2022/02/12 のログ
エイガー・クロード > 闘争の中、彼女は実戦向けの戦い方。すなわち、乱戦の方が得意なのであろうことは想像に辛くない。

だが、だからといって対人及びタイマンでの勝負が、弱いはずもない。ただ土俵がこちらに有利なだけ。
だが、こうして向かい合っている以上はその有利を存分に発揮させてもらうとしよう。
実力差など、大きく開いているわけでもないのだから。

腕を伸ばして、そして引く。突きとはこの動作だけでいい。
切る、殴る、噛む、蹴る。それらの動作は、どうしても避けられると隙が生まれる。
突きはその隙を極限まで減らす動きだった。
そして『刺す』とは、力の入れ方でいくらでも威力が変わるものだ。

「シッ……」

短い音と共に、また突きを放てば、弾かれる。彼女の反応速度も決して悪くない。
むしろ、良いからこそ反応して『くれる』。それは、彼女がいま鎧ではないからなのもあるのだろう。
もしも互いに完全武装であれば、きっと彼女は多少の傷も覚悟ですぐに間合いを詰めてくる。
そうなれば、自分は今のような有利さを保てはしない。まぁ、だからといって負ける気もしないが。

直立した状態で、一度腕を引き、呼吸を整る。そこまで乱れてはいないが、攻撃の手を止めた。
両足を揃えて、直剣を構え直し、彼女を見やる。

「ふぅ……。続ける?」

ただ一言、そう彼女に投げかける。
勝負がつかないから、ではない。疲れたから、でもない。
これは彼女にとっての誉れや誇りがかかっている戦いなのは知っている。
だが、だが、だ。
こと、自分の立場からすれば別に、この戦いに意味はない。
ここでもし、本当に互いのどちらかが倒れれば、この国にとっての大きな損失だ。
国を思うのならば、続ける意味などない。それでも受けて立ったのは、彼女のメンツをつぶさない為―――だけではない。
ただ、自分は彼女の事が、いや、ダンタリオ家が嫌いなのだ。
あの場で決闘を断ればよかったのに、つい自分の感情のまま彼女との決闘を受けた。
その結果がこれに過ぎない。

「そろそろ、歯のお手入れに向かったほうがよろしいのではなくて?」

メイラ・ダンタリオ > 外側と内側にしか興味がない者
無論それが謀反反逆裏切りであれば メイラですらも内側に牙を向ける
腐った貴族が腐ったままでいられるのは、その腐れが振りまく被害が余りにも二人の眼に留まるほどではないからだ

そんな二人は水と油だと誰かが言った
空位 即位 どちらであれ王以外は全て平等のメイラに対し
法律や国の維持に努めるエイガー

この二人は互いに相性が悪くお互いに興味がない
寧ろ、国を傾かせる行為に躍り出る可能性としてはメイラを含めるダンタリオのほうが上だろう

一時の激情は 互いの存在意義 を揺らがせる
互いに許せないのだ 存在が 一言が。


          ギ ィ ン ッ 

一際大きい一撃が鳴る
互いの剣はいまだ健在 無傷が続く
決定打がない以上蛇足だが お互いにとっては長くとも 短くとも それはつまらない過程ではない。

故に先に言葉を出し これを続けるか否か それを問うたのはエイガーが先だった。

「……。」

メイラは、剣を引き、構えなおすエイガーを見つめながら白い吐息をくゆらせる
互いにその白に乱れは鳴く 吐く量も一定のまま
いや、怒気でいえばメイラのほうが、吐く量は少しばかり多いか
鼻息含めればまるで人のままの牛のよう 内側が 熱いのだ。

「……。」

メイラは一瞬思考する
周りからすれば、すぐに言葉を返し続けると思っていた者もいただろう
しかしメイラの考えは 己でも そして存在意義でもない

―――王ならばこの決闘 預かり止めますわ。

思考はそれだけである
互いに利益を生む者
外部も内部も 必要なだけ積み上げる 制した数を

それを考えてしまうと、一度握っている刀の柄の切っ先が鈍く
しかしそれ以上に 空位の王に対し それを放った言葉がメイラを再燃させた。

「―――。」

しゅらり と 抜かれた大脇差が左手に宿る
反り極度に薄く直刀よりもほんのわずかなそれ
地肌に浮き上がる杢目がメイラの赤い瞳の端に映ると、赤銅の鬼が鍔で目を合わせる。

それが答えだった。


                   バ ァ ン ッ !!

雪降る静かな日取り
薄く積もった雪が後方で散り、白い煙を上げる。
革と鉄で包まれた両足が、ギチリと角度を決めて唸ると
両の手に大小を持ったメイラが突撃した。

両の手の刀 双方交差気味に前に突き出している
背丈の差 20㎝弱 突きを下方に突き下ろす形をとり続けているエイガーに対し、
メイラは突き出すことで頭上 貌 首 その3点に意識を集中しており
両の手は突き出したまま 黒鉄のガントレットが手首から指先を手袋のように包んで
その存在感を放っていた。

牙を並べた鉄兜を突っ込ませるようなそれ
突きに対する対策として このまま間合い懐に納めれば エイガーの突きは突きではなくなってしまうだろう。

エイガー・クロード > どこまでも、力のみで存在を強調するダンタリオ。そこにあるのは暴力。
同時に、そこにある力だけがものを言う世界は、唯一自分しか残っていないクロード家にとっては異端でしかなかった。

―――気持ち悪い

自分の事を棚に上げて、彼女の家の存在をそう思ってしまった。他者に対してそんな感想を抱いたのは初めてだった。
なぜ自分はこんなに彼らの事を気味悪く思うのか、それを自問しても自答できなかった。
だから、今、こうして純粋な決闘で答えが出るものと思った。
それは―――正解だった。

「……あぁ、そう」

向かってくる彼女に対して、失望、いや、違うか。
こうなるとわかっていたように呟く。ある意味、期待通りだった。
きっと彼女は止めないのだろう。それはそうだ。彼女は自分を嫌っている、『嫌いにさせた』のだ。
彼女の両の手に持つ刃。彼女の得物の一つが今、自分に向けられている。
周囲にはこの勝負を見守る者、侮蔑する者、野次を飛ばす者。そして何より、だ。
どちらかが倒れれば、それだけで得をする者がいた。
彼女を殺してはならない、自分も死んではならない。そう考えるのが当然だろう。

「……羨ましいわね」

家に縛られずに、自分のしたいことと、やっていることを一致させている彼女を見てそうぼやく。
その声は雪の中でかき消えた。
同時に、爆音のような音が響き、彼女が一気に距離を詰めてくる。
両手に持つ武器、それに対して、自分の得物は2つ。正面からかち合えば、おそらく自分の体のどこかがなくなる。
すべてを捌く……無理だ。技量的に不可能ではないが、それは相手がそれぐらい技量差がある時。
なくはないが、彼女相手にそれはできない。
しかしここで避けるという手段は、いや、そんな恥な真似は出来なかった。
ここで正面からやらなければ、自分はこの決闘の結果がどうあれ決して苦い思い出になることだろう。

ならばやることは1つ。

       ガ ァ ン ッ !

そんな、金属と金属がぶつかり合う音が響く。
その場に雪と、土の混じった煙が上がり……晴れていく。
ギリギリギリ……と金属同士の擦れあう不快な音が響き渡っていた。

「……」

鋭い目、本気の目。今、自分は、彼女と正面からかち合っている。
直剣を片手に持ち、もう片方の手……指先、そして自分の肩までを丸々覆う、銀色の籠手。
それを以って、直剣と籠手の両方を使って両の刃を受け止めた。
当然、無傷ではない、籠手の方の腕には深く刃が切り裂かれ、そこから血が溢れている。
それでも、苦悶の顔一つ浮かばせずに、愚直に向き合う。

ミシリ、という音と共に、彼の直剣――本来なら『受け』に使うようなものではないそれに、ヒビが入る。
彼女とは違い、自分の剣は実戦で使ってこそいるがオーダーメイドでもなければ、何か特別なものでもない。
本来の使い方でもなければ、強度が耐えきれないのは当然だった。
それでも……自分は彼女に、背を向けたくはなかった。避ける事が悪いとは思わない。
ただ、自分の安いプライドで、自分は彼女のその攻撃を受けに行った。

そのまま彼女がさらに力を籠めれば、自分はそのまま袈裟に切られるだろう。
……それでもいいと、思っている自分が、ほんのわずかにいたのだった。

メイラ・ダンタリオ > 全ては王の為に

空位であろうとも首をささげ続ける
それが貴族に 将に 後世の偉人にではない
なんの見返りもない 周りからの武の賞賛と狂気を積み上げるだけの ただの差し出すそれ

なにもかも無駄で なにもかも見られてきたからこその ダンタリオ

それがこの空位の王の時代に据えているダンタリオの場である

故に恐ろしく 故に王はダンタリオを手にすればと思う者の
それが今だかなわないのが今の時代 この空位の狭間

そんなイカれが、真っ直ぐに エイガーを屠るつもりの顔で口元のギザ歯だけが獰猛で
しかし鼻から上には 焦りも 戸惑いも 憐憫もない
空位の王を侮辱した罪を濯がせるかのように 王を望む声だったのかもしれない
どこかの騎士はどの王に仕えるのかいまだわからないなどという中で
空っぽの王に意思を見せるダンタリオの狂気の真顔

黒い塊が その膝丈の長い黒髪を浮かせるようにして尾を引いて突撃する
交差させた大小ニ刀
それを以て、形で見れば守りのそれ
突き出せば払う 振り下ろせば受け止める
薙げば擦りそのまま懐へと

どんな手でも迎え撃つつもりの型だった

それを、片腕だけ包ませたその籠手と剣を構えて微動だにしない
メイラが突き出したままの姿勢で身長差あれど突き出し合えば
互いに下半身すら詰める。 そうしなければ膝や足で応酬もあろう

互いに、己の膂力同士 ぶつかりあった撃が剣と刀 籠手と刀
互いに押しつけ合わさると

                  ビギッ

異質な音が鳴る。
刀と剣で片方に食い込みが出来上がる

                  ギィッ

今度は潰れるような音が細く しかし太く聞こえた。

お互いの詰め合いは、周りから見れば突撃しあい
互いに決まり手に至らずかちあったように見えるだろうか
しかしお互いでいえば、剣の造りか それとも片腕と両腕
いや、全身の造りが魔と混ざり合うメイラの差なのか

薄い雪の上 滑りもせずお互い押し合いしていれば 触れる一部に負けが込んできている。
お互いの剣も籠手も刀も小さな振るえと共に、力を籠め続ける。
ここまでくれば、メイラは両腕を上下に小さく 小刻みに 上に下にと引けば
その撃 噛み 食みつづけたように広がることだったかもしれない
籠手から流れ出る赤い線が肘へ そして押し合うメイラの足元に数的パタリと赤を残したところで
周りがザワ目木を一瞬出した。 理由は次の怒号で 二人は察する。


                 『や  め  い  っ っ !!
                  双 方 剣を下ろせっっ!!』


それは腹から響く 戦場で伝令を流そうとするかのような声だった
指揮取る者が周りに促す 士気を昇らせる声だった
恐れも不安も この緊迫した殺陣も解けさせ 互いの意思(殺)と形(陣)が解けてしまうそれだった。

「……。」

メイラは、王以外で言葉を受け止め聞く相手と言えば、目上と思う者
武芸に秀でた歴ある者である
誰かが走り知らせたのだろう メイラの普段の行い
王以外は皆平等 なれど の下りを知る者が、老いてなお猛々しい者を呼び寄せたのだ。
互いのどちらかの首が飛ぼうとも 片腕が落ちようとも 臓腑 いや 腱の一本断ち切れてもダメだと
不毛に捉えたのだろう。

スッと先に構えを解き、数歩下がってから刀を双方降り、赤い雫を掃ってから鞘に納めたのはメイラだった。
目の前には、どこか向かい合う際 弱弱しくなってなお嫌悪する瞳だけは変わらなかったエイガーが見える。

「貴方が死ねば 王はとてもお困りになったのでしょうね。」

引き下がる理由はそれであり 引き下がるきっかけはこちらへ向かってくる老兵なれど精錬そのもの。
メイラは、最後 何とも言えない顔でその場を先に後にする。
刀に手をかけた理由は全うであれ 後味が実に何とも言えない 一度思考に入ればぬぐえないのだ
王ならば きっと この結末を最後まで行かせなかっただろうと思うと。

エイガー・クロード > 「……」

響き渡ったその声に、従う。
彼はメイラと違う。聞き分けのできる模範的な貴族であり、騎士である。
そう、自分では思っている。だから、自分は彼女とは違う。
……そんな風に考えてしまう、もう彼女とは会いたくはなかった。
戦いの結果?負けたから?違う、彼女に会いたくはない理由はそんなものじゃない。
……きっと、またこうして決闘を行う可能性がある。

別に、こちらから今回のように言わなければいいのだが。
自分にこのような一面があるなど、初めて知った。
…………次も抑えられるかは、わからない。だから、合わないようにする。
それが一番なのだろう。…………それが逃げであることは、分かり切っているが。

切り裂かれた自身の籠手から漏れる血液は、赤い。
…………よくよく見れば、その赤は少しだけ、光っていた。
周囲にはバレていないだろう。彼女にもバレていないようなのは、幸いだった。
あそこで受けに行ったのは、失敗だ。それでも自分は受けなければ、自分は自分を許せなかった。
だから、この結果に文句など言うことはできない。

「私が死んでも、王は困らないわ。…………困る王が、いないもの」

そう吐き捨てるように言うと、背を向けて。
いつの間にか、血が出なくなった籠手を見ながら、道に放り投げていたマントを拾って歩き出した。
寒いこの雪の中、その寒さは感じることは、結局なかった。
新しい籠手を見繕ってもらわねば…………。

「……………………いえ、それより」

今の戦いを見て、明らかにどちらかの死を望んでいた視線の主。
それを調査、ないし―――粛清することを進めるとしようか。

ご案内:「王都マグメール 王城(過激描写注意)」からメイラ・ダンタリオさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 王城(過激描写注意)」からエイガー・クロードさんが去りました。
ご案内:「夢現のアケローン闘技場(過激描写注意)」にタマモさんが現れました。
タマモ > 夢現の領域、それは夢と現の狭間。
招いた相手によって、場所は変化する領域…なのだが、本日は、そうではなかった。
知る者は知っているし、知らない者は知らない場所。
そこは、港湾都市ダイラスにある、アケローン闘技場、そこを再現した場所なのだ。

…まぁ、とは言っても、招く条件は普段と変わらない。
心の内に、本人さえ認めずとも、被虐性や破滅願望等の、強烈な負の感情を抱えた存在。
そして、張り巡らせた領域との波長、それが合う者だ。

そんな場所の舞台の上で、少女はのんびりと佇んでいた。
ただ、普段と違うのは、観客や審判員等への意識を向けていない事か。
当然だ、そうした存在さえ、ここでは己が生み出したもの。
いつものように、暇潰しの会話とかした場合、独り言と大して変わらないから虚しいだけなのだ。

それ以外で何かをする、とするならば。
我ながら、しっかりと再現させているな。
そんな事を考えながら、軽く周囲を見渡す程度だろうか?