2024/12/30 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区/薬酒バー」にルーベルさんが現れました。
■ルーベル > 富裕地区にもほど近い、平民地区の裏路地。
ひっそりと目立たぬよう看板の出ている酒場は入り口は簡素。
中に入っても、表の様子からすればやや上等な内装であるくらいで他の酒場と変わりはない。
その実、密やかに強い薬効のある飲み物を提供しており、普通の酒で酔う者に混じって、ひっそりとその飲み物を愉しんでいる者たちがいる。
何も知らずに入り込んだ者の中で、不幸にも常連であったり、店の主人に目を付けられた者はその一見薫り高い蒸留酒のような酒精の匂いをさせる飲み物薦められ、その効果で深い酩酊、微睡みのような姿を晒しては食い物にされることもある。
(まぁ、術効交じりの魔術酒とでもいうようなモノだからのぅ)
店で提供されている一部の飲み物は薬酒や、術酒と呼ばれる薬効染みた効果を液体に魔力込めて発動させるもの。うまくその術効を中和しながら飲めば、それこそ美味な酒になるという捻くれた代物で。その術式も巧みに隠されており、中年魔導士貴族は酒もさながら術の解析目的に時折訪れている。
バーテンの隣からにやにやこちらを眺める、昔馴染みの隠居魔術師のなんとも楽し気な笑み。小賢しくも来るたび微細に術式弄ってある。それがまた、術酒の旨味、効能を変えて常連を作っているのだから、猶更小憎たらしいもの。
一口含んではゆっくり飲み込み解析を試みる。複雑に練り込まれたそれを味わいながらに、うむむと眉根を逸らせ、一度に量り切るは難しいかと、一息ついて店内を見回してみたりもして。
■ルーベル > その日も術酒の解析は中途で終わる。素材と術の組成のさわりまでだけは暴いて。
けれどそれだけなら及ばぬに等しく。「また来る」「いつでも」と言葉を交わしては店を後に…。
ご案内:「王都マグメール 平民地区/薬酒バー」からルーベルさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に影時さんが現れました。
■影時 > 冬が深まるにつれて、冒険者ギルドに貼りだされる依頼の内容にある程度の変化が出るらしい。
一部の冒険者たちが尤もらしく語らうことでもあるが、需要という意味で考えるなら、的外れなことではない。
例えば雪が積もり、街道がふさがれることがあれば、少しでも早く復旧させるために人出が要る。
単純な腕力から、炎や熱を操る魔法が使えるものであれば、色々と駆り出されること疑いない。
冬を越すために餌を掻き集めきれなかった猛獣、魔獣が人里近くに出没することだってありうる。
――だが、そのための人手が足りないということも起こりうる季節でもある。
移動の手間、防寒のための手間、そもそもの準備が足りない者だと、街で食い扶持を稼ぐのが精一杯ということもありうる。
自然環境に左右されがちな仕事が季節に応じて、報酬が加算される――なんて夢のようなことはそうない。
「……おぅい、清算を頼まァ」
夜を迎えた王都の平民地区、酒場と隣接した冒険者ギルドの扉を開く男もまたその現実を身をもって知っている。
雪が降り積もる街道を進む隊商に帯同し、護衛する仕事もまた、この時期だと切った張った以外の雑務を任されうる。
仕事を終え、塒に戻って身なりを整えた後にギルドを訪れる男の顔に過る疲労の陰も、そのためのものだ。
横手に依頼が張り出される掲示板を横目に進み、受付に依頼者たる商人から受け取った書類を提出する。
其れと引き換えに貰える報酬額は、依頼を受諾した際のものと変わりはない。
約定通りとはいえ、もう少し欲しいものはあるが、仕方がない。仕事とはそういうものだ。
苦笑を滲ませ、忝いと目礼しながら支払われる報酬額の貨幣を袋に納め、羽織の袖の中に突っ込んで。
「……――何か食うか。お前らも何か食うかね。ン?」
隣接する酒場の方に歩みつつ、首に巻いた襟巻を見遣れば、蠢動するように黒い布が震える。
ぽこ、ぽこっと音が出そうな仕草で顔を出すのは、二匹の小さな獣たち。
耳と尻尾を揺らし、賛意を示すような素振りを横目にしながら、空いた席に向かう。
■影時 > 世の中は年の瀬、と呼べる時期であるが、遣ること自体はそう大きく変わらない。
家庭教師の仕事も王立コクマー・ラジエル学院の教師としての仕事も遣り、空き時間はこうした仕事もまたこなす。
学院の生徒たちが長めの休日に入るなら、冒険者としての活動にも重きを置く。
だが、冬は何かと困る。当てもないお宝狙いでもやるなら、迷宮に潜るのも悪くはない。
シェンヤンの辺りにまで行商宜しく足を延ばし、八卦山に挑むのも良いが、あれは宝探しとするには趣を意図する。
(……誰も棲まなくなった仙洞を漁るのも悪くは無いが、運良く奥義書とかが見つかるモンでも無ぇしなあ)
いよいよ、悪仙やら妖仙に喧嘩を売りに行くのも一興か。
そんなことを思っていれば、ぢぃと肩上で二匹の毛玉達が飼い主の顔を見つめ、やれやれと言いたげな素振りで顔を振る。
まーた何か面倒なことを考えているでやんすねー……、とか言ったところであろうか。全く否定し難い。
「おうぃ、今日のおすすめ一つ。それと麦酒とチーズをくれ。……と、小皿で水もくれると有難ぇ」
腰に差した刀を鞘ごと外し、丁度見かけた空いたテーブルの一つに座す。
卓に刀を立てかけ、ウェイトレスを呼び止めて注文を通そう。
見かけた品書きにある今日のおすすめは、腸詰を添えた野菜たっぷりの牛肉のシチュー、パンの組み合わせだ。
身体を温めるに良さそうなものを、といった具合だろう。喰い足りないなら肉でも芋でも買い足せば良い。
注文内容に首を傾げられれば、テーブルの上にぴょいと飛び移るシマリスとモモンガが尻尾を揺らす。
チーズと水は、彼らの分である。嗚呼、と悟ったらしい姿が酒場の奥に向かう姿を見送り、この時間も絶えぬ喧噪を聴く。