2024/08/26 のログ
ジーゴ > いち、に、さん、し…
小さな声で数を、それも一から指折り数え始めた店員に並んでいる客はもちろんいい顔はしない。
第一、指は10本しかないから一から数えているようでは串5本分の料金を数えようとしていることに無理があるのだ。
その間にも彼の露店に並ぶ人の数は増えていくし、肉の串はどんどん焼けていく。

ジーゴ > 誰か心優しい人が教えてくれたのか、それとも永遠に指折り数え続けたのか。
計算のできない少年の日雇いバイトはまだ始まったばかり。

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からジーゴさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にイズミさんが現れました。
イズミ > 王都マグメール 平民地区
その酒場にやってきた近隣住民の町娘(15)
自炊がめんどくさいとの理由から、夕食を取るのが目的


「いただきまーす」


テーブルに並んだパンとスープと果実酒と緑と赤と黄色のサラダと、豚肉の腸詰めを前に
一応の育ちの良さ(?)を食事前の独り言で表す

それらを木製フォークで突きながら、半年前の家族最後の夜を思い出していた

イズミ > 母の作った手料理。魚パイだった
それらを食べた後、食器を洗いを手伝って
それから湯あみを…

自室に戻り、就寝着に着替えて髪を梳いていた時にコンコンとドアがノックされる

寝室にやってきた父は、私を隣に座らせ、抱いたり撫でたりしながら
突然「僕の小さいころの夢はね…」みたいな事を語りだした
半ばうとうととしていた私は、頷きながらそれを聞き
「夢はね、生きていくうえでとても大事なものなんだ」
みたいな話に頷いたのを覚えてる
父が「お母さんを大事にな」みたいなセリフと共に部屋を出ていくと、暫くして今度は母が寝室の戸をたたいた
「私にもね。夢があったのよ」
どこかで聞いた流れで話が進む、最後には母の夢を応援したかなにか、物凄く物分かりの良いいい子ちゃんな返事をした気がする
母は私に寝具をかけ、額にキスをして「お父さんをよろしくね」みたいな事を言って部屋を出て行った

そして翌日、二人は消えていたのだ


「は?」


そこまで回想して、当時の衝撃的な展開に今更ながらに突っ込みつつ、スープを飲んだ

イズミ > その後、偶然にも同日未明から明け方にかけて
父は女冒険者と
母は男冒険者と
それぞれ駆け落ちしていたことが分かった

互いに相手と娘のために財産は持ち出さず…
その結果、家と財産と娘だけが残った…


「ん。腸詰めオイシィ」


寂しいし腹は立つけど、私は二人の子なのだろう
なんか自分の夢に嘘は付けなかった(欲望に忠実とも言う)生き方が理解できなくもなくて、今では色々と割り切った

ぐーーっと一息に果実酒を飲んで、グラスを掲げる


「もう一杯おねがいしまーーーす」

イズミ > 頼んだ夕食はすべてお腹に収まって
多分4ハイ目くらいの果実酒を飲む

酒場は基本的に社交場であり、サロンのようなもの
いつだったかここで、見知らぬオジサンとお話した時に
私の夢を伝えた。どうやったらその夢にたどり着けるのか、知ってたら教えて!っていう意図で

ただその時は言葉が出てこなかったので
(私ね、有名になって、皆に大事にちやほやされたいんです!)
みたいな説明になり、アドバイスは頂けず、可哀想なものを見る目が帰ってきて会話は閉じた
それ以後、アレコレと考えて「不特定多数にとっての特別な存在(アイドル)になりたいんです!」っていう口上を考えたのだけど…


「他に上手い表現ないのかなー…」

イズミ > ちなみに───
私は今年で15歳であり───
彼氏いない歴15年であり───
身内とか近所のおばちゃんとかは可愛いと言ってくれるけど───
客観的に見ても容姿で得したことは無く───

そんな私にある程度好意的な誰かにこのお話をしないと真剣に返事してもらえない気がする

例えば、隣のテーブルに座り、死んだ目をしながら惰性でご飯食べてる眠たそうなオジサンに
「ねぇねぇ。聞いてくださいな!私、不特定多数にとっての特別な存在(アイドル)になりたいんです!」
って言っても
「なれば?」
で終わってしまう予感しかしないのだ

イズミ > などと悩んでる間にも刻一刻と時は進み
客層が「つかれた感じのオジサン」から「ロクデナシ」や「不良中年」が跳梁跋扈する逢魔が時へと近づく

そうなっては相談に乗ってもらえるどころか
茶化されるのが関の山

給仕に任せず食器を手にして席を立ちカウンターに返却←お行儀良い
お代を払って───サササと先ほどの眠そうなオジサンの所にいく


「あのー……」


ダメ元で話をしてみようかと思ったら
「あ~?」って言いながらこっちに向けられた死んだような目を見て即座に悟る
ダメだ。この人に「夢」の話とかしても通じない
しかもこの人私に微塵も興味持ってない(当たり前)
なんかゾっとした…
人生なにもないとこーゆー大人になるのでは…と


「あ。いえ、ナンデモナイデス。オヤスミナサイ」


そそくさと酒場を後にし、お家へ逃げ帰ったのでありました

ご案内:「王都マグメール 平民地区」からイズミさんが去りました。