2016/06/20 のログ
オーベ > (暫くの間、森の中を行ったり来たりし、有用な植物や好物の採取を続けるのだった)
ご案内:「森」からオーベさんが去りました。
ご案内:「王都近郊」にテイアさんが現れました。
テイア > ざぁっと、この季節独特の湿り気を帯びた風が吹く。
風は新緑の草花を揺らし、女の外套や服の裾を靡かせて過ぎ去っていく。
さく、さく、と恵みの雨と暖かな日差しの中よく伸びた草を踏みしめて女がやってきたのは小高い丘の上。

「ここに来るのも、久しぶり…か…。」

フードを下ろせば、左右の異なる彩を放つ瞳と銀糸がこぼれ落ちた。
生える草はともかく、目の前にあるものの汚れ具合に前にいつ来たのだったかと少し考えながらの独り言が漏れた。
つい、と細い指先が汚れに霞む石版の上をなぞればなぞった部分だけ少し汚れが薄くなる。
そのに描かれた文字を見つめ、暫しの沈黙の時が訪れる。
その間も、風は吹いて草花を揺らし続ける。
雨の匂いはまだしない。
暫しの沈黙を終えたあと、女は持参した布と水で丁寧に薄汚れた石版と、伸び放題に伸びてしまった周囲の草を毟り。

テイア > ――周囲の草を毟り、布で石版を清める作業は、長いあいだ風雨に晒された汚れと、伸び放題に伸びた草のお陰で割と時間がかかってしまった。

「…こんなものか。」

新品同様、とまではいかないがある程度綺麗になれば女は腰をあげて石版の正面へと立って居住まいを正した。
持参していた籠から、森で作られた果実酒をその石盤の前へと置いて。
外套を脱ぎされば、普段から着用している殆ど露出のない詰襟の服の姿となり、腰に差した二本の剣を鞘ごと抜き取ると片膝をついて、石盤に頭を垂れた。

「王よ。ご無沙汰しております。」

静かな、けれど風に流されてしまわぬ凛とした声が奏でられる。
――ここは、古いある時代の王の墓であった。
長い歴史の中にうもれた、マグメールを治めた王の墓。
今はもう、その名を知る者は殆どいないだろう。