2024/08/25 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にミケリアさんが現れました。
■ミケリア > 「ご一緒に果実もいかがでしょうか~?」
そんな声とともに誰かが隣の席へ腰を下ろした。
見れば、整った美貌の緑髪の女。先の尖った長い耳からしてエルフだろうか。
「栄養は野菜や果物からも取ると体に良いですよぉ。
丁度先程、森で採取した新鮮な果実を厨房に納品して来たところですので」
おだやかに微笑んでいるが、どうやら依頼から帰って来たばかりらしい。
その割りには武器も鎧も身に着けておらず、唯一着ている薄手のワンピースも大して汚れていないが。
おそらく、後衛の魔法使いか癒し手なのだろう。
自分は酒場の利用者らしく酒杯を片手に、豪快な食べっぷりを微笑ましく眺めていた。
■シロナ > 「ぇ、果物……?」
急な問いかけに、困惑を隠すことなく目を向ける。
果物は甘いからデザート、と言う認識があるから。
何と言うか、デザートを沢山食べて、筋肉着くのかと言うのがシロナの感想。
甘い物が好きかどうかで言えば、大好きなのだけど。
「えぇと、お姉さんは……八百屋さんの人?」
彼女の言い分を聞きながら連想したのは、実家が商店だからである。
とは言え、シロナの鼻は、人竜の鼻は、彼女が人間ではないと、嗅ぎ分ける。
彼女の全身から甘い、花の香りがするから。
人間の匂い、という訳でもないのだ。
でも、酒を飲んでいる様子の彼女に、取りあえず首を傾げつつ問いかける。
野菜を食べても、筋肉は付かないよなーと言う考えのもとに。
■ミケリア > 「いえいえ、八百屋ではなく冒険者……というわけでもないのですが~。
今日はその真似事をしておりました」
おっとりと間延びした口調に、人懐っこい朗らかな笑み。
そしてあなたが感じ取った通り、ふわりと漂う花のような甘い香り。
……嗅いだ者を惑わし、乱れさせる、樹木精霊の蜜香。
竜と淫魔の血を継ぐ少女であれば退けることは容易だろうが。
一般人にとってはなかなかの劇物だ。
「普段は施療院で癒し手をしております、ミケリアと申します」
本職が冒険者でないとしても、ヒーラー不在のパーティに癒し手や聖職者が
臨時で参入することは珍しくない。おそらくそういった手合いだろう。
■シロナ > 「あぁ、そうだったんだ?」
のんびりした声音、朗らかな様子の彼女。
人間の臭いではない彼女の体臭を持つ彼女は、八百屋では無く御同業―――という訳でもなく。
甘い香りに、矢張り、人では無いのだろうと認識はする、
淫魔の部分があるからこそ、認識が出来るのだろう。
周りを見ると、周りの女性が恨めしそうに、羨ましそうに見ているのはそう言う事なのだろう。
幸か不幸か、彼女の臭いに、フェロモンに抵抗を出来ているという状態らしい。
「施術員……あぁ、妹が。」
たしか、妹のリーナが施術院で、修行中、だったか。
何処の、とは聞いてはいないが、その言葉で妹の同業と言う認識は出来た。
ただただ、彼女の臭いは……。
「アタシはシロナ、だよ。
シロナ・トゥルネソル。
もしかしておねーさん………お誘い、してる感じ?」
桜色の唇を引き上げながら問いかける。
トゥルネソルと言えば、一応この辺りでは富豪に位置する商家。
何せ、ダイラスや、ヤルダバオート、バフートにさえ、支店を持つ店だ。
そう言う意味では、お嬢様であるシロナ。
商売人としては、お近づきになりたいだろう存在。
それとは別に、性的なお誘い、を目的とした声掛けもあるだろうし、さて、何方かな、と。
■ミケリア > 「おや、ご家族も癒し手の方でしたか」
自分の営む施療院はたまに来てくれるお手伝いの少女が1人いるだけなので、
同僚ということはないが。他の院の応援に行くこともあるので、
どこかで顔を合わせているのかも知れない。
そんな風に考えていたが……少女の言葉に、目を瞬かせた。
「シロナさん、ですね。ですが、お誘い……と、言いますとー……?
……ああ、もしかして、匂いが漏れておりましたか?
申し訳ありません。純粋にお話を、と思ったのですが」
どうやら無意識だったらしい。なんとも危うい。
けれど……。
「まあ、あわよくば、という思いがあったことは否定致しませんが~」
にっこりと、まるで邪気のない笑顔で、下心満載の台詞を宣うのだった。
■シロナ > 「どこ、とは聞いてないけれど。
施療院でヒーラーの修行をしてるの。
リーナ、って子、アタシに似ないでとてもいい子なの。
もし、出会ったら、優しくしてあげてね。」
一応、お姉ちゃんなのだ、妹の事は知っているし、判っている。
それでも、妹の幸せのために、妹の為に何かをしてあげたい、同業の人の印象をあげる。
その程度位は、手伝いはしてあげたいと思うのであった。
彼女が、師匠なのか、同業者七日までは、判り得ないので、こんな風になってしまうのは不甲斐ない所だが。
「普通に言うなら、漏れてないよ。
ただ、アタシは、人竜だから。
そう言う匂いは敏感なんだ。」
彼女はその積りでは無くて。
唯々、話をしたいだけ、らしい。
「そっか、それなら、全然歓迎だし。
それに……、したいのなら……アタシは大歓迎、よ。
でも、種を付けるのはアタシの方、アタシの、蜜壺は安くないしね。
大事な人にしか、捧げないから。
それでもいいなら、かな?」
邪気の無い彼女の笑みに対して。
シロナは下心しかない、ニンマリとした笑みを作り上げる。
お話だけで済ませたいなら、此処が引き際だよ、と伝える様に。
見た目で言うなら好みだし。
出来るなら、したいというのは、本心だし、淫魔の矜持だし。
■ミケリア > 「修行中、ですか。……ええ、もちろんですよ。
後進を導くのは先達の役目ですから~。
……ですが、その言い方ですと、まるでシロナさんが悪い子のようですよ?」
不思議そうに小首をひねる。
妹のためを思って口添えする様子は、まさに『良い姉』のように思えるが。
「ふむふむ、シロナさんは人竜でしたか。
通りで稀有な魔力を纏っているはずですねぇ。私はー……ああ」
自らも素性を明かそうとしたが、少女の言葉を聞いて考え直す。
酒場では他人の目も耳も多いことだし。
「それでは、シながら2人でお話するとしましょうか~。
私の愛を味わっていただけないのは残念ですが、
代わりにシロナさんの愛をたくさん味わわせていただけるのでしょう?」
どうやら望むところのよう。
むしろ、満足させてもらえますよね? という挑戦的な含みすら感じた。
少女が挑発に乗るつもりなら、ギルドのゲストハウスでも1部屋借りようかと立ち上がり。
■シロナ > 「そりゃ。悪い子じゃない。
だって、こんな時間に出歩いて、女の人をナンパ、してるんだし?」
ねえ?と同意を求めるように、首を傾げる彼女に問いかけて見せた。
常識的に考えれば、今頃は家で寝ている時間でもあるのだ、と。
「トゥルネソルと言う時点で、ある一定の認知は有るからね。
人竜の商人、だし。」
良くも悪くも、有名なのだ、トゥルネソルと言う一族は。
人竜の一族であり、好色であり、商人であり。
彼女が、言葉を濁す事に、突っ込む事もない。
この国では、亜人や異種族はあまりよい目では見られない、一部のエルフとか、ドワーフとかを除けば。
だからこそ、彼女は種族を、出自を言えないことに理解を示して。
「そうね。
ミケリアが、アタシの子を、産んでくれるぐらいの気概があるなら。
アタシもその気概に応えて、貴女の愛を受け止めるわ。」
彼女が、シロナと、子を結んでくれるなら。
シロナも、彼女の子を産むよと伝えて。
部屋を取ってくれるのであれば、それに任せる事に。
こっそり、代金を支払って置こう。
■ミケリア > 「うふふ、素敵な良い子ではありませんか~」
俗世に染まり切った精霊にとって、どうやらそれは『いい子』らしい。
しかし、彼女の名乗る姓には少しばかり思案を巡らせる。
王都で暮らしている以上、その姓には聞き覚えがあり。
家名を誇る様子からしても、件の商会の関係者で間違いないのだろう。
……まあ、樹木精霊にとっては、見目麗しい女性であれば出自に興味はないのだが。
ただ言葉を濁した理由をすぐに察してくれたことにだけ感謝して、酒場を後にする。
代金が支払われるのを黙認し、こちらもこっそりと食事は後で部屋に届けるよう手配しておくのだった。
「あら、それは嬉しいお言葉ですね。熱も入るというもの。
ですが……私たちはまだ出会ったばかりですから。
まずはお互いを『よく知る』ことから始めていきませんとね……?」
部屋の鍵を閉めれば、精霊のワンピースがふわりと床に落ちる。
それだけで、惜しげもなく晒される美術品のような美しい裸体。
神秘的な微笑を浮かべ、両手を広げる。今宵、この精霊の全ては、あなたの思うがまま。
■シロナ > PL:中断致します!
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からミケリアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からシロナさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にエンさんが現れました。
■エン > 昼過ぎ。青々とした空に大きな雲がゆったりと流れて強い日差しは燦々と降り注いでいる。
大通りや歓楽街の賑わいはその熱気にも負けず盛況だ。
露天や商店からの威勢の良い呼び声は雑踏の雑音を割ってよく響いていた。
そんな賑やかな場所からちょいと離れた所。
街中を幾つも走っている河川のうちでも大きめで水も清らかな類のすぐそば。
お散歩コースとしてもそれなりに人気で遊歩道になっている道を、すたすた。
お散歩中の盲が一人。
盲目。と、いっても、杖もなく足取りも危なげないからぱっと見はそうは見えないが。
「ぁーよっこいしょ」
サンドイッチを片手にもぐもぐと口を動かし歩いていたが木陰になっているベンチに腰掛ける。
手提げ鞄を広げれば氷嚢入りのそこから濡れたタオルを出してサングラスを外し顔に当てる。
「ぁ゛ー」
座るときといい。顔に濡れタオルといい。一々年寄りくさい声を上げている。見目は若いのに。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」に枢樹雨さんが現れました。
■枢樹雨 > この国にやって来て五ヶ月。
少しずつ少しずつ伸びていく、陽の昇る時間。
それが今まさにピークであることを、妖怪は知らない。
触れるため、感じるため、言葉交わすためにと霊体から実体となってみれば、じりじりと身を焼く強い日差し。
涼を求め向かった先は、涼やかな水音感じられる場所。
鬼角隠す薄布を揺らし乍ら歩くのは、人の手によって整えられた道。
あの水は冷たいだろうかと、一歩道から外れようとしたその時に、若々しい声音でありながら年寄りくさい声が耳へと届く。
ゆるりと視線を向けた先、見つけたのは木陰のベンチ。
其処に腰掛ける人の子ひとり。
河川へと向いた足先が、其方へと向きを変える。
カラコロと、整えられた道に下駄の足音が鳴る。
それが止まるのは、貴方の目の前。
他者との交流経験もまた五ヶ月の妖怪は、その場で少し腰を折り、タオルに隠れた顔をじぃ…と見つめる。
そして叶うならば、そのタオルに触れてみよう。
伸ばされた白い指先に敵意はない。
ただ、タオルで顔を覆う理由を確認しようと…。
■エン > 水の流れと水飛沫とが風や空気を冷やして歓楽街よりかは幾分も涼しい川辺りの遊歩道。
散歩や用事の道すがら、帰り道、等、人通りも大通り程ではないがそれなりにある。
多くは、靴音、そこに下駄の固く軽やかな音はやはり目立つというか耳立つというか。
……珍しいな。
と思ったし、ましてそれがこちらへとカロンとコロンとやって来るならはてとも首を傾げて。
「うん?」
タオルを退かせば瞼はぴったりと接着された様にも閉じた儘に顔が不意な来客へと向けられる。
汗と上気した肌に触れたあとだがそれでもまだまだ冷んやりとした濡れタオル。
彼女の手が触れればその冷たさと濡れた心地にふんわりとしたタオル地の感触はあるだろう。
「何か御用かな、お嬢さん。ああ、道を聞きたいなら生憎と力になれそうにないけれど……開かずでね」
触れられる前から、顔を向けるし、彼女のことを女性と解った物言いもするから盲の説得力にも欠けるのはまあ我ながら自覚するところだが。サンドイッチを包み紙にくしゃりと丸めて手提げ鞄へと押し込めばその空いた手で瞼の上をとんとんと叩いたり、軽く上に引っ張ったりして、見えてない、と仕草。
■枢樹雨 > 指先がタオルへと触れた瞬間、貴方の手が冷気残すタオルを退けてしまう。
「あ――」と、至近距離に在る貴方にしか聞こえぬであろう、小さな声。
前髪に隠れた蒼の双眸が見つけたのは、閉じられた両の瞼。
合わぬはずの視線が噛み合っている様な、不思議な感覚に首を傾ぐこととなれば、
妖怪は顔を寄せたままに、改めて貴方の顔をじぃ…と見つめ。
「見えて、いない?……それは嘘。だって、見えてる。」
貴方の言葉が、仕草が、盲目の其れであることは伝わった。
けれど違うと首を横に振った妖怪は、タオルが触れた指先を、今度は貴方の右頬へと持ち上げる。
触れること叶えば頬から目尻までを辿り、閉じられた瞼の焦点を合わせ。
「此方を、見てる。幽霊妖怪の類を見る子と、似た視線。」
妖怪は知っていた。見えぬ者を見る子の視線。
それは感じていると言うのが正しいのかもしれないが、妖怪にとっては見ていると同じ。
前髪の下の双眸に好奇の色を乗せれば、本来貴方へ近づいた理由も忘れて。
「君は、人間?」
■エン > 「よく言われる。だけど本当さ、うん、見えちゃいないんだ」
目が開いていれば瞳はしかと目前の女性の目を見えている位置に顎も鼻先も眉間も向いている。
薄布と前髪で二重に隠れているものを“見据えて”おいて“見えていない”は……
「目明より見えていないとは言わないけどね。
道案内とかそういうのが不得手なのも本当。
答えは、ほら、ここ」
口の端を軽ぅく持ち上げてくつくつと喉を鳴らして笑った。
触れる手指がすっきりとした顎から整った筋を通って瞼にやってきた、ところで、
“答えはここ”
とその手に人差し指を添えてはずらして耳へと寄せる。
「潰れて久しい。不便でね、此方で物を見るようにしているわけだ。
……それなりに特殊技能ではあるが人から外れる程じゃないんじゃないか?」
下駄の小気味よさと響きから、凡その身長を、着物と白布の衣擦れから、凡その体格を、残りは当て勘。
彼女が彼女であること近づいてきたことを言い当てたのはそういう種だと種明かしをしながら、
人外判定される程には特殊じゃないと頭も首も緩うく振って可笑しそうに笑みを湛えている。
■枢樹雨 > 人の印象を大きく左右する瞳という要素。
それが瞼に隠れていて尚、整ったそれと判る顔立ち。
ただ、妖怪にとって美醜は関係がなく、特異な視線に興味津々。
だって確かに、"目が合っている"のだ。
貴方の瞳の色すら、知らぬままでありながら。
「―――耳?耳て見ている?」
尚も目は機能していないと示す貴方。
代わりにその指先が示すものを見れば、再度首を傾げることとなる。
耳で見る。言葉にして改めて感じる違和感。
けれど見つめる貴方の瞼は閉じたまま。
数秒の沈黙。
瞼を、耳を、持ち上がった口角をと順に目で追えば、妖怪はようやく折り曲げた腰を伸ばし、寄せていた顔を離す。
そのまま貴方の左隣に腰掛けると、己と同じ黒い髪が隠していない耳を見遣り。
「見る事を失った代わりに、聴く事に励んでいるということ?…人の子は、しぶといね。」
淡々と、抑揚のない声。それは盲目の貴方にどう聞こえるのか。
妖怪が人間へと向ける好奇。純粋な感心。
目が見えないのなら己の鬼角も見えないのかと、そんな思考のまま無意識に薄布越しの角を指先で撫で。
「道は、探していないよ。欲しいのは、涼。…君が気持ちよさそうな声をあげていたから、気になって。」
■エン > 「そういうこと。見えれば良かったが見えないのだから仕方ない。故、他で何とかやりくりしているわけさ」
目の見える者にはわかりにくい感覚や捉え方であろう。
そうだよなぁ、と頷き一つ。
一見ならぬ一聴すると抑揚もなく真っ平らな声音だが仕草がそこに反して興味津々の猫みたいな……
人ではない、らしい物言いもあって彼女は彼女で不可思議そうだが己にしても奇妙な“お客さん”。
隣にやってくるのにも、拒むでもなく、ベンチの横に尻をちょいと退かして広めにスペースを作って。
畳んで裾に引っ掛けたまんまだったサングラスを持ち上げれば掛けて閉じた瞳も黒いレンズでさらに隠れる。
「暑いよねぇ。暑いから、冷やしたものを顔に当ててこうして木陰で休んでいたんだ。
家の中に引っ込んでればよかったんだけど籠もりっきりってのもどうにもねぇ……」
陽の光は辛いが浴びずにいるのもどうにも居心地が悪い。
そう言って肩を竦めてから、ふと、サングラスと隠れた視線が彼女がそっと触れている頭頂部へと向く。瞳よりも隠れた鬼角に向く。
■枢樹雨 > 「見えなくても、わかるなら、十分。こうして触れられて、言葉交わせるなら、十分。
見えても触れられない。見えても言葉交わせない。そのほうが、つまらないよ。」
そう言って再び伸ばした白い手が、貴方の腿をぺちぺちと軽く叩こうとする。
思い出すのは肉体なく過ごした長い長い時間。
そっと、零す溜息は、傍らの貴方には届くであろう。
「やはり、その布が冷たかったのか。私も涼みたい。もう冷えた布はない?」
指先に少しだけ感じられたタオルの冷たさ。
間違いではなかったと判れば、妖怪の図々しさでもって問いかける。
しかし閉じられた瞼が黒いレンズに隠れるなら、不思議そうにそれを見る妖怪。
サングラスの存在も、それが陽の光を遮る為の物である事も知っていたが、知っていたからこそ首を傾ぐ。
見えぬ瞳に光は届くものなのかと。問いを重ねようとするが、貴方の視線が…否、意識が己の頭上に向いたと感じれば、
両手で薄布越しの鬼角を隠し。
「……何故?」
何が、何故か。それは勿論、何故其処を見るのかと、そういう事ではあるのだが、的確な言葉が見つからず極々端的な問いとなり。
■エン > 「ああ……退屈そうだなあ、それは……」
見える。触れる。聞こえる。食べる。飲む。他にも、色々。
一つだけでも欠けては大層不便な思いをして今もしている身の上にとって全部は想像するだに退屈極まる。
彼女の体験談だろうか? そうらしい。
溜息の重苦しさと叩く手に掌を重ねて、ぽんぽん。多分の同意と多少の慰めも兼ねて軽く叩き。
「濡らしたタオルを氷嚢で冷やしてね。うん、顔に当てると気持ちいい。丁度予備がもう一つある」
自分が使っていたものは広げて自分の首に引っ掛けてから鞄を漁ればもう一つを握って、差し出す。
この熱帯ではまさに焼け石に水、程度のものだが無いよりは余程良い“涼”。どうぞ、と。
「ん。あ。失敬。いや、変な衣擦れが聞こえたからつい」
さら、というか、さり、というか、彼女当人の耳にすら届かないだろう小さな小さな鬼角の衣擦れ。
髪が薄布で擦れている音に紛れて、水の音も人通りの音もあって、最初は聞こえないし気にも留めちゃあいなかったが時間が経てば経つほど耳が慣れてきて拾える音も多く彼女の姿形も浮かんでくるよう鍛えた耳。……余計な情報デリケートな情報まで拾ってしまう事もままある、今回もそうだった。両手で隠すよう、いや隠した仕草も伝わってきて、謝罪に掌を立てる。
■枢樹雨 > 「退屈と感じたことはなかったけれど、もしまたそうなるなら、……退屈で済む気が、しない。」
己の体験談である事を隠す意は特にない。
だからこそ当たり前に会話を続け、そして想像する。この肉体を失くすその時のことを。
感じたのは恐れか。微かな身震いは、手を重ねた貴方にも伝わるか。
無意識に落ちた視線の先。重なる貴方の手を見つければ、己のものとはずいぶんと違う其れに気が付く妖怪。
貴族とも、農夫とも違う。近いのは戦人か。見目の情報はそれだけ。
触れる情報もと思うも、差し出されたタオルに意識は移り。
「ありがとう。――――うん、…これは気持ち良いね。」
躊躇いなく差し出されたもうひとつのタオル。
妖怪もまた軽快なくそれを受け取れば、その時点でひんやりとした感触が両の手を覆う。
次いで口許へタオルを寄せると、柔らかな冷たさが呼吸すらも楽にするようで、自然と目許が緩む。
自ずと角を隠す事も忘れ、しばし涼を得ることに集中するも、何故との問いに一歩引く貴方を見遣り、…じぃと、見遣り。
「――――良いよ。見えても。…見えた上で、私に害がないなら、良いよ。
場合によっては捕まえて売られると言われたことがあるから。」
そっと、目を閉じる。そして貴方がそうして居た様に、前髪を持ち上げ、冷えたタオルで目許を覆う。
顔全体に冷気が広がる様で、零れた溜息は安堵の気配すらある。
無防備に空を仰ぎ、しばしの涼を楽しみながら、別に怒ってはいないと言外に伝えようと。
■エン > 肉体を失う恐れ。何処に転がっているかも解らぬ機会。伝わる震えに、慰めにもなるかはわからなかったが一度だけぎゅうっと手を掌で握ってから涼を手渡すにしろ今迄にしろその見目に反して所作はかなり緩やかで優しいもの。爪は彼女の何十倍ほどもあるほど分厚く指先から手首まで脂肪がごっそりと削ぎ落とされた……人の手というより猛禽類の足にも近い“狩猟用”とでもいう形をしている手、だから、あえて、緩い仕草だ、これが素早く動いていたら変な誤解も与えかねないから。
「どういたしまして。こういう日には必須だね、こういう類は」
川辺でなければ風すら熱い。日差しの下に居過ぎれば頭がくらりとくる。
木陰からも差し込む木漏れ日と黒眼鏡ごしに照りつける太陽を仰ぎ、
北生だからまぁ王国のこの季節は辛いの何の……
等と愚痴もちらりと零しながらに夏という季節に溜息一つ。安堵の吐息もそっと一つ。余計なことをつい聞いてつい喋ってしまって怒られたことも何度かある、気を付けようと思ってもどうにも懲りない今回はなんとか怒られずに済んでほっと一息だ。捕まえる、売られる、なんて言には眉根が一度上がったがすぐに潜まり溜息の次には笑気が溢れた。
「捕まえて売るときたか。ははは、まさかまさか」
しないしない、と、右手が右に左にゆらりゆらり。
「人でないのもこの国じゃあさして珍しくもない。金に困ってるわけでなし。
ああ。いや。“捕まえ”てはおこうか? 喉が乾いたのでもう少し涼しいところで茶でもしばきたくなってきた、一緒にどう?」
捕まえる、の意味がかなり違うがあえて冗談めかして“捕まえる”の云々なんて嘯きながら立ち上がる。
■枢樹雨 > 大きさも、質も、まったく違う互いの手。
華奢で白い、苦労も何も知らなさそうな己の手は、貴方のそれと比べれば随分と弱々しいだろう。
握る仕草に、圧も敵意もない。他者の感情や意図に鈍感な妖怪でもわかる、貴方の善意。
だからこそ、貴方が角の存在を知ったとて、気に病むことは無いのだと結論付けるに至り。
「ん、それなら良い。未知を知ることが出来るなら何でもするけれど、自由が奪われるのは、嫌。」
貴方が零す愚痴。語ってくれる話。耳を傾けながらに涼んでいれば、徐々に徐々にタオルの冷気が奪われていく。
己もまた答える頃には顔の温度とタオルの温度が随分と近づいてしまい、残念そうに眉尻を落とし乍ら、タオルを額の方へとずらし。
「涼しい所?――――私は、この国のお金を持った事、一度もないよ?」
タオルに押さえられた長い前髪。
晒された仄暗い灰簾石が、立ち上がった貴方を見つめる。
そうして伝えるのは、無一文である事実。
白い左手を差し出すと、首を傾いでみせて。
「"捕まえ"たら、ご馳走してほしい。」
■エン > 人なのに人でないみたいな、手。人でないけれど人のものらしい、手。
差し出されたその手を壊れ物でも扱うみたくそっと手で包んで引く。
「ご馳走しよう。誘っておいて、割り勘ね! なんてそんなそんな。
……不格好にも程があるな、寒気したよ、こんな暑いのに」
最初から今迄誰かも何かも知らぬし知ってもとんと変わらぬ飄々具合で笑いながら、
引く手に合わせて立ち上がってくれれば歩幅も合わせて歩き始めよう。
奢る、と、無一文にはまた別の可笑しさで肩を揺らして、
「未知にも招待出来ると良いのだけれど。そうだなぁ、あんみつとか――」
冷たいお茶とあわせて冷たい菓子も一緒に。王国ではあんまり見かけない類のものを話題に出しながら、見えてない、という状態のわり足取りもまるで危うげなく常人程にもしっかりとした歩みをしつつ雑談も零す余裕もある。そうして、彼女を連れ立って、熱気を一時でも忘れられる場所へと行くとしよう。
■枢樹雨 > 手を引かれれば、此方からもその手をぎゅっと握り、貴方に支えられながら立ち上がろう。
タオルは貴方を真似て首に引っ掛け、残る冷気で少しでも外気温から逃れようと言う目論見で。
「この暑さの中で寒気を感じられるなんて…、私も感じてみたい。割り勘の体で話してみようか。」
割り勘の体で話したところで無一文は変わらないし、貴方の様に正常な感性を持ち合わせていない妖怪が果たして寒気を覚える様な事象が存在するのか。
考えるのも随分と不毛なネタではあるが、涼める場所に移動するまでの会話の種にはなったかもしれない。
けれどそれ以上に、新たな食べ物の名前に妖怪は興味を示したことだろう。
肉体無くしては行えない"食事"という行為を、妖怪はこよなく好んでいたから。
「あんみつ?あんみつとはいったい何だろう。涼を得られる何か―――」
淡々と抑揚のない声音。それでありながら、前のめりの姿勢が好奇心を示す。
そんな妖怪は貴方の手を握るまま、日光から逃げるように嬉々と河原から離れていって――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」から枢樹雨さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からエンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にジーゴさんが現れました。
■ジーゴ > 「らっしゃっせー」
気だるそうな声は一応出している程度のもの。
幾つのもの露店が軒を並べる市場の一角。
肉が焼ける美味しそうな匂いを放っている店舗が今日の日雇い先だ。
周囲にもたくさん食べ物の屋台があるから、少しでも声を出してたくさん売らないといけないという気持ちよりは、暑すぎる…という気持ちが優っている。
外が暑いのは季節がら仕方がないかもしれないが、
肉の串を焼いている火の近くは特に熱気がこもっている。
どちらかといえば、色白の少年の頬はいつもよりも赤みがかっている。
■ジーゴ > とはいえ、昼時。
時折、数人が並ぶくらいにはなる客に肉串を売り捌いていく少年。
「え…っと、、、2本だから、30ゴルド、っすね。20ゴルドのお返しです」
肉を焼く手や簡単に串を紙にくるんで渡す手は順調なのに
「え?5本?えっと、5本だと…」
串が5本まとまって買われた時に、完全にフリーズする。
足し算で計算をしているから、大きい数になると暗算ができない。