2017/06/08 のログ
ご案内:「宿場町」にマティアスさんが現れました。
ご案内:「宿場町」にエアルナさんが現れました。
マティアス > 重荷を抱えて旅をすると書くと、裏を返せば何処にも行けないということに等しい。
定まった住居があればまだいい。しかし、手に余る程の荷物とは己の足を其処に縛るということにも繋がる。
何処にでも行きたいと思うなら、荷物の類は出来る限り少ない方がいい。

――或る仕事を終えて、一旦王都に戻った後にまた旅に出る。

物見遊山を兼ねた彷徨の中、訪れた或る宿場町の酒場を今宵の夕餉の場とする。
客の入りは少ないが、けして寂れているわけではない。寧ろ、人の入れ替わりの後の凪のような刻限だったのだろう。

「……嗚呼、失礼。注文をしても良いかな?」

奥まったテーブル席の一つを押さえ、壁際に鞘に納めた剣を立てかけて品書きを取る。
一見して気になったものは幾つかある。食べきれるかどうか、バランスが良いかをさっと考えて店員を呼び留めよう。
頼むのは黒パンと焼いたソーセージと、そして野菜スープ。酒の類は後ででいい。

エアルナ > (先日の探索は意外なほどの結果をもたらしたが…それはそれ、である。常時持ち歩くには危険が伴うような代物は、さっさと封じ込めておくに限る。
あるいは換金してしまうか、だ。

決して穏やかな治世とはいいがたいこの国では、なおさら――確実にあてになる自分の技や知識に変換する方が確実だ。

こうして宿場町によるのも、その旅路のひと時の休憩のようなもので。
同じテーブル席に着き、品書きをのぞきこめば
「はい、どうぞ。…あぁ、すみません、お手数をかけますが私も同じものを。それとーー」
酒場の横。馬車のところでおとなしく留守番をしている白狼のためにと、骨付き肉を追加で店員に頼んで。
あとは、そう、季節の果実があればありがたいくらいか。

「あぁ、この街でおすすめの宿はどのあたりですか?」
などと、ついでに情報ももらっておこう。

マティアス > 「……よし、と。一先ずこれで人心地はついたね。酒は、うん。あとにしようか」

注文を終えれば、ふぅと一息つこう。
誰かに後ろ指を指されてもおかしくない生活と紙一重の生き方をしているが、望まぬ面倒事は御免だ。
先日の後処理とも言うべき諸々は済ませたものの、始末に困るものがいくつか手元に残ってしまっている。

先に運んでもらった、水が入ったグラスを掲げて乾杯代わりとしよう。

「少し、この辺りを見回ってから王都に戻る予定だけど、エアルナ。この前のあの始末、頼んでしまってすまかったね」

その上で、改めて謝意を述べる。先日倒したゴーレムの内部機器に関する始末である。
分解は出来ても、再度組み立て直しようのない複雑かつ貴重なものについては、適度に封印する他ない。
その点については、今の自分の身分ではどうしようもない。
実家の加護を強請りに行くのは、貴族としての暮らしを捨てた身として如何なものか。

エアルナ > 「ええ。旅の保存食ばかりだと、味気ないですものね。」

まずはおなかを満たしてからでいい、お酒の類は。
冒険者であり探索者であることは、実に波乱万丈な出来事と出くわすことが普通よりはるかに多い、ということで。
先日の遺跡の、希少金属性ゴーレムなどはその一つ。

水のグラスでささやかに乾杯をする姿を見て、そんな腕利きの冒険者とは見えないだろうけど。

「いえ。あれはそれだけの始末が必要でしたから――」
いちおう他の耳もあるので、詳しくは口にしないが。
実家は険しい山も深い森も傍にある、王都から離れた場所だ。
妙なものにうろうろされないよう、その地の森の精霊の神殿の地下深くには昔から…そういった結界付きの奥まった場所が備えてあることは。
同じ精霊――個体は違うが――の血を引く彼には、以前、話したこともあったはずで。
気にしないでください、と軽く手を振る

マティアス > 「あれはあれで、工夫の仕様があるんだよ。
 乾燥させた野菜に干し肉に塩、あとは綺麗な水があれば其れだけで贅沢にもなるからね」

並べる言葉で示唆するのは、乾燥させた野菜と刻んだ干し肉に塩味をつけた野菜スープのようなものである。
こんなものでも野宿するときはご馳走とも言いえる。
煮炊きして作る食事とは、それだけで生きている感覚を強くさせてくれる。
しかし、其ればかりでは偏る。せめて町でいいものを食べたいと思うのはきっと、人間として正しい。

「うん、あれは適度に刻を見計らって出すところに出せば、良い値をつけてくれると思うよ。
 ――最悪捨て値で捌いてしまってもいい。問題は僕が預かっている“あれ”だね。」

すまない、と。改めて、手を振る姿に述べながら、ローブの下の懐の重みに遠く目を遣ろう。
魔封じのかかった袋に入れた、或る翠色の結晶体である。何処に預けるわけにもいかず、止むを得ず持っている。

グラスに入った山中で採れた名水なる水を舐めて話ながら、運ばれてきた料理を迎えて言葉を切る。
注文したものとしては簡素だが、これ位がいいものだ。付け合わせのオマケとして運ばれてきた、ふかしたジャガイモもいい。

エアルナ > 「時間があれば、旅先でもスープくらいはできますが――」

うん。野宿の時は、それだけ材料があれば十分な食事になる。
ただ、焼き立てのパンとか。新鮮な果物とか。
獲りたての魚や鳥でもいいけど、そういうものがあるほうが、いろいろ満たされる気がするのは…自然な反応だと思いたい。
町でちゃんとした料理が食べたくなるのも、自然の一つだ。

「その辺は任せてきました――捨値、とまでいかずに何とかなると思います。 …ですね、あれは難しいです。」

其れこそ妙なものが寄ってきそうな結晶体ではあるが、しかたない。
預けるより持ち歩く方が、危険性は多少でもましなはずですと、小さく頷いて。

料理が来れば、ジャガイモに軽く塩とバターを絡めて口に運ぶ。
ほくほくのできたての熱さが、空腹には実にいい。
王都のように、美食ばかりに慣れてはいけないのだ。
場所によっては…こんな食事さえとれないところもあるのを、果たして都の貴族がどれだけ知っているやら、だ。

「ん、いい野菜つかってますね、このスープ…」
パンもスープも、十分量がありお腹を満たしてくれそうだ。


マティアス > 「逆に時間がない時や焚き火が出来ない時もあるよ。……さぁ、君ならばどうするかな? 
 ……と、ね。正直、保存食の類はそればっかりだと飽きるんだよねぇ、本当に。」

冗談めかして言うが、つくづく食という問題は切実なのだ。
焼けばパンにできる程度に練った小麦粉を持って、いざ焼くにしてもそうもいかない。
準備をすればできなくはない。だが、その用途だけにしか使えない道具類を持って歩くのは邪魔極まりないのだから。
特に雨や雪しか降らない旅路を急ぐときは、飢えとの勝負とも言ってもきっと過言ではない。

「ならば、有効活用する他ないだろうね。
 加工して僕の剣の飾りにするか、杖でもでっちあげるか。……杖だったら、君が使うかい?」

不幸中の幸いなのは、加工自体もできない訳ではない点だろう。
鞄の隅に放り込んでうっかり無くしてしまうよりは、使える形に加工してしまう方がずっと無駄ではない。
冗談だけど、と言い添えながら、頭の中で考えている案のうちの二つを声に出す。
分割加工もできるが、効力が薄れてしまう恐れもある。

「なかなか、いいねこれ。――酒も頼むかな」

よく火が通ったソーセージを齧りつつ、ジャガイモを合間に口に運ぶ。
痩せた土地の産ではないだろう。いずれもちゃんとしっかりしたものである。
欲に任せた美食より、これ位のもののほうがすっかり落ち着く生活を始めて、気づけば長い。