2023/09/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 平民地区の路地」からタン・フィールさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にルイスさんが現れました。
■ルイス >
休日の午後、平民地区と呼ばれる区域の片隅。
少し離れた大通りで馬車を降り、小さな紙片を手に携えて、
ごみごみとした界隈を彷徨い始めてから、小一時間程が経とうとしていた。
「えぇ、と……あぁ、いや、此方じゃないな。」
とある曲がり角へ踏み込んで、呟きと共に踵を返す。
先刻から、同じ所をうろうろしている気がしてならなかった。
それと言うのも、携えてきた小さな紙片―――其処に記された地図が、
あまりにもざっくりと、薄ぼんやりとしている所為だ。
しかし、そのことに文句など言える筈も無い。
そんなことを口にしようものなら、あの異父妹はたちまち機嫌を損ね、
やっぱり自分で此処へ来る、と言い出しかねない。
黒い執事服に黒い靴、男のなりをした己にさえ、少しばかり物騒だと思うのだ。
こんな所へ彼女を、可愛らしいお姫様を、入り込ませるわけにはいかない。
たとえ、彼女の大のお気に入りの茶葉が、この辺りにある店でしか扱っていない、としても。
「それにしても……そろそろ、誰かに道をきくべきかな」
そう思って見回す時に限って、通行人の姿が無い。
押し殺すには間に合わず、そっと溜め息が零れた。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にコルボさんが現れました。
■コルボ > 「あ? なんだ、ランドール家のルイスじゃないか。」
ため息の直後、貴女の背後から声をかける者が一人。
振り返れば、レザーアーマーにバンダナ姿というチンピラ然といったスタイル、
その場の治安に相応しい見た目の男が小脇に紙包みを抱え、片手をひらひらさせてから、
眉を顰めて視線を逸らし。
「……今の見た目じゃ分かんねえか。俺だよ俺。」
そういうとバンダナを外せば髪を粗くオールバックに整えて見せる。
烏
各国を飛び回り様々な情報を仕入れ、良きとした者には王侯貴族であろうと謁見し取引をする。
王の刃、狂人と謳われるダンタリオ家の誘いさえも断るフリーの命知らず。
様々な情報以外にも多くの異国の話を抱えており、
暇を持て余す異父妹にも折を見て声をかけ、取り入っている節がある。
……もっとも地位や利益を求めて、というよりも、女性関係でよからぬ噂を聞く男。
その貞操を狙ってるのではないかとも言われるが、男の珍しい話、冒険譚は暇を持て余す異父妹のみならず、
王侯貴族のご令嬢にも評判”だけは”良い。
……何より、直接の接触がさほどないはずの貴女の名前を憶えていて。
「この辺そんな侯爵サマん家が気にするようなもん何もねえはずだけど。
別にこれってんじゃないだろ?」
と、小脇に抱えている包みを……、探している店の刻印が施された包みを見せて。
■ルイス >
こんな所で家名は勿論、己自身の名を言い当てる声があるとは。
ピクリと肩を揺らして振り返った先、佇んでいたのは、
人を見た目で判断するのは宜しくない、としても、何とも、全く。
「――――――、あの」
一体、何方でしょう。
若干引き気味に、そう尋ねる心算だった声が途切れたのは、
素早く髪形を変えてみせた相手の、その姿になら覚えがあったから。
碧い瞳をやや見開いて、ぽかんと開いた口を、はっと気づいて閉ざし。
んん、と小さく咳払いをしてから、
「……貴方、でしたか。
流石、この辺りにも良く溶け込んでいらっしゃる……、―――――あ。」
彼の持ち込む情報の精度は高いから、便利な男には違いない。
公爵もそう認めてはいるが、自分の娘に近づけたいかと言われれば、
彼は苦虫を噛み潰したような顔で黙り込むだろう。
つまりはそんな男であるから、独白めいて洩らした言葉も辛辣である。
しかし、小脇に抱えているものが。
正確にはその包みの表面に、目当ての店の刻印を認めれば。
反射的に半歩程、此方から距離を詰めて。
「それ、……その中身は、お茶の葉ではありませんか?」
問う声にも、相手を見つめる表情にも、真摯な色が滲む。
■コルボ > 普段は職務に忠実な執事が己の顔に気づいた表情には人間味を感じ、ニヤと笑う。
だが慌てて口元を誤魔化すように咳ばらいを擦る様に首をかしげてみせて。
「おう、気づいてくれたか。ま、元々この辺より”下”育ちだしな。
身なりを整え、作法を学び、相手の心が求めるものを用意できる者に、
生まれと住まいは些細な問題だよ」
貧民地区を指さしてから身振り手振りで会話のイメージを容易にする。
ともすれば道化、トリックスターの類かと思わせる表情の変化。
多少の辛らつ取り込んで、己の流れに変えていく。
「ああ。最近流行ってるからなこれ。前から飲んでたけど、流行し過ぎて品薄になってきてなぁ。
別の茶葉もいっそ手を出して気に入るの見つけたほうがいいかねこりゃ」
ま、お別れに最後の一個買ってきたんだわ、と、茶葉であることを認めてから、
貴女の表情を見て、ふむ、と声を漏らし。
「ご令嬢のお目当てか? 私てもいいけど、条件があるぜ。
……今度二人きりで令嬢と話をさせてくれるならな。」
などと、すました顔で囁いて。
……もっとも、男の狙いが令嬢ではなく貴女、良く職務をこなし、有能で、主に忠実な流麗たる貴女、
じわりと時間をかけて布石を積み重ねてきたことなど、おくびにも出さず。
■ルイス >
正直に言えば、己はまず、この男のこういう表情が好きではない。
元々の造作は悪くないのだろうが、笑い方に、何とも品が無いと思うのだ。
貧民地区と称される方面の生まれだと告げられて、
さもありなん―――等と頷く程、冷淡な性格でも無いが。
「貴方が何処の生まれでも、旦那様に仇なさぬ限り、
私には如何でも良い事ですが、……それより。」
今は貴方の携えている、その袋の中身が最重要課題である。
更に一歩近づいて、ほとんど詰め寄らんばかりに。
しかし、最後のひとつ、だというくだりで、判り易く、双眸に陰りが生じた。
「そうか、それでは今日はもう、行っても手には入らないと……、
――――――……は?」
譲っても良いが条件が。
その言葉に、はっと意気込んで身を乗り出したものの、
続く台詞を聞いた途端、ざっと音がする勢いで後退った。
胸の前で腕を組み、心持ち顎を反らして、瞳に明らかな軽蔑の色を孕ませ。
「……私が、その条件を呑むとお思いか?
お嬢様と、二人きりでお逢いしたい、などと。
例え貴方が貴族でも、許す筈が無いでしょう」
相手の目的が己自身である可能性になぞ、微塵も考えは及ばない。
何より守らねばならぬ花である、異父妹を取引に差し出す位ならば、
今直ぐこの男を殴り倒して、茶葉を強奪する方が余程容易いというものだ。
■コルボ > 「……ランドール家はこの国じゃまともな家だ。
協力はするし、無償などと物乞いのような真似をさせれば家の名に泥を塗る。
だったら、お互い損はない関係だろう?」
不意に、しんとトーンが落ちた声で政を言葉に含む。
民は道具、民は貴族に奉仕すべきという貴族もいる。
だが搾取するだけの貴族は本来恥。何故なら強者は、地位ある者は恵まれているのだから。
それもまた口の上手さとするかは、それを語る間だけ、男は身振りの中でどこともつかぬ方向へ向けていた顔を、
しっかりと貴女へ向けて相対し。
「なんか知らねえけど、貴族の間で如何に自分んとこの侍従がこの茶葉手に入れられるかって
妙なレースも流行ってるみたいでな。
ランドールがそこまで乗るとは思わねえが、その中で手に入らぬはクソ貴族の類に舐められるだろ。」
その茶葉を以前から嗜む男と異父妹。双方が割を食っている間柄。
故に譲ることもやぶさかではないが、と。
「……お前反応が清々しいな。見た目も良いし劇団に向いてんじゃないか?
ふむ。流石に駄目か。」
冷静に考えれば分かるだろう。そも男は今まで家でも間隙に身を潜り込ませて異父妹と談笑をかわしていたのだ。
男にとってその提案は本来利益がないもの。公言することはむしろ不利益。
……その言葉を口にしてまで落す価値が、貴女にあるのだと。
「じゃあ、分かった。コーデリア嬢とのご歓談は止めとくよ。
その代わり……、じゃあ、あんたに少し付き合ってもらおうかな。」
最初に難題を吹っかけて、次に実現しやすい本命を提示する。
それはある種の美談。
仕える主の貞操を護る為、進んで身を差し出す免罪符。
「……それに、お前は聡い。公爵殿では気づかぬ分野にも時に目が行くだろうよ。
その目を活かす情報を仕入れる先、独自に確保するのもありだと思わないか?」
無自覚な闇を、甘い毒を、男の視線が貴方を捉え、囁くように投げかけて。
■ルイス >
「家名を持ち出して、庶民は貴族に黙って譲れ、等と、
恥知らずな頼み事をする気はありませんが。
幾ら手に入り難くとも、茶葉如きとお嬢様を秤に掛けるわけが……」
そんな馬鹿げた取引に応じずとも、茶葉のひとつふたつ、
他に幾らでも遣りようはある、というものだ。
寧ろ、茶葉をひと包み融通する位の事で、大事なお嬢様を差し出すような、
不忠者とでも思われたのかと、己の目許には屈辱の朱が差し上る。
勿論、腐り切った貴族同士の虚勢の張り合いになど、何の興味も無いのであるし。
「劇団?
戯言も大概に、……当たり前だ、お嬢様は近いうち、王家の妻女となられる身。
そのようなお方を、他所の殿方なぞに……――――――」
駄目に決まっている、ふざけるのも大概にしろ、と吐き捨てたいところ。
相手がこれまでに、異父妹との謁見を既に果たしているとしても、
自らがその手引きをするのは、全く別の話だからだ。
しかし――――如何にも、仕方ないから代案を、と言わんばかりに切り出された、
第二案の内容に、己はまた、大きく目を瞠る羽目に陥る。
確かに、其方の方がずっと受け入れ易い案だ。
だが、此方を見つめる相手の眼差し、その声の調子、言葉の運び。
その中に、己は微かな引っ掛かりを覚える。
ひとつ、ゆっくりと瞬いて呼吸を整え。
分厚く張った氷のような、冷たい色の眼差しを向けて、
「……取引の内容を、もっと明確にして頂けますか。
まさか私とも、ただお茶でも飲みながらお話を、という心算ではないでしょう?」
いつ、誰が通るとも知れぬ往来で。
明け透けにそれを口にする度胸が、相手に在るのか、どうか。
■コルボ > 「あの家は無理矢理じゃなくて平民が自分で頷くような話が出来る家柄だからな。
……まあ、俺はそういうの出くわしてないけど、あの家でご令嬢が大分元気らしいのが不思議だけどもな。」
ま、ご令嬢が喜ぶならいいんだけどただで、ともな、と。
元より譲るつもり。では落しどころはどうする、と。
ぽつり、ぽつりと言葉を受け止め、返す言葉が降り注ぐ。
振舞いを見れば、自分はご令嬢に気に入られてるとでも言うような言いぶり。
だから御目通しぐらい令嬢の意図を汲んでくれとでもいうような。
「ご令嬢様も妻女にならせられたらもう自由なんかないんだぜ?
女は政治の道具、なんざ内心お前さんも納得してるわけでもあるまいに。」
男にとってはご令嬢はご令嬢。実の姉、だとは思っておらず。
故にこそ、尽くす感情を刺激する。それ以上の忠義も、心の出どころは知らずとも察しているが故に。
(真意には至ってないってところか。いやでもこんなすぐとっかかりに反応するような面するか?)
第二の提案に帰ってくるのは若干の安堵、に含まれる釈然としない色。
「ルイスとのパイプ。ルイスとの”繋がり”
お前はあの侍従で一番視野が広い。業務以上に。
それがなんでかは知らん。が、取りこぼしがない。
理由も意図も探りはしないが、明確に”やり遂げる”女は、
ご令嬢と火傷する代わり、には良い落しどころだろうよ」
いくら有能であろうと平民。令嬢を篭絡することに比べればメリットは少ない。
どちらにも手は伸びるが、そちらの意志を汲み取るのだと。
そのつながりは、頭のてっぺんから、つま先まで指示した指がゆっくりと降りていく様で表して。
「それとも」
……一歩歩み寄り
「……主を護るために俺に体を差し出せ、って言われる方が好みか?」
と、多くのメリットに添える言葉は、薄暗い感情を刺激するだろうか。
■ルイス >
相手が既に茶葉を譲る心算であるのかどうか、己が真意を知る筈も無く。
もしかすると、譲る、譲らぬの話ではなくなっているのかも知れない、
それが、微かな違和感の正体か、とは頭の片隅のみで。
「お嬢様は、天真爛漫なお人柄で御座いますから。
目新しいものには、何でも興味を示されますし……
ですが、だからといって……最低限、弁えて頂かねば困ります。」
彼女の境遇、待ち構える未来に、己の感情の介在する余地は無い。
故にその問答は無駄であり、異父妹にとっては人も物も、
新しいものをとっかえひっかえするだけで、さして拘りは無いのだと、
この機会に、確り釘を刺しておいて。
そもそも、何故なのか。
目の前の男は、己を随分買っている、評価しているようである。
その評価が己に見合うものとも思えないから、それもまた、
己を戸惑わせ、躊躇わせる要素ではあるのだが。
少なくとも―――――そう、少なくとも、今、この瞬間には。
「――――――良く、其処まで仰いましたね。
その勇気には全く、感服致しますけれど……、」
近づいてきた相手の胸元へ向け、腕組みを解いた左手を、すっと伸ばして掌で触れる。
ほんの一瞬、ごくごく淡く圧を掛けて。
それから一歩、後ろへ下がって微笑んだ。
「私如きのからだなど、勿体ぶる気も御座いませんが。
旦那様も奥様も、お嬢様も居られぬ所で、貴方と勝手に手を結ぶのは、
あまりにもリスクが大き過ぎる。
残念ですが、そんなお話はまた別の機会に。」
――――――別の機会が、もしも、あれば、の話。
そうして慇懃な礼を取り、己は大通りを目指して歩き出す。
あっさり背を向けたとして、後ろから襲いかかるような男ではあるまいと、
その程度には、相手を信頼しているからなのか、どうか――――。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からルイスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からコルボさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」にロスクさんが現れました。
■ロスク > 「う~ん なかなか合うサイズがない、か……」
平民地区の武器屋や防具屋を巡ってはため息をつく小さい人影。
見かけは小さいこどもだが、実際は酒が飲める年齢の少年である。
お金がたまり、ボロボロになってきた自身の鎧を新調しようと考えたのだが
自分が小さすぎて合う規格の防具を見つけられずにいたのだった。
「オーダーメイドしかないか……でも高いしなあ」
道端で途方にくれている。
ご案内:「王都マグメール 平民地区」からロスクさんが去りました。