち入る気になれなかったけど、ずっと興味のあった場所。
内装に、眼差しを彷徨わせて。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」にシルドさんが現れました。
シルド > 「お、見ない顔だね。いらっしゃい。」

昼間は夜の喧騒とは別物で、静かな店内。
足を踏み入れた少女の他には客が疎らで、新たな客に本日のコックは愛想のいい笑顔を向ける。
――美人だなぁ、と幸せをかみしめつつも、少女にコイコイと手招き。
もし苦手ではないなら、古い大樹を切り出して作られた木製のコの字型カウンター、そこに併設される同じような古木の椅子に布製のクッションが敷かれた席へ案内しようとしていた。

「食事かい?お酒はまだ入荷されてないんだ。
それ以外なら大体作れるぜ。」

ギルドの中に漂う匂いとは異なり、そこは古い木を使ったテーブルなどが多いため、森の様な香り。フェトンチッドを思わせる古木の精神を落ち着かせようとする香りが出迎える。
カウンターの中には幾つかの調理器具がならび、さらに壁際を見ると名のはせた冒険者の肖像画等が並んでいた。

ユーミル > 午后の陽射しの白んだ光が差し込む店内に人は少なく、ほっとする。
とはいえ…興味から脚を踏み入れたはいいものの――少し、悩む。
最近利用を覚えて行くことが増えた、平民地区の裏路地にある格安食堂と同じ利用法で良いのだろうか。
きょろ、と不審を覚えられぬ程度に、様子を窺うように見回していれば、掛けられた声。
娘は細い頚を巡らせて、淡色の瞳を、ぱち、と瞬かせた。
人好きのする気安い笑顔に招かれれば、これ幸いとショートブーツの先を其方に向け。

「ん、そう。食事。 ………」

案内された席へ座る。使い込まれた古樹の艶光るカウンターに腕を掛けて、壁に掛けたメニューを見るものの。
読めない。暫く無言。…難しい顔を、してから、コックの男へ向き直り。

「スープと、…………………… オイシイ、肉のやつ。」

何処の店にも必ず何かしらはあるだろうスープと、それっぽく適当を告げた。

シルド > スープは確かにあるが一応種類もある。
難しい顔と無言の時間を考えると、おまかせ、でいいのだろうか?
ふぅむ、と考えるように今の食材を見つつ――スープは作り置きがある。
肉は彼女の口に合う物の方が望ましいだろう。アルバイトにはアルバイトなりのプライドもあった。
お任せで美味しくないモノを出すわけにもいかない。
メニューの方に興味がないという訳でもないのだろう。

「お、じゃぁお嬢ちゃん。どのスープが一番口に合うか教えてくれるか?
肉も種類はあるんだが、好みの味を知った方がイイモノを出せるからよ。」

と。
少女の目の前に小さな、薄い皿が数枚並ぶ。
それらにはコンソメベースの舌を温めつつ、肉の野趣あふれる味が広がるスープ、魚介類をつかったクセがなく、僅かなトロミは海藻を使った塩ベースのスープ。香辛料を多めに利用した薄く赤い色合いのスパイシースープに肉の端材を浮かべたものを広げる。

「これはタダでいいからよ、どれがおいしかったか教えてくれ。
仕事上がりかい?」

肉の在庫を見るように床下のスペースを覗き見る。
牛の良い所が残っている。彼女のスープの好みを聞いてから調理法を選ぶとしよう。

ユーミル > ヨシ。注文までをこなせた。
手許にメニューがあれば適当な価格帯のものを指差して誤魔化すけど、
黒板に書かれていたりするとそうはいかないので一大ミッションだ。
あとは出てくるモノを食べればいいだけ――…と思っていたところに掛けられた声は全くの予想外。
大きく表情を変えなかった、その薄色の硝子玉みたいな瞳が、きょん、と丸くなり。
並べられた数枚の小さな皿と、カウンター向こうの男の顔を見比べて。

「??????

 コレ????飲んでイイ? 全部???」

ぱたぱた。真白の睫毛揺らしてまた数度瞬いてから神妙な顔。
指が小さな皿を持ち上げて、傾けながらに唇を寄せて、 ずず。 啜る。
口に含んで、ぱちぱち。また瞬いて。瞳がくるりと味わいを吟味するように動き。
も一枚の皿も傾け、口に含んで… 

「… !」

全く味が違うことに無言で驚く。
それを作ったのだろう男へと視線短く向けて、また双眸が物言いたげに瞬いた。
そして最後の一皿も。ずず、 口をつけて、指先で肉の端切れを摘まんで口に放り込んだなら。
ぷは。と満足の息を短く漏らし。

「…っ…赤いの、スキ! ピリピリして、――…不思議なにおいする。スキ。
 でも、どれもオイシイ。 いっぱい、イロイロ作るの、凄い。」

少し、表情が綻んだ。頷いて。

「ン。クエスト、報酬貰ったヨ。 ココ、一度入ってみたかった、から。」

シルド > 「飲んでいい、全部飲んでくれ。」

珍しく純粋そうな子供にも見える相手の反応はくすぐったくもある。
そうして示されたのは赤く、香辛料の多い薄紅色の絵スープが一番の好みと聞くと、肉は干し肉ではなく生の部分を切り分けていく。
ピリピリするのが好みなら、肉を2種に分けて調理する方が良いだろう。
1つ目は塩を多く、けれど噛みしめていくと段々とピリ辛の肉汁が出てくるように辛さは弱く、けれど香り高いタレに漬け込む。

2つ目はより辛みを強くした痺れるような辛さの粒香辛料がすりこまれ、直火で一気に焼き上げる事で表面だけはしっかり固さがあるが、噛みしめると中の半生の部分から肉汁があふれてくるように調整する。

「あいよ、じゃぁスパイシーステーキ2種にスモーキースパイクスープにしとくか。
そっか、何時もは素通りしてたのか。じゃぁ今後はもう少し立ち寄ってくれたらおじさんも、他の人もうれしくなると思うぜ。」

初めてならサービスだ。
辛いモノばかりでは舌が痺れるだろうから、少し脂肪が含まれたヨーグルトに柑橘のジャムを溶かして蜂蜜を少しだけ混ぜたものを出す。

「この飲み物は、初めて来てくれた人へのサービスだ。
おぉクエスト終わりか。じゃぁしばらく滞在するのかい?
えぇっと……あ、俺はシルドっていうんだ。名前、教えてくれるかい?」

表情がほころんでいる少女だが、言葉の区切り方が独特だ。
最初の反応を見るに、識字が少し難しいのかもしれない。
言葉を少しゆっくりに発音し、俺、とかの場合には自分の顔を指さす。
もしかしてこの娘、純情どころか純粋無垢なのではという感想も抱いてしまう。

「はっはっは!おじさんはこう見えても料理は出来るんだ。
どれも美味しいって言ってくれたのはうれしいねぇ。」

ユーミル > 待っている間、思わず調理する男の手許を眺めてしまう。
手際の良い動きは見飽きず、頬杖ついたまま、ついつい、じぃっと…真剣に。

「ぁ。 ソレ。フォルペッパーの実だ。 囓ると辛いヤツ。」

知らない材料の中に森で自生するのをよく見掛ける木の実があった。
フォレストペッパー、森胡椒と言われる赤くて艶やかな粒胡椒。
森の動物が好まず、更に枝に棘があるので、森に棲む集落では獣除けによく植える低木だ。
こんなところで料理に使っていたなんて、と少女は一つ学びを得た。

「スモーキースパィ………  ッ ン。それ。
 とてもスープオイシイ、から…たぶんまた、来ると、思う。」

反芻しようとして舌が縺れたので諦めて、したり顔で頷いてみせる。
男の嫌味無い気さくさも、場に不慣れな娘の気に入ったので。
暫し黙って、男の手許を観察する時間が続く。そうしていればまたもサービス。
ことん。 置かれたドリンクに、日の翳った猫のよう、少女の瞳が丸くなる。
今度は、自然に表情が喜色を浮かべ。

「アリガト。 …名前、ユーミルっていう。
 ユーミル、王都のコト知らない、から。
 暫くココに住んで、ギルドで依頼請けたり、色々、ベンキョウしたりする、よ。

 オマエは――…… シルドは、いつもココ、いる?」

問いながら、飲み物を口に含む。オイシイ。…無言で、づづづ。啜り。

シルド > 「あぁ、齧ると辛いが中々クセになっちまう辛味でな。
オジサンみたいな男でも、どんな人間でも受け入れられるように工夫はしてみたんだ。
最近は治安も良くないし、もし森のクエスト受けた時はコイツを持ち帰ってくれば良い小銭稼ぎにもなるぜ。」

フォルペッパー。通称だろうか、正しくはフォレストペッパーだが胡椒の部分があっているので話が通じた。
クエストついでに集めてくれば、そこそこいい金額にはなる。
オイシイ、という言葉に頬を緩めたのは素直に男にとっても嬉しい言葉だからだ。
火の上で肉をひっくり返し、余熱を帯びた溶岩皿で寝かせるかあ俵、液体に漬け込んだ方の肉はしっかりと焼き色を付けながら追加のタレを塗り込んでいく。
辛味と肉汁が逃げないようにするための工夫。
また表面のソースに焦げ目をあえて付ける事で香りと味を1枚の肉の中で変化を楽しめるようにする、という目論見。

「お、嬉しい事いってくれるね。ユーミル。ちゃん?
おじさんは何時もではないかなぁ。バイト、あぁ、えぇとクエストみたいなものを毎日達成して、違うクエスト受けるようなモノだから。
勉強かい、偉いねぇ。――じゃぁ今度おじさんと王都の勉強するかい?」

なんていう下心のある冗談も忘れない。そうこうしていると肉も焼き上がり、スープもしっかりと熱を含んでいる。
クエスト明けなら少し疲れもあるだろう。スープの中に辛さを引き立たせる程度の酸味あるハーブを加えて最後の一工夫を終えた。
どん、と大人の握りこぶし2つ分くらいのお肉の塊が器の上に豪快に盛られ。
その横に野菜のソテーとクセのないイモの蒸かしたもの。
パンは――注文になかったが、なぜかついてきた。
ユーミルの様な特徴あるかわいらしい、美人だけのお得なサービス。

「今度はもっと違うスープとかも準備しておくからな。
ま、都合よく会えたらだが。」

いかんせんその日暮らしなのだ。
このバイトは割も良く、目の前の少女との出会いの様な出会いや会話があるから引き受けているが、それだけ競争倍率も高い。
日によって違う人間がいる事も多いだろう。
だから、ちょっとした奇跡に感謝をするように最後のスープ器を置くとウィンク――不器用なそれを見せるのだった。

「ほい、出来上がり。熱いから火傷しないようにな。」

ユーミル > 「フォルペッパー、ユーミル、よく眠いとき囓る、してた。
 舌、ビリビリ。目が醒める。――――…それしか使えない、思ってた、ケド。
 …売れる、知らなかったから。イイコトきいた。」

にへ、と娘が相好崩して笑えば、口端から小さな八重歯もとい犬歯が覗く。
あの小さな実がこんなに料理を美味しくするなんて興味深い。
更に、普段炙るか似るかしかしてこなかった娘には、男の調理法もまるで魔法か錬金術。
みるみるとじゅうじゅうと香ばしい匂いを立ち籠めさせゆけば、小鼻が小さくひくひくと動き。

「ふぅン。 また次の依頼帰りにココきたら、スープ飲める、思ったケド…いない、かも?
 ――――…?  王都のベンキョウ? したい!
 ユーミル、いっぱい知らないから――…シルド教えてくれるしたら、助かるヨ。」

男の発した冗談を、少女は冗談と受けとらなかった。ぱ、と表情明るくするのは、
座学がとことん苦手で学院通いをサボっているがゆえ。
王都の知識にしても学びを得られる程の知り合いもいないから、思わずに表情輝かせてしまった。
そんな表情の輝きを一層に倍増しにするのは、出てきた料理の数々だ。
先程賞味した赤いスパイシーなスープと、先程迄魅惑の音色を響かせていた大きな熱々塊肉、
ついでに添え野菜と、ふっくらパンのおまけつき。
これでもかと鎮座したフルコースに、腹ペコの表情がきらきらと輝かぬ筈が無い。
がば、とまた男へ、娘の真ん丸瞳が向く。心なしか頬まで紅潮させて。

「御馳走、すごい! 豪華――…いっぱい、オイシそう!
 ぇ、と。 ――――… ンンッ。 ? ――…ぃた、ダキ、ます?」

何処で習ったか、不慣れに過ぎる食前の挨拶を疑問符付きでしてみせれば、
スプーンでスープを掬って一口。ウンウン、頷いて肉を、はふりと薄い唇がかぶりつき。
肉汁のグロスに艶びかせながら、豪快に噛んでちぎり、咀嚼した。もむ、もむ、… ごくん。

「~~~~~~!」

ウンウン。また頷く。オイシイ、の意。

シルド > 「生で齧るより使い道が多いからなぁ。
料理やってそうな店にこっそり持ち込むと良いぜ。
召し上がれ。クエスト成功おめでとさん!これからも贔屓にな。」

表情が宝石よりも輝いて見える。
純粋なむずめだが、その体が美味しそうなのは見逃していない。
だから勉強の話に乗り気になると嬉しそうな笑みを浮かべるのだった。
ちゃんと料理には腕と、美味しいと言ってくれた相手への感謝を込めて、何時もよりほんの少しだけ手間をかけた。
頷く少女の顔から料理の感想を受け取ると、にぃ、と男もまた満面の笑みを浮かべてしまう。
笑顔というのは向けられることで相手の笑顔を引き出すものなのだ。食べる事の邪魔になってもいけない。
お腹がすいているのだろうというのが伝わる食べっぷり、目を丸くするよりもおいしく食べてくれている、という気持ちの良い食いっぷりだ。

ちょっとだけ付けたサービスの分の残さず食べてくれるに違いない。

「おいしそうに食べてくれるなぁ。
こういう仕事してるとよ、ユーミルみたいに美味しそうに食べてくれる客って嬉しいんだよな。
見てるだけで心がポカポカしてくる。」

肉の焼き加減は2種類でそれぞれ違う。
どっちが好みかは―――食べる勢いが素晴らしすぎてわからない。
マナーとかそういう物を口にする者もいない。
好きなように、好きな順番で食べていい場所なのだ。

「お、じゃぁ勉強の時には差し入れ――あ、美味しいっていってくれそうな食べ物もっていくか。
どのあたりを宿にしてんだ?」

ユーミル > 男にまた出遭えたら、彼に渡すのもいいのかも、と娘はこっそり思う。
またこの美味しいスープや肉を、調理してくれるかもしれない、と。
そんな下心が湧いてしまう程度には、男の調理した品々は各々が魅力の塊だった。

スープはこれまで知らなかった複雑妙味な香りがして、身体の芯がポカポカとしてくる。
舌がひりひりと熱いのに、口に運ぶのをやめられない中毒性があるし、
肉は言わずもがなの絶品さ。思わず行儀悪くも大口で、かぶりついてしまう。
咀嚼すれば肉は柔らかくジューシーで、片やもうひとつの肉の塊だって、こっちは香ばしくて野性味がある味。
皿に残った肉汁までも舐め…る代わりに、パンで拭って綺麗に食べた。
時々野菜やドリンクで、脂でつやつやと濡れた唇を潤して。そしたならまた、もむもむと咀嚼をはじめる。

「ゥん…… んむ?  ン、… ぷ、は。 宿屋。…アッチ、道具屋の道曲がって、奥。…ワカる?
 宿の馬、世話する、かわり。 …屋根裏、借りて… ふ。」

語尾が若干おかしくなったのは、スープのせたスプーンを口に入れたから。
皿はみるみると量を減らし、空になってゆく。小柄に見合わぬ豪快な食べっぷりを披露して。

「 ふ、 ぁ。 … スゴく、スゴく、オイシかった!」

――完・食。椅子の背凭れに背を落ち着ければ、
細く括れた滑らかを晒す、剥き出しの小麦色の腹部だって、
普段の括れから一変、ぽこりとちいさく膨れて見える程だ。
食べた食べた、とばかり片手がお腹をさすり。ほぅ。息を抜き。

「ベンキョウのとき、シルドの料理食べれる、そしたらユーミル、…とても、嬉し。」

シルド > 「良い食べっぷりだったぜ!
見ていて気持ちよくなるし、その感想もらえりゃこっちも嬉しくなるなぁ。
道具屋の道曲がった奥……の馬付きの宿か。あぁ、多分俺行ったことあるわ。」

健康的な小麦色の肌。ぽっこりと膨れたお腹に満足そうな息の音。
それらは料理した人間にとっては最高のご褒美でもある。
食べ終えた後の器をカウンターから洗い籠に移動させると、カウンターのテーブルの上に肘をつくようにしてじっと小柄の女性の満足そうな笑顔を見て、やっぱり自分も笑顔になってしまうのだ。

アルバイトをしているときは余計なことはしない。それは男の信条の一つ。
逆に言えばアルバイトじゃない時――は、ケダモノでもあるのだが。

「甘いモノよりはちょっと刺激的な味が好みみたいだからな。
ユーミルのトコロに行くときは覚えておくとするか。
しかし、ここ最近の冒険者でも珍しい気持ちよく食い切ってくれたからなぁ。
じゃ、代金は――あ――10ゴルドな。」

料金は少し安くした。あの宿屋を使っていた事、料理への食いつき具合からの同情――というのではなく、これだけ気持ちよく食べてくれた上に、こっちを笑顔にしてくれた礼も混ざっている。
それに冒険者ギルドを利用している冒険者はちゃんと腹いっぱい食事をして元気に冒険に行くべきでもあるのだ。
嫌がらないなら、残ってる片方の腕を伸ばす。日焼けを少ししている男の掌が、彼女の頭をぽん、ぽんと撫でようとしていた。

「そうだな。勉強の時はもうちょっと腕によりをかけるか。
勉強しつつ、お腹も満足させつつな。
料理作る方からすると、そんな風に食べてくれて、美味しかったっていってくれるユーミルを見てると嬉しいぞ。
宿屋にふらっと顔出しすることもあるかもしれねぇが、そんときに偶然が重なれば勉強しような。」

もちろん勉強はいろいろなことを指してもいる。
王都の事は色々教え甲斐がありそうな少女だ。知らないことも多いだろうし――もしかすれば言葉に疎い部分や文化を嘯けばころっと騙されてくれるかもしれない。

ユーミル > 「オイシかた。どれも、全部。 …お腹、イッパイ。
 ン。ソコ。…行ったコト、ある? ユーミル、ソコいるヨ。」

すっかり満腹だ。出された料理をしっかり綺麗に平らげて、御満悦に娘は双眸を細める。
作った男も何処となしか嬉しそうで、それもまたとてもいいと思う。
よく行く安食堂は、きりきり舞いで女将と店主が働いていて、話す暇すらないものだから。
それもまた少女のような不慣れには気楽でいいのだけど。

「――――10ゴルド? ――…???? たくさん食べたのに、ソレだけでイイ??」

金銭感覚の薄い娘でさえ、疑う程度の価格提示に吃驚した表情。
頭に伸びてくる掌に、ぽむぽむと気安く撫でられ、少しばかり擽ったそうな表情をしながら、
決してたんまり重いとは言い難い、それでも潤った鞣し革の袋から、硬貨を取り出せば
値を疑いながらカウンタに、ぺちりとそれを置く。
それにしても――本当に食べた。たらふく食べた。
これからもうひと働きクエストを探しにギルド掲示板に寄ってもいいくらいだ。
心なしか依頼達成後の疲労すらも和らいで、――娘が、ひょい、と身軽に椅子を降りた。

「ン。 ユーミル、楽しみにしてる。
 じゃ、――…御馳走サマ。」

勉強だって楽しみだし、また料理を味わえる日が今から楽しみだ。
男の思惑はさておき、――…今の娘の知る処では無く。
言葉は少ないけれど、次の邂逅を願うのは、その表情からきっと伝わっていればいいのだけども。
探索後の倦怠を感じさせない軽やかさで、娘は酒場を後にしてゆき――。

シルド > 「毎度あり!良いんだよ、10ゴルドって言ったら10ゴルド。
それ以上はびた一文受け取らんぞ。
っと、気を付けて行けよ!またなー。」

風の様に走り去る娘の姿。にま~っとした笑顔は頭を撫でた分の心地よさもあるが、やっぱりその感情表現が直球的だったのは見ていて気持ちよい。
走り去る少女が置いていった10ゴルドは自分の財布に。その代わりに適正価格のゴルドはお店のレジに戻しておく。
さて、自分はもう少しアルバイトだが――交代要員の男が早く来たことで、男もまた自由時間を手に入れるのだった。

「んじゃぁ、ユーミルの好きそうな物を見繕っておくかぁ。」

そんな声を出しつつ、男が向かうのは夜市の方向。
娘の表情を思い出すと、どことなく頬が緩む、そんな男がこの夜は街をうろつくのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からシルドさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区 冒険者ギルド」からユーミルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「うぅ……」

 宿場や酒場などの飲食店が軒を連ねる通りの一つで、苦し気に呻きながらふらふらとした足取りで進む女が一人。
 昼間の静かな顔とは異なり繁華街では今が盛りとばかりにどこも盛況で、ここ一帯もがやがやと賑わいを見せていた。
 そんな喧噪から少し外れるように道端でふらついていた歩はとうとう止まり。腰を屈して蹲ると、額を抑えて唸った。

「………わ、悪酔い……した……」

 今日は悪阻が酷いという酒場の奥さんを診に呼ばれたのだが。その際奥さんが給仕に入れず人手が足りないと豪く忙しそうにしていたのでお節介心を起こし落ち着くまでと簡単な調理や給仕を手伝っていたのだが。
 その際宵の口ですでにべろべろになった酔客に酒を勧められ、空気を悪くしそうで断り切れず、少しだけといただいたのが失敗。
 その酒が甘く飲み口は軽かったのに随分強い酒だったらしく、一杯飲んだだけで思ったより回ってしまい。どうにか給仕を終え家路につく途中で――ダウン。

 奥で休んでいくかと店主に訊かれたものの、その時点ではどうにか家までは大丈夫かと想定し遠慮して帰路についたものの。
 途中で足元が覚束かなくなってきて、ふらふらと膝が崩れてしまい、どうにか歩き出したところで転倒しかねない、と道の隅に小さくまとまって唸る情けないひと時。

「ぅー……最近呑んでなかったからなあ……キたぁ……きつい…………
 み、水……お水ほし……」

ティアフェル >  しばらく砂漠で遭難したかのように水分不足で水水と蹲っていたが。
 雨でも降らない限り水が唐突に齎されるはずもないし雨水で凌ぐなんて街中でちょっとサバイバル過ぎる。
 
 水分補給は適わずとも少し休んでいれば落ち着いてきて、千鳥足気味でも歩けるようになればどうにか帰途に就くのだった。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からティアフェルさんが去りました。