2019/05/09 のログ
ご案内:「王都マグメール ホーレルヴァッハ邸」にクレマンスさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール ホーレルヴァッハ邸」にギュンター・ホーレルヴァッハさんが現れました。
クレマンス > 寝室に穏やかな声が流れる。
二日前までこの屋敷で聞こえるはずのなかった、聖職者の声。
彼女が語るのは、古めかしい恋物語。

獣が人に恋をして、様々なものを犠牲にして人の姿を手に入れる。
愛しい人に近付けた獣は親睦を深め、安らぎを得る関係を得るも、人は貴い立場であった。
想いを伝えることもなく、やがて愛しい人は定められた婚約者との話が進んでいく。
複雑な感情に悩まされるも獣の己では幸せにすることは難しく、婚約者の誠実な人柄を確認すると、獣は姿を消したのだった。
最後に消えない傷痕を愛しい人の肌に残したのは、その幸せを願いながらも忘れてほしくないエゴだったのだろう。

寝台に入り、子どもに読み聞かせるように本を開いていた聖女は、おしまい、と本を閉じた。
隣の恋人の髪を撫で、軽く頭を引き寄せ―――――目元に口付けする。
まるで本当に愛しい我が子を寝かせる直前のように。
だが掛ける言葉は、やはり恋人に対するもの。

「少しは恋心のお勉強になりました?」

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 積みあがる金貨の音でも無く、書類の山が雪崩る音でもない。
事務的に読み上げられる数字でも、おべっか使いの売り込みでもない。

貴族の寝室というよりは、書斎にベッドが付いたという風貌の己の寝室に響くのは、穏やかな聖女の語る恋物語であった。
ホーレルヴァッハ家の。そして己の評判を知る者が聞けば、何を言うんだと一蹴する様な穏やかな時間が、寝室に流れている事だろう。

「……ん…。そうだな…本当に好いているのならば、力づくでも奪ってしまえとも思うのだが。だってこれでは、悲しい結末なのではないか?」

口付けられた目元を擽ったそうに細めつつ、吐息が交わる様な距離の中で穏やかに言葉を紡ぐ。
恋人の幸せを願うからこそ身を引く、というのは果たして良い結末なのだろうかと、不思議そうに首を傾げながら彼女に問いかける。
そっと腕を伸ばし、彼女の柔らかなブラウンの髪を撫でようとしながら。

クレマンス > 「あら、まぁ……」

感性の違いに目をぱちくりとさせ、その後笑う。
様々な違いがあるから他人と生きることが楽しい。違うことは悪くない。

「ギュンター様はハッピーエンドがお好きなのですね?
 王子様とお姫様が困難の末に結ばれるお話は、数多くあったのです。
 ですが……こういったお話のほうが、誰かを自分より大事に想うことが学習出来る気がして……」

己もこういった方面については勉強中なので的確な答えは出せないが。
髪を撫でてくれる手に己の手の平を重ね、ただでさえ隣り合っているというのにさらに距離を縮めるように身を寄せた。
布団に包まれているということもあり、その内側に籠った二人の体温は暖かい。

「でも……やはりギュンター様のお幸せを願って離れると想像したら……寂しいですから、次はハッピーエンドのお話にしましょう。
 王子様とお姫様が結ばれ、生まれた次代のお姫様が冒険するような童話でも」

少年に読むには少々子供騙しになってしまう気もするが、満足な気分で眠れるのならそれで良いかも知れない。
語りながら、恋人の瞳を見つめて微笑んでいた。
ただこうしているだけでも幸福で、酔うような心地だったので。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「…物語の中くらいは皆に幸せになって欲しいではないか。困難を乗り越えなくともよい。他者を救うために自らが犠牲になる事も無い。唯共に過ごす事が幸せであれば、それで良いではないか」

己は寧ろ、本来そういった小さな幸せを奪う側の人間であるが故に。こうして褥の中で聞く物語の中くらいは、彼等に幸せになって欲しいと思うのだ。
尤も、そういった感性が育まれている事自体が、聖女による"教育"の賜物かも知れないが。

「…そうだな。明るく、皆が幸せになる様な話が良い。……とはいえ、流石に童話を読み聞かせられる程、童では無いと思うのだが」

重ね合わせた彼女の手をそっと握りしめながらクスリと微笑んだ。
互いの体温が交じり合い、温かく微睡む様な雰囲気がそこには確かに存在した。
久し振りに感じる心穏やかな時間を満喫しながら、己の瞳を見つめる彼女に微笑み返してその身を引き寄せようと。
まるで、彼女と言う存在を確かめる様に。離すまいとする様に。

クレマンス > 「ギュンター様は作家には不向きでいらっしゃるようです。それでは退屈なお話になってしまいます。
 ……ですが、作家にはなれずとも、私はそんなお考えを持っていたあなたをとても素敵だと思います」

ハッピーエンドを求める意味を聞くと、聖女は嬉しそうに囁いた。
力ずくで、などと聞いた時は笑いながらも『らしい』と思ってしまったため、この変化は驚くべきこと。
そんな少年は愛しいだけでなく、慈しみたくなる存在になりつつある。

「意外と御要望は多いのですね?それでしたらどのようなお話がお好みですか?
 帝王学だとか、政治に関連したお話は読んでいたら朝になってしまうからおやめになってくださいね」

冗談混じりに話しながら、引き寄せられるままに身を寄り添わせる。
少年の首筋に吐息が掛かる程の距離で、瞼が重たくなってくる安心感。
このまま眠ってしまっても、とても素敵な夢が見られるだろうという確信はあった。
あったが、次いつこうして寄り添う時間を得られるか分からないことはこの二日間で理解した。

「―――――ギュンター様。もっと触れてください」

肌に、と――誘うように、聖女の唇が細く白い少年の首筋に押し当てられる。
ちゅっと軽く吸う音が寝室に咲いては、すぐに消えた。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「違いない。俺は人々を楽しませる様な物書きにはなれまいよ。
…だがまあ、お前が喜んでくれるなら、それで良いのかも知れんな」

作家には向いていない、という言葉にはクスクスと楽し気な笑みを浮かべる。しかし、嬉しそうに囁く彼女を見れば、そんな己の想いも強ち捨てたものではないのかも知れないな、彼女の体温を感じながら思う次第。

「…そうだな。お前が俺に聞いて欲しい、と思う物語なら、何でも聞いてみたいと思うよ。ああは言ったが、童話でも構わないさ。
……そういうものが読みたいのなら、寧ろ読んで聞かせてやっても良いぞ?読み聞かせというよりは、講義の様になってしまうやも知れぬがな」

最後の言葉は冗談交じりに。引き寄せた彼女から漂う甘い匂いに目を細めながら、その柔らかさと体温に寄りそう。
彼女と同様に、此の侭眠ってしまっても構わないかと強く思う様な温かさと穏やかさ。しかして、彼女の芳香と柔らかさに感じ入るものがあるのも、事実。
どうしたものかと悩んだ矢先、彼女から紡がれる言葉と押し当てられる唇が、己の行動を決める事になる。

「……ああ。構わないとも。だが、触れるだけで済むかどうかは、保証しかねるがな」

己の右腕は、その背中に回って更に彼女を此方側へ。そして、空いた左腕は純白のネグリジェの上から、彼女の乳房にそっと触れ始めるだろう。撫でる様に。しかし、彼女の情欲を煽る様に。