2017/09/14 のログ
ご案内:「遺跡」にマティアスさんが現れました。
ご案内:「遺跡」にエアルナさんが現れました。
■マティアス > ――全く、面倒なものだ。
手元に揃っている文献や遺物から得られる情報をもとに、或る神殿と思しい遺構に赴こうとしたら――これだ。
現在はどうやら、魔族領から流れてきた怪異が棲みついて、その地勢を変えてしまっているという。
月夜に照らされ、おぼろげに見えるのは黒く濁ったタールのような沼より覗く、石造りの建物。
日中であれば、腐敗臭を伴った瘴気をぽこぽこと吹き上げ、耐性のない生き物を寄せ付けない不浄の地へと変わる。
これを何とかしたいとなるとすれば、夜だ。
けっして状況が変わるというわけではないが、沼地を熱する太陽がない分だけ少しはマシと言える。
だが、問題はまだある。自己の耐性や呼吸器の保護の確保に伴い、この領域のヌシとすべきものをどうにかしなければならない。
「……――これはまた随分とよく肥えたものだね。余程、この地の滋味が身体に馴染んだと見える」
沼を見下ろせる小高い丘の上、遠く視線を遣って目を細める姿がある。
黒いローブに剣を携えた男の姿だ。それが、沼地を泳ぐ怪異に呆れともつかない表情を見せて、肩を竦める。
巨大な多首蛇――ヒュドラというべきものだ。沼地の色と同じ黒い鱗を纏った八首の竜の如き蛇。
これをどうにかしなければ、自分の、自分たちの目的を果たすことができない。
■エアルナ > 「…いい体格してますねえ、ほんとに。たぶんお腹を空かせてでてきたんでしょうけど」
青年のそばには、やはり黒い魔法のローブと帽子に身を包んだ娘の姿。
いつものように白い狼はその近くで、ぴたりと地面に伏せ、沼地のほうをうかがっている。
以前、あの同族から撤退せざるを得なかった事件を思い出しえているのだろうか、狼なりに。
「色はともかく、同族とすれば…問題は。固い鱗と八個の首と、そして、ブレスですか?炎じゃなくて、毒でも吐きそうですが」
あぁ、もちろん。本物の竜よりは小さいが、体格も十分大きいだろう。
何せ、丘の上からもその姿がしっかり目にとらえられるのだし。
「空から偵察しておきますか?まずは」
地の化身を呼び出す手もあるが、沼地では動きも鈍りそうだしと。
師匠の方針を尋ねてみよう
■マティアス > 「粗方食い尽くして、……あとは瘴気を食らって生きているといったところかな。
気を付けた方が良い。多分、見立て通りだ。濃縮した瘴気か、あるいは毒液の塊を吐息をして吐き出すよ」
言いつつ、手持ちの装備を確かめる。炭と薬草類を加工して作った防毒マスクと符、アミュレットの類は必須だ。
足元も確かめる。長靴も特に隙間や目に見える損傷等がないことを重点的に確認しよう。
そうでなければ、毒性のある沼地が入り込んできて無駄なダメージを負いかねない。
靴裏に打ち込まれた鋲や補助の鉄具も同様である。足元があやふやな領域だと、氷の足場を作るのは常套手段と言える。
あとは、得物。これは単純だ。ずらりと抜き出す剣の刃を確かめる。白銀の刃に翳りも欠けがないことを認め。
「――いや、見るべきものは見た。耐性付与の装備類は確かめたね? あとは、掛かるだけだ」
そう告げて、鼻と口元を覆う防毒マスクを付けよう。やや息苦しいが、話すことに不自由はない。
札の類と魔法を込めた水晶をポケットに詰め、走り出す。途中、短い詠唱と共に全身に魔力を纏えば、速度は増す。
肉体強化の術式である。並行して耐性の付与も構える札を燃え立たせ、重ね掛けする。
走り続ければ、程なく見えて来る沼に向かって跳び上がり、刃を突き立てよう。
紡ぎあげるは氷結の術式。沼の真ん中でまどろむヒュドラの周囲に向かい、拘束と足場確保を兼ねた氷を生む。
■エアルナ > 「毒蛇ですかーーしかも沼地の。」
そうなると、だ。自分の装備と狼の装備を確認しながら、ため息の一つも零れるというもの。
防毒マスクとアミュレット、狼の場合はそれを首輪に備えて、そして動きを妨げない靴…というか脚の覆いも。
自分も今日はローブの下はスラックスと長くつ、動きやすい格好にしている。
「ペロ、頼むわね。…相手をよく見て」
ひらり、狼の背に乗れば、小型の馬ほどに変化した白狼もまた、沼のほうへと走り出す。
今日の得物は、短く使いやすいロッド。
片手にそれを握り、師匠が氷を生むなら、さらにそれにーー厚みを増すよう、凍結の術を補足しよう
■マティアス > 「そうとも。……いいかな? 種族柄というのもあるけど、あそこまで大きいのは最早竜も同然だよ」
分かっていると思うが、と釘を差す。最早、これだけ大きければ大手の冒険者ギルドにも依頼がかかりうる程だ。
正規の依頼ではなく、私的な探索だ。故に褒賞もない。謳われるべき武勲もない。
そして、援護もない。今まで培った悉くが問われる戦いである。巨大な魔物とは、ただあるだけで脅威となり得る。
「我……四方を封じ、天地を定め、威を以て束ね統べる。
我が声に応え、威を顕せ。――凍てつく風を纏いし氷后よ。汝がしもべに与えし刃を我に貸し与えよ!!」
マスク越しにくぐもっているとはいえ、朗々とした詠唱の声を響かせながら魔力を巡らせ、循環し、威力を生む。
沼地の水が凍る。支援を受けてさらに厚みを増しつつ、その一角が屹立する。
ポケットから取り出す瓶を放り出せば、開いた蓋から内部に入れた浄化済みの水が宙に舞う。これを媒介として、氷が大きさを増す。
生じるのは、幾つもの氷の剣である。己の身の丈にも倍するものが、その数5本。それらをヒュドラの胴と首目掛け撃ち込もう。
深々と突き刺さる刃が熱を奪い、血を凝らせて、凍る。
3本の首を刎ねて、その傷口を深く凍らせて再生を害し、毒血の放散を防ぐ。初手からの大魔法の発動に吐き出す息は、やや荒い。
■エアルナ > 「…竜の亜種、でしたねーーヒュドラは」
生息場所が遺跡、誰も近づかないような場所だからこそ、おおぴらな被害が出ていないだけの話。
周囲の動物や鳥も、近づかないだけだ。
けれど、そう、いつ周囲に被害をもたらすかわからない生きた災害にして、脅威。
「風よ、冷気をにない運べーー低温の檻をかの地に。
聖なる水よ、今、奏でよう
「凍結」
「回転」
「圧縮」
「加速」
「収束」
撃てっ!」
高速詠唱による、基本魔術の瞬息重ね掛け。
聖水を凍結、圧縮して硬度を増し、回転と加速をかけてさらに威力を増す。
極低温の、氷の銃弾が、二発。
さらに援護射撃としてヒュドラの残った首のほうへと飛び、二つの首の。それぞれの目、を貫き動きを止めようとするーー
■マティアス > 「――……そういうこと。ちゃんと覚えていたのなら、何よりだ」
ただの蛇の化け物ではないのだ。自然ならざる怪異。古の英雄が滅ぼしたなど、数々の謂れがあるものだ。
その亜種、派生の種かどうかは不明だが、いずれ誰かが滅ぼす必要があるものだ。
この瘴気漂わせる沼が版図を広げる前に、まずは早急に滅すべし。
――そして、魔法が猛威を振るう。
師が紡ぐ氷剣の術式に続くように、弟子がさらなる魔法を紡ぐ。数々の強化魔法を重ね、束ね撃つ高速弾。
狙いは正しい。だが、やや甘い。柔らかい目標に撃つのは用法としては間違いはないが、貫通力が高すぎる。
一つは頭部を貫通して、胴まで突き刺さって氷結をさらに添えるが、もう一つは圧力に頭部を半ば爆ぜさせて、沼に着弾する。
「エアルナ、この手の術の秘訣を2つ教えよう。
……動きが少ない箇所を狙うことと、出来る限り破壊力を獲物のナカに押し込めることだよ。と、ッ、来る……!」
静かな声を教え諭すように響かせつつ、魔力の流れと呼吸を整えて身を起こす。氷結した沼地の上に立つ。
如何に分厚く凍らせたとはいえ、長居をしたい場所ではない。如何に靴底が厚くても、体温は確実に奪われる。
頭部を潰され、落とされ、残るのは3本。それらが憤怒に戦慄いて蠢き、口腔を開く。吐き出すのは毒液の噴出である。
その射程から勢いをつけて、逃れる。
途中、魔法で風を纏い、遮断しても尚その勢いは凍った沼地を削り、砕いて進む。