2017/03/01 のログ
ご案内:「空中庭園「水晶庭」」にマティアスさんが現れました。
ご案内:「空中庭園「水晶庭」」にエアルナさんが現れました。
■マティアス > ――そう言えば、こういう場所もあった。
或る冒険者ギルドを通じてちょっとした仕事を請け負った時、その場所の存在を思い出した。
国が乱れる前の栄華を忍ばせる風光明媚な、同時に奇景とも形容できる場所。
その場所に足を運ぶ。わざわざ馬車や飛行魔術を使って飛んでいく必要もない。
ただ、その足を動かせば事足りる。街道から離れた場所故に、気楽にとは言い難いが。
「……うん、何時見ても独特だねぇここは」
門を抜けた先にあるのは、夜目にも明らかな固有の風景だ。
水晶の如き結晶体が虚空に幾つも浮遊し、清らかな水が作られた小川等に沿って流れる。
誰かが時折整備しているのだろう。見える風景に綻びや乱れとも云うべき違和感はない。
だが、何かと物騒なご時世だ。いちいち手入れや見回りに人を回す余裕や金も、誰もが渋る。
故に張り出された依頼を受けた。一人の老貴族が出した、報酬としては僅か程度のもの。
しかし、張り紙に綴られた依頼文とは真摯さを伺えるものであった。
故に請け負う。散歩にも近い夜の見回りの依頼を。
夜の冷たさを含む風にまとうローブの裾を揺らしつつ、眼鏡の奥の双眸を細めて至る経緯を思い返す。
■エアルナ > 「…そうですね、私もここに来るのは久しぶりになります」
眼鏡の青年に応えながら周囲を見回せば、懐かしいに近い感慨。
傍らの白狼もいくぶん物珍しそうに視線を動かしている。
「特に夜は…初めてですね、この場所の。
…それで、あえて夜にここに来たわけは…そろそろ教えてもらえますか?」
依頼だということまでは知っているが、と。
好奇心と期待交じりに、青年に尋ねてみる。
■マティアス > 「成る程。まあ、確かにそうだろうねぇ。
魔術を齧る人間なら割と知っているだろうからね、此処は」
頷きつつ、一瞬目を伏せればおのずと意識せずにはいられない。この地に満ちる強い魔力の気配を。
場合によっては、悪用さえし得るだろう。
一々行き来するのに手間取る場所に足を運ぶという手間を厭わなければ、だが。
しかし、だ。けして可能性は皆無ではないのだ。目的のために手段を択ばないものは割とどこにでも居る。
「嗚呼。話の内容としては、とても簡単だよ。
――見回り、だね。荒れているところがあれば可能な範囲で整備も依頼されているよ。
と、言うわけで。ちょっとした気晴らしも兼ねて、付き合っていただけると僕としては嬉しい」
腰に帯びた剣が役立つ場面があるかどうかは定かではないが、互いの魔術の智慧が役立つかもしれない。
言いつつ、左手を彼女のほうへと差し出してみよう。
乗ってくれるならば、その片手を取って先導すべく歩き出そうと。
■エアルナ > 「ええ、ちょっと足を延ばさなくてはいけませんが。
魔法の鍛錬にも悪くない場所です、ここは」
魔力の弱いものでも、この場所の魔力の力を借りればいろいろと応用が利く。
だから正統な魔法使いとしては、修行の場にもなりえるのだ。
解放されているとはいえ、貴重な地…安全な魔法に限定、はされるけれど。
「整備ですか。園芸、は薬草のほうが得意ですが…そういうことなら。
おつきあい、いたしますねーー喜んで」
クス、と小さな笑みを零して軽く一礼すると差し出された彼の左手に応える。
デートみたいですね、と戯れ交じりに見上げながら…歩き出そうか。
■マティアス > 「背伸びをしたいお年頃には、うってつけではあるね」
たとえば、誰かを見返すために身の丈に合わない力を求める者、など。
かつて己も在籍した学院の同輩を思い返す。
魔法使いもピンキリだ。魔力の差に加えて、賢しければ愚かしきもある。
結果、仕損じて要らぬ怪我を負うことがなければ、いい。
見回りとはそういうことだ。
「はっはっは、僕としてはそのつもりだよ?
……と。言っている傍から、かな。」
体格の差は手の大きさにも表れる。己の手に乗る細指を優しく握り、歩き出そう。
けして詰まらない、軽視していい依頼の類ではない。
小さく笑って、細道を歩く。僅かな月の光を受けながら、見遣る先にあるものに目を細める。
地面から突き出た水晶の如き、一抱えもある六角の結晶柱の上に何かが、ある。
黒い蝙蝠羽の如き翼を持つ、これまた黒い靄で構成された小鬼の如きものだ。
実体ではない。この地に揺蕩う魔力を用い、生じさせた仮想精霊と称すべきものだ。
恐らく、何処かの魔法使いの卵が仕損じた結果であろうか。
本来ならば、おのずと消滅するであろうものが目的も何も与えられることなく、彷徨う光景とは。
■エアルナ > 「ええ、…否定しません」
ちら、と脳裏に浮かんだ思い出に苦笑気味に頷く。
あるものだ、そういう年頃はだれにでも。
ただそこをうまく乗り切れるかどうかは、周囲の環境次第…よき友や師匠、家族の存在が左右する。
「え、…そ、そうだったんですか?! …ぁ」
ふだん冗談の多い青年だが、手を取るしぐさは優しく温かい。
思わず慌てかけたが、タイミングよく(?)視界に現れたのは…黒い子鬼。の、ようなもの。
パチ、と一つ瞬いて気を取り直し。
「…仮想精霊、の類みたいですね。害がなければ、様子を見ていてもいいかもしれませんが…」
さて、あれはどうだろう。
首を傾げれば、話し声に気が付いたのか、黒の子鬼はこちらのほうをむき。
ふわり、途中に浮かび上がる。
■マティアス > 「そうだよ? 他に何があると思ってたなら、とっても聞いてみたいね」
こよなく愛するのは下手な冗句や悪辣非道の者が絶望の淵に沈む光景だが、気を許せるものには相応の礼を尽くす。
何かと縁のある相手であれば、相応の気を遣う理由には事欠かない。
懇意になって何かと困ることはない。だが、今はそういったことよりも、だ。
「――いや、あれは摘み取るしかないよ。
この場所の特徴故に今は割と原型を保っているけど、そのまま在ると周囲を蝕んでしまう。
多分、作る時にはもう少しマシな形にするつもりだったろうけど、邪心が出てしまったクチかな?」
見えた黒い小鬼めいたものは、自分達を見つけたのかよたよたと、中空に浮かび上がって近寄ってくる。
揺らめく全身の在り方に見た目通りの邪悪な気配はなく、途方にくれたような風情さえ見せる。
敢えて解呪するまでもないだろうが、魔力を基礎として成り立つ庭園の景観の調和を乱す可能性がある。
「……――その在り方を解き解す。我が敷く律の如く、為せ」
右手を差し出し、魔力を回す。掌に灯る白い光が淡く輝く粒子として散り、小鬼にしみこんで往く。
奥底にある核ともいうべきものを掌握し、強引ではなく、丁寧に解き解して無と為してゆく。